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お待たせしました〜。

久しぶりになったせいか、フィルの書き方が不調ぎみです(汗)
なんとか次回までにはスラスラいけるようになりたいです。

それでは、終曲、どぞ♪
EP:18 怒れる瞳 (終曲)
 Stヒルデ学院屋根の上
 入り口などなく、本来、人が乗れない場所。
 そこに、唐突に魔方陣が広がり、人が現れる。フィルだ。

「わ、とと……」

 急斜面の屋根にフィルはバランスを崩しながらも持ち直す。
 続いて強風が吹き、フィルの髪が靡く……。

「ん〜、なんか邪魔だと思ったら、髪紐が無いのか……」

 少し鬱陶しかったものの、気にせずに術式を演算開始。
 瞬間、突風とも言える風が吹き、フィルの腰布がめくれ上がった……。

「わぁっ!」

 慌てて押さえ、頬を紅潮させながら周囲を見渡す。
 屋根の上に人がいるはずはないのだが……。

「もう……」

想いを糧に、壁を成せ……

 思い浮かべるは無数の線。
 属性、種類、範囲、強度、無限とも言える線と線を繋ぎ、一本の線とする……。
 その線の先が術式の答え。辿り着くための魔力を流す。

「あ……」

 思わず、といった様子でフィルが声を上げた直後、学園を全て覆うように、不可視の正方形が出来上がる。
 これにより、風は止んだ。

「う〜低位の結界系は髪紐が無いとダメだなぁ……」

 ガックリと肩を落とすフィルだが、気持ちを切り替え、瞳を閉じ、改めて術式を展開。

「響け……」

 こちらは上手くいったのか、フィルを中心に微弱な振動が起こり、学園から、結界の外、クラナガンへと広がる。
 その範囲、約5km。
 10秒の間、その振動は流れ続け、途絶えた……。

「くぅ、頭痛い……」

 途絶えた理由は単純。
 フィルの脳が入ってくる情報の量に耐えきれず、激痛のために術式を中断したのだ。
 だが、何かを掴んだのか、フィルの視線は一点に向く。
 フィルが向いている方向、ミッドチルダの東部。

「何か、いる……」

 邪気を抑え、隠れているつもりなのか、微かな力をフィルは捉えていた。
 邪気では何なのかはわからない。ただ、そんなことが出来るのは、高い知能を持つ者。
 殆どの魔獣は、知能が低く、本能のままに行動する。
 希に高い魔獣も存在するが、大抵は人より遥かに弱く、命も短いため、戦いには参加しない。
 竜種クラスになると、人語を解し、話すことが出来る竜も存在する。
 しかし、竜種は大半は誇り高く、力を誇示したがる傾向があり、隠れるような真似はしない。
 となると、絞られる反応は限られる。

「さて……誰かな……」

 フィルの中で出された答え、それは、魔人という答えだった。
 高い知識を持ち、人語を解し、人と変わらぬ姿を持つ、魔王の配下。
 確かめようかと、右腕に雷撃を溜める……。

「ダメだ……。制御出来ない……」

 右腕に集束された雷撃を見て、フィルは牽制を諦める。
 仕方なく、直接向かうことにし、瞬転を発動。
 屋根の上から消えた……。

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

「……」

 数秒後、フィルは転位を完了するが、険しい表情をしていた。
 ミッドチルダ東部12区画、そこがフィルが飛んだ場所。
 そこは、休日で人が賑わう、テーマパークだった……。
 先に牽制を止めた理由の一つは、人を巻き込む恐れがあったからだ。
 もう一つは、このテーマパークを破壊しないためだ。

「来てくれると思っていましたよ。フィル・クレーディトさん?」

「っ!」

 嬉しそうな、男の声がフィルの耳元で響く……。
 賑やかだった人々が、一瞬にして物言わぬ石像のように、ピタリと固まる……。
 よく見ると、人々だけではなく、稼働中のアトラクションでさえ、不自然な状態で止まっていた……。
「はっ!」

 回転し、背後の人物にロッドを叩きつけようとするが、男は軽く後ろに跳び、避けた。

「おっとと。いきなり危ないじゃないですか」

「貴方は……オルディニス!!」

 男と対峙するフィルの視線は鋭いモノへと変わる。
 何故なら、フィルにとってもっとも嫌いな敵だったのだから……。

「折角の再開なのに敵意剥き出しにしなくてもいいじゃないですか」
「剥き出しにもなるよ……。私、貴方は大嫌いだから」
「おや、これは手厳しい。何故ですか?」
「何故、か……。わからないの?」
「わかりませんねぇ。記憶にありません」

