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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

エピローグ

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第435話 軍オタが魔法異世界したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!?

2分割して連続更新する予定でしたが、一つに纏めた方が読みやすかったので一つに纏めました。

また活動報告をアップしたので、ご確認頂ければ幸いです。
 オレと妻達が結婚式場へと辿り着く。

 結婚式場は一部以外、ほぼ前世地球にある石造りの教会だ。
 建物天辺には鐘があり、左右に大きく開く観音扉、窓には透明度の低いガラスがはめ込まれ、陽光を鈍らせ神秘的に取り入れる作りになっている。
 建物にはココリ街を見回すことができるバルコニーが設置されていた。
 ここだけが前世の教会とは違う点だ。

 それ以外は十字架が無いだけでほぼ地球にある教会に近い形をしている。

 この建物は天神教会のものか?

 否。

 オレとメイヤが資金を出し、結婚式を挙げるためにわざわざ作り出した建物である。

 なぜわざわざ建物を建設したかというと……。

 結婚式を挙げる際、問題になったのは『どこで式をあげるか?』だ。

 ココリ街に天神教会施設は無い。
 また今回の結婚式で天神教を頼ることはできなかった。

 PEACEMAKER(ピース・メーカー)は二度とちょっかいを出されないように、天神教会本部を迫撃砲で攻撃しまくったり、トップ陣を狙撃&爆破(脅し)した。
 今更どんな顔で『式を執りおこなって欲しい』と言えるだろうか?

 第一、ココノの命を狙い、巫女や巫女見習いを道具扱いし、アスーラの名を貶めていた天神教を頼りたくなかった。
 そこでオレとメイヤが資金を出し合い新たな結婚式場を建設したのだ。

 金に糸目をつけず魔術師まで導入して建設したため、驚くほど短期間で建てられた。

 また今回の結婚式を『最後の魔王』アスーラの汚名返上、名誉挽回の場にする切っ掛けにしたいと考えている。
 アルトリウスも言っていたが、この世界は五種族勇者の伝説が根強い。

 真実をいきなりぶちまけても混乱を大きくするだけだ。
 混乱を抑えるためにも、揺るやかな意識変化が望ましい。
 今回の結婚式は、その意識変化にもってこいの場である。

『黒毒の魔王』を倒した勇者、天神化したランスを倒し『魔力消失事件』を解決した英雄達の結婚式。
 五種族勇者の伝説、物語などを過去に追いやるには十分である。

 さらにアスーラをこの結婚式会場の女神扱いにすることで、『最後の魔王』アスーラのイメージを払拭する予定だ。

 シナリオはこうである――オレ達が天神化したランスと戦った際、彼から世界の真実を聞かされた。
 天神から神法(しんぽう)を盗み出した6大魔王のうち、『最後の魔王』は実際は裏切っていなかったのだ。
 他5大魔王に騙され、天神を裏切るという大罪の片棒を担がされた。その事を悔やみ、『最後の魔王』アスーラは勇者達とともに戦い他魔王を倒した。
 魔王を倒す際、力を使い切った魔王――否、女神アスーラは魔物大陸で世界の平和を願いながら自らを永遠に封印。
 彼女が平和を願い自らを封印しているから、魔物達の凶暴性等はあの程度ですんでいる。

 いつしか長い時が経ち、情報伝達の齟齬で女神アスーラは、『最後の魔王』として恐れられてしまった。

 ランスを倒した後、感銘を受けたオレ達は女神アスーラの献身に涙し、彼女を讃える建物を建設。
 女神アスーラ石像の前で、自分達の結婚式をおこう。

 こういうストーリーである。

『なんでランスが律儀にアスーラの話をするんだ?』とか、『戦っている最中に歴史話をしていたのか?』などツッコミ所は多いが、ネットやテレビ、ラジオがある世界ではない。
 勇者で、英雄のオレ達がそう言っているのだ。
 当事者以外は誰も批判の声などあげられない。

 五種族勇者がやったことを、そのままマネしているだけともいえる。

 今回の結婚式には大勢の人々が集まり、この話をすでに耳にしている。
 以後、オレ達がおこなった会場や結婚式(当然パレードは除くが)を一般市民にも解放。
 将来的にはココリ街だけではなく世界的に、女神アスーラ伝説とともに結婚式会場を建設し広めていく予定である。
 そうすれば五種族勇者に代わる新たな伝説となるのは遠い話ではないだろう。



