妖屋奇譚 〜帝京騒乱記〜(5/12)縦書き表示RDF


妖屋奇譚 〜帝京騒乱記〜
作:ama



第伍話 Written by 琥珀


「す、すみませ……ん」
 店の表の方からまるで「化けもん」みたいなか細い声がする。それはもう本当に化けもんみたいだった。
「あぁーい」
 俺はめんどくさそうに返事をした。実際面倒だったし。
「あの、まだ店開けてない……」
 まだ店開けてないんですけどぉー。
 そう言おうとして俺は口をつぐんだ。そして目をみはる。
 
 そこにいたのは「とびっきりのべっぴんさん!」と人々から称されそうなそれはまた綺麗な人だった。
 歳は俺と同じくらいだろうか。
 長めの髪を綺麗に結い上げている。
 白い肌、栗色の目――。
 すべてに目を奪われてしまう。

「あの、ここって妖屋(あやしや)さんですよね」
 その女の人、というより女の子といって良さそうな人は聞いてきた。
「あ、豆腐じゃないんですねー。じゃあ、こちらのほうにどうぞ」
 俺はそうできるだけ丁寧に言ってその子を案内した。もちろん真正面の玄関なんかじゃなく、もう1つの玄関のほうだ。
 店の横に取り付けられた、どちらかというと店より自宅に入る用の玄関。
 だが、そのドアには「妖屋」と汚い文字で書かれた小さい看板がつるされていた。
 まったく、何て雑というか大雑把なんだろう。と思ったが、俺が書いたことを思い出す。
 われながら赤面……。
 
 ま、そんなことは気にせずに、俺はドアを開けて案内を続けた。
 入ってすぐ右にある部屋に入る俺達。そこにはすでにジジイがいた。きっと何かを察したのだろう。
 そして丁度銀子も入ってくる所だった。

「ご用件はなんでしょうかね?お嬢さん」
 ジジイは「のったりまったり」が嫌いだからか、早速話を切り出した。まだその「お嬢さん」は座ってないってのに。この阿呆が!
 と思っていたら、何か感じたのだろうか、一瞬こっちを睨まれてしまった。慌てて目を逸らす俺。
「とりあえず座ってください。今お茶お持ちしますねー」
 銀子は気を使ってそんな風に接客をしていた。
 女の子は「ありがとうございます」とだけ言って座った。
 ジジイと俺が机をはさんで女の子と向かい合う形になった。

「実は今、家は妖怪で脅えきっているんです」
「ほほぅ」
 ジジイは相づちを入れる。
「いつも見張られているようで、たまに縛られる感じにもなるんです。祖母はそれで倒れてしまって……。祖父も今は寝たきり状態なんです。母ももう疲れきっています」
 非常に興味深いですなぁ。
 ジジイは呟くのだった。        












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