 にやつきながら肩をすくめるオルディニスにフィルは拳を固く握りしめる……。

「貴方は、私達が立ち寄っただけで、戦いに関係ない村や街を潰して回った……。しかも、私達が立ち去るのを見計らったかのように魔獣を送り込んで……皆殺しにしてから私達の追跡に入る。追い付くのがどれだけ遅れても、殺すことに専念してた。だから、大嫌い……貴方を討つ」

「はぁ、何を言うかと思えば……その程度のことですか」
「その、程度?」

 オルディニスは溜め息をつきながらそんな言葉を吐いた。
 予想外の反応に、フィルは思わず聞き返す。

「そうやって言葉にして確認をするは良いですね。特別です。本来なら流す所ですが、気分が良くなったので答えさしあげましょうか……。
答えなんて、簡単なものですよ。愉しいからです。関係の無い人を殺して、そこから人を絶やす、それだけで、貴女達は面白いように激昂し、怒りに任せて一度は引き換えそうと停止する。しかし、やはり止まらずに前を目指す。割り切ったかと思えば、そうではなく、二度目も三度目も、同じような行動が必ずあった。苦しんでる貴女達を見るのが楽しみで潰していたと言っても過言ではないですね。
それでも転進して来なかったのはアレン・テスタクルが僕の考えを見抜いていたからでしょうが……唯一それだけは面白く無かったですね」
「面白い、面白くないだけで、人を殺すなんて……。リヴァルやライラみたいな魔人もいたから、ちょっとは話し合いも考えてたけど、やっぱり、お前だけは……消し去る……」
「あのですね。先に言っておきますが、僕が特殊なのではなく、リヴァルさんやライラさんが特殊なのです。
人と魔は殺し合うモノ。それこそ、今みたいな理由もなく、互いの種族の縄張り争いみたいなものでしょうか?
結構当たり前な事だと思うのですが、理解出来ませんか?」
「したくもない!」

 怒号と共に、フィルの杖に焔が輝く……。
 周囲の気温は矢継ぎ早に上がっていく!
 生まれるは業炎。
 球となったそれはオルディニスへと向けられる……。
 しかし、オルディニスは笑みを崩さず、動かない……。

「撃つ気ですか? まぁ、構いませんが、代償にこの子供に死んでもらいますが……」
「なっ!?」

 オルディニスは無造作に右手を伸ばし、近くにいた男子を掴み、自身の前に置く……。
 つまりは、人質……。

「卑怯者……」
「僕は利用出来るモノなら何でも使うのは貴女もよくご存知の筈でしょう?
だいたい、僕がこの土地にいたのが偶然だとでも? 貴女が僕を見つけたのではなく、僕が貴女を誘ったのですよ?」
「何がしたいの……」

 フィルの質問にオルディニスは嘲るような笑みを広げた。

「またおかしな事を。貴女を消す以外に何があるんです?」

 瞬間、次はフィルがオルディニスを笑う番だった。
 この反応にオルディニスは眉を吊り上げる。

「お前は……そんな事だけのためにリスクはおかさない……。さっき自分で愉しいことが大好きですって言ってたようなものだし……。どうせ、何かやる気なんでしょ?」
「おや、意外と冷静なようですね。昔の貴女なら僕の隙を狙いながら、ギラギラした瞳をしていそうな場面ですのに」
「お前が死んでから多少は成長してたってこと……」

 この時、オルディニスはより一層笑みを広げ、邪悪と呼べる笑みを浮かべていた……。

「成る程。まぁ、ご明察です。すぐには殺さないつもりでした。ちょっとしたゲームでもしようかなと思っていまして……」
「……ルールは?」
「簡単です。鬼ごっこなるものを少し変化させただけです」

 オルディニスが右腕を持ち上げる。
 すると、周囲の動かない人々が宙へと浮かぶ……。
 同時、オルディニスの背後に溢れ出す黒い泡。
 それは形を成し、二体の一つ目の巨人となる……。

「トロル……」

 フィルが呟きその巨人の名を告げる。
 下位の魔獣の中では頂点に位置するトロルであった。
 その怪力は上位の魔獣である竜種に匹敵する。
 四メートル近くある巨大から叩きつけれる得物は棍棒。
 人の体など、それにかかれば一撃のもとに粉砕される。
 知能が低いトロルが民間人を狙わないか肝を冷やしたフィルだが、トロルは大人しく立つのみだった。

