期限もすぎちゃいましたね(涙)
結構いけると思ったのですが……。
取り敢えず完成したESの方は完成しました。
LV優先だとは思いますがたまには違った物語のESで楽しんでくださると幸いです。
では♪
EP22:人狼 (終奏)
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黒い弾丸が跳ねていく。
壁から壁へ、さながらピンボールのように。
しかし、ピンボールとソレの違いは、方向性を持っているかいないか。
弾丸は確実に前へ前へと進んでおり、明らかな意思を感じさせる。
それはそうだろう。弾丸は、アレンという人なのだから。
その速度は、一般人にはほとんど捉えることが出来ない。
さらに言うなれば、バイクが修理中なため、高速での移動手段のないティアナを抱えてのこの速度だ。
「大丈夫か?」
「うん。スバルと一緒だったからこういうのは慣れてるし。もっと上げても平気よ」
「了解した」
了承したアレンは、一旦着地、膝に力を込め直し、否、今まで以上の力を溜めて、再度飛び立つ。
実を言うと、ティアナは少しこの鋭角軌道に慣れてはいない。
スバルは言うなれば円で進んでいくが、アレンは線だ。かかる重力はバリアジャケットがなければ相当きつい。
加えてビル郡の壁を蹴って移動しているアレンの着地の衝撃だ。訓練を受けていたとしても、出来れば体験はしたくない。
それでも、しなくてはならない理由がある。
人狼がマコトを狙っている、と、アレンが言ったから。
それを裏付けるように病院周辺で結界が張られた。
事前に通知はなかった。となれば、被害を少なくするために緊急ではった、という見解にたどり着くことができる。
病院周辺、結界を単独で張れる魔力と技術、そのどちらの条件にも、マコトは当てはまる。
もし、アレンの予想が外れていたとしても、なんらかの事件が起きているのは確かだ。言ってみる価値は十分にある。
「どうして、マコトが……」
「人狼とはそういう魔獣だ……」
ティアナの呟きを聞き取ったのだろう。アレンが返事を返した。
説明を求められていることがわかったのか、アレンはさらに続ける。
「奴らは、元はただの狼が邪気に当てられて突然変異で能力と知性を手に入れたようなものだが、本質的にはあまり変わっていない。狙いを定めた獲物を狩るだけだ。その際に逃がさないよう、マーキングと言われる行為を行うわけだが、大抵の人間はこれすら耐え切れずに死んでしまう。何故なら、マーキングとは人狼と一戦を交えることだからだ……」
「もしかして……」
ハッとしたティアナにアレンは頷く。
ティアナ達が帰ってくる前に行われた大量殺戮の数々。
それこそが人狼のマーキング行為。
狙われた人間はマーキングに耐え切れず死んでしまっている。
‘ほとんどの場合は’
スバルとバレッタが見つけたことからわかるように、重症を追いながらも生き残りはいる。
だが、それだけの傷を負いながら、人狼から逃げられたのか、否だ。
重症を負った人間を助けた人間がいる。
「それが神道さん?」
「ああ。間違いないだろう」
「でも、それじゃあマコトが狙われるのっておかしくない?」
途切れ途切れだった糸が繋がり始めた。
それでもまだピースが足りない。故にこそティアナは疑問を抱く。
そう、マコトが狙われるというのはまだ完全には成り立たない。
アレンの話の通りにいくのなら、狙われるのは神道勇輝、または重症を負った人間のはずだ。
「マーキングをした人間に触れるだけで、人狼にとっては十分な臭いだ。私とマコトは神道勇輝に接触している。条件としては十分だ。だが、神道はフィルによって浄化されている。その時に私も治療のついでにされたのだろう? 浄化をされれば魔族による影響は消える。マーキングも同じだ」
