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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

3章

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第38話 魔石姫・前編

 竜人大陸(りゅうじんたいりく)を治める竜人王国。
 そこに住む竜人種族は5種族で唯一の単一種族である。

 魔人種族とは正反対で、他の一族が一切いないのだ。

 単一の種族であることを誇りにしているため、5種族中もっともプライドが高い。

 そんな竜人大陸で、魔術道具開発者としてもっとも有名な人物こそ、メイヤ・ドラグーンだ。

 メイヤは3歳で複数の言語、文字書き、各種演算を習得した。
 魔術師としての才能もあり、15歳で魔術師Bマイナス級となり卒業。
 魔術大学の魔術道具科に進学するが、1年で飛び級卒業してしまう。
 その時、発明したのが七色剣だ。

 当時、同じ武器に複数種類の魔石を付け替えることは不可能だとされていた。
 しかし彼女は複数の金属、魔術文字を組み合わせることで魔石の付け替えを可能にしたのだ。

 この発見、発明により彼女の名前は世界的に広がった。
 以降、彼女は人々から『魔石姫』と呼ばれるようになる。

 メイヤのプライドは竜人種族の中でも、更に輪をかけて高い。
 だが、それだけの才覚、美貌、地位、名誉、財産があるゆえに、竜人大陸の民衆からは憧れの眼差しを向けられている。

 竜人大陸内に限って言えば、竜人王国の国王に並ぶほどの有名人だ。

 メイヤは竜人王国第一王子との恋仲も噂されている。
 王子は魔術師としての腕も確かで品行方正、甘いマスクで情に厚い。やや暴走しがちな面もあるが、民衆の支持は高い。

 メイヤの親が有力貴族で、2人は子供の頃から知っている幼なじみ同士だ。
 実のところは恋仲云々も、第一王子が言い寄っているだけである。



 そんな自他共に認める天才のメイヤの元にある日、奇妙な品物が届いた。
『S&W M10』リボルバーと38スペシャル(9mm)1箱分だ。

 メイヤ邸の応接間で彼女は話を聞く。
 持ち込んだ商人曰く――『天神様がお作りなったような奇跡みたいな魔術道具』らしい。

 ドワーフの熟練職人でもこれほど精巧な物は作り出せない、と商人は断言。

 そんな素晴らしい魔術道具だからこそ、この世で一番の魔術道具開発者であるメイヤに初めに品物を持ち込みました――と商人はおべっかを並べる。

(どうせ魔術学校、大学や貴族達に持ち込んで端金で買い叩かれるより、魔術道具の好事家にぼったくりの値段で買わせようとしているんでしょうけどね)

 しかし自分は好事家ではあるが、その辺の素人では無い。
 自他共に認める魔術道具開発の天才。
 下手な魔術道具など持ち込んで、本当に自分が買うと思っているのだろうか?

 メイヤは商人の宣伝文句を鼻で笑い、足を組み替える。

 しかし商人はメイヤの蔑む視線などに気付かず、『S&W M10』リボルバーの性能を実際に見せるため庭へ移動。
 商人は名称、使用方法が書かれたメモを片手に使い方を説明する。

 商人は5メートルほど先に置かれた煉瓦に向かって発砲。
 見事、弾丸は煉瓦を砕いた。
 商人は連続して次々煉瓦を破壊していく。

 腕を組み、護衛兼使用人をはべらせ横柄な態度で見守っていたメイヤは、『S&W M10』の威力・性能・連射性などに驚き、その場で腰を抜かしてしまう。

 控えていたメイド達が慌てて彼女の側に駆け寄るという一幕を見せる。

 メイヤは腰を抜かしながら、あまりに素晴らしい魔術道具に商人のふっかけた値段そのままで買い取ってしまった。
 さらに彼女は他にもこれ系の魔術道具があったら売って欲しい、また制作者を知りたいと追加の品物と情報を求める。

 商人曰く、もう1つ似たような魔術道具があったが、持ち込んだ人物との値段が折り合わず別の商人へと持ち込まれてしまったらしい。

 メイヤは――

「お金に糸目は付けませんわ。もう1つ似た魔術道具と製作者の情報を至急集めなさい!」

 商人はリボルバーの代金を受け取ると、慌ててメイヤ邸を飛び出した。



 メイヤは似た魔術道具と製作者の情報を待つ間に、リボルバーを自身の工房で早速研究する。

 まず一緒に渡されたメモを片手に名称を確認。

『S&W M10』リボルバーで小さな金属の筒は38スペシャル(9mm)弾薬(カートリッジ)という名前らしい。

 弾薬(カートリッジ)を6個、シリンダーという名称の穴に装填。
 後は引鉄(トリガー)という部分を絞れば、弾丸が飛び出すようだ。

 原材料は金属スライムを倒すと採れる魔術液体金属らしい。

「あんな魔術道具の出来損ないで、こんな神がお作りになったような魔術道具が出来ているなんて……」

 使われている材料を知ってさらに驚いた。

 研究を進めると――シリンダーが引鉄(トリガー)を絞るたび動く内部構造、現在の冶金技術では到底作れないレベルの細かいパーツ、筒の内部にどうやって刻まれたか分からない溝など驚愕する点があまりに多い。

