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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

5章

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第94話 リースの想い3

 途中で私が中座してしまったものの戦勝パーティー自体は滞りなく終わる。

 一度、自室に戻り護衛メイドであるシアの手を借り、パーティードレスから普段着ている物に着替える。
 さすがに父様と会うとはいえ、女性にはそれなりに身なりを整える時間が必要なのだ。

 支度を終え、シアを連れてお父様の私室へと向かう。
 まずは待合いの部屋に入り、私室を警備する近衛と私生活の世話をするメイド達を一瞥する。

「父様にお取り次ぎを」
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 メイドの1人が扉を開き奥へと消える。

 3分も経たず、メイドは戻って来た。

「リース様お1人でいらっしゃるようにとのことです」
「分かりました。シア、貴女はここで待っていなさい」
「畏まりました」

 シアを待合室に残し、メイドに先行させ私も奥の扉を潜る。
 さらに通路が続き、重厚な扉の前へ。

 メイドのノックし、入室の返答を待つ。

『入れ』
「失礼します」

 メイドに扉を開けさせて、私は父様の私室へと入室。

「お待たせしました、お父様」
「いや、構わん。パーティーが終わってすぐに呼びつけてすまなかった」

 父様は椅子に座る。
 私も促され席に腰を下ろす。
 メイドが再び入室し、私達の前に香茶(かおりちゃ)を置く。

「下がれ。合図があるまで何人たりとも部屋に近づけさせるな」
「畏まりました」

 メイドは一礼すると、部屋を音もなく後にする。
 父様と2人っきりになるのはいつ以来でしょう。

「…………」
「…………」

 沈黙が私達の間を埋める。

 話や用事があるから呼びつけたのではないでしょうか?

 父様は渋面を作り、私を見つめてくる。
 国の未来を憂い顰める苦渋ではなく、1人の親としての感情が強い気がした。

「リース」
「はい、なんでしょう父様」
「オマエは……リュート殿を愛しているのか?」
「なッ――!?」

 予想外の質問に私は思わず席を蹴るように立ってしまう。
 しかし自身の行いが淑女にあるまじき行為だと気付き、咳払いをし改めて腰を下ろす。

「と、父様、突然、変なことをおっしゃるのは止めてください。私だけではなく、リュートさんにも失礼ではありませんか」
「……オマエはまったく、何年経っても嘘が下手だな」
「ぅッ」

 相手は父様。
 百数十年、私の親を務める相手に嘘を突き通す方が難しいのです。

 父様は深い溜息を漏らした。

「オマエは彼らに付いていきたいと思っているのか?」
「……いえ、私はエノールの次期女王。私心を捨てる覚悟はしています」

 これ以上の嘘は意味がないことを悟り、自身の意見を口にする。

「次期女王、か。もしオマエ以外に後継者が居るとしたらどうする?」
「後継者ですか? ルナに……妹の自由を奪ってまで自身の心情を優先したいとは思っておりません」

 私の覚悟が汚されたと感じて、やや語気が荒くなってしまう。
 父様とはいえ、一国の王に対する口の利き方ではなかったと、私は心の中で反省をする。

 父様は気にする様子もなく、席を立つ。
 机から1枚の手紙を取り出した。
 その手紙を私の前へ置き、再び席へと戻る。

「あの、これは……?」
「読むといい」

 私は許可を得て手紙に指を伸ばす。
 差出人は――ララ・エノール・メメア!
 姉様から、父様へ充てた手紙!?

「あの娘が姿を消して、オマエが『記録帳』を見付けた直後、本の間から私が見付けたのだ」

『予知夢者』の姉なら造作もないだろう。

 私は震える指先で手紙を開く。

 書かれている内容は――自分が行方を眩ませたことへの父様に対する謝罪から始まっていた。しかしなぜ姿を消したのか、その理由までは書かれていなかった。

 だが、この書き方なら事件等に巻き込まれた訳ではなく、自身の意思で姿を眩ましたことになる。姉がいまだ生きている可能性が高いことに、素直に喜んでしまう。

 さらに読み進める。
 母が体調を崩し床に伏せているのも病気ではなく、妊娠しているかららしい。
 しかもお腹の子は念願の男の子。
 将来、立派にエノールを継ぐと記されていた。だから、私――リースの好きにさせて欲しいと書かれてあったのだ。

 だが、手紙はさらに続く。
 後半の最後は私に向けて書かれていた。

 もしリュートさんの後を追い結ばれたなら、将来確実に自分達は姉妹で殺し合いをする。
 その覚悟があるなら、自身が望む未来を突き進むといい。

 姉が何を言っているのか、よく分からない。
 正直まだ頭が混乱している。
 私がリュートさんと結ばれると、姉様と姉妹で殺し合いをする?
 俄には信じがたい。

 しかし、姉様の精霊の加護『予知夢者』は絶対。
 私自身がそれを確信し、記録帳に従い祖国を救うためリュートさんをこの地へ導いたのだから。

 つまり、リュートさんと結ばれると、姉様と姉妹で殺し合いをすることになる。

 父様が感情を吐き出すように呟く。

「――この手紙を読んで、オマエが記録帳を持って来た時、私は恐怖に震えた。姉妹で殺し合うなど……。記録帳に書かれている事が起きる度、私が何度苦悩したか」

 父様の声には何十もの苦悩が滲んでいた。
 自身の娘達が殺し合う。
 信じたくないのは当然だ。

「だから私は彼らをリース、オマエから遠ざけようとした。姉妹同士で殺し合いなどさせないために……」

 そのため大蠍ジャイアント・スコーピオンを倒してこいなどと無茶な注文を付けた。

「しかし結局、彼らがこの国難を解決してくれたのは事実。もしリースが彼の元へ嫁ぎたいと言うのなら、私に止める資格はない。世間一般ではハイエルフ族は生涯に1人としか結ばれないなどと言われているが、歴史上、第2、第3夫人を娶ったり、娶った者も居る。無理に気持ちを抑えなくてもいいんだ」