 オレと妻達は馬車を降りると建物内へと入る。
 一緒にメインの式場へと行くわけではない。
 妻達の準備もあるため、一度内部で別れる手筈になっていた。

 ――準備が整ったとの知らせを受けると、オレは先に式場へと足を踏み入れる。
 式場にはすでに親族、関係者が集まっていた。
 一段高い壇上には甲冑姿のガルマと、さらに奥には土台の上に置かれた女神アスーラの石像がある。

 女神アスーラの石像は幼女姿ではなく、魔物大陸で封印されていた時に見た大人バージョンだ。
 魔王的角を残しつつ、マリア像のごとく聖母的雰囲気も醸し出すよう作られている。
 著作権・デザイン的にも……アスーラがココリ街到着後チェックしてもらったが、本人は大変喜んでいたから問題はない。

 次になぜガルマが派手になりすぎないよう気遣いつつ、神秘性が漂う甲冑姿で壇上に立っているかというと、彼に神父役を任せたからだ。

 今回の結婚式は前世日本のドラマやアニメ、漫画を参考にした。

 最初は女神繋がりでエル先生にお願いした。
 新郎新婦に祝福を与える女神役としてこれほど相応しい人物はいないが、本人に断られてしまう。

 話を聞きつけたアルさんが名乗りを上げたが速攻で却下。
 だれが好きこのんで邪悪極まる邪神の前で誓いをたてるか。
 逆に呪われそうである。

 本人であるアスーラも考えたが、幼女姿のため見た目に問題有り。
 旦那様も悪くはないのだが……他にやってもらいたいことがあるのと、女神ではなく筋肉神に誓うことになりそうなので却下した。

 結果、エル先生の旧友で、PEACEMAKER(ピース・メーカー)をココリ街へ連れてきた張本人であるガルマに依頼したのだ。

 ガルマは背が高く190センチ近くある偉丈夫で、髪は短く髭を生やしている。髪と髭は白く、片目を眼帯で覆っていた。
 見た目は完全に元世界だったら大佐とか呼ばれていそうな軍人だ。
 厳ついが見た目は渋い初老男性で、甲冑を着せると女神アスーラを護る騎士に見える。
 見栄えに説得力があり、オレ達をこのココリ街に連れてきた当事者であるガルマは神父役として適任だった。

 ガルマはルナ達が新・純潔乙女騎士団に入団してから暫く後に、退団。
 以後、娘夫婦と一緒に暮らして孫達の面倒を見ていた。
 神父役を依頼するとオレ達の結婚を祝福し、二つ返事で了承してくれた。

 神父役のガルマの前まで、一人移動する。
 式場に集まった親族、関係者達から拍手が送られる。

「!?」

 移動途中、オレは思わず悲鳴をあげそうになった。
 なぜなら親族席に受付嬢さん、マーちゃんとロン・ドラゴンが座っていたからだ!

 受付嬢さんは竜人種族の伝統衣装であるドラゴン・ドレス姿で、首に小型化したマーちゃんを巻いていた。
 マーちゃんの目が浜辺に打ち上げられた魚のように死んでいるのは気のせいだろうか?
 ロンは謁見の間で見た王族の衣装を着ていた。

 式場は長椅子が左右に配置されているため、詰めれば多数の人数が席につける。
 しかし、今回は親族と関係者のみとしたため、席自体はかなり余裕があった。
 なので受付嬢さんとロン・ドラゴンが増えた程度で、どうこうなる訳ではないが……。
 二人に結婚の話はいかないようメイヤパパことハイライ・ドラグーンに釘を刺しておいたのだが、どうやら失敗したようだ。

 友人席に座っているリズリナ・アイファンは『自分、無関係です』と言いたげに絶対、彼らへ視線を向けないよう逸らしている。
 今更受付嬢さん達をどうこうできる人材はいないようだ。

 悲鳴を堪えつつも、なるべく真面目な表情を取り繕いガルマの元へと歩ききる。

 オレはなんとか堪えることができたが妻達は大丈夫だろうか?