「この二体と鬼ごっこをしてください。反撃はもちろん構いません」
「……え?」

 意外な言葉にフィルは意表を突かれる。
 反撃は禁じられるかと思っていたからだ。
 だが、それも直ぐに納得がいくこととなる……。

「貴女が魔術を行う度、この方達を一人ずつ壊していきます。これが貴女のストック。
攻撃は物理的なモノなら構いません。トロル二体を倒せばクリア、貴女が殺されるか、ストックが無くなればゲームオーバー、愉しいでしょう?」
「……そうだね。あんまりにも楽しみで浮かれて、お前を何度も殺したいぐらい……」
「いいですね……。貴女のその瞳は堪らない」

 氷のように冷たい言葉をフィルはオルディニスにぶつける。
 常人なら、気迫だけで倒れてしまいそうな殺意を向けられるが、オルディニスはそれすら己の愉しみへと変えてしまう……。

「ゲーム……スタート」

「「ガァァァァァアア!!!」」

「さて……」

 走り出した二体のトロルに、フィルは正面から走り込む!
 振りかぶられる棍棒、だがフィルはそのまま突っ込む!
 叩きつけられた棍棒は、地を砕くがフィルはいない。
 既に二体の間を走り抜けていた……。
 そして、反転し、アレンには及ばないものの、それでも人間離れした跳躍で十メートル近く跳び上がる!

「はぁぁぁっ!」

 狙うは左のトロル。
 ロッドの尖端を突き刺すようにしてトロルの背後から全体重を乗せ、頭に放つ!
 筈だった……。
 ロッドの尖端部は、不可視の障壁に阻まれ、止まっていた。

くっ……やっぱりか……。

 内心呻き、柄を持つ両腕に力を込め、反動でバク宙、直後に轟音が鳴り響く……。
 もう一体のトロルが先程までフィルがいた位置を左腕で薙ぎ払ったのだ。
 フィルは無傷だが、ロッドは紫電を放ち、数秒の抵抗の後、あっさりと折れた……。
 さらに厄介なことに仲間だと言う認識はあるのか、攻撃が当たらないようにしている。

「「ウガァァァァ!!!」」

「……っ」

 トロルが振り向いた瞬間、フィルは真横に走る。
 トロルの口内から、空弾が撃ち放たれ、ただの空気とは思えない威力を持って立て続けにフィルを襲う。
 フィルが、滑り込みや跳躍で避ける度、地が砕け、アトラクションは崩れていく……。
 壁にすらならない。

「あははは! いいですね。正に鬼ごっこじゃないですか!」

 高らかに笑うオルディニスに突っ込もうかと思考がよぎるが、即座に捨てた。
 人質がいる。
 第一、回避に集中しなければ空弾の雨が避けきれない。

なんとか時間を稼がないと……

 管理局の人間が来るのを待つ他無かった。
 が、そんな思考をわかっているかのように、オルディニスが「そうそう」と告げる。

「忘れてました。そろそろですよ?」
「何、が!!」

 空弾を横っ飛びに避けながら、フィルは叫ぶ。
 しかし、嫌な予感を感じていた……。

「あの学院が潰れるのが、ですよ」
「なっ!?」

 フィルはオルディニスの言葉に我が耳を疑う。
 範囲展開を失敗したとはいえ、ヒルデ学院には結界を張り、防衛は万全の筈だった。
 だが、オルディニスの口振りとタイミングからして、嘘とは思えない。

「送った魔獣は、雑魚は適当なモノですが、赤竜が一体います」
「そんな……どうやって……」

 赤竜がいる。
 その事実にフィルの足が止まった……。
 竜種はプライドが高いが故に、滅多なことには相手には屈しない。
 自分より遥か上位と認めたモノにだけ、服従を決める。
 その竜種が従っている。

「その辺りは、仲間に協力してもらっただけです。それより、ボーッとしてると死にますよ?」
「っ!」

 ヒルデ学院が襲われた。
 この事実はフィルの動揺を誘うに充分すぎた……。
 気づいた時には、既に空弾が壁となってフィルの視界を覆い尽くす……。

「っ……ぁ……」
「ほら、言ったでしょう?」

 次の瞬間にはフィルは全身の痛みに襲われ、地面へと沈み込んでいた……。
 朦朧とする意識の中で、フィルは目前に迫るトロルよりも、ヒルデ学院の方へと意識を集中させていた……。

「あ……」

「「ウガァァァァ!!!」」

 小さな呟きは、二体のトロルが振り下ろした棍棒の一撃によって消え去った……。

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 Stヒルデ学院

「……」

 その正門にて、シャッハ・ヌエラが双剣型のアームドデバイス、ヴィンデルシャフトを構え魔獣達の群れと一人対峙していた……。

「……っ!」

「ギィィィ!!」

 シャッハは、自分が感じた気配を疑わず、左肘を背後に思いきり引く。

「ギュ……」

 グシャリと何かが潰れる音がしたが、構っていられない。
 何故なら、前方から一斉に魔獣が飛び掛かって来ていたのだから……。
 引いた左肘を押し出し、前方を薙ぐように打ち出す。
 双剣は、魔獣達をまとめて殴り飛ばしそこかしこに緑やら黄やらの体液が飛び散る。

《ガルル!!》

 その間に包囲網を完成させる、狼型の魔獣。
 グルグルと周囲を回るそれらをシャッハは目で追う。

《オオオ!!》

 三方向から同時に飛びかかるのを確認した瞬間、シャッハの体が回転し、霞む!

《キャン!!》

 回転しながら双剣は三体を撃退し、切り裂く!
 まだ止まらない。
 掌の中で、ヴィンデルシャフトがクルリと回る。

「烈風一迅!」

 双剣から火花と共にカートリッジが弾け飛ぶ!
 ダン、と震脚のように踏み込むシャッハは、一瞬にして残像と化す……。

《ギシャァァァアアアア!!!》

 魔獣の群れの一角から咆哮があがる……。
 その叫びは魔獣達の断末魔の叫びだった……。
 シャッハから前に進み、シャッハの右手側に一メートル、そのさらに一メートル先、次は左手側に、地に深く刻み込まれた斬撃の跡が残る。
 そこにいた魔獣は言うまでもなく両断され、絶命している。
 シャッハ自身は、次なる得物を求め、混乱する魔獣達の中へと、身を踊らせる。

「はぁぁぁぁっ!」

 剣閃が至るところで輝き、四方八方から苦痛の叫びが響き渡る……。
 切り刻み、或いは殴り、或いは叩き潰す。
 AAAランク魔導師としての実力を魔獣に突き付ける。
 だが、翔けるシャッハの表情は苦いものだった……。

話しには……聞いていましたがここまでとは……

「グァ……」

 そう思いながら、右脚を背後に放ち、トカゲのような魔獣の顎を蹴り上げた。
 左足を軸に回転し、それの胴体にヴィンデルシャフトを払う。
 綺麗に真っ二つとなり、落ちた魔獣はピクリと一瞬だけ動き、息絶える。

キリがない……。

 地上本部へと連絡してから約10分の間、シャッハは単独でヒルデ学院を守っているが、最早100を越えるであろう数を斬ったにも関わらず、魔獣は無尽蔵に現れ続ける……。


どう血路を開きましょうか……

「っ!」

 生徒を避難させるタイミングを見計らい、思考していたシャッハだが、寒気を感じ、思考を打ち切り、その場から離脱する。

《グギャァァアアアア!!!》

 先の断末魔など比較にならない程の叫びが上がる……。
 そして、シャッハの目は驚愕に開かれていた……。
 突如として降り注いだ、紅蓮の炎が存在していた魔獣達を薙ぎ払えばそうもなると言うものだ。
 後、離脱が数瞬遅ければ、シャッハも魔獣達と同じ末路を辿っていたことだろう。

「オオオァァァアアアアアアア!!!!」

 轟音を響かせながら、赤き竜がシャッハの前に降り立つ。
 その体を炎が舐めるが、竜は全く意に介さない。
 それだけで、その竜の鱗は相当に熱に強く、堅牢なことを意味している。
 現れた強敵に、シャッハはヴィンデルシャフトを握りしめ、次の瞬間には眼前で右手を振りかぶっていた……。

「はぁぁぁぁっ!」

 棍のように赤竜の眉間にヴィンデルシャフトを叩きつける。
 重い感触……。シャッハは腕が痺れるのを感じた。
 それは、シャッハの一撃が効いていないことを意味する。
 逆に、その行動は竜の怒りを買うだけだった……。

「ガァァァァア!!!」

 前肢が高々と上がり、陽の光にギラリと爪が反射する……。
 振り下ろされるそれを見て、シャッハは、踏み込む!

「旋迅、疾駆!」

 轟音が響く……。
 巨爪が地に叩きつけられた音だ。
 無論、シャッハはそこから離脱している。
 竜の体を直線に通り抜けて……。
 旋迅疾駆。シャッハの物質通過跳躍魔法。障害物があろうと、通り抜けられる魔法だ。
 それを用いて、赤竜の背後に突き抜けたシャッハは、即座に振り向き、加速。

「烈風……」

 ヴィンデルシャフトにあるカートリッジを全て弾き出し、最後の踏み込み、その姿が消え去る!

「一迅!」

 疾風のごとく、シャッハが尾から頭へと駆け抜け、火花を散らしながら停止する。

「ガァァァァ!!!」

 瞬間、赤竜から苦悩の叫びが上がる。
 竜の背中に刻み込まれた二筋の斬撃の跡。
 それは鱗を切り裂き、鮮血を飛び散らせる。
 だが、倒すに至らない。
 それどころか、痛みに瞳を怒りに燃やし、シャッハに向けて鞭のように長い尾を振るう!

「くっ!」

「ァァァァアアアアア!」

 振るわれる尾を飛び退きながら避ける。
 竜は距離を詰めながら巨爪を右、左と叩きつけ、シャッハを潰そうと動く。
 その動きは巨体の割には俊敏であり、リーチもある。
 迂闊に近づけないシャッハは回避に集中。
 巧みにステップを利用して隙を探す……。

「っ!」

 風切り音!
 直感を疑わずに跳躍、その真下を尾が薙ぎ払って行った……。
 危機を回避したシャッハは、前を向き、竜を見る。

「うっ!」

 瞬間、シャッハの体が宙に浮く……。
 薙ぎ払われた尾が折り返していたのだ。
 強引に折り返したために、叩きつけられることは無かったものの、シャッハの体は尾に捕まり、持ち上げられていた……。

「しまった!」

 脱出しようと足掻くが、人と竜、根本的に力の差がありすぎる。
 尾はビクともせず、シャッハの体を締め付ける……。

「が、あ……」

 シャッハはミシミシと骨が軋むのを感じていた。
 意識が薄れ、ヴィンデルシャフトを握る腕から力が抜けていく……。

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ヴィヴィオSIDE

教室の中では悲鳴や泣き声なんかが響いていたけれど、私はずっとシスターシャッハの戦いを見ていた……。
教室の窓から覗いていると、新しく現れた赤い竜にシスターシャッハが締め付けられ、今にも死んでしまいそうな様子が見えた……。
今ならまだ間に合うかもしれない……

「……よし」

意を決して、結界が張ってある教室から出ようとすると、誰かが私の右腕を掴む。
振り向くと、ティーネちゃんが首を振っていた……。

「行っちゃダメ……」
「どうして!! このままじゃ……」

シスターシャッハが死んでしまう。
そう言うのを我慢した。
今、ここでそんなことを言えば、皆が騒ぎ出すことは間違いないから。

「ヴィヴィオが行っても何も変わらない……。寧ろ、状況が悪くなるかもしれない」
「じゃあ、ティーネちゃんも協力を……」
「それも同じこと。私達の役目は、この教室の結界維持だよ……。シスターシャッハに言われた筈……」
「でも!!」
「心配しないで……」

 ティーネちゃんが私をまた窓際まで引っ張る。
 そして、透き通るような綺麗な蒼い瞳で私を見つめた後、空を見上げる……。
 前に見たことがあった。
 あの時は、アレンが助けに来てくれたけど、アレンは遠い所にいる……。

「来る……」
「え……?」

 呟いたティーネちゃんの視線の先を私も見つめた……。

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くっ。ダメ、か……

 締め付けられる力に、シャッハの心に影がさす……。
 抵抗をやめてしまおうか、そう思った時……。

「バーストキャノン!」

「ガァァァァア!!!」

 天空より黄金の光が降り注ぎ、赤竜の背に突き立つ!
 みるみるうちにその体は沈み込み、持っていられなくなったシャッハの体を放り投げた……。
 誰かが、空より急速落下し、シャッハの体を受け止める。

「わっとと、大丈夫ですか?」
「貴女は……」

 シャッハを受け止めていたのは、女性だった。
 腰まで届く茶髪のポニーテール、優しいようで、威厳も持ち合わせていそうな黒眼。
 白に赤と青のラインが入った上着と黒いミニスカートを身に纏っている。
 そして、最大の特徴は、天使のような背中に広がる一対の白き翼。
 それを力強く羽ばたかせ、女性は飛ぶ……。

「管理局からの応援です。一先ず自己紹介は後にしましょう。あの竜さんは私が倒しますから、そこで待っててくださいね?」
「すみません……」
「いえ、遅くなったこちらが悪いんですからお気になさらず」

 そう言って、女性は学校の入り口にシャッハを寝かせ、再び真っ白な一対の翼を広げ、飛んでいく……。

「よしと。ゼロ、やろっか」
『任務了解』

 直線に飛び、女性は両の手に黒き砲銃を転送する。
 その巨大さは、成人男性の腕の長さ程もある。
 それを軽々と持ちながら、女性はクルリと回転しながら軌道をずらす。
 瞬間、紅蓮の業火が通過していった……。
 女性の背後には翼を広げて飛んでいる赤竜がいた……。

「接触まで時間は?」
『10秒後にエンカウント……』
「ありがとう」

 ニコリと笑い、女性は直線だった軌道を不規則に軌道を変化させる。

「ガァァァァア!!」

「ほらほら、こっちだよ?」

 出鱈目に放たれた紅蓮。
 それが当たる筈も無い。
 掠りもせずに避けられ、通過するのみに終わってしまう。
 当たらないことに竜は苛立ち、近接で鬱陶しい蝿を落とさんと速度を上げる。

「グォォォオオオ!!」

 最高速度は竜の方が速いのか、差は縮まり、女性のすぐ後ろに竜は追従する。
 そのまま叩き落とさんと、右の巨爪を振りかぶる!

