妖屋奇譚 〜帝京騒乱記〜(8/12)縦書き表示RDF


妖屋奇譚 〜帝京騒乱記〜
作:ama



第捌話 Written by アオ


風呂場は、なんだか汗臭いような、そして腐ったような臭いがした。
白銀が「うぇ、臭っさあ」と眉(の、あたり)を潜めた。正直すぎるぞ、白銀。
それにしても。
これほどの臭いなら厨房にいたときから俺たちにだって臭っていても不思議じゃない。でも、俺にも銀子にも、二枚目徳さんにも、分からなかった。
―だとすりゃあ、此処にいる可能性はグンと高まるわけだ。
「リュウ。…あれ」
銀子が、鼻を摘みながら、ある一点を指差した。
周りが雨雲のように黒くて分厚い。そしてその中央に、なんというのだろう。一見菊の花のような形だが、色はどす暗い緑色。そして毛が生えた、気持ちの悪い妖が居た。
「…見つけた。行くぞ、白銀!!」
「うぇーい」
白銀の、気乗りしませんがな、という調子の声なんかよそに右腕に力を込め、金剛爪に変える。
案外わらわらと居て、奴らは風呂場の床をますます滑らせていた。
「うわっ、なんだよこれ!」
思わず足を取られ、カビの中に引きずり込まれそうになる。
「リュウ!!」
白銀は良いよな、飛べるんだから。滑る床なぞ気にせずビームなんか出しやがり、妖にダメージを与えている。
「リュウ! 後ろ! …前! 横にも!!」
銀子の甲高い声。
でも俺も、このまま倒れこむほどヤワな男じゃねえ。なめんなよ。
―咄嗟に金剛爪を背中の後ろに回し、思い切り床を押した。
いつも豆腐を運んだりと力仕事をしているせいもあり、そしてこの金剛爪の元々のパワーもあり、わりと簡単に俺の体は宙に浮いた。
そのまま、二体の妖に爪を付き立てる。
そして床に着地。心臓が高鳴ってきた。

「銀子、帰ったら足洗う石鹸貸せよ!?」
「―ふん。…生きて帰れればね」
足元が気持ち悪いまま死んでたまるかよ。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう