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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

23章

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第387話 妖人大陸4

「アームス殿! それにウイリアム様達まで、どうしてここに?」

 不自然に盛り上がった丘の上に二つ軍勢が突然、姿を現す。
 トップに立つ人物はどちらもギギとの面識があり、戦場に居ることも忘れてつい声をかけてしまう。
 まず最初に反応したのは、ケンタウロス族の若者だった。

「お久しぶりです、ギギ殿」

 カレンの兄であるケンタウロス族、魔術師Bプラス級、アームス・ビショップが微苦笑を漏らす。

 ギギは元々ブラッド家に勤める警備長だった。
 クリスの幼馴染みであるカレン、そして兄であるアームスとも交流があったのだ。

 アームス達は魔力消失前、妖人大陸に仕事で来ていた。
 そして魔力を奪われたせいで気絶。
 暫く寝たきりの日々が続いた。
 目を覚ますと魔力は消失しているし、体は筋力が落ちていたので休養とリハビリのため以後、妖人大陸で過ごしていたのだ。

 そして、上空にランスの映像が浮かびギギ達を名指しで『殺せ』と断言されたため、急遽武装し駆けつけてきた。

「妹のカレンがお世話になっている軍団(レギオン)団長の故郷で、恩師もいらっしゃるとのことでしたからね。我が部隊のリハビリがてら、一暴れさせて頂こうと参ったしだいです」

 カレンの実家は魔人大陸で武器・防具の開発、販売をおこなっている。
 新作の実地テストも兼ねた私兵団を抱えている、魔人大陸でも有数の武闘集団だ。
 その私兵団を束ねるのがカレンの兄であるアームスである。

 他大陸を飛び回るほどのアクティブさがあり、嬉々として武器を振るう戦闘狂だ。
 社交的で、交渉能力もあり、頭も切れ、家柄も魔人大陸有数で次男。
 一部困った性癖さえなければ、とても有能な人物である。

 ちなみにアームスの性癖とは……『自身より圧倒的に強く、自分を頭から爪先まで支配してくれる強い女性』が好みというものだ。
 それ故、何度も結婚話が上がっているが、全て蹴っているのだ。

 アームスの話が終わると、隣の一軍勢のトップであるザグソニーア帝国魔術騎士団副団長、人種族魔術師Aマイナス級、ウイリアム・マクナエルが声をあげる。

「兄さん! ご無事で何よりです!」

 ウイリアムは暑苦しい笑顔で、ギギを『兄』と呼んだ。
 敵、味方問わず空気が凍る。
 ギギはどこから見ても獣人種族で、ウイリアムは人種族だ。
 2人が兄弟ではないことは一目瞭然である。

 なのにウイリアムは満面の笑顔でギギを『兄』と呼ぶ。

 2人の間に何があるのか思わず邪推してもしかたがない状況である。
 ギギは困惑しつつも、何とか言葉を絞り出す。

「ウイリアム様、兄などとお戯れを……」
「戯れなんて! 師匠は仰っていましたよ。ギギ殿を実の息子のように思っていると」

 ダンはギギの両親を冒険者の依頼とはいえ、捕らえている。
 そして多くの山賊仲間と共に処刑させてしまった。
 故に、ダンはまだ幼かったギギを影から支えてきたのだ。
 だからダンはギギを『自身の息子のように思っている』とウイリアムに漏らしていた。

 ウイリアムとダンを慕う部下達が、いい笑顔で声をあげる。

「師匠の義理息子といえば、自分達の兄同然ですよ!」
「そうですよ、ギギの兄貴!」
「これからもご指導ご鞭撻の程お願いします、ギギの兄上」
『ギギ兄様』『ギギお兄ちゃん』『兄ちゃま』『兄々!』『兄君!』『兄ぃ』『兄たまァ』『兄ヤァ』等々――。

 ギギは約100人の上半身裸のマッチョな男達に慕われる。
 ウイリアム以下、男達の個性ある『兄』呼びにギギは意識を遠く気絶しそうになっていた。

 そんな異様な空気を破ったのはメルティア王国側。
 サジュマン・サニエ=アマンが獅子のように吼える。

「ウイリアム・マクナエル殿! 今、我々は神聖な作戦行動中である! もし貴殿らが邪魔をするというのならば、たとえ友好国といえど容赦はせんぞ!」

 今まで感情をあまり表に出していなかったサジュマンだったが、ウイリアムの登場に仮面が剥がれたように表情を作り出す。
『友好国』云々と吼えているが、彼自身が今にも飛びかかりそうな空気を発していた。

 それもその筈、2人は長年のライバル関係にあるからだ。
 しかも、サジュマン・サニエ=アマンが『敗北』を続けている形でだ。

 サジュマン・サニエは元々、メルティア王国魔術師『副』長だった。
 一方、ウイリアムはザグソニーア帝国魔術騎士団副団長を勤めていた。
 さらにどちらも魔術師Aマイナス級。

 しかし、ウイリアムは若くしてその地位につき、容姿にも優れ、魔術師としての才能もまだまだ伸びしろが伺えていた。
 サジュマンは今年で40代。
 魔術師としての才能も限界が見えていた。

