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闇の血脈その二
「受け入れられぬか?ならばグランベル帝国皇帝の名において卿等を叛徒として征伐せねばならぬが」
 セリスはその言葉に対しゆっくりと口を開いた。
「叛徒は・・・・・・アルヴィス皇帝、貴方ご自身です」
 アルヴィスの眉がピクリ、と動いた。セリスは続けた。
「貴方が先の大戦においてランゴバルト公やレプトール公等と結託しクルト王子を謀殺し大陸各地に兵乱起こさせその罪を我がシアルフィに着せ死に追いやった事、アズムール王を暗殺した後帝位を簒奪し各国を滅ぼし虐政と弾圧により多くの罪無き人々の命を奪ってきた事は天下の知るとおりです」
 セリスの弾劾の口調は淡々としている。だがそれが一層非難の強さを増していた。
「その悪を討ち滅ぼし私の祖父と父、そして貴方により自らの命や愛する者を奪われた者達の無念を晴らす為に・・・・・・。アルヴィス皇帝、私は貴方と貴方が帝位に就いているグランベル帝国に対し宣戦を布告します」
「・・・・・・そうか」
 わかっていた事だった。アルヴィスは動ずる事無く儀礼に従い言葉を発した。
「良かろう。卿の申し出を受けよう。只今より我がグランベル帝国と卿等シアルフィは戦争状態に入る」
 言葉を続ける。
「それでは騎士として互いの家紋と武器を見せたい。よろしいか?」
「はい」
 セリスは頷いた。
 双方の後ろに控える軍勢の中からそれぞれの家紋を掲げた大軍旗が高々と掲げられる。両者はそれを見て次の儀礼に移った。
 双方の盟主が互いの武器を見せ合う。これは自軍と敵軍に己が力量を誇示する為に行なわれる剣や斧、槍や弓等は出すだけで良い。杖や魔道書といった魔法ならば手に出して見せなければならない。
 セリスは腰からティルフィングを抜いた。鞘から抜かれた剣が白銀の光を発する。
(パルマーク、やってくれたな)
 アルヴィスは眩いばかりに輝く神器を見て口の端だけで微かに笑った。だがこれは誰にも気付かれなかった。今度はアルヴィスも見せる。ゆっくりと構えを取り両手の平からファラフレイムの赤き炎を出す。
 だが出なかった。アルヴィスの顔に驚愕が走る。慌てて手の平に目をやる。しかしそれでも炎は出なかった。
「やはりな。今までの悪行の報いだ。アルヴィス、貴様はファラ神に見放されたのだ」
 レヴィンが言った。
「な、何っ!?」
 冷徹に言い放たれたその言葉に両軍の将達も驚愕する。皇帝の手から聖なる炎が発せられぬ事に帝国軍の兵士達も動揺する。
「ダーナにおいて十二神が十二聖戦士にそれぞれ授けた神器は十二神の分身。石を持ち己を所有すべき者をそれぞれの血脈の中から選ぶ。力強く志正しく高き者が持てばそれだけその力を引き出す事が出来る。だが神器を持ちし者が邪な心を持ちはじめたならばその力は弱くなりやがては見放され力を出せなくなる。アルヴィスよ、最早貴様は聖戦士ではない」
 そう言うと懐から何かを取り出した。それは夜の様に黒い表紙の魔道書であった。
「貴様に残されたのは暗黒神の血のみ、闇と結託し暗黒神の現身であるユリウスを生み出した貴様が最も忌むべき暗黒神の血だ」
 その書をアルヴィスの足下に投げ付けた。
「使え。貴様が使うに相応しい闇の魔道だ。それも暗殺用のポイズンの魔法だ。どうだ?今まで奸計と謀略に生きてきた貴様の為にあるような魔法だ。喜んで使え」
「レヴィン・・・・・・」
 セリスはレヴィンのあまりにも冷徹な言葉を咎めようとした。しかし彼の緑の瞳の光が冷たくそれでいて怒りで燃え盛っているのを見て沈黙した。
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