「で、アンタ達二人は外れるってわけね……」
「そうだ。もう一人は、天秤にかけられたのだろうな。厳重警戒がされた病院の奥、神道勇輝の見舞いに行っているマコト、どちらが狩りやすいか」
結論、選ばれたのはマコトだった、ということだろう。
全て繋がった。
これだけの情報があれば対策も打てるかもしれない。
だが、笑みを浮かべるわけにはいかない。
マコトが狙われているのはより確実。
今の精神状態のマコトでは命が危ない。
だからこそ出来うる限りの速度で跳んでいる。
病院はもう見え始めている。
「アレン、あれ!」
ティアナが指差した先、病院がある。
彼女にはまだ病院しか見えていない。
しかし、アレンの視力は捉えていた。
瓦礫となっているビル郡の中、鮮やかに宙に散った朱い朱い、血飛沫を……。
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「はっ、はっ、はっ」
『マコト、平気か!?』
(マコト~……)
荒い息を繰り返すマコトを心配するアルタとカンタロス。
それにマコトが返事を返すことはなかった。
正確にはそんな余裕すらもうマコトにはない。
額と腕から流れ落ちる血が、引き裂かれたバリアジャケットが、戦況の不利を物語る。
それでも、周囲の被害から考えるとそれだけで済んでいること自体が奇跡に近い。
結界の中だから良かったものの、高くそびえていた建造物には幾つモノ爪跡、同じように地面にも巨大なクレーターの部分が多数ある。
狙われたのがマコトでなければ、死んでいてもおかしくない。
どこ? どこから来る……?
すでにレヴァンティンへと変化させているデバイスを構え周囲へと視線を巡らせる。
その行為にほとんど意味はないことは知っていた。
なんせ、相手は見えないのだから。
『上だ!』
「っ!!」
叫んだアルタに直感的な判断でバックステップ。
直後に陥没する地面。
敵が空から降ってきたのだ。
もし、声に反応して上を向くという動作を取ればマコトは死んでいただろう。
そのパワーが相手にはある。
そして――。
「ぐっ!」
――加えて速度もある。
飛び散った瓦礫は人狼が地面を蹴った証。
それを見てから剣を持ち上げるという動作が出来たのはマコトが反応に優れていたからだ。
だが、鈍器で殴られたような衝撃にマコトの身体は簡単に吹き飛ばされ、建造物に背中から激突して静止する。
激痛が疾りぬけるが、構ってなどいられない。
歯を食いしばってノーマルフォルムであるファイアフォルムから、パワー重視型のベヘモトフォルムへとマコトのジャケットが変更。
「オオオオオ!!」
「ううぅぅ……」
前にはなにも見えない。だが、獣の咆哮が存在を示す。
プロテクションを張った瞬間、人狼からの怒涛の連打がマコトを襲った。
巨大な岩石を叩きつけられているような感覚。
ベヘモトフォルムで無ければ到底耐え切れる威力ではない。
それにしたところで、長く保てるものでもなかった。
「『バースト!』」
「をう!?」
だからこそ、自分から障壁を爆破し、マコトは動く。
流石に至近距離からの爆破には驚いたのか、一瞬の間が空いた。
その隙にマコトが復帰、左足には炎熱、右足を軸に、一回転!
ズドンと凄まじい音が鳴り響き、呻く声とともに黒い身体が現れる。
その巨体は3メートルほどだろうか。
マコトの回し蹴りはその胴体にめり込んでいた。
やっと作った好機、逃すわけにはいかない。
「蒼き竜騎士!」
『突き抜けろ!』
飛び上がってもう一回転続けざまに同体に炎の蹴りを打ち込んだ。
巨体が、浮き上がる。
まだ、止まらない、止まれない!
