第伍話 Written by 琥珀
「す、すみませ……ん」
店の表の方からまるで「化けもん」みたいなか細い声がする。それはもう本当に化けもんみたいだった。
「あぁーい」
俺はめんどくさそうに返事をした。実際面倒だったし。
「あの、まだ店開けてない……」
まだ店開けてないんですけどぉー。
そう言おうとして俺は口をつぐんだ。そして目をみはる。
そこにいたのは「とびっきりのべっぴんさん!」と人々から称されそうなそれはまた綺麗な人だった。
歳は俺と同じくらいだろうか。
長めの髪を綺麗に結い上げている。
白い肌、栗色の目――。
すべてに目を奪われてしまう。
「あの、ここって妖屋さんですよね」
その女の人、というより女の子といって良さそうな人は聞いてきた。
「あ、豆腐じゃないんですねー。じゃあ、こちらのほうにどうぞ」
俺はそうできるだけ丁寧に言ってその子を案内した。もちろん真正面の玄関なんかじゃなく、もう1つの玄関のほうだ。
店の横に取り付けられた、どちらかというと店より自宅に入る用の玄関。
だが、そのドアには「妖屋」と汚い文字で書かれた小さい看板がつるされていた。
まったく、何て雑というか大雑把なんだろう。と思ったが、俺が書いたことを思い出す。
われながら赤面……。
ま、そんなことは気にせずに、俺はドアを開けて案内を続けた。
入ってすぐ右にある部屋に入る俺達。そこにはすでにジジイがいた。きっと何かを察したのだろう。
そして丁度銀子も入ってくる所だった。
「ご用件はなんでしょうかね?お嬢さん」
ジジイは「のったりまったり」が嫌いだからか、早速話を切り出した。まだその「お嬢さん」は座ってないってのに。この阿呆が!
と思っていたら、何か感じたのだろうか、一瞬こっちを睨まれてしまった。慌てて目を逸らす俺。
「とりあえず座ってください。今お茶お持ちしますねー」
銀子は気を使ってそんな風に接客をしていた。
女の子は「ありがとうございます」とだけ言って座った。
ジジイと俺が机をはさんで女の子と向かい合う形になった。
「実は今、家は妖怪で脅えきっているんです」
「ほほぅ」
ジジイは相づちを入れる。
「いつも見張られているようで、たまに縛られる感じにもなるんです。祖母はそれで倒れてしまって……。祖父も今は寝たきり状態なんです。母ももう疲れきっています」
非常に興味深いですなぁ。
ジジイは呟くのだった。 |