『エンカウント……』

 デバイスから声が響いた直後、女性は振り向き、進みながら後ろの竜に左の銃を向ける。
 否、正確には、竜の右腕に向けていた……。

「アインス……」

 振り下ろされた右爪と左銃から放たれた砲撃が激突する!
 だが、竜は構わない。
 対の左腕を叩き付けようと振りかぶる!
 が、時を同じくして、女性が右の銃を左腕に向けていた……。

「ツヴァイ……」

 またしても同時に叩き込まれる左爪と右銃の砲撃。
 だが、女性はもう止める武器が無い。
 竜は、自身の背後から尾をしならせ、叩き込む!
 しかし、そこに女性の姿は無い。
 銃の反動を抑え込むのを止め、威力のままに下がったのだ。
 逃げた獲物に竜はもう逃がさないと言わんばかりに、口内に紅蓮を溜め込む……。
 女性は一対の銃を一つに纏め、集束を開始……。

「ガァァァァァァァァァァァ!!!」

「ドライ……」

 女性の眼前を覆い尽くす程の紅き焔が放たれる。
 それを見ても、女性は冷静なままだった……。
 銃口を焔へと向け集束していた砲撃を撃ち込む!
 一瞬、空が眩く輝き、直後に轟音が響き渡る!
 空に広がるは紅蓮で描かれた大輪の華。

「ァァァァ……アアアアア!!!」

 もうもうと上がる爆煙の中に、竜は止めとばかりに速射で火炎を叩き込む。
 瞬間、赤竜は何かが腹部に押し当てられた感触を知覚する……。
 それは、銃口だった……。
 もう少し様子を見て、火炎さえ放っていなければ、竜はまだ動けたかもしれない。
 しかし、それはもしもの話。
 起きてしまった現実は変えられない。

「ジ・エンド……だね」
『シングルバレルシフト、最大出力』
「バイバイ、竜さん」

 ほんの一瞬、悲しそうな表情を女性が浮かべる。
 だが、女性は確実に引き金を引いた……。
 銃口から放たれた黄金の光が天へと昇る。
 赤竜は、至近距離から集束砲撃を浴び、塵と消えた……。

「ふぅ……」
『お前は気にしすぎだ。アレは今に現存する生物ではない』
「ゼロが冷徹すぎるんだよ。私は普通」
『敵は殲滅する。それだけだ』
「もう少し柔らかくなってくれてもいいのに〜」
『ならデバイスを変えることだな』
「またそういうこと言うし。もういいよ」

 デバイスとの会話を終えた後、女性はヒルデ学院へと進路を戻し、飛んでいった……。
 シャッハがいた。この女性が赤竜を倒した。
 偶然に偶然が重なり、ヒルデ学院は無事に救われたのだった……。

▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼▲▼

ミッドチルダ東部。

 叩きつけられた棍棒を見て、オルディニスは首を捻る。

「おや、もしかして死んじゃいましたか?」

 しかし、その疑問は即座に間違いだと答えが出た。
 呟きが聞こえたのだ。

解呪

 と。
 一瞬にしてオルディニスが形成した結界は崩れ去り、新たに結界が展開される。
 それだけではない。
 停止する人々の足元に魔方陣が輝き、転位、消え去った……。

「何!?」

 ここに来て初めてオルディニスの顔に驚愕が浮かぶ。
 無抵抗だったフィルがいきなり反撃に転じたことに驚愕しているのだ。

「向こうとこっち、どっちも人質にされてたんじゃ動けなかったけど、ヒルデ学院の方、誰かがやってくれたみたい……」

 いつの間にか、トロルの肩に座っているフィルがいた。
 飛び降り、ストンと着地、明確な殺意をオルディニスに向ける。

「バカな……赤竜を撃退しただと……」

「次は、お前の番だ……」

「くっ! トロル共! ソイツを殺れ!」

「ウガァァアアアア!」

 オルディニスが命じると、反応したトロルの一匹がフィルの背後で棍棒を振り上げる!