 サジュマンは実戦経験は豊富のため、戦闘ならばウイリアムに勝利することも可能だろうが、将来は……魔術師としてあらゆる点で敗北するのが分かり切っている。
 その事実はエリート街道を歩んできた彼自身に決して受け入れられるモノではない。
 故にどうしても感情が表に出てきてしまうのだ。

 サジュマンの胸中など気にせず、彼の警告をウイリアム達は肩をすくめる。

「容赦しないというのは、こちらの台詞だ。力無き者達を襲う貴殿らには、まったくもって紳士度が足りない。だが安心するといい。師匠の教えに従い自分達が『紳士』というモノを教育してあげよう。他国だからと遠慮することはない。紳士に国境は関係ないからな! どこに出しても恥ずかしくない紳士にしてあげよう!」

 ウイリアムはどちらが狂信者か分からない台詞を告げつつ、彼らはわざわざ角馬から下りてサジュマン達へと向かってくる。
 呼応するようにカレンの兄、アームス・ビショップが部下を連れて駆け出す。

「ギギ殿は正面を頼む! 我々はこのままま彼らの後方を抑えよう!」
「あ、アームス殿! こ、心得た!」

 気絶しかけていたギギは、アームスの指示に意識を取り戻す。
 ギギは冒険者、男達に指示を出し、防御態勢を取る。攻撃ではなく、あくまで防御態勢を維持させる。

 メインの攻撃を担当するのはアームス達とウイリアム達の部隊だ。

 集団戦闘の場合、正面攻撃で敵を倒すのが最も困難だとされている。
 そのため集団戦闘の場合、敵の側面や後方から攻撃したり、包囲するのがよしとされている。

 足の速いケンタウロス族が後方を、側面をウイリアム達が、正面をギギ達が担当することでメルティア王国軍を包囲しようというのだ。
 包囲が完了した場合、メルティア王国軍の退路は自分達で火を付けた森の中しかない。

「いかん! 騎馬隊は包囲網を抜け出よ!」

 自分達の不利に気付いたサジュマンは、すぐに指示を飛ばす。
 騎馬を反転させ、後方の広々とした平野へと抜け出ようとする――が、ケンタウロス族達はそれを許さない。

 騎馬約300に対して、ケンタウロス族達は全員で100人ほど。
 数の上では約3倍あるのだが、彼らの包囲網を突破することができず、子供の遊びの如く手玉に取られてしまう。

 それもそのはず、ケンタウロス族は上半身が人で、下半身が馬の魔人種族だ。
 産まれた時から、馬と生活を共にする騎馬民族などというレベルではない。産まれた時から、馬に乗って生活しているようなモノだ。
 種族的に騎馬でケンタウロス族に敵うはずなどない。

 では、正面から抜け出すことはできないのか?

 メルティア王国軍歩兵部隊が剣と盾を手に、正面に展開するギギ&エル義勇隊とぶつかる。

「エル先生や子供達に手を出そうとしやがって!」
「俺達のエル先生に手を出そうなんて、覚悟はできてるんだろうな!」
「うちの女神に敵対したんだ。ただで済むと思うなよ!」

 先程はメルティア王国のランス狂信に負けてしまったが、現在は心強い友軍が到着している。
 再び士気を取り戻したエル義勇隊は、正規軍相手にもかかわらずほぼ互角に戦っていた。

 だがやはり相手は戦闘のプロ。
 寄せ集めのギギ側は戦意が高くても、本来は突破されてもおかしくない。
 未だに耐えられているのは、防御に専念させているのと、空からシルヴェーヌ&ドラゴンの支援があるお陰である。

 メルティア王国側にとって、この時点で残る脱出経路は燃える森を除くと、反対側面のウイリアムが率いるザグソニーア帝国方面しかない。

 ウイリアム達はわざわざ角馬から下りて、徒歩で向かって来ていた。
 剣を握り、盾を構えたメルティア王国歩兵が躍りかかる。

「ザグソニーア帝国、ウイリアム・マクナエル殿、覚悟!」

 歩兵は利き手に持つ剣を力一杯振り下ろす。
 そのまま次期皇帝と名高く、現場指揮官のウイリアムを討ち取れば大金星! 出世街道は約束されたも同然だ。

 剣はウイリアムの首を切断――しない!
 丸太より太い彼の腕が剣と首の間に割り込ませる。
 剣はウイリアムの肌を薄く切った程度で、刃が筋肉で止まってしまう。成人男性で鍛えられた兵士が片腕とはいえ、全力で振り下ろした剣で筋肉を切ることができなかったのだ。

「ば、馬鹿な!? 剣で切れないなんて!?」
「ふんッ!」

 兵士が驚愕している隙に、ウイリアムが無造作に拳を振るう。
 兵士は咄嗟に鉄製の盾で防ごうとするが、何の意味もなかった。
 盾はパイ生地のようにあっさりと凹む。
 体は投げられたボールの如く中を舞い地面へと落ちる。
 攻撃、防御、どちらも非現実的な光景に他兵士達は思わず硬直してしまう。

 ウイリアムは驚愕する兵士達を前に、仲間へと指示を出す。

「いいか、絶対に殺すなよ! 一人残らず紳士にするんだからな。意識を奪うだけにするんだぞ!」

 先程空中を舞った兵士も盾を握っていた腕は明後日の方角へ折れてはいるが、意識を失っているだけだった。
 どうやら命を奪わないようにちゃんと手加減をしていたらしい。

「く、クソが! 剣が駄目なら燃やし尽くしてくれる!」

 森を焼いた魔術道具部隊の男性一名が、手にしている杖を突き出し炎を生み出す。
 炎はまるで地球にある火炎放射器の如く、彼の正面に居る筋肉男へと襲いかかる。

 そして男は炎に包まれ燃え尽き――なかった!