 胸中で心配していると、合図とともに新婦達が式場へと入ってくる。

 最初はスノーだ。
 父であるクーラさんと腕を組みオレの元へと歩いてくる。
 クーラさんは今まで見たことがないガチガチに緊張した表情で歩いていた。左右の足が同時に出ないのが奇跡のレベルである。
 一方、スノーはブーケを手に、幸せそうな微笑みを浮かべ歩いていた。

 スノーは受付嬢さん達に気付くも華麗にスルー(後日、聞いた話だが、ハイライさんが受付嬢さん達参加を阻止できなかったことを入場前に告げていたため嫁達は驚かなかったらしい)。

 二人がオレの前まで来ると、クーラさんからスノーの手を取る。

「娘を頼む」
「はい、任せてください」

 緊張しつつもクーラさんが絞り出すように告げた。
 オレはスノーの手を取り、彼の瞳を真っ直ぐ受け止め頷く。

 続いてクリスがダン・ゲート・ブラッド伯爵と腕を組み姿を現す。

 旦那様はクーラさんとは違い緊張など微塵もせず、堂々とした態度で歩いてくる。
 娘の歩幅に合わせ、さらにクリスが履き慣れていないハイヒールのため、そのフォローも何気なくしていた。さすが紳士。全く隙がない。

 その紳士さを学ぼうと魔術騎士団副団長、ウイリアム・マクナエルが食い入るように旦那様へと魅入っていた。
 彼の隣にはまるで妻のようにユミリア皇女が座っている。
 仲がよさそうで実にいい。

 気になることといえば、またさらにウイリアムの体が一回り大きくなっている気がするのだが……。

 一方、ギギさんはガチ泣きしていた。
 ソプラ、フォルンをエル先生に預けて、手で顔を覆い俯く。
 クリスの花嫁姿に感動しすぎて直視できないようだ。
 頑張って見ようとするが、一瞬、その姿を目に入れただけで滂沱の涙を流してしまう。

 隣に座るエル先生が困ったような微苦笑を浮かべていた。

 旦那様や奥様は余裕の態度だというのに……。
 本当にギギさんは昔から血縁者以上にクリスに弱いな。

 クリス、旦那様が辿り着く。

「クリス、リュートよ。皆で幸せになるのだぞ」
「旦那様……クリスや他妻達と一緒に必ず幸せになります」
「(コクリ)」

 クリスも笑顔で頷く。

「はははははっ! うむ、大丈夫そうだな!」

 旦那様は相変わらず豪快に笑うと親族席に座っている奥様の隣へと戻る。
 ギギさんは再度顔を上げるが、オレとクリスが手を繋いでいる姿を見て再び陥落。
 押し殺した嗚咽が式場に響く。

 ギギさんがあまりに感動しているため、オレとクリス、スノーや他皆も含めて苦笑を作ってしまう。

 さて続いてはリースだ。

 彼女の父親は政治的に参加できないため、親族であるルナが担当するかと思っていたが――リースの希望でシアに任されることになった。

 リースがブーケを手にメイド服姿のシアの腕に掴まり歩いて来る。

 リースは幸せそうな笑みを浮かべる一方、シアは感動のあまり今にも泣き出しそうになっていた。
 あまり感情を表に出さないシアだが、長年仕えてきた主の晴れ舞台、並んで歩く役目に選ばれた栄誉と結婚の感動が混ざって我慢しきれないようだ。

 2人は歩きつつ、長年の苦楽を思い返しているのかもしれない。

 リース、シアが眼前に辿り着く。

「わ、若様……姫様を……姫様を……」
「大丈夫、分かっている。リースは必ず幸せにする。それにシアも今後一緒に幸せになる手伝いをしてくれ」
「わたしからもお願いね」
「はっ! この身、この魂に懸けて!」

 オレ達が結婚の誓いをする前にシアが誓いをたててしまう。
 そのことに気付いた彼女は、本当に珍しく耳まで赤くし、いそいそと一番後ろの席へと向かってしまった。
 オレとリースは顔を見合わせ笑みを零してしまう。

 シアが身内の席に戻る頃には、ココノが姿を現す。
 彼女には身内がいないため、仲の良い友人としてラヤラが代役を務める。
 ココノが和装のウェディングドレス姿で、ラヤラは彼女のために甲冑を身に纏い男装していた。最初、ルナも立候補したのだが、甲冑を着たラヤラの方がバランスと見栄えがよかったので、彼女が務めることになったのだ。