「邪魔だよ……」

 フィルは、振り向きもせず、右腕を頭に持ち上げ、棍棒を受ける……。

「アアアアアアア!!!」

 フィルの腕に触れた瞬間、トロルの体は業火に包まれ灰となった……。
 発動したのは暴火の魔術。
 ただ、一撃の出力が今までとは全く違った……。

「ガァァァァア!」

 仲間を殺られた怒りか、トロルがフィルに空弾を放つ!
 対し、フィルはまた右腕を動かし、障壁を張る。
 炸裂する空弾が障壁を揺らすが、それだけだった……。

「我は閃、空を裂け……」

 響く言霊。
 フィルの右手に雷が集う。
 スゥっと、ゆっくり掌がトロルに向けられる……。
 警戒したトロルが障壁を展開。

「迅雷……」

「ガァァ、ァァ……」

 一閃!
 雷光が疾り、障壁をいとも容易く貫き、トロルの腹の中心に風穴を開ける……。
 トロルから血が流れ落ち、血の水溜まりを作る……。
 再生をしようと、トロルが呻きをあげ……。

「しつこい……」

「ガァァァァア!!!」

 その脳天に雷光が降り注ぎ、生きたまま炭化させた……。

「な、何故だ……。朝からお前は魔術の制御ができないのでは無かったのか!」

 そう、魔術の制御が上手く言っていないとオルディニスは知っていた。
 ならば勝てると踏んでいたのだ。
 しかし、フィルは「そんなことか」と一蹴する。

「髪紐。アレね、一種のリミッターなんだ」

「何……だと?」

「私はね、元の魔力保有量が多すぎて、意識しないと術式に流れ込む量がどうしても多くなる。つまり、私は荷重呪唱を常時やってるようなもの……」

「バカな……ただの人間が出来る筈が無いだろう!」

「出来ちゃうんだから仕方ないよ……」

 荷重呪唱、それは、詠唱が短く、即座に展開出来る低位術に、魔力を上乗せし、威力を底上げするという荒業である。
 結果、低位術の詠唱の短さに高位術の威力を持つ魔術が出来上がる。
 ただし、魔術は、術によって最適な魔力量が決められている。
 それを無視して行うのだから、消耗も激しくなり、体の負担もかかってくる。
 車に例えるなら、ギアの変速をせず、アクセルを踏み込み、走るようなものである。
 故にフィル達の住んでいた時代においても荷重呪唱を使うのは、人に比べ魔力が豊富な魔人くらいであった。
 それを無意識で行えてしまうフィルがいかに膨大な魔力を秘めているかは推して知るべしだ。

「もし、私が制御に失敗したら周囲の人達も危ない。だから、力を落とす髪紐で制御しやすくしていたってこと……。
今は貸しちゃって無いけど、丁度いいや……」

 ヒュッと、右腕を横に振り払い、水平にする……。
 瞬間、蒼白い光が生まれる。
 その正体は雷以外の何物でもない……。

「人間風情がぁぁぁ!!!」

 オルディニスは咆哮を上げながら両掌をフィルに向ける。
 集うは氷、礫は氷塊となり、やがて、巨大な氷針となる!
 その魔術は低位術、烈氷。本来は牽制程度に礫を放つのみだが、荷重呪唱によって高位術の威力の領域に踏み込んでいた……。

「消え去れぇぇぇぇ!!」

「そっちがね……」

 フィルの腕が前を向くのと氷針が放たれるのは同時。
 瞬く間に迫る氷の針はあっさりと砕けた……。

「迅、雷……」

 フィルの右腕から撃ち放たれた雷撃によって……。
 雷撃は氷針を砕き尚獲物を探し求め、直線上にいたオルディニスを獲物とした……。
 驚愕したままのオルディニスに雷撃が突っ込み、爆煙をあげる……。
 余波である激しい紫電が空気を伝い、流れる。
 瞬間、突風が吹き抜けその紫電ごと煙を吹き飛ばす!

「久しいな……。フィル・クレーディト……」

 煙が晴れると、紫髪とマントを風に靡かせて、ハイレグレオタードの鎧を纏う女性がいた……。
 雷撃を斬ったのか、左の剣には紫電が流れている。
 ゆっくりと振り向くその瞳は蒼。

「久しぶり、リヴァル……」

 リヴァルと呼ばれた女性は「うむ」と頷く。
 この女性もまた、オルディニスと同じく、魔人である。
 さらに言うならば、知謀タイプではなく、戦闘に特化した武人タイプだ。