「この弾薬(カートリッジ)というのも素晴らしい物ですわ」

 空薬莢を詳しく観察する。

 どうやらこの小さな筒の中に破裂の魔術を密閉し、引鉄(トリガー)と連動した撃鉄(ハンマー)で尻部分に強い刺激を与えるようだ。
 すると筒の中に入っている小さな金属片が飛び出す仕組みになっている――と、突き止めた。

「これほど最小で最大の効果を得られる魔術道具を作り出すなんて……これを作った人はわたくし以上の天才ですわ!」

 プライドの高い竜人種族の中でさらに輪をかけて高いメイヤ・ドラグーンが、躊躇無く『S&W M10』の製作者を天才と認めた。

 もしその場に彼女を知る人物がいたら、あまりの衝撃的言動に泡を吹いて倒れていただろう。
 それだけ彼女のプライドは高いのだ。



 メイヤは早速、魔術液体金属を取り寄せ実際に『S&W M10』を自身でも製作しようとした。
 しかし――

「……まったく上手く行きませんわ。本当にこんな物で『S&W M10』を作ったというのかしら」

 メイヤは魔術液体金属を手に入れたその日のうちに、自宅にある工房へ引き籠もり製作を開始したが、まったく上手く行かなかった。

 そもそも『魔術液体金属』とは、金属スライムと呼ばれる魔物を倒すと得られるアイテムだ。

 魔術液体金属は特殊な金属で、触れながら武具をイメージして魔力を流すとそのモノの形になる――という特性を持つ。

 メリットは少量なら持ち運びが楽で携帯しやすい。
 そのため暗殺者が好んで使っている魔術道具だ。

 デメリットは一度形を固定したら二度と魔術液体金属には戻らない。
 鮮明にイメージを描かないと、剣ならただのなまくらに、鎧は厚さが均一でない上、サイズも合わない品物しかできない。
 使い所が限られ、扱いにくい上、値段は魔術道具のため高い。
 不人気商品の代名詞とも呼ばれる品物だ。

 メイヤからすると魔術道具と呼ぶのも躊躇う品物でしかない。

 あまりにも不人気すぎて、魔術液体金属について研究する人物は皆無。そのためなぜ魔術液体金属でこれほどの強度を得ているのか、どうやってここまで精巧に形を作っているのか、どうやって筒の内部に溝を刻んだのか――正直分からないことだらけだった。

 メイヤは一度魔術液体金属での製作を凍結。
 違うアプローチで、『S&W M10』製作に再度取り掛かる。

 贔屓にしている熟練技術者であるドワーフに頼み、鉄製の筒を制作する。
 内部の溝は筒を製作後、棒で無理矢理削り付けることにした。

『S&W M10』の構造は複雑だが、コンセプトは単純である。
 破裂の魔術で筒内部に入っている金属片を飛ばせばいいのだ。

 どうやって撃鉄(ハンマー)で叩いただけで、弾薬(カートリッジ)の破裂の魔術が起動するのかまったく分からないが……。
 撃鉄(ハンマー)に特殊な魔術が施されている形跡も無いのにだ。

 試作品1号は程なく完成する。

 見た目は短い金属製の筒。下に筒を支えるように木を添えた。
 撃鉄(ハンマー)弾薬(カートリッジ)の破裂の魔術が起動するのか分からなかったので、筒の尻部分は金属の蓋で開け閉めできるようにしてある。
 この尻部分に小粒の魔石を装着、魔術文字を刻んだ。

 設定した呪文を尻部分の蓋に触りながら告げれば、魔石に込めた破裂の魔術が起動する仕組みだ。

 口部分から弾丸となる金属製の弾を込める。
 ちゃんと『S&W M10』で使われている弾丸と同じ形にした。

 メイヤは事故が起きる可能性も考えて、中庭に準備されていた器具に試作品1号を固定。
 約2メートル先に的となる煉瓦を置く。

 早速、口に弾丸を押し込む。

「むぅ、大きさが合いませんわね。別のをちょうだい」

 メイヤの指示に、メイドがいくつかの弾丸をお盆にのせ持ってくる。
 ころころと転がらないように、お盆の上にクッションを置きその上に乗せている。

 結局、3つ目の試作弾丸を棒を使って奥まで押し込んだ。
 魔石にはすでに破裂の魔術が込められている。

 メイヤはお尻部分に魔力を伝達させる金属糸を付着させ、5メートルほど距離を取った。
 この金属糸に魔力を通すことで、蓋に直接触れている時と同じ状態にしているのだ。

 準備を終えるとメイヤは嬉々として、呪文を告げる。

「破裂しなさい!」



 バガン!

