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第399話 メイヤパパの自信とは?

 応接室からメイヤを無理矢理連れて行こうとした竜人種族男性が居た。

 彼女に乱暴を働いたため、オレは咄嗟にメイヤを庇い、男性を突き飛ばしてしまう。

 しかし、突き飛ばした男性と背後に隠したメイヤが互いに声をあげる。


「貴様がリュート・ガンスミスかッ。貴様のような輩にうちの娘、メイヤちゃんを嫁になんぞ渡さんぞ!」

「リュート様とわたくしの愛は永遠ですわ! 誰がパパと一緒に行くもんですんか! 一昨日来やがれですわ!」


 つまりオレはメイヤパパを突き飛ばし、悪漢扱いしてしまったということだ。

 最悪の初対面である。




 改めてオレ達は応接室で向き合う。

 オレとメイヤが並んでソファーに座り、テーブルを挟んでメイヤパパの竜人種族、魔術師Bマイナス級、ハイライ・ドラグーンがこちらを睨み腰掛けている。


 シアが改めて香茶を並べていく。

 香茶が並べられた所で、改めて話を聞く。


 メイヤパパ――ハイライさん曰く、『魔力消失事件』解決の実績が認められてロン・ドラゴンとメイヤの結婚が認められた。

 元々メイヤとロンは婚約者同士だったが、あくまで彼女は候補の一人でしかなかった。


 メイヤの他にも多数の婚約者候補達が居るらしい。

 その中でより実績を出した者が、正妃として迎えられるシステムになっているとか。

 故に次期正妃を目指し、メイヤ以外の后候補達は後押しする勢力も含めて実績を出そうと鎬を削っていた。


 一方メイヤはというと、一人首都を出て他大陸から荷物を受け取り易い沿岸部に居を構えた。

 一応婚約者候補だったが、本人はどうでもよかったらしく放置していた。

 彼女は自分自身が優秀過ぎる余り、たとえ次期国王の幼馴染みのロンでも釣り合わないと考え、自分は誰とも結婚はしないだろうと考えていた――オレこと、リュート・ガンスミスと出会うまでは。


 メイヤはオレと出会う前に、AK47と『S&W M10』リボルバーを偶然手に入れ、技術力の圧倒的高さと精密さに心の底から驚き、強いショックを受けた。

 自身の才能の無さを嘆き、酒精を文字通り浴びるほど飲む生活をしてしまうほどに……。


 だが、途中で立ち直り、死亡したと思っていたオレの功績を後世に残すのが自身の仕事だと彼女は思いこむ。

 以後、研究を重ねて独自に『魔力集束充填方式』と呼ばれる技術を確立。無駄なく魔力を魔石に送れるようになり充填時間が半分ほどに出来るようになった。

 メイヤが過去に発明した、『七色剣』を霞ませる技術革新である。

 彼女の名声は竜人大陸に収まらず、他大陸にまで響き渡ったのだ。


 そのお陰でオレとクリスは、逃亡先にメイヤが居る場所を選び、彼女と面会することにした。

 結果、AK47、『S&W M10』リボルバーの制作者であるオレと出会い、彼女はすぐさま土下座しオレに弟子入り。

 心底惚れ込んだらしい。


 オレに心底惚れてからは、すぐさまロン・ドラゴンとの婚約を解消するために手紙を送った。

 しかし、婚約破棄は出来ないという返答が帰ってきたのだ。

 当時、彼女はすでに『七色剣(ななしょくけん)』『魔力集束充填方式』を開発し、他婚約者候補達より一歩リードしていた。

 今更抜け出すことはできなかったとか。


 さらにメイヤはPEACEMAKER(ピース・メーカー)に所属し、数々の功績を打ち立てる。


『黒毒の魔王』討伐にも参加、協力していたが、魔王自身があまり被害を出していなかったのとあっさり倒され過ぎたため、他婚約者候補から功績を疑問視する声があがった。

 当時はまだ他候補者が一発逆転を狙っていたのだ。

 しかし、『魔力消失事件』解決という偉業を成し遂げたことで、他候補者が遙かに及びも付かない結果を出してしまう。

 これには他候補者もぐうの音も出ず、メイヤに正妃の座を譲るしかなかった。


 その結果、ロンの国王就任と同時に、メイヤとの結婚許可が下りたらしい。


 これが一通りのあらましである。

 ……とりあえず『メイヤの婚約者云々』は初耳だった。

 隣に座る彼女を半眼で見つめる。


「いや、あの、リュート様、その、これには、なんというか、色々複雑な事情がありまして……」


 メイヤは顔からだらだらと冷や汗を流しながらしどろもどろに弁解しようとするが、口から続く言葉が出てこない。

 当然といえば当然である。


 だが納得する部分もあった。

 メイヤは執務室であれだけ結婚腕輪をせがんでいたのに、手紙の封蝋を見た後、手のひらを返して客人に会おうとした。

 封蝋は実家のモノで、中身を見なくても内容に気付いて焦ったのだろう。


 彼女はずっと隠していた事実を気付かれる前に、握り潰そうとしたようだ。


「メイヤちゃんを自由にしていたのは本人が望んでいたのと、そちらの方が功績を残せると判断したからだ。判断は正しく、無事にロン陛下の正妃となることが決定した。貴殿との結婚など絶対に認めない。メイヤちゃんは連れて帰らせてもらう」