 ココノとラヤラが、オレの前に辿り着く。

「だ、団長、ココノちゃんを、ウチの大切な、と、友達をお願いします」
「ラヤラさま……」

 ラヤラの台詞にココノが目元を潤ませる。
 彼女からココノの手を受け取り断言した。

「任せろ。絶対に幸せにしてみせるよ。そのためにも互いにPEACEMAKER(ピース・メーカー)、新・純潔乙女騎士団を盛り立てていこうな」
「も、もちろん、フヒ」

 ラヤラが友人席へと戻る。
 最後、トリを務めるのはもちろん彼女、メイヤだ。

 竜人種族の伝統衣装であるドラゴン・ドレスをウェディングドレス風に改造した衣装は彼女にとても似合っている。
 金糸で縫われたドラゴンの刺繍や手に持つブーケも豪華で、他妻達に比べても一層目立っていた。

 さらに隣を歩くメイヤパパこと、ハイライ・ドラグーンさんの死んだ魚の目&窶れた姿がより一層、今までの妻達とは比べられないほど目立っている。
 輝くメイヤとしなびた花のような父ハイライさん。
 その対比が人目を集める。

 2人がオレの前へと辿り着く。

 ハイライさんが真剣な目で訴える。

「リュート・ガンスミス……殿、頼む……ッ」
「心配しないでパパ。わたくし、リュート様、皆さんと一緒に必ず幸せになりますから」

 ハイライさんの漬け物石のごとく重い声。
 メイヤは娘である自分の幸せを願っていると思い、照れくさそうに笑いながら言葉を漏らす。
 場を考えればそうなのだろうが……彼の視線が親族席になぜか座っているロン達へと泳ぐ。

 どういう意味にも取れるため、オレは曖昧な笑みだけを浮かべ、メイヤの手を強く握り締める。

 しかし、ハイライさんがなかなか、手を離さない。
 メイヤが呆れたように『もう、パパったら……娘離れしてくださいまし』と手を解く。

 残されたハイライさんは涙目でロン達が待つ親族席へと向かう。
 その背中は砂になってさらさらと消えてしまいそうなほど哀愁が漂っていた。

 娘であるメイヤが結婚し、巣立つのが寂しいのだろう。
 きっとそうに違いない。

 こうして無事に新婦の入場を終える。

 壇上に立つガルマが、咳払いをしてから机に置かれた書物を開く。
 これも雰囲気作りの一環だ。
 彼が身じろぎすると、甲冑の金属音が厳粛な空間に響いた。

 神父役のガルマが厳かに尋ねてくる。

「新郎リュート。女神アスーラに誓い、新婦スノーと夫婦になろうとしている。新郎は新婦を妻とし、病める時も、健やかなる時も、喜び、悲しみの時も、貧しき、富める時も、彼女を愛し、敬い、慰め、支え、命ある限り、添い遂げることを誓うか?」

「私、リュートはスノーと夫婦になることを女神アスーラ様に誓います」

 オレは声が震えないよう一文字、一文字意識して返事をした。

 ガルマの顔がスノーへと向けられる。

「新婦スノー。女神アスーラに誓い、新郎リュートと夫婦になろうとしている。新婦は新郎を夫とし、病める時も、健やかなる時も、喜び、悲しみの時も、貧しき、富める時も、彼を愛し、敬い、慰め、支え、命ある限り、添い遂げることを誓うか?」

「はい。わたし、スノーはリュートくんと夫婦になることを女神アスーラ様に誓います」

 スノーは自然と滑らかに誓いの言葉を口にした。
 続いて、クリス、リース、ココノ、メイヤの順番にオレは問われ、彼女達も誓いをたてた。

 全員が誓いを終えると、次の儀式に移る。

「新郎は新婦達に誓いの腕輪交換と口吻を」

 ガルマの声に合わせて甲冑姿の新・純潔乙女騎士団の団員5人が、クッションが置かれた台に結婚腕輪を乗せ式場へと入ってくる。
 結婚腕輪は以前、オレが贈った物だ。
 今回の式で再度贈りなおす手筈になっている。

 今回の結婚式で新たに購入することを提案したが、妻達全員に断られた。
 新しい腕輪より、オレが贈ったのがいいそうだ。

 まずスノーの前に立ち、クッションの上に置かれた結婚腕輪を手に取り、彼女の左腕に腕輪を嵌める。
 次はスノーがオレの腕に結婚腕輪を嵌めた。

 前世、日本の式ではこの後、誓いの口吻をするが、『人前でキスをするのははしたない』というこちらの倫理観から、男性が女性の左手に口吻する形式に落ち着く。
 オレはスノーの左手を取ると口づけをした。