「うおぉぉぉぉぉ!!」
両足に炎熱が宿る。
描かれる紅蓮の道。
それらは全て狼の胴体へ吸い込まれる。
何度も描かれる紅蓮の三日月は空気を焦がし、遠心力に遠心力を重ねて、重ねて、重ね続けて、威力の増大は止まることはない。
やがて、巨体を押し上げ、完全に頭上へと来たとき、一層大きく炎熱が猛った。
「飛ん、でけぇぇぇ!」
「ご、うっ!!」
全ての遠心力を右足に乗せて、胴体に打ち込んだ。
弓が引き絞られるように、くの字に曲がった巨体は、解き放たれた矢のごとく、重力の力を振り切り、紅蓮の尾を引いて空へと浮き上がる。
マコトが大きく右腕を引いた。
輝く身体はベヘモトフォルムへと戻される。
つまりそれは、まだ終わりではないという証明。
握られるレヴァンティンが内部で構造を変化させていく。
「シュランゲ、バイゼン!」
『いけぇぇぇぇ!』
レヴァンティンが風を切る。
もう一つの姿、連結刃となり、空に浮かんでいる巨体を追撃、振られた勢いそのままに直撃、地面に叩き落したところでようやく停止した。
追撃に追撃を重ねた全霊とも言える攻撃。
しかし、これで終わったとマコトは思ってはいない。
『っ!! マコト! 手ぇ放せ!』
「くつ!」
アルタの叫びに反応したマコトだが、ほんの数瞬、遅れた、
それが致命的ミス。
連結刃となっているレヴァンティンがピンと張り、恐ろしいまでの力で引き寄せられる。
誰の元へ、とは言うまでもない。
人狼の元へ、だ。
マコトを引き寄せた獣は鉤爪を鈍く輝かせて待ち受けていた。
これから獲物を屠れると、歪んで笑みを作っているようにも見えた。
回避は絶望的。レヴァンティンを元に戻したが、慣性の勢いは死ぬことがない。
ならばどうするか、答えは一つ。
姿勢を制御、細かいことは捨てさればいい。
思考を終えた瞬間、マコトの身体が紫電を帯びる。
その力は利き腕である右腕で轟く。
「全開でぇぇぇぇ!」
「オオォォォォォ!!」
鉤爪を振るうのと、マコトが拳撃が振るうのは同時。
激突の余波が付きぬけ、瓦礫の山を吹き飛ばす!
人間と魔獣、比べるまでも無く魔獣のほうが腕力では勝っている。
事実、アレンの世界で魔獣と腕力で渡り合える人間など極少数。
だがそれは、アレンの世界での話。
彼女は、マコトは、魔導師だった。
ただ、それだけの話。
「ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ッ――!!」
人狼の咆哮は苦痛か、それとも驚きか。
答えはそのどちらも、だったのだろう。
爪を打ち砕いたマコトの拳はカウンター効果で人狼の腕の骨格を粉砕、歪な形に歪ませる。
『マコト……? マコトォォォ!!』
(マコト~……)
「あれ……?」
本当に、ただ、それだけの、話。
一拍を置いて、人狼の左腕がヒュンと風を切った。
外れたのか、そんなことを思うほどに、
ならばチャンスだ、戦おうと、マコトは一歩を踏み出そうとして、一歩として足が動かず、マコトの意思に反して膝が折れた。
バリアジャケットが光となって弾け、同時、夥しい量の血がアスファルトに広がっていく。
「……かは! ごほ! ごほ!」
『おい! おい! しっかりしろよ!』
(死んじゃう~。マコトが死んじゃうよ~)
口の中いっぱいに広がる生暖かい鉄の味。
アルタが、叫んでいる、カンタロスが心配している。
大丈夫。
そう言ってやりたいが、口から溢れる血がそれを許さない。
「グゥゥゥ……、シ、ネ」
片言のような言葉を人狼が喋った。
振り上げられる左腕、避けようにも身体はもう動かない。
もう間に合わない。
来るべき激痛に備えて硬く目を閉じる。
影がマコトの光を閉ざした。
瞬間に叩き込まれた地を揺らがせる一撃。
それは何十人もの命を屠ってきた人狼の一撃だ。
「グルゥ……」
光は相変わらず閉ざされたままだ。
前には”影”がマコトを護るように立っている。
その暗闇を狼の腕が光をさえぎったのだろうとマコトは思っていたが、違う。
彼女は知っている。世界には優しい黒もいるのだということを。
「アレン、君……」
『兄ちゃん!!』
(アレンさん~!!)