「ま、待ってください!」


 メイヤには色々言いたいことがあるが、このままでは彼女が無理矢理連れて行かれ望まぬ相手と結婚させられる。

 まずはそれを阻止するのが先決だ。


「本人の意思を無視した結婚など間違っています。さらに彼女は嫌がっているのに、無理矢理連れて行くなんて非人道的ではありませんか?」

「ふん! 他人である貴殿が家のことに口を出さないでもらおうか」

「自分はメイヤを――メイヤさんを愛しています。彼女も自分を今までずっと支えてくれて、慕ってくれています。ですから、その気持ちにちゃんと答えたいのです。どうか、自分と娘さんの結婚を認めてもらえないでしょうか」

「お願い、パパ! それにリュート様は本当に凄い方なの! 『黒毒の魔王』を倒したのもリュート様ですし、最終的にランスを一人で倒したのもリュート様なの! これほど優秀で技術力が高く、才能に溢れ、格好いいのに可愛い所もあって、怒った表情もセクシーで、さっき睨まれた時も恐怖と被虐心が混ざり合って、正直わたくし、興奮がおさ――」

「はい、メイヤ、ちょっとお口チャックしようか」


 隣に座り興奮で荒く息をつきだしたメイヤの口を押さえる。

 まさか親の前で性的告白を始めるとは予想外だった。

 先程まであった真剣な空気が霧散する。

 メイヤパパも微妙な顔をしているじゃないか。


 とりあえず互いに咳払いをして、気持ちを建て直す。

 メイヤパパ、ハイライさんが口を開く。


「確かに貴殿は優秀だ。魔王だけではなく、天神様の力を手に入れた者すら倒したのだから。だがメイヤちゃんとの結婚は別だ。何より、たとえどれほどの功績があったとしても、我が主君、ロン陛下とは比べものにならない。あの方は特別なのだ。あの方こそ我々竜人種族がお仕えするべき王なのだよ」


 ハイライさんが主君であるロンに心酔しているのが台詞と声音、態度で理解できる。

 ロンという人物はよほどカリスマがあるらしい。

 オレ自身は人種族で、ランスの力で映像越しにしか本人を見ていないため、いまいち理解出来はしないが。


 ハイライさんにメイヤとの結婚を申し込んでも、とりつく島もなかった。

 さらにハイライさんは強気な態度で告げる。


「陛下とメイヤちゃんの結婚は決定事項だ。もしこれ以上邪魔をするというなら、たとえ力尽くでもメイヤちゃんを竜人大陸へ連れて行く」

「……本気で言っているのですか?」


 ハイライさんの挑発的な台詞に、怒りより困惑を覚える。

 ここは獣人大陸、ココリ街、新・純潔乙女騎士団本部。PEACEMAKER(ピース・メーカー)の本部としても使わせてもらっている。


 本部だけあり、小銃から大型兵器まで各種揃っており、『魔力消失事件』後も気を抜かず団員達は厳しい訓練を積んでいた。

 外部からの侵入も警戒し罠も張っており、巡回もしている。

 街中や外周部分も把握しているため、地の利はこちらにある。


 この本部を落とそうとしたら、魔術師S級を複数連れてこないと無理ではないだろうか。


 そんな規格外な戦力を複数揃えるなど不可能だ。

 なのにハイライさんは余裕の態度を崩さない。


PEACEMAKER(ピース・メーカー)はこの世界最強の軍団(レギオン)だろう。しかし傲慢にならないほうがいい。どんなモノにも弱点はある。その弱点を攻めればどれだけ強大な城塞、軍団、組織だろうと瓦解させるのはそう難しいことではない」


 言いたいことだけ言うと、ソファーから立ち上がりこちらを見下ろしてくる。


「今日の所は一旦帰ろう。明日、また来る。メイヤちゃん、それまでに竜人大陸へ戻る準備を進めておきなさい」

「べーですわ! 誰がパパについて行くものですか!」


 メイヤは父親の言葉に全力で舌を出し反抗する。

 ハイライさんは娘の態度に肩をすくめ大人しく部屋を出て行く。

 彼の背は自信に溢れていた。


 先程の台詞もはったりや嘘ではないと、彼の背中が語っている。

 どうやら本心でPEACEMAKER(ピース・メーカー)相手に、力尽くでメイヤを連れて行ける自信があるらしい。


 ではその自信の根拠は一体なんだ?

 正直まるで検討が付かない。


 あまりの不気味さに、暫くハイライさんが出て行った出入口を見つめ続けてしまった。

ここまで読んでくださってありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!

9月19日、21時更新予定です!


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(1~5巻購入特典SSは15年8月20日の活動報告を、2巻なろう特典SSは14年10月18日の活動報告、3巻なろう特典SSは15年4月18日の本編をご参照下さい。)


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