 口づけ後、顔を上げるとスノーは顔を赤くし、嬉し涙を浮かべる。
 同時に式場に居る皆から割れんばかりの拍手が贈られた。

 スノーが終わると、次はクリスだ。
 先程と同じように結婚腕輪を互いに贈り、手の甲に口づけをする。
 リース、ココノ、メイヤの順番に繰り返す。

 全員の腕輪交換&口吻を終えると、ガルマが両手を広げ大声で宣言する。

「女神アスーラの名において汝らを夫婦と認める! 女神アスーラの献身のごとく永遠の誓いにならんことを!」

 ガルマの宣言と同時に、式場に居る皆が一斉に席から立ち上がり、今日一番の拍手を盛大に鳴り響かせた。
 オレと妻達は全身で祝福の拍手を浴び、皆に対して一礼する。

 だが、これで終わりではない。

 まだ最大のイベントが残っている。



 今回、前世日本のアニメや漫画、ドラマで観た結婚式をベースにした。
 今までの五種族には無い結婚式に妻達は喜んで賛同してくれたのだ。
 また妻達以外の女性陣、特に未婚女性から新しい結婚式は諸手をあげて歓迎された。

 未婚女性陣が諸手をあげて賛同した理由とは――『ブーケ投げ』イベントがあるからだ。

『花嫁の投げたブーケを手にした者は、良縁に恵まれ幸せな結婚する』というジンクスがあると伝えると、『是非やるべき!』と猛プッシュされた。
 当然このジンクスは今日集まっている人々にも伝えられている。

 建設した式場にわざわざバルコニーを設置したのも、『ブーケ投げ』をするためだ。
 外壁を一周する前に、このバルコニーから妻達が手にしているブーケを投げる手筈になっている。
 バルコニー前には未婚・既婚問わず女性陣が集まっていた。中には動きやすい恰好をしていたり、準備運動、魔術の準備をしている女性も居る。

 男性陣は彼女達の熱気に負けて邪魔をしないように距離を取って傍観していた。

 一応、公平を喫するためオレ達は観客達に背を向けて皆で一緒にブーケを握り投げる。
 その際、配置されている魔術師が風魔術でランダムに飛ばすことになっているため、必ずしもバルコニー前が有利という訳ではない。

 ちなみにロン・ドラゴンと結婚する予定の受付嬢さんまで待機していた。
 彼女の方角から妙なプレッシャーを感じるのはきっと気のせいだろう。

 バルコニーに上がっていたオレ達は一通り観客達の声援と拍手に応えた後、背を向けた。

 オレを真ん中に妻達は手にしたブーケを中心に集める。

「ブーケは『1、2、3!』で投げればいいんだよね?」とスノー。

「(こくこく)」とクリスが頷く。

「あの、その際、『3』で投げるのですか? それとも『3』の『ん』を言い切った後、投げるのでしょうか?」とリースが言い出す。

「確かに、どちらなのでしょう? 迷ってしまいますね」とココノが反応する。

「迷うならリュート様、あら、いやらだわたくしったら、あ・な・た♪ のタイミングに合わせて投げればいいのですわ」とメイヤが告げる。

「メイヤって本当にどんな時もぶれないよな……。ここまでくると感心するしかないぞ。とりあえず、皆の呼吸とタイミングに合わせて投げればいいんじゃないかな。投げさえすれば後は魔術師が風で飛ばす訳だし」

 オレの言葉に皆が納得した。
 全員で視線を交わし、口を揃えてカウントダウン。
 カウントダウンに合わせて腕や全身を上下に動かす。

『1!』

『2!』

『――3!』

 手にしたブーケを掛け声に合わせて背後へ、大空へと投げる。

 同時にAK47、8.8cm対空砲(8.8 Flak)の空包が鳴り響き、今日一番の色とりどりの花びらが舞い散ってくる。
 観客達の歓声、拍手、祝いの言葉。
 建物の上部に設置された鐘は割れんばかりの音を鳴らす。

 さらにブーケトスの熱気がプラスされる。
 ブーケは風魔術により、それぞれ散らばっていく。

 ブーケが空を舞ったのは数秒ほど。

 最初にスノーのブーケがキャッチされる。

 スノーのブーケは旅装束姿のタイガが、空中に漂っている間に掴んでしまう。
 エル先生&ギギさんと顔を合わせないため、結婚式パレードを一目見た後、すぐ姿を隠したはずなのに……。
 ブーケを得るためエル先生&ギギさんの前に姿を現してしまう。
 エル先生とギギさんが、タイガの姿に気付き、声をかけるが――彼女は顔を真っ赤にして再び建物の影に隠れてしまう。
 我を忘れ、後先考えず姿を現すほどブーケが欲しかったんだな……。

