挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

エピローグ

459/480

第432話 結婚式パレード、三日前

 結婚式パレードを三日後に控えた午前。

 新・純潔乙女騎士団本部の食堂で、ある種歴史的な出来事が起きていた。

 その歴史的な出来事とは……エル先生とスノーの両親との初顔合わせである。

 エル先生、スノーの両親だけではない。

 妖人大陸からはエル先生、ギギさん、ソプラ、フォルンに他孤児院の子供達、元黒メンバー。

 魔人大陸からダン・ゲート・ブラッド伯爵、セラス奥様、元女魔王アスーラ、他ブラッド家使用人達。

 竜人大陸からはメイヤ邸のメイド達に、リズリナ・アイファン。

 北大陸からはスノー両親&白狼族、アム・ノルテ・ボーデン・スミス、アイス、そしてその娘シユ。

 オレ達の結婚式に参加してもらうため、飛行船ノアで大陸を飛び回り関係者を集めたのだ。

 ちなみに関係者を集め終わった後、個人的に誰か足りない気がしてならなかった。
 アルさんは論外として、タイガは邪神封印を目標に旅立っている。
 暫く考えたが思い出せない。

 スノーの関係者で誰か居た気がするのだが……。
 思い出せないということはオレの勘違いか、たいしたことじゃないのか?

 とりあえず現在、彼、彼女達はココリ街にある宿屋へ泊まっている。

 最初、本部に泊まってもらおうと思ったがスペースが無いため諦めた。
 なので他貴族や商人、他者に押さえられる前に、皆の宿を取っておいた。
 この辺は地元の強みである。

 そして現在、主要メンバーが食堂へと集まっていた。
 集まったメンバーはエル先生、ギギさん、ソプラ、フォルンに、旦那様、奥様、スノー両親にアム、アイス、シユ。
 オレ、スノー、クリス、リース、ココノ、メイヤ、シアの合計18人だ。

 全員が入れて話をする場所が食堂しかなかったため、ここに集まってもらった。

 PEACEMAKER(ピース・メーカー)関係者がこれほど大人数で一箇所に集まるのは今回が初めてである。
 顔見知りの者達は、再会の挨拶をし、初めて顔を会わせる者は自己紹介をする。

 そんな中、とある一角だけは緊張感に包まれていた。

 長テーブルを挟み、止むに止まれぬ事情があったからと言ってスノーを孤児院に置き去りにした両親。
 彼女を10歳まで育てたエル先生が向き合う。

 スノーの両親がどうしても育ての親であるエル先生と話がしたいからと、場所をセッティングしたのだ。
 オレとスノーは邪魔にならないよう離れて見守る。

 シアがそつなく香茶を置いたところで、スノー両親の父クーラと母アリルがテーブルに両手と額をつける。

「娘を置き去りにした自分達が今更、口にするべき言葉ではありませんが……娘を育ててくださりありがとうございました!」
「ありがとうございます……ッ」

 クーラさん、アリルさんの順番に贖罪と感謝の言葉を告げた。
 そんな2人を前にエル先生は非難するのではなく、いつも通りの優しげな微笑みを浮かべる。

「お2人とも顔を上げてください。いきさつはスノーちゃん、リュート君から聞き及んでいます。厳しい立場にいらっしゃった中、スノーちゃんの安全を考え孤児院に預けたご判断を非難することはできません。むしろ、1人娘と離れる決意をした意思の強さに頭が下がります。私自身、お2人と同じ立場になったら、孤児院に居る皆と離れることができるかどうか……」

 エル先生はその状況を想像し、悲しげに目を伏せる。
 長い睫が影を作った。

 エル先生が改めて2人へと向き直る。

「過去、辛いことが多々ありましたが、スノーちゃんは立派に成長し、私達だけではなく大勢の人々に祝福された結婚式をするまでになりました。ですから、親御様達も悲しみではなく、笑顔で祝福しましょう」
「エルさん……」
「あ、ありがとうございます。本当にありがとうございます……」

 エル先生の話を聞いてクーラさん、アリルさんは涙を流し、再び何度もお礼を告げた。
 そんな二人を前にエル先生が困ったように微笑む。

「お父さん、お母さん、エル先生……」

 離れた位置で見守っていたスノーが、両親に釣られて涙を流していた。
 オレは彼女の背を押し、エル先生達が居る席へと行くよううながす。
 両親、エル先生を交えて、今度は悲しい話ではなく、孤児院時代の明るい話をしてくればいい。

