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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

5章

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第88話 偽装

 オレは手にしていた割れた注射器を、空になったマガジンポーチに入れておく。後程、色々調べるためだ。

「ッッッ……」
「リュートくん、大丈夫?」

 一息つくと思い出したように体中が痛む。
 スノーやクリス、ルナ、サーベルウルフのレクシが駆け寄ってくる。
 スノーの治癒魔術のお陰で傷はすぐに消えた。

「ありがとう、スノー。ルナも怪我は無いか?」
「手足に手錠の痕は付いちゃったけど、それ以外は大丈夫。乱暴も、酷いこともされなかったから」
「そっか、無事で本当によかったよ」

 オレは安堵の溜息をつく。
 見た限り暴行を受けた様子もなく、彼女はいつも通り快活に答える。精神的問題も今のところなさそうだ。

「それじゃ無事ルナも助け出せたし、飛行船に戻ろう。首輪や手錠は船に戻ってからメイヤに外してもらうから、少しそのままで我慢してくれ」

 サーベルウルフ、レクシの背にはクリスとルナを乗せる。
 オレとスノーは、肉体強化術で補助した身体で飛行船まで戻る予定だ。



 飛行船に戻ると、メイヤに頼みすぐ手錠と魔術防止首輪を外してもらう。
 その間、オレとスノー、クリスは居間で待つ。
 サーベルウルフのレクシも居間の隅で大人しく伏せている。

 飛行船の行く先はもちろん、ハイエルフ王国エノールだ。
 もしかしたらすでに結界石が破壊され、封印が解けているかもしれない。



 メイヤが手錠と魔術防止首輪を外したルナと一緒に戻ってくる。
 彼女はまず最初に、オレ達へ救出を感謝し、頭を下げた。

「助けて頂き誠にありがとうございます。ハイエルフ王国、エノールの第3王女、ルナ・エノール・メメア。このご恩は一生忘れません」

 まるで本物の礼儀正しいお姫様のように謝辞を述べ、頭を下げる。
 やっぱり実は偽者とかってオチじゃないよな?

「でも、本当に無事でよかったよ。これもクリスが馬車を足止めしてくれたお陰だな」
『お兄ちゃんが、私を有効射程内まで近づけさせてくれたお陰ですよ』
「では、あの魔術液体金属で作ったネットで上手く偽装出来たのですね」

 メイヤが嬉しそうに手を合わせる。

『偽装』――他の何かと間違わせるように、外観を変えることを指す。
 カモフラージュとも呼ぶ。
 元はフランス語で『~を誤魔化す・隠す』という意味。
 第一次世界大戦頃から英語に取り入れられた言葉だ。

 オレ達はルナを輸送する護衛団に近づくため、一度飛行船へと戻った。
 飛行船へ戻って魔術液体金属で、メイヤと協力して偽装するための金属製ネットを作ったのだ。

 そして輸送護衛団の進路を先回り。
 金属製ネットに草を貼り付け、偽装させたクリスを有効射程内に配置した。

 ネットだけではなく、クリスは嫌っていたヘルメット、M700Pにも偽装のため草を貼り付けた。念には念を入れ顔にはフェイスペイント(自衛隊ではドーランという)を塗り徹底。

 現在はすでに濡れタオルで顔についたペイントを落としている。

 そんなクリスにルナが抱きつく。

「本当に助けてくれてありがとうクリスちゃん! まるで絵本に出てくる勇者様みたいに格好良かったよ! クリスちゃんはルナの勇者様だよ!」

 クリスはルナの賛辞を浴びるが、どこか不満そうだった。

『ルナちゃんが無事でよかったです。でも、私的には自身の力不足を実感しました』

 クリスがオレへと向き直る。

『リュートお兄ちゃん、このM700Pは素晴らしいスナイパーライフルですがもっと弾数を増やしたのが欲しいです。もう少し弾数があったら、ルナちゃんをもっと安全に援護出来たのに』

 それって、完全に複数のテロリストに人質を取られた特殊部隊員スナイパーの考え方じゃね?
 PKM――汎用機関銃ジェネラル・パーパス・マシンガンの件があって7.62mm×54Rを制作した。クリスが望んでいるんだから、マジでSVD(ドラグノフ狙撃銃)を作るのもありかもしれない。

「了解。それじゃ今回の案件が片付いたら手を出してみるよ」
『ありがとうございます! リュートお兄ちゃん』

 クリスはオレの返答を聞き、嬉しそうに笑顔を浮かべる。

 オレ達はハイエルフ王国、エノール到着まで休息することにした。

 オレは与えられた自室で、私服に着替え持ち帰った注射器の残骸を取り出す。

 自滅したアルセドを思い出す。
 やり返せた達成感より気味の悪さに支配される。


「やっぱりオレ以外にも前世の――地球(あの世界)の記憶を引き継いだ奴がこの異世界に居るのか?」

 居るとしたらそいつは一体何をやるつもりだ?
 オレ達の知らない場所で、何かが大きく動いている気がする。
 そんなべっとりとした不安感が胸中に張り付き、拭えなかった。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



「な、なんだありゃ!?」

 オレ達は誘拐犯達からルナを助け出し、急いでエノールへと戻る。
 異変に気付き、甲板に出るとウッドキャッスルから煙が上がり、飛翔する一体の影が姿を現す。

 トカゲの頭に体、鶏の羽、ドラゴンの尻尾を持つ魔物だ。
 あれは記録帳に記されていたバジリスクではないか!