 クリスのブーケは、頬が痩けたアームスの隣に寄り添う儚げな美少女がキャッチする。
 彼女がアームスのお嫁さんらしい。
 側に居るカレンが眉根を釣り上げ、何かを喚き、幼馴染みであるバーニー、ミューアが諫めていた。

 リースのブーケはココリ街の人に。

 ココノのブーケは見に来た外部の人がキャッチする。

 身内だけがブーケを得ていた場合、不正を疑われていたため、他の人達がキャッチしてくれてよかった。

 最後、メイヤのブーケはというと……なぜか真っ直ぐ受付嬢さんの腕に収まる。
 風魔術でランダムに飛ばしたはずなのにだ。
 決して、メイヤが迷惑をかけたのと、世界平和のために受付嬢さんを贔屓、接待プレイした訳ではない。
 ただの偶然だ。
 偶然である。
 いやぁ、偶然ってこわいなー(棒)。

 ブーケをキャッチした女性陣の喜び、できなかった人々の嘆きの声や囃し立てる男性陣。
 悲喜交々の声が響く。

 オレはその音、空気、熱、存在する全てを感じながら世界中の幸せが今、この場に集まっているかのような錯覚を覚える。
 オレだけではない。
 スノー、クリス、リース、ココノ、メイヤ――ココリ街に種族関係なく集まった全員がそう思っていると実感した。
 目に見える世界全てがキラキラと輝いているのだ。

 前世、オレはただの意気地がない軍オタだった。

 そんな『軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!?』なんて……きっと過去、日本で生きていたオレに言っても絶対に信じないだろうな。

 だが、ここはまだ通過点に過ぎない。

 オレはこの世界に生まれて誓ったんだ。

 この世界、この人生では強くなろう。勇気を持ち、七難八苦があろうとも逃げ出さず、助けを求める人がいれば絶対に力を貸そう――と。

 この世界で嫁のスノー、クリス、リース、メイヤ――他、支えてくれる仲間達、応援してくれる人達と一緒に誓いを護り続けよう。

「リュートくん!」

『リュートお兄ちゃん!』

「リュートさん!」

「リュートさま!」

「リュート様!」

 オレは改めて嫁達の満面の笑顔と視界に写る光景に誓ったのだった。














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 ガンスミス夫婦の結婚式、当日同時刻。

 ハイエルフ王国エノールの地下牢で、元第一王女のララ・エノール・メメア――現在は正式に王族の資格を剥奪されたララが産気いた。

 PEACEMAKER(ピース・メーカー)資金で地下牢に作られた分娩室へと運び込まれる。
 この日のために準備された器具、人材。

 ミューアが目を光らせているため器具や薬品等は高品質な物が用意されている。
 人材も豊富な経験も持つ医師や魔術師達が揃っていた――が、心だけはどうしようもない。
 世界中から魔力を奪い万単位の命を奪った、大罪人ランスの血を引く赤ん坊が産まれようとしているのだ。
 彼女達もプロではあるが心がある。
 歓迎などできるはずがない。

 しかしなるべく悪感情を表に出さないようにしながら、彼女達は機械的に産気づくララの面倒を見る。



 ガンスミス夫婦の結婚式が終わる頃、赤ん坊が産まれた。

 狭い地下室に元気な声が響く。

 産湯に入れられた後、初産で消耗しきっているララへと預けられる。

 担当した女性陣は赤ん坊が無事に産まれたというのに誰も喜んでいない。
 むしろ眉を潜めてしまう。
 世界中の誰も望んでいない赤ん坊が産まれ落ちる。

 唯一、母親であるララだけが、愛おしげに腕に収まる赤ん坊を抱きしめ頬づりした。

 ララは優しげな瞳で告げる。

「あなたの名はランス――ランスロット」

 聖母のように彼女は、赤ん坊に言い聞かせるように呟く。

「偉大なる父の名を継ぐ子。産まれてくれてありがとう……」

 暗い地下牢でただ1人母親だけが、新しい命の誕生を祝福していたのだった。
応援ありがとうございました!

明鏡シスイ
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