「ああ。待たせた……」
アレン・テスタクル、管理局の通り名、ブラックドレスがそこにいた。
人狼の一撃を受けて尚、不動。
「もう大丈夫よ。安心しなさい」
アレンよりやや遅れて、スタンという軽い音と共にティアナがマコトの隣に着地する。
アレンとティアナ、現在、魔獣戦においてこの二人程情報を持っている人間はいないだろう。
頼もしい助っ人の登場にマコトは気を緩めかけて。
「だが、浅い傷ではない。あまり気を緩めると死ぬぞ」
「いちいち言うことが極端なのよアンタは……。もう少しまともなこといいなさいよね」
「……死なないように黙れ。マコト」
「アンタに期待した私がバカだったわ……」
相変わらずのボケっぷりに呆れて溜息をつきながら、ゆっくりとマコトの身体を仰向けにする。
決して油断できる傷ではないが、緊急防衛機構であるリアクティブパージが発動し、威力を減衰したのだろう。
きちんと止血すれば死ぬようなことはない。
とはいえ、安全な場所に移動している余裕もない。
そんなことをしていればマコトの助かる確率は下がってしまう。
「アレン、ここでマコトの止血するからソイツの足止めしといて!」
「了解した……」
「ついでにこっち見るの禁止――見たら撃つ」
「……了解」
何故と聞く暇すら与えず、釘を刺したティアナ。
それはそうだろう。
今からマコトの服を脱がせるのだから。
「ヒーリング、私はあんまり得意じゃないから障害物は少ないほうがいいの。一応謝っとくわ。ごめん……」
「いえ……」
血に濡れた制服と真っ赤なカッターシャツを脱がせてスポーツブラとなったマコト。
その上からティアナは両手を重ねて、瞳を閉じる。
溢れるは碧、心地よい温かさだとマコトは思う。
事実、ヒーリングをかけてからは流れる血は無くなってきている。
『マコト、こんな時になんだが、お前……』
「ん?」
『スポーツブラって、女としてどうよ……? 確かに隠すほどの立派なモノは無ぇけどよ……』
「……アルタ、後で砕くね?」
『俺は男の観点からの率直な感想をだな!? ティアナの姉ちゃんだってもっとマシなもんつけてるぜ!?』
「人は人! ボクはボク! 皆違って皆良いって言うでしょ!」
『それでも色気は捨てちゃだめだろうって俺は思うわけだ!』
「ボクだって好きで色気が無い身体でいるわけじゃないよ!」
けが人とは思えない大声量で喧嘩する二人。
このまま騒ぎ続けるなら間違いなく傷口は開くだろう。
その様子にティアナは溜息をつき。
「黙らないとマコトはスタンさせて、アルタは機能停止させてから処置に移るってことになるんだけど、それでも良い?」
「『黙ります!』」
鶴の一声で黙らせたのであった。
方法はともかくとして、マコトを静かにしたティアナ
ともすれば苦笑をしながら治療に集中する。
鳴り響く激音を無視しながら。
足止めをしろ。
そう命じたのは確かに彼女であるが、下位の雑魚ならばともかく、相手は中位の最上位。
限りなく竜種級に近い魔獣だ。
その力の証明にこうしてマコトが傷を負っている。
「ティアナさん……」
『こっちはもう大丈夫だしよ。援護に言ってやったほうが……』
「大丈夫。アイツなら平気よ。たかだか狼一匹に負けるわけないじゃない」
不安そうにこちらを見上げるマコトに彼女は振り向く素振りも見せない。
惑いは無い。
アレンは負けない。信じて微塵も疑わない。
理由?