 スノーに提案すると、彼女は涙で赤くなった目で笑いながら、

「分かったよ、リュートくん! わたし、行ってくる!」と三人の元へと駆け出した。

 結婚相手として本来ならば、スノーと一緒にあの輪に入るべきなのだろうが……今回は多数の関係者が集まっているため、一箇所に留まり続けることはできない。

 夫として、主賓として気を配らないとならないのだ。

 スノーの両親にはすでに挨拶済みなので問題はない。

 改めて食堂を見渡すと、皆、楽しげに会話を交わしていた。

「きんにく! きんにく! あのね、シユね、きんにく好きなの!」
「ははっははっははは! そうか、そうか! シユ殿は筋肉が好きか! 筋肉の良さがこの歳で分かるとは! シユ殿は将来立派なレディーになりそうだな!」

 シユは旦那様の腕に抱かれて幸せそうな笑みを浮かべる。
 彼女はペチペチと服の上からでも分かるほど硬く発達した胸筋を叩き満足そうだった。

「ミスター・ダン伯爵! どうすればぼくも貴方のように筋肉がつくのですか!? 弟のオールに負けぬよう筋肉トレーニングをしているのに、一向に筋肉がつかないのです! このままではぼくの天使シユに……シユに見放されてしまいます!」

 一方でそんな2人を前に、アムが血を吐くように懇願していた。

 彼から聞いた話では体質なのか、どれだけ鍛えても筋肉が付かないらしい。
 なのに弟であるオールからは毎月手紙が送られてきて、自分の筋肉がいかに育ち、大きくなっているのか克明に知らせてくるんだとか。

 そんなアムに旦那様は、シユの相手をしつつ答える。

「ふむ……原因は色々考えられるな。適切ではないトレーニングや筋肉を休ませず過剰にやっている場合。または同じ重さ、角度、負荷をかけている場合だな。同じ刺激を与えると筋肉もなれてしまうのだ。その場合、筋肉は育たなくなる。単調にならぬよう角度や重さを変えて常に新しい刺激を与えなければならないのだ。他にも始めたばかりで成果を焦っている場合もあるが……恐らく我輩の考えでは食事量が少ないのではないかな?」
「食事量ですか?」
「どれだけ鍛えても、食事量が少なければ育つのは不可能だ。意外と筋肉トレーニング初心者が見落としがちなのが食事なのだよ。鍛えた後は例えば肉などは普段の倍以上とらないと筋肉は育たぬのだ。さらにできるなら、肉も一種類だけではなく、複数の肉や魚、豆類も摂るとなおいい。筋肉は一種類の肉類で育つわけではないのだ。筋肉は人と同じで生きている! 人が肉だけ食べ続けて育つことができないように、筋肉もまた然り。魚、豆類なども食べることにより――」

 旦那様の話をアムが必死にメモし出す。

 しかしアムが筋肉ムキムキになる将来が見えないんだよな。
 とりあえずあそこは放置しても問題はないだろう。

 次に視線を向けたのは奥様達が居る長テーブルだ。

 セラス奥様、クリス、ソプラ、アイスが話をしていた。

 セラス奥様が狼耳のソプラを抱きしめあやしている。
 ソプラは奥様に抱かれて気持ちよさそうに寝ていた。

「あらあら、初めて顔を会わせたのにこんなに懐いてくれて嬉しいわ」
「女の子は人見知りし辛いと聞きますが……。うちのシユもあまり人見知りしないんですよね」

 セラスに抱かれて眠るソプラをアイスが撫でる。
 さらに注目するべき点は、アイスのお腹が大きくなっていることだ。
 アム夫婦は第二子を授かったらしい。

 アイスの台詞にセラス奥様が微苦笑を作る。

「女の子だから~というのは迷信みたいなものよ。クリスが小さい頃なんて知らない方を見るだけでわんわん泣いたものよ」
『お、お母様! アイスさんに変なこと教えないでください!』

 クリスは自身の恥ずかしい過去話をばらされわたわたとミニ黒板を掲げ話を遮る。

「クリスったら……結婚しても落ち着きがないなんて。もうすぐ結婚式なのに大丈夫なのかしら」
『お母様が余計なことを話すからです!』
「はいはい。アイスさんのお腹に障ってもいけないからもう話したりしないわ。それよりアイスさん、お腹の子の性別はもう分かっているの?」
「いえ、夫とも話したのですが、今回も事前には調べないでおこうと決めているんです。私としては男の子がいいんですが……」

 旦那様と話し込むアムへと視線を向ける。
 セラス奥様はすぐに『アムの跡継ぎを産みたい』という想いに気付く。
 ソプラを片手に抱き、空いた手で隣に座るアイスの背中を撫でた。

「大丈夫よ。意外と殿方は男女どちらでも気にしないものだから。ちゃんと産むことだけ考えていればいいの」
「……はい」

 セラス奥様の言葉にアイスから肩の力が若干抜けた気がした。
 それでもやはり男の子を産みたいのか、アイスの視線は兎耳のフォルンへと向けられる。

 フォルンは食堂の一番端でギギさんが抱っこしていた。
 彼は立ったまま体を揺すり、ぐずるフォルンをあやし続ける。

 どうも知らない人達が大勢集まっているため、ぐずっているらしい。

「まったく男だというのに情けない……」
「ぱぱぁ、あぁぁぁ……っ」

 ギギさんは口では威勢のいいことをいいつつ、フォルンに『パパ』呼ばわりされて喜びつつ、立派に世話をしていた。
 そんなフォルンを刺激しないようリース、メイヤがギギさんの側で様子を窺っている。