「きゃぁ!?」

 試作品1号は文字通り本体ごと破裂してしまった。

「メイヤ様! ご無事ですか!」
「え、ええ、平気よ」

 再び腰を抜かし座り込んでしまったメイヤの元にメイド達が集まる。

 メイヤは彼女達の手を借りて立ち上がると、破裂した試作品1号の元へ歩み寄った。

 筒本体は根本から破裂。
 金属が笹掻き状に破れていた。
 蓋に貼り付けていた魔石も砕けている。

 どうやら密閉した状態で破裂の魔術を放出。その衝撃に魔石自身が耐えきれず破損してしまい、内部に溜め込んでいた残り少なくなっていた魔力も放出してしまったらしい。
 結果、破裂の魔術の衝撃と魔石破壊で放出し暴走した魔力により、筒本体の強度が足りず破損してしまったのだ。

「わたくしとしたことが……少し思考を巡らせれば分かることでしたのに」

 さらに追い打ちをかけるように発射された弾丸が、的とは全く別方向で見付かる。
 的の煉瓦に掠りもしなかった。

 弾丸に付いた内側の溝が途中で歪んでいる。
 恐らく内側に付けた溝が歪んでいるせいだ。
 そのせいで真っ直ぐ弾丸が飛ばなかったのだろう。

 あの溝は『弾丸自身に回転を加えることで、安定して飛ばす物なのだ』とメイヤは目算を立てていた。
 矢に付いている矢羽と同じ原理だと。

 弾丸を安定させて飛ばすための重要部分だと考えていたから、慎重に作らせた。しかし結果はこのざまだ。

 だが、製作を頼んだドワーフを批難するつもりは無い。
 初の作業で、金属の筒内部に溝を掘れなどと無茶な要求をしたのだから……。

「実際に試作品作りに取り掛かって分かったことは……この『S&W M10』が規格外な魔術道具だということが分かっただけでしたわね」

 仮にメイヤが作った試作品1号を実用化するとしよう。
 本体が破裂の魔術に耐えられると仮定しても、魔石の破損は防げないだろう。
 あの魔石の大きさならば品質によって上下するが、おおよそ1個あたり銀貨1枚(約1万円)~5枚(約5万円)。

 2メートル先に当たるかどうかも分からない魔術道具に、魔石を使い捨てるなんて正気の沙汰じゃない。

 なのに『S&W M10』は魔石を使わず、連続で弾丸を発射出来、命中精度も抜群。
 本当にどうやって作られているのか分からず、メイヤは暫く頭を抱えた。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



『S&W M10』を買い取って数ヶ月――研究と試作品作りに失敗していると、似たような魔術道具と製作者の情報がリボルバーを売った商人によって持ち込まれた。

 前回同様、応接間に通して応対する。
 商人はリボルバーとは比べると大きく、長い筒をテーブルに恭しく置いた。

 この魔術道具の名称は『AK47』と呼ぶらしい。

 メイヤは値切りもせずAK47と制作者の情報を商人の言い値で買い取った。

 商人を帰らせると、まず情報が書かれている紙束に目を通す。

『S&W M10』『AK47』の制作者名は、リュート。
 妖人大陸、アルジオ領ホードの孤児院出身。

 アルジオ領ホード出身者に運良く話を聞くことが出来たらしい。

 リュートは孤児院始まって以来の天才で、3歳にして言語、読み書き、四則演算を習得。
 5歳にしてリバーシや他玩具を開発し商人に権利を売る。その資金で『魔術液体金属』を購入し『S&W M10』『AK47』の開発資金に充てた。

 10歳で孤児院を卒業。
 冒険者になるもレベルⅡクエスト受注後、魔物に襲われ死亡している可能性大。
 遺体が無いのはすでに喰われてしまって、骨まで残っていない等が考えられる。