そんなものは存在しない。強いていうなれば、戦っているのが、アレンだから。
▼▲▼▲▼▲▼▲▼
猛攻が続く。
地を揺らし、瓦礫を飛ばし、人外の爪が降り注ぐ。
『ウォォォォ!!』
理性というものは感じられない。
本能のままに、狩りの邪魔をしてきたこの黒衣の男を殺そうと叩きつけられる人狼の巨爪。
何度も、何度も、何度も。
確実に殺せるだけの攻撃を叩き込む。
――それだけ、恐れていたから。
「オオォォォォォォ!!」
止めと、大きく振り上げた右腕を涎を撒き散らしながら振り下ろす。
コンクリートを打ち砕き、陥没する大地。
死んだ。確実に死んだはずだ。
「一つ聞く……」
呟きと同時にジャラリという金属音。
人狼の腕に巻きつく黒鎖。
何故と、人狼の脳は混乱をきたす。
生きているはずがないのに。
魔道師とは何度か戦った。
そのどれもが人よりはしぶとかったものの、人狼の腕力に掛かれば例外無く粉砕されたはずだ。
なのに、この男は立っていた。
持ち上げているのは片腕一本。最初に現れた時の姿と何も変わらない。
「こんな下らん遊戯を指導している主はどこだ……?」
「オ、レ、ダ!」
――ブチリ。
余りにあっさりとしていたからか人狼は停止する。
噴水のように飛沫を散らす、血。
同時に右腕の激痛を人狼は知覚する。
見れば、肘から上が無い。
引き千切られたように乱雑な傷口。
誰に?
決まっている――アレンに、だ。
「もう一度聞く。こんな下らん遊戯の指導者はどこだと聞いている。早急に教えろ……」
「ゥゥ……!」
恐怖に覆われる。
怖くて、怖くて、それこそ右腕の痛みも吹き飛ぶ程に。
とにかく離れたかった。
結果として魔族が一人の人間に逃げるという異常が起きた。
醜態をさらしてでも逃げたい。
しかし、それは叶わない。
逃げるために跳躍するための脚が無いのだから。
目の前の黒装束がいつ剣を顕現させたのかも、いつ断ち切られたのかすらわからない。人狼の中で理解出来たのは両足を分断されたという痛みが教える事実だけ。
「グゥァ!?」
「逃がす気はないし、逃れられるとも思わないことだ」
いきなり両脚を失った痛みに人狼は悲鳴を上げてバランスを崩して倒れ付す。
さらに、もう身動きすら許さないと黒鎖で縛り上げられた。
変わらない表情で倒れる人狼を見ながら黒剣を振り払い、剣に付着した大量の血糊を払う。
人狼を見据える仮面から覗く金色の瞳は感情の起伏を表さない。
アレンにとって、これはただの作業だ。
神道の時とは違う。加減をする必要も、情をかける必要も、一切無い。
それを理解した瞬間、今や人狼の大半を支配する恐怖が一気に増大した。
どう足掻いても、勝てない。そして、逃げることすら許されない。
「早めに降参したほうが身のためだと思うよ? どうせいずれは吐かなきゃいけないんだったら、痛くないほうがいいよね?」
「来たのか……」
「うん。まぁ一応。っていっても、今はマコトさんよりも戦力にならないけど……」
そう言ってあははと言う苦笑が響く。
現れたのはフィル・クレーディト。
やはりまだ無理をしているのか顔色はあまり良くはない。
それは置いといて、とフィルは話を戻した。自分はまだしも、ティアナとマコトは気持ちの悪い解体ショーなど見たくないだろうから。
「ちなみにアレン、このまま人狼が無言を貫こうとしたらどうしようとしてた?」
「吐くまで斬るか内臓を順に潰す予定だが? 拷問は知能が高い生物には有効な手段だ」
「「うわぁ……」」
「やっぱりというか、アレンらしいけど、ここには女の子がいるってことを考慮して考えようか?」
フィルもここまでは想定内。
だからヒントを与えた。
多少記憶が戻った今なら気遣いというものが出来るかもしれないという希望があったから。
懸命に考えているのだろう。人狼を一旦捨て置き、顎に手を当てて考え込む。
これならばと、三名の女性陣は期待して。
「……意味がわからない」
「最っ低……」
「考えたのにそれなんだね、アレン君……」