「女の子もいいですが、やはり男の子もいいですね」とリース。
「うふふふふふふ、もうすぐわたくしも、リュート様の神子を授かることができるのですわね……ッ」とメイヤ。

 リースは純粋にフォルンが可愛いらしく、かまったり、抱きしめたくてうずうずしていた。

 一方メイヤは、フォルンに将来、産まれるだろう赤ん坊――男の子の姿を夢想し涎を垂らさんばかりに顔を緩ませている。
 なんてタイムリーな話。
 先程のセラス奥様の話ではないが、個人的には無事に産まれてくれるなら男女どちらでもいいのだが……。

 アルさんは子供達に悪影響が出るため、まだ引き合わせていない。
 メイヤも禁止するべきだったろうか……。

「団長、少々よろしいでしょうか?」
「!? み、ミューアか」

 メイヤの言動に視線を向けていると、背後から声をかけられる。
 振り返ると、PEACEMAKER(ピース・メーカー)の外交・情報部門担当のラミア族、ミューア・ヘッドがいつのまにか立っていた。
 メイヤ達の姿に集中していたとはいえ、こうも簡単に背後を取られるとは……。

「団長? 出直した方がよろしかったですか?」

 ミューアは人目があるため、『リュートさん』ではなく『団長』と呼ぶ。
 オレは気持ちを切り替えて、彼女へと向き直る。

「大丈夫だ。ただ、背後から突然声をかけられて驚いただけだよ」
「そうでしたか。では今度からもう少し分かりやすく近付きますね」

 ミューアは楽しそうに微笑み作りつつ、食堂入り口へ向けて手をあげる。
 合図後、一人の男性が食堂へと入ってきた。

 目が糸のように細く、黒い髪を背中まで伸ばしている。
 着ているのは、ゆったりとした中国の軍師が着ているような特徴的な衣服だった。
 彼はたしか……竜人種族、魔術師Aマイナス級、テン・ロンだ!

 アルトリウス・アーガーの変死後、始原(01)暫定団長としてミューアと二人三脚で軍団(レギオン)を纏めている人物である。

 彼はオレの前まで来ると、床に両膝を付き手を拳の形にして胸の前で重ね頭を下げた。
 竜人種族が最大限の敬意を払う者にのみおこなう礼である。
 始原(01)の扱いはミューアに丸投げしているので、彼とは面識がほとんどない。
 にもかかわらず出会ってすぐ最大の礼をされると居心地が悪いのだが……。

 ミューアはテンの態度など気にせず笑顔で話を進める。

「三日後におこなわれる結婚式パレードの警備準備・段取り、全て終わりましたので警備責任者であるロンさんと一緒にご報告にきましたの」
「ご無沙汰しております、リュート団長殿。今回、団長殿達の結婚式パレードの警備責任者を務められること恐悦至極に存じます。我ら始原(01)は万難を排し、問題一つ起こさず結婚式パレード警備を完遂したく思います。もし些少でも失敗した場合、責任者として腹を切る所存です」

 重いわ!
 あまり話したことがなかったが、テン・ロンさんってこんな人物だったか?
 側に立つミューアは平然とした態度で『やる気があるっていいですね』とのんびりとした感想を告げていた。
 やる気がある、ないのレベルじゃないだろう……。

 咳払いをしてから、優しい声音になるよう気遣い話しかける。

「べ、別にちょっと失敗したからって腹を切らなくてもいいんじゃないかな」
「では舌を噛み切りますか?」

 だから、どうしてそうなる!

 テン・ロンの変化はどう考えてもミューアの『お話』によるものだろう。

 ミューアもまたアルさんやメイヤのように、子供達の教育に悪いため会わせてはいけない人物のような気がしてきた。
 と、とりあえずテン・ロン問題は隅に置いておいて、結婚式パレードの警備が順調に進んでいることを喜ぼう。

 オレはつい目の前の現実から逃れながら、そんなことを考えてしまった。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
2月1日、21時更新予定です!

担当様から軍オタ文庫5巻、8巻。
コミックス2巻、3巻の重版が決定したとのご報告を頂きました!
これも皆様が日頃応援してくださっているお陰です!

またファンタジア文庫のTwitterでも告知して頂けるということなので、機会がありましたら是非チェックして頂けると幸いです。


(1~5巻購入特典SSは15年8月20日の活動報告を、2巻なろう特典SSは14年10月18日の活動報告、3巻なろう特典SSは15年4月18日の本編をご参照下さい。)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