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第62話 鉱山都市ベスタ、到着

 オレ達は双子魔術師のアジトである洞窟前で、ゴムゴさん達を呼びに戻ったシアを待っていた。

 シアには彼らに倒したことを信用させるため、双子魔術師が付けていた装飾品&襲われた商人達が扱っていた一部品物を持たせて向かわせた。


 倒した魔術師達は縛り上げ、目隠しをして眠らせている。

 念のため2人を引き離し、別々の場所に拘束している。

 助けた女性は心身とも疲労し、今はスノーの膝枕で眠っていた。


 彼女は女性に膝を貸しながらも、四方に耳を欹てている。

 クリスもスノーのように周囲を警戒していた。


 オレは周辺警備を彼女達に任せて、倒した大鬼(オーガ)の報酬素材となる牙を回収する。

 ナイフを手に1匹ずつ、長く伸びた犬歯を根元から切り落としていく。


 AK47の7.62mm×ロシアンショートで砕けてしまい回収出来ない物もあった。


 一通り取り終わり、スノー&クリスの元へ戻る。

 牙は革袋に入れて腰からさげておく。

 オレも周辺警戒に加わった。


「しかし、予想以上に楽に敵を倒すことが出来たな」


 オレは周辺警戒をしながら、雑談の話題を振る。

 今回、チームとして本格的に戦ってみた感想を告げた。


「もしかしてオレ達、かなり強い?」

「うん、相当強いと思うよ。特にクリスちゃんのスナイパーライフルは魔術師にとって脅威だよ。魔力をまったく感じず、遠距離から、即死出来るだけの攻撃力があるなんて。魔術師殺しとしてはほぼ必殺レベルだね」

『リュートお兄ちゃんも、スノーお姉ちゃんも強いです』


 クリスは照れながらミニ黒板に文字を書く。


 確かに今現在でも、そこそこの数であれば、大抵の相手は楽に倒すことが出来る。

 しかし個人的にはもう少し火力が欲しい。


(今回のクエストが終わったら、分隊支援火器でも作ろうかな)


 そんなことをぼんやり考えていると、シアが角馬を連れて戻ってくる。


「シア、ご苦労様。ゴムゴさん達の様子はどうだった?」

「若様が持たせてくれた荷物のお陰で簡単に信用してくれましたよ」

「そりゃよかった。ゴムゴさん達はもうそっちの広場に来ているのか?」

「はい、一緒に来ましたから。双子魔術師を倒したことに酷く驚いていましたよ」


 シアは報告を聞いた彼らの顔を思い出したのか、1人『ニヤリ』と楽しげに口元を吊り上げる。

 よっぽど楽しかったらしい。

 オレも出来れば見たかった。


「了解。それじゃ待たせるのも何だしさっさと行くか」


 女性を起こし、歩いてもらう。

 倒した魔術師2人組は荷物のように馬の背に乗せた。


 シアに大鬼(オーガ)の死体を焼き払ってもらってから、ゴムゴ達が待つ広場へと向かう。


 助けた女性が、危機を知らせた商人と顔を合わせると泣き崩れた。

 知り合いの顔を見て安心したのだろう。


 彼女の汚れた衣服の代わりに体格が近いスノーのを渡す。

 体を拭くためのお湯、タオルも手渡し、オレ達の馬車で着替えるよう勧める。


 商人が謝礼金を払おうとしたが辞退した。

 自分達は謝礼金が欲しくて動いたわけではない。


 また彼らの荷物はまだ洞窟前にあるが、一時的に諦めるしかなかった。

 運ぶための馬車や人員などが無いからだ。


 商人は一度、鉱山都市ベスタにある自宅へと戻るらしい。

 助けた女性はとりあえずうちの馬車に乗せて移動させることになる。

 ここから鉱山都市まで、約1日。

 スペースも余っているし、うちならオレ以外女性陣しかいないから彼女も身構えることはないだろう。


 だが、さすがに今から出発する訳にはいかず、今日は予定通り野営することになった。

 念のため双子魔術師はそれぞれ別の場所に縛り、周囲を魔術で作った土壁で覆っておいた。さらに魔術で意識を深く眠らせる。

 これで約2日は起きないだろうとのことだ。


 ゴムゴにはいつも通り、自分達も野営の夜番をすると言っておく。

 下手にシミルのようなタイプに貸しを作ると後々厄介だからだ。


 シミルはわざわざこちらの陣営まで来て、『ふん、噂で聞いたより大したことなかったみたいだな。あの程度の奴ら俺達だって倒せたさ』と今更な負け惜しみを言ってきた。


 オレ達は相手にするのも面倒で適当に聞き流す。




 そして翌日。

 オレ達は無事、鉱山都市ベスタへと辿り着くことが出来た。




▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼




 鉱山都市ベスタはその名の通り、鉱山採掘の街だ。

 多種多様な鉱石を採掘しているらしく、所々で立ち上る黒い煙が上がり、筋肉が発達した男達と多くすれ違う。


 到着したのが夕方だったため、馬車預かり所に立ち寄り宿屋に直行したいが――そういう訳にもいかない。


 まず助けた女性と商人は、2人ともこの街で別れた。

 それぞれ知り合いが居るため、そちらを頼るらしい。

 最後に何度もお礼を告げられた。


 ゴムゴ達とは3日後の朝、馬車預かり所前で落ち合う約束をして別れる。


 次に捕らえた双子魔術師を冒険者斡旋組合(ギルド)へと引き渡しに向かう。

 彼らに冒険者斡旋組合(ギルド)が賞金を懸けているからだ。


「リュートくん、わたしが1人持とうか?」

『私も手伝います』

「いえ、奥様方。ここは奴隷のボクにお任せください」


 嫁&シアが好意から2人を運ぶ手伝いを申し出たが、


「大丈夫、オレ1人でこいつらぐらい運べるさ」


 大切な嫁&女性であるシアに、こんなクズ達を抱きかかえ運ばせる訳にはいかない。

 オレは男の意地とばかりに慣れない馬車移動で疲れた体に鞭を打つ。

 肉体強化術で縛った縄を片方ずつ持ち無理矢理持ち上げ移動する。


 幸い2人は眠らせているため暴れず、冒険者斡旋組合(ギルド)も預かり所から近かったため魔力切れが起きる前に辿り着くことが出来た。


 冒険者斡旋組合(ギルド)の責任者の元、人相と特徴を確認。

 やはり捕まえた男達は、有名な双子魔術師で間違いない。

 1人当たり金貨100枚――約1千万円の賞金首だ。


 オレ達は一気に金貨200枚の大金を手にする。


 レベルⅡとⅢの冒険者がレベルⅣのクエストをこなしたが、突発的だったためその辺は黙認される形になる。


 慣れない旅移動と野営、見張り番――シア以外のオレ達は疲れに負けて、その日は冒険者斡旋組合(ギルド)側にある中の上級の宿へと泊まった。

 シア、オレとスノー&クリスの2部屋で宿を取る。


 夕食をオレ達の部屋で摂り終えると、その日はすぐに別れて眠りについてしまった。

 久しぶりにスノー&クリス――クエストに旅立ってから初めて可愛い妻2人と1つ下の屋根に泊まったが、流石に夜励む元気はなかった。


 オレはスノー&クリスに挟まれベッドに倒れこむ。腕の中に居る愛しい妻達の温もりと甘い匂いに安らかな眠りが加速する。

 結局、オレ達は翌日の昼頃までこんこんと眠り続けてしまった。




ここまで読んでくださってありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!

明日、1月17日、21時更新予定です。

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