 つまり、結界石は預言通り破壊されてしまっているらしい。

 湖で羽を休めていた鳥達が、バジリスクに驚き飛び立つ。
 バジリスクは一睨みで鳥の群れを石化。
 音を立て石化した鳥達が湖へと落下していく。

 このまま奴を放置すれば湖外に住む人々に多大な被害が出る。
 放置する訳にはいかない。

 最初の予定では飛行船を止めて、湖外で一泊。
 翌日、ウッドキャッスル内に居るリース達にルナの無事を伝えるつもりだった。

 だが、結界石が予言通り破壊されているなら、そんな悠長なことは言って居られない。オレ達は飛行船を止めず、このまま城へと突き進むことに決めた。

 その場合、最も障害になるのが、こちらに気付き威嚇しているバジリスクだろう。
 アレをどうにか排除しなければ、城へ近づくことしら出来ないだろう。
 リース達が危険にさらされているのに、どこぞへ飛び去るのを待つ訳にはいかない。

 そこでクリスの登場だ。

 彼女はM700Pを手に、『7.62mm×51 炸裂魔石弾』を5発弾倉へ詰めていく。

 飛行船の先頭へ立ち、吹き付ける風に髪を遊ばせる。

「クリス、準備は終わったか?」

 妻は頷き、前を見据える。
 飛行船は真っ直ぐ舳先ごと、バジリスクに激突するように真っ直ぐ突っ込む。

『ピイィイィィィィィィイイイィィイッ!!!』

 耳に響く嘶き。

 バジリスクが飛行船に喧嘩を売られていると感じたのか、逃げずに激突する勢いで突撃してくる。

 口だけでクリスをぺろりと丸呑み出来るほどでかい。
 なのに彼女はバジリスクが急速に接近してもまったく動じる様子がまったくない。

 彼女は集中力を高めるため、オレが教えた『Rifleman’s Creed《ライフルマンの誓い》』を歌い出す。

『これぞ我がライフル。世に多くの似たものあれど、これぞ我唯一のもの《This is my rifle. There are many like it, but this one is mine》』

『我がライフルこそ、我が親友、そして我が命。我は己の命を統べるかのようにそれを意のままとする《My rifle is my best friend. It is my life. I must master it as I must master my life》』

『我がライフルは我無くしては無意味。ライフルを持たぬ我も無意味。我は正しくライフルを解き放つべし。我は我を殺めんとする敵よりも正しくその身を射貫くべし。我は敵を撃つべし、敵が我を討つその前に《My rifle, without me, is useless. Without my rifle, I am useless. I must fire my rifle true. I must shoot straighter than my enemy who is trying to kill me. I must shoot him before he shoots me. I will……》』

『我がライフルと我は知る、この戦争にて大切なものは、我々が放った弾丸、我々が起こした爆発音、我々によって作られた煙、その何れでも無いことを。我々は理解する――それは数発の命中であるということを《My rifle and myself know that what counts in this war is not the rounds we fire, the noise of our burst, nor the smoke we make. We know that it is the hits that count. We will hit……》』

『我がライフルは我と同じく人である。それは我が命そのもの、そして我が兄弟。我は、その弱さ、その強さ、その部品、その付属品、その照準器、そして銃身――それら全てを知るであろう。我は我自身をそうするように、ライフルを清潔にし万全に保ち、我らは互いにその一部となる《My rifle is human, even as I, because it is my life. Thus, I will learn it as a brother. I will learn its weaknesses, its strength, its parts, its accessories, its sights and its barrel. I will keep my rifle clean and ready. We will become part of each other. We will》』

『神の前に、我は我が信仰を誓う。我がライフルそして我は我が家の守護者なり。我々は敵を打ち倒す者、我が命の救済者なり《Before God, I swear this creed. My rifle and I are the defenders of my family. We are the masters of our enemy. We are the saviors of my life》』

『そう、勝利は我々のもの。そして我々の勝利の後、敵なき世界が訪れるであろう《So be it, until victory is ours and there is no enemy》』

 夜、飛行船の舳先で闇を切り取ったような黒いスナイパーライフルを抱えて、クリスは天使の歌声で独奏する。
 風に踊る金髪。
 冷たい外気で赤くなった頬。

 その全てが名画のように美しい。

「すぅー」

 微かに聞こえる呼吸音。

「はぁー」

 クリスがM700Pを構える。
 バジリスクとの距離が500メートルを切ろうとしていた。

 ――ダンッ!

『7.62mm×51 炸裂魔石弾』はクリスの思い描いた射線をなぞり、石化の魔眼を使いかけていたバジリスクの眼球を貫く。
 着弾の慣性に従い弾薬(カートリッジ)内部に仕掛けられていた撃鉄が雷管へ衝突。魔石を破裂、暴走させ内部爆発を引き起こす!

『ピイィ! ……イィィィ』

 バジリスクは頭蓋骨内部から爆殺され目、鼻、口から大量の血液が吹き出る。
 羽ばたく力を失い湖へと落下。
 大量の水を巻き上げた。

「格好いいいいぃいい! さすがルナの勇者様!」

 様子を窺っていたルナが、感激のあまりクリスへと抱きつく。
 彼女はルナに褒められ、抱きつかれ、照れて頬を赤くする。

「よし! それじゃこのまま城まで突撃するぞ! メイヤ、例のものをここまで持ってきてくれないか? スノーはメイヤの手伝いをしてくれ」

「了解、リュートくん!」
「ふっふっふっ、ついにわたくしが主導で制作したアレがお披露目されるんですわね!」

 2人に声をかけるとスノーは元気よく、メイヤは不気味な笑いを残し船内へと戻っていった。
 飛行船は真っ直ぐ城上空へと突入する。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、2月12日、21時更新予定です。

最近は本当に寒いですね。
そのせいか最近は鍋が美味しいです。
え? もちろん1人で食べてますが何か問題でも?
別に1人用の土鍋とか今はあるし、1人なら他の人を気にせずマイペースに食べられるし。
いいよね、1人鍋!
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