「それにしても、相変わらずの凄い格好だね……」

「凄い? 我はこの世界の機動戦に適した服に似せただけだが?」

 事も無げに言うリヴァルに、フィルは肩をガックリと落とす。

本当に変わらないなぁ……

 と、内心リヴァルにあきれながら口を開いた。

「軽そうではあるけど、モデルにする人間を違ってると思う……」

「違うおうが違うまいが、実用度は高いのでな。我はこれで構わない」

私が構うよ……

 という言葉は胸の内にグッと飲み込み、我慢した。
 会話が一旦途切れた所で、リヴァルはオルディニスに首だけ振り向く。

「何をしている? 見え透いた演技まで行い我を呼んでいたお前が何故まだそこにいる?」
「おや、バレていましたか。流石ですね」
「当たり前だ。さっさと消えろ。邪魔なだけだ」
「また随分な言われようですね。まぁ、楽しめましたし、帰るとしましょうか」

 リヴァルの背後で霞と消えるオルディニスをフィルは視線を向けるだけで何もせず、見逃す。

「何故なにもしない?」

「リヴァルと対峙してあの眼鏡の事気にしてられる余裕なんか無いからね」

「成る程」

 フィルが右手を天空にかざす……。
 粒子が集まり、生まれるのは一本のロッド。
 その形は一匹の竜が黄金の宝石をくわえている。

「飛天、か……」

 リヴァルが呟いたのはそのロッドの銘である。
 先にトロルが破壊したロッドは、近接ようの得物程度にしかフィルは考えていないようなものだが、このロッドは違う……。

「順番が変わったのは残念だけど、邪魔するなら、貴女から消す……」

 フィルが飛天を呼び出してから、晴れ渡っていた天候は、雲が広がり、一気に崩れ、豪雨が降り、空は雷雲に覆われる……。

「面白い……。出来るのならやってみせろ……」

 豪雨に身を晒しながら、リヴァルはさも楽しそうに笑い、双剣を構え、身体を半身に開く……。
 瞬間、雷雲が輝き、二人の間に開戦と合図が轟いた……。

Next Stage……

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後書き雑談コーナー。

テ「もう別に言うことないわね」

ス「確かに。私達の出番は次回だからね〜」

フ「あ、そうなんだ。一緒に頑張れるね」

テ「まぁ、次回の見所は、チーム戦と個人戦の違い、かしら?」

ア「というより、前編で収まるのか……?」

ネコ「ニャ〜。作者さんは収めるつもりらしいけど」

アル『そんなことよりお前ら、なんか大事なもん、忘れてねぇか?』

一同「大事な物?」

アル『遅れてるが、バレンタインのチョコを渡さないといけねぇだろ。主に……』

テ「あ、そうね。って言ってもそんな暇無かったし……」

ス「あ、そうだ!」

ネコ「アレン君もチョコを一緒に作るニャ♪」

ア「私もか? 構わないが、作り方を知らない……」

テ「そんなのわかってるわよ。教えたげるから」

ス「大丈夫。チョコなんて簡単なんだから」

フ「わ、私もいいかな? 初めてなんだけど……」

テ「もちろん。ていうか当たり前よ」

フ「ありがとう♪」

ネコ「そうと決まれば友チョコとアレン君のチョコを作りにいくにゃ♪」

ス・フ「お〜♪」

アル『ちょっと待ったぁぁぁ!!! 俺のは!?』

ネコ「デバイスにチョコは無し。カンタロー君にはあげるけど」

カン「やったねー。ありがとー」

アル『虫に、負けた!?』

ガチャ……。

バ「また皆さん僕がくるまえに楽しそうなことを……」

アル『そうだ! バレッタ、お前もチョコ無し仲間だな。仕方ねぇから今日だけ仲良くしてやるぜ♪』

バ「はい? いや、チョコなら食べますか? 義理チョコたくさん貰っちゃって……」

ドサドサドサドサ!

一同「……」

アル『お前なんかいっそ女になっちまえぇぇぇぇぇ!!!』

バ「お前はやっぱり壊してやるぅぅぅーーーー!!!」

テ「そういや、バレッタはモテるんだったわね……」

ネコ「地味過ぎて忘れてたニャ……」

フ「ま、まぁ、とにかく行こうよ」

ス「うん、て、そういえば、アレンは?」

フ「あそこ……」

ア「?」

テ「出口で待ってるわね」

ス「うん。待ってるね……」

ネコ「待ってるニャ」

フ「アレってさ……」

テ「待ちきれなくて楽しみにしてる……だったり?」

ス「やっぱり子供だなぁ」

ネコ「純粋だニャ〜♪」

フ「ま、待ってるのは間違い無いし、行こ?」

テ「じゃあ、次回のEndless Storyまで、Take off♪」

ス「ティア……慣れた?」

テ「う、うっさい!」

ガシャン。