「うん。アレンは文句なしに最低だね」
そして期待はものの見事に、清清しさを感じさせる程に木っ端微塵に打ち壊される。
文字通り最低の答えを選んだアレンに突き刺さる冷ややかな視線、視線、視線。
――私は何をしたのだろうか……
当然の如く、それが何故なのかというのはわからないアレンなのであった。
軽くアレンに呆れながらフィルは溜息を落とし、人狼の前へと歩む。
両脚を両断され、右腕を引き千切られ、散々な人狼はただ唸るだけ。
そんな人狼を瞳を細めて、諭すようにフィルは言う。
「ご覧の通りアレンは最低な人だから、貴方を逃がすつもりはないんだって。だからね? ここで吐いちゃおう? その方がきっと楽だよ?」
『シ、ル、カ!』
「……それでも駄々をこねるんなら仕方ないよね。どうせ死ぬまで何も話す気ないのか、それとも話せないんだろうから、せめて――」
それでも尚拒絶する人狼に優しげだった雰囲気が、消える。
フィルからは心臓が凍りつくような殺意が振りまかれた。
目を合わせていた人狼は当然のこと、隣にいたアレンですら目を見張る。ティアナとマコトに至っては冷や汗が止まらない。
フィルの右腕が高々と掲げられる。
腕に発現するは、紫電の雷。
「――苦しみ無く、殺してあげる……」
『アアアアアアアアアアアアアア!!!!』
絶叫が結界の中に木霊する。
痛みではなく、恐怖からの絶叫。
火事場の馬鹿力とはよく言ったもので、傷口が開くのも構わず人狼が暴れついに黒鎖を断ち切る。
そのまま腕の力だけで跳躍、爪をビルに引っ掛けるようにして逃げていく。
逃さないと、フィルの腕が振りぬかれ――人狼の背中を焼いて雷はターゲットから外れた。
人狼が逃げ出し、結界が解けると、フィルは「ふぅ」と一息。
「あー、疲れた……」
「……フィル?」
「ん? 何かなティアナ?」
恐る恐る呼びかけたティアナにフィルはキョトンとした表情で振り向く。
彼女達の拍子抜けした表情を見て、何があったのかをフィルは悟った。
同時にクスリと笑う。
「相手をわざと逃がした上で場所を特定するってやり方、知ってるよね? だから慣れない威圧とかしてみたんだけど、そんなに怖かった?」
コクコク、ガクガクと、ティアナとマコトは無言のまま何度も頷いた。
ちなみに前者がティアナであり、後者がマコトである。
そんな二人が面白かったのか、フィルは今度はあははと声を上げて笑った。
凄まじいまでの豹変ぶりである。
「兵法としての理由、というのはわかったが、もしあの人狼が手脚を再生して人々を襲い始めたらどうするつもりだ?」
流石にアレンは殺意の類にはなれているのか、二人ほどの影響はなく、問題点を指摘する。
だが、フィルにとっては問題点にはなりえない。
「マーキングってさ、別に人狼だけの特技じゃないんだよね。魔術にはさ、相手に刻み込むことによって効果が上がる術もある。さっき撃った迅雷がソレね。ちなみに効果は、一定量以上の邪気の放出と同時に対象に雷が落ちる、ってやつで多分人狼くらいなら塵になると思うんだけど……。対策にならないかな?」
「いや、十分だ……」
天災司。
流石にそう呼ばれていただけはあり、対策には抜かりが無かった。
敵ではなくて本当に良かった。
改めてそれを脳に刻み込んだ一行であった。
次回に続く。
後書きは実はあったのですが、なにやらちょっと変な感じになってしまったので泣く泣く削除しました。
さて、残るは返信、なのですが、執筆に打ち込んでいたので全く手付かずの宿題があるので今日中、というのはきついかもしれません。
取り敢えず、今までの感想をくれた皆さんに感謝と、遅筆なせいでお待たせしてしまっていることを謝罪します。
今回はちょっと無謀だったかもしれませんが、どれか二つくらいなら出来る可能性があるので継続出来る限り踏ん張りたいと思います。
では、また♪
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