「そんな……すでに製作者が亡くなっているだなんて」

 メイヤは落胆する。
 これほどの才能を持った人物が10歳という若さで亡くなるなんて。
 天神様はなんと残酷なことをするのだろう。

 次に新たに買い取ったAK47の試射を行う。

 前回同様、中庭に出る。
 メイド達に的となる煉瓦を置かせた。

 その間にメイヤはAK47の説明書に目を通す。
 どうやらリボルバーより沢山弾が撃てるように作られた魔術道具らしい。

「確かに理に適っているわね」

 リボルバーは6発撃った後、シリンダーから弾を取り出し再度手で装填しなければならない。
 しかしこのAK47は、『マガジン』と呼ばれる物に弾が30発も入っている。再装填もマガジンを入れ替えるだけで済ますことができるらしい。

 これならリボルバーのような弾をいっぱい撃つことが出来ると、メイヤは1人納得した。

 煉瓦の準備が終わったため、早速試射に取りかかる。
 まずはメモに書いてある多数の弾を発射する『フルオートマチック』を選ぶ。

「行きますわよ」

 彼女はストックを肩に当てずグリップを握り、チェッカリングを掴んだだけで発砲する。

「きゃぁ!?」

 7.62mm×ロシアンショートの反動に驚き、フルオートマチックの連射に再度腰を抜かす。
 AK47が手から離れ、地面を転がった。

 メイヤは青ざめる。
 リボルバーのように弾が出るのを想像していたため、AK47のフルオートマチックに心底驚愕した。
 またどうやってあれほど弾が連続で発射しているのか構造・仕組みがまったく分からない。

『S&W M10』の仕組み以上に分からないのだ。

 大体こんな魔術道具の概念はこの世界に存在しない。
 だから余計混乱する。

(こんな異物のような設計・方向の魔術道具をたった5歳の子供が作ったというの!? そ、そんなことありえませんわ!)

 しかし現実に品物が目の前に存在する。
 メイヤはまるでAK47を魔王が作りだした呪われた魔術道具のような目で見つめてしまう。

 だが気味悪く思う以上に、自分の才能はこの魔術道具を作り出した天才、リュートの足下にも及ばないことをまざまざと思い知らされた。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 AK47を試射した日以来、メイヤはプライドをおおいに傷つけられ現実逃避するように酒精(しゅせい)に溺れる。

 自室のベッド周りには大量のワイン、蒸留酒、果実酒などが散乱していた。

「しゅせいが切れたわよ、はやく次のしゅせいを持ってきにゃさいよぉ」
「め、メイヤ様……これ以上の酒精は体に毒です」

「ッ! わたくしがあのせいしゃくしゃに! りゅーとに劣っているから言うことがきけにゃいの!」
「ヒィ!」

 メイヤが空の酒精入れを使用人に投げつける。
 酔っているため狙いは滅茶苦茶で、壁に当たって酒精入れは砕けた。

 メイドは青い顔で部屋を飛び出す。

「す、すぐにお持ちしします!」
「……ふん」

 メイヤはベッドに倒れながら、メイドが運んでくる酒精を待った
 メイドが酒精を持ってくると、奪うように掴む。

「んぐぅ、んぐ……」

 酒精を手にすると殆ど口から零れる勢いで喉、胃に流し込んでいく。

 そして彼女は殆ど一日中酒精しか口にしない日々を送った。

 メイド達に留まらず、屋敷外の民衆達はメイヤの変わりように落胆。
 もう彼女は自分達の知る天才魔術道具開発者では無い。

 20歳過ぎればただの人――この異世界にそんな言葉は無いが、皆彼女の才能が枯れてしまったのだと疑わなかった。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 そんな彼女がある朝、天啓――自分がこの世界に生まれた理由に気が付いた。

 自分がそれなりの才能を有しているのは、『S&W M10』『AK47』の開発した本物の天才の偉業を後世に名を残すためだと悟ったのだ。

 自覚したら行動は早い。
 メイドに命じて自室を掃除させ、熱い風呂を沸かさせる。

 体を茹でられるほど熱い湯に浸し、酒精の残りを洗い流した。

 自身の工房に『S&W M10』『AK47』を持って来させると、早速研究に取りかかる。

 改めて『S&W M10』『AK47』の構造を分析してみた。

 リボルバーの構造自体は単純なため再現するのはそれほど難しくはないだろう。
 問題は『AK47』だ。
 未だにあれほど素早く大量に弾丸を発射される原理が分からない。

 AK47を分解したいが、二度と戻せなくなっても困る。
 本物の天才――リュート神が亡くなった今、AK47は二度とこの世に出てこない。慎重に慎重を重ねてもし過ぎることは無い。

