挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

5章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

97/482

第93話 リースの想い2

 今日は家名、紋章決めもそこそこに戦勝パーティーへ向けてのダンスレッスンにとりかかる。
 練習場は開いている大部屋を使用。
 本番では豪奢な衣装を着て踊らなければならないが、今回は練習のため普段着姿で望んだが――その時点で私、ハイエルフ王国、エノールの第2王女、リース・エノール・メメアは後悔していた。

(ああ、私はどうして1人気合いを入れた恰好をしてしまったのでしょう! これでは1人場の雰囲気を読めていない娘って思われる!?)

 リュートさん達は旅に出た時と似た普段着姿なのに、私は城内用のドレスに袖を通す。

(私も一緒に旅をした服装に今から着替えた方が……で、でも一国の姫が城内で旅衣装を着るのも問題あるし……ッ)

「それじゃ時間も勿体ないし、ダンスの練習を始めようか」

 私の葛藤に気付かないリュートさんが、軽い準備体操をしながら切り出す。

「それじゃクリスちゃん! ルナ達はあっちで練習しよう!」
『お手柔らかにお願いします』

 背丈の近い2人は手を繋ぎ合い練習場所を確保。
 ルナは自分とは正反対で快活で、明るい性格が羨ましい……。

(私もお慕いしている人に屈託無く『好き』と言えたらいいのですが……。って! あの夜に未練は断ち切ると決めたではありませんか! いつまでもウジウジと引き摺るのは止めないと!)

 私はぶんぶんと首を振り、後ろ暗い考えを振り払う。

「どうしたリース? 首なんて振って頭でも痛いのか?」
「い、いえ、なんでもありません! お気になさらないでください!」

 ああ、忘れようと思った直後なのに、私の身を案じて声をかけてもらうだけで胸が高鳴るなんて!
 自分の頬が火照るのを自覚してしまう。
 ニヤケそうになる口元を無理矢理押さえ込んだ。

「では、リュート様のダンスの手ほどきはわたくし! リュート様の一番弟子にして、右腕、腹心のメイヤ・ドラグーンがお相手いたしますわね!」
「……では、私はスノーさんに手ほどきを」

 ニヤケ顔から一転、悲しみで崩れそうになる微笑みを強引に保ちながら、スノーさんへ向き直るが、

「メイヤちゃんが、リュートくんに教えちゃ駄目」
「な、なんでですか!?」
「なんか嫌だから。リースちゃん、リュートくんにダンス教えてもらってもいいかな? リュートくんもそれでいいよね」
「ああ、オレはそれで構わないけど」
「はい、それじゃ決まり。メイヤちゃんはわたしに教えてね」
「そんな~」

 メイヤさんはスノーさんに引き摺られて行く。
 スノーさんが一度振り返り、意味深な視線を向けてきた――もしかして、彼女は私の気持ちに気付いている!?
 でも、あのスノーさんならありえそう……。
 彼女は妙に勘が鋭い所があるから。
 けど、だとしたらわざわざ私とリュートさんをくっつける意味って――。

「リース」
「ひゃいッ!?」

 リュートさんに声をかけられ、思わず変な返事をしてしまう。
 あうぅう……ッ。絶対に変な娘って思われちゃった!

「ご、ごめん、驚かせちゃったみたいで」
「い、いえ、私こそ変な声を出してすみません。そ、それでは私達もダンスの練習を始めましょうか」
「だな。それじゃ僕は何をすればいいんだ?」
「えっと、それでは――」

 私達は手を取り合いダンスの練習を始める。
 指と指が触れるだけで、頬が熱くなるのが分かる。心臓が高鳴る。

 極僅かな時間だが、リュートさんと手を取り合い踊ることができた。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 戦勝パーティー当日。
 パーティーは内輪向けで、大広間にはハイエルフ族のみが出席している。
 皆、国を救ってくださったリュートさん達に感謝し、次々挨拶をして行く。

 挨拶が終わると、早速ダンスが始まる。
 最初はスノーさんが、次にクリスさんがリュートさんと手を取り合い音楽に合わせて踊る。
 練習の成果のお陰で3人はそつなく踊りきった。

 私はそんな3人の姿を眩しそうに見つめる。
 自分には決して届かない光。
 まるでリュートさん達と出会う前、姉様への劣等感で凝り固まった頃のような暗い気持ちになってしまう。