 父様がシアと似たようなことを言うのがなんだか可笑しくて、なんだか口元が弛んでしまう。

 お陰で考える余裕が生まれる。
 私は姉様と殺し合いをしてでもリュートさんへ嫁ぎたいのか?
 ……いや、それは結果でしかない。
 姉は姉の意思があって、この国を出たのだろう。
 私は私の意思で、リュートさんについて行く。リュートさんの想いを、支えていく。
 その結果、2人の道が違い、争うことになっても……私達は後悔しないだろう。

 ハイエルフの寿命は長い。
 けれども、ただ生きるだけでは意味が無いのだから。
 私たちは、自らの足で、前に進まなければならない。

「……私はリュートさん、いいえ、リュートさん達と――一緒に居たいです」

 それが衒い無い私の心だ。

 父様は深く、長い溜息を漏らす。

「やはりそうか……『予知夢者』の予言は絶対。姉妹での殺し合いはやはり避けられないものなのか」
「いいえ、それは違います」
「リース?」

 力強い私の声に、父様が顔を上げる。

「『予知夢者』の予言は絶対かもしれません。姉妹での殺し合いも避けられないでしょう。逆に言えば私は再び姉様と出会うことが出来る。殺し合いを始めても、殺すこと無く終えることだって出来る。……だったら、必ず、姉様を殺さずに五体満足で父様の前に連れて参ります。そして、なぜ失踪したのか? 何をお考えなのか? いくつもの疑問を姉様の口から聞きたいと思います」
「…………」

 劣等感の根源とも言うべき相手。
 自分自身では絶対に勝てないと信じている相手――ララ・エノール・メメア姉様を父様の眼前に連れてくると私は断言したのだ。

 父様の口元が弛む。

「……少し見ない間に強くなったのだな」

 父様は1人呟き、成長を楽しむような光が瞳に宿っている。

「リース、私の愛しい娘。例えどんな素晴らしい男がオマエを嫁に欲しいと言っても、この腑が煮えかえる思いは拭えないだろう。だが、愛しい娘が望むなら認めるしかあるまい。リース……幸せになるんだよ」
「ありがとうございます、父様。私も父様を愛しています」

 私達は席を立ち、正面から抱き締め合う。
 抱擁し合うなんて何年、何十年振りだろう。
 悲しくもないのに涙が溢れ出る。

 先に体を離したのは父様だった。
 やや照れ臭そうに顔を赤くし、扉へと促す。

「さぁ行きなさい。リースの気持ちを伝えてくるといい」
「はい、父様。行ってまいります」
「行く途中でメイド達に言付けを頼む」
「言付けですか?」

 父様は席に座り直すと、拗ねたように続ける。

「テーブルが一杯になるほど酒精を持ってくるよう言いつけなさい」
「ふふふ、過度な酒精は体に毒ですよ」
「ふん、毒で結構。今日飲まねば何時飲めというんだ」

 父様に礼をして私室を出る。
 シアが待つ部屋に戻ると、控えていたメイド達に酒精を運ぶよう言付けた。
 ただし父様が飲み過ぎないよう注意するように言うのも忘れない。

 私は部屋を出ると、足早にリュート様達の私室を目指す。

「姫様、さすがにもう遅い時間です。どんな用件かは存じませんが明日になさった方が宜しいかと……」
「いいえ、今すぐでなければなりません。これは私にとって人生を左右する重大なことですから」

 シアの上申を退け、廊下を急ぐ。
 まるで足に羽が生えたような速度で進んだ。

 リュートさん夫婦に与えられた私室前に辿り着く、呼吸を整え髪や服装をチェック。
 問題無いことを確認すると、扉をノックした。

『はい?』

 まだリュートさん達は眠っておらず、中から人の気配と声がする。
 扉が開く。

「リースに、シア、どうしたこんな夜遅く?」

 目の前にリュートさんが居る。
 それだけで涙が出そうなほど幸福が胸を占領する。

 私は心臓の高鳴りをそのまま言葉にした。

「リュートさん!」
「お、おう、どうしたリース」
「どうか私を妻にしてください。私はリュートさんを愛しています!」

 彼の驚く表情は生涯、墓に眠るまで絶対に忘れられないだろう。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、2月18日、21時更新予定です。

父親にとってのある種の最大の事件の1つは、娘が他の男に嫁ぐことだと思う。
まぁ国王様もその夜は昔、リースが子供時代に手作りしたプレゼントなんかを目の前にして過去を振り返りながら酒を浴びるほど飲んだんだろうなー、とか夢想してしまいます。
そんなこんなで、リースの心情編はこんな感じでー。
+注意+
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