 本体よりまず数がある弾薬(カートリッジ)の研究から手を付けた。
 撃鉄(ハンマー)弾薬(カートリッジ)に込められた破裂の魔術を起動する方法さえ分かれば、魔石を使い捨てにする必要はなくなる。

 そして再度リボルバーの空薬莢を観察した。

 小さな筒の中に破裂の魔術を密閉、尻部分を刺激し小さな金属片を飛ばす。
 今までに無い概念。
 しかもその威力は楽に生物を殺害できるレベルだ。

 例えばAK47と弾薬(カートリッジ)を大量に生産できるようになり、魔術師ではない民衆に持たせたら簡単に一国を滅ぼすことだって出来る。
 改めてリュート神が作り出した魔術道具の存在に背筋を震わせる。

弾薬(カートリッジ)の重要な点の1つは、この密閉空間にあるようですわね」

 密閉された空間で破裂させることで、その衝撃に指向性を持たせ推進力を与える。
 指向性を持たせることで、金属片を生物が殺傷できるレベルまで昇華させているのだ。

 拡散するエネルギーに指向性を持たせるという新しい概念。

 未だに撃鉄(ハンマー)弾薬(カートリッジ)に込められた破裂の魔術の起動方法は分からないが――

「……この概念を魔石に利用できないかしら」

 魔石姫らしい思考の帰結。

 結果、彼女は従来の半分の時間で、魔石に魔力を織り込む方法を確立する――その名も『魔力集束充填方式』だ。

 金属製の筒の中に魔石を入れて、両手をかざす。
 筒の入り口は広がっていて、奥に行くほど狭くなっていく。漏斗のような機具だ。
 内側表面を魔力が無駄なく反射する特殊な薬品を塗りつけている。
 お陰で魔力を送る際、魔石に吸収されず漏れる量が激減する。無駄なく魔力を魔石に送れるようになり充填時間が半分の15日短縮出来るようになったのだ。

 メイヤが魔術大学在学中に開発した七色剣を霞ませる技術革新に、魔術道具開発者達はこぞって彼女に称賛を送った。

『メイヤの才能が枯れた』と噂していた人物達は一斉に鳴りを潜める。
 そして彼女は人々から『メイヤ・ドラグーンこそ史上最高の魔術道具開発の天才!』だと持て囃された。

 しかしメイヤはその評価を手放しで喜ぶことなど到底出来なかった。
 自分はただ本物の天才にして神であるリュートからアイデアを盗んだだけなのだから。

 また彼女は『S&W M10』『AK47』の分析と同時並行で情報を集めていた。
『S&W M10』『AK47』を持ち込んだ商人や他商人達に、似た品物がないか全世界を探させたのだ。さらに似たような絵を描いて、冒険者斡旋組合(ギルド)に依頼して僅かな情報でも望むだけの金額を支払うと約束。

 金額に糸目を付けず情報提供を募る。

 だが、この話を聞きつけた海千山千の商人、悪徳者が砂糖に群がる蟻のようにメイヤの元を訪れた。
 もちろん、持ち込まれる情報や品物は全て偽物だ。

 外見を似せただけの紛い物で、質が悪いことに似ているせいでつい期待してしまう。だが、手に取るとすぐに偽物だと分かった。

 そんな玉石混淆の石しか目にしない日々が続いたが、有力な情報がついに入ってきた。

 リュートと同じ孤児院出身――獣人種族、白狼族のスノーという名の少女が、『S&W M10』リボルバーに似たものを持っているらしい。
 彼女は現在、妖人大陸の魔術師学校で勉強しているとのことだ。

 情報を持ち込んだ商人曰く、彼女に言い値で買うと詰め寄ったが全く相手にされなかった。
 だからせめて情報だけでも高く買って貰おうとメイヤを訪ねて来たのだ。
 もちろん彼女は商人が望むだけの金額を情報提供の謝礼として支払う。

 メイヤはすぐに妖人大陸の魔術師学校へ行く決意をする。
 だが、竜人大陸から、妖人大陸まで船で片道約半年以上かかる。
 往復で約1年。

 だが彼女には世界でも数少ない個人飛行船を所有していた。

 個人飛行船とは見た目は完全に船で、大量の魔石を使い浮遊させている。
 これで通常は約半年かかる旅路も、片道約一ヶ月ちょっとで移動することができる。

 早速、メイヤは自身で交渉するためスノーに会うべく、妖人大陸にある魔術師学校を目指した。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、12月24日、21時更新予定です。

ちなみに明鏡シスイのクリスマス・イブの予定は、会社で上司とお仕事です。
はぁ? クリスマス? なにそれ、別にきょ、きょ、きょ興味とかないし(震え声)。
+注意+
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