「リース?」

 踊り終わって戻って来たリュートさんが驚きの表情を作る。

「ど、どうした涙なんて流して、どこか痛むのか?」
「えっ、涙……? ッゥ、す、すみません。どうやら目にゴミが入ったようで。ご心配をお掛けしてすみません」

 私は指摘され気付く。
 慌ててハンカチで目元を隠した。

「少々、お化粧を直しに失礼します」

 ホストとしてはよろしくないが、私はその場に居ることが出来ず理由を付け会場を後にする。
 涙が後から後から溢れ出て、ハンカチを湿らしていく。

(あの夜、全部、気が済むまで涙を流したはずなのに……ッ)

 ハンカチで目を押さえ、歩いていたせいで転んでしまう。
 暗い冷たい廊下に、1人手を付く。
 自分のドジが恨めしい。

 大広間から聞こえてくる談笑、穏やかな音楽――その楽しげな輪の外で、私は1人床へと這い蹲っている。
 まるでこの世界で、自分1人だけなのだと錯覚するほどの孤独。

「ふふふ、無能な傾国姫にはお似合いですね……」

 あまりに惨めな自分に、自嘲してしまう。

「なんだリース、また転んだのか? 相変わらずドジだな」
「ッ!? り、リュートさん、ど、どどうして!?」

 最初、『幻聴!?』と疑ったが顔を上げると、先程別れた筈のリュートさんが側に立っていた。彼は苦笑し、手を差し出す。

「ほら、いつまで座ってるつもりだ。せっかく似合ってるドレスが汚れちゃうぞ」
「あ、ありがとうごじゃいましゅ……ッ」

 あうううぅ! 私の馬鹿! どうしてお礼の言葉を噛むの!?
 リュートさんはさらに苦笑の度合いを深め、私の手を取り力強く立ち上がらせてくれる。
 勢いが付き、私は思わず彼の胸へと抱きついてしまう。

 リュートさんの手が私の肩を抑える。
 体全体に広がる彼の体温。匂い、筋肉。
 無意識に私は彼の服をギュッと握り締めてしまう。

 あぁ、私の勇者様――

(永遠にこの時が続けばいいのに)

 もしくはこのまま時が止まってくれたらいい。
 しかし、何時までも妻帯者である彼の胸の中に居る訳にはいかない。

 リュートさんから体を離し、自身の足でちゃんと立つ。

「……ありがとうございます。ですが、どうして私の後を?」
「そりゃ大切な仲間のリースが、あんな顔して出て行ったら心配するに決まっているだろ」
「ッ!?」

 彼は『何を当たり前のことを』と当然のように言う。
 先程まであった孤独感が微塵も無く消失し、歓喜のうねりが胸中を支配する。
 愛しい人、愛しい人、愛しい人……ッ!

 忘れようと涙を流し、枕を濡らしても、胸から決して引かない熱。
 思わず全てを投げ出し、彼の腕の中へ飛び込もうとした瞬間――私の動きを止める人物が姿を現す。

「……2人ともこんな所で何をしている?」
「お父様」

 お父様――ハイエルフ王国、エノール国王が近衛を連れて立っていた。
 お父様も大部屋を出る私に気付き、後を追いかけてきたらしい。

「私の気分が少々悪く、リュートさんに付き添って頂いていました。もう平気です」

 頭から冷や水をかけられたように冷静な思考を取り戻した私は、適当な誤魔化しを口にする。リュートさんも察したのか何も言わず態度で示す。
 旅をし、国の危機を一緒に救っただけあり、連携は慣れたもの。

 お父様は私達を数度、見比べた後、納得したのか追求はしなかった。

「では広間に戻りなさい。ホスト役の1人が中座するなど失礼だからな。娘が迷惑をかけた」
「いえ、迷惑など」

 リュートさんは失礼にならないよう丁寧に答える。
 さらに気を利かせて、先に大広間へと1人戻ってしまう。
 私はその背を残念がる瞳でつい追う。

「…………」
「どうかなさいましたか、お父様」

 リュートさんを目で追っていると、横から強い視線に気付く。
 お父様が側にいることをすっかり忘れてしまっていた。
 私は遅まきながら態度を取り繕う。

「……リース、パーティーが終わったら部屋に来なさい」

 お父様はなにかを悟ったような表情でパーティー会場へと戻っていく。

(お父様の私室に?)

 滅多にない事態に困惑する。
 もしかしたら先程の態度で、リュートさんに横恋慕していることに気付かれ釘を刺されるのかもしれない。

(……そんなのもう諦めているのに)

 私は拗ねた気持ちで、お父様の後へ続いた。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、2月17日、21時更新予定です。

次でリースの話は終わりです。
お付き合い頂ければ幸いです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