 炎に包まれた男、ウイリアムのオジである帝国ザグソニーア帝国魔術騎士団長、人種族、魔術師Aプラス級、レイーシス・ダンスが若干黒くなった肌を撫でつつ、男が手にする魔術道具を片手で掴み握りつぶす。

「ヒィ、つ、杖が! 炎の杖をに、握りつぶすなんて……ッ!?」
「君ィ、こんな魔術道具を使っていると筋肉が付かないぞ。ほら、やっぱりだ。腕も、肩も、腹筋も、足も全然筋肉が付いていないじゃないか」

 レイーシスは敵兵を捕まえると装備の上から体を撫で筋肉の付き方を確認する。
 元々策謀を巡らせるタイプだったレイーシスだったが、ウイリアムに無理矢理、筋肉トレーニングに付き合わされた。
 今では彼もド嵌りして、魔術騎士団長の仕事をほぼ引退、実務をウイリアムに押しつけて筋トレをおこなっているほどである。

 レイーシスは昔では考えられない影が一つもない、太陽のような笑顔を捕まえた敵兵へと向けた。

「だが安心するといい。これから我々が付きっきりで君達をサポートしよう。なに、私も最初は苦しくて、辛くて、翌日は痛みで悶えていたが――すぐに気持ちよくなる。むしろ翌朝、目を覚ましたら体のどこかが痛くないと不安を覚えるぐらいだ!」
「い、いったい我々をどうするつもりだ!?」
「ははっは! どうするって、さっきウイリアムが言ってたではないか。最終的にどこにだしても恥ずかしくない紳士にしてあげようと! なに安心するといい、金銭や見返りなど野暮なことは言わない。あくまで善意だからな! もちろん全員、最後まで面倒をみよう!」

 レイーシスの言葉に敵兵達が震え上がる。
 彼はとりあえず捕まえた敵兵を調きょ――紳士にするべく意識を刈り取る。
 再び新たな獲物を求めて前へと進む。
 ウイリアムやレイーシスだけではない。彼らの部下も似たり寄ったりで、次々に敵兵を無力化していく。

 剣も、魔術道具も効かず笑顔で迫ってくる筋肉の壁。

「おのれ、おのれ……! 神の軍隊である我々を逆らうなど! 貴様達は神罰が怖くないのか!」

 サジュマンは馬上から溶けていく自軍兵士達を前に怒声をあげてしまう。
 逃げ道――包囲を突破するには、もう燃え続けている森へ入るぐらいしか方法がない。
 燃える森へ入ったらどうなるのか……文字通り火を見るより明らかである。


 だが――その燃えさかる火災が『フッ』と蝋燭の火が消えるように鎮火してしまう。

 雨が降ったわけでも、強風が引き荒れても、木々が燃え尽きたわけでもない。
 まるで初めから無かったように火が消えてしまったのだ。

 一目で分かる異常事態に皆、動きを止めてしまう。
 先程まで耳を手で覆っていてもうるさかった音が静まったお陰で、森からの異音を耳にすることができた。

 異音と言っても、足音である。
 だが、ただの足音ではない。
 つい数十秒前まで轟々と燃えていた森から、二足歩行で歩いてくる音が聞こえてくるのだ。

 木々がまるで『ソレ』を避けるかのように、火災でまだ無事だった木や草花が萎れて枯れていく。

『ソレ』が姿を現して、一番最初に反応を示したのはギギとタイガだった。
 ギギが震える声音で呟く。

「ま、まさか……そんな貴様はリュート達に倒されたはず! この目で確かに目撃したはずなのに!」

 ギギが怯えて、怒りの視線の先、一人の男が立っている。

 背中からは4枚の翼が生え、体躯は大きく確実に2mは超えている。下半身は黒々とした獣のものだった。
 頭部からは悪魔のような角が生え、口から息に呼応するように黒い魔力が漏れ出る。

 リュート達によって倒されたはずの『黒毒(こくどく)の魔王レグロッタリエ』が、再びその姿を現した。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
7月26日、21時更新予定です!

まずはご報告から。
軍オタコミックス1巻の重版が決まりました!
これもひとえに皆様の応援のお陰です。本当にありがとうございます!

また感想返答を書きました(いつも感想誠にありがとうございます!)

良かったら活動報告をご確認ください。

最後に軍オタ8巻&コミックス2巻が8月に発売します。
近いうちに詳しい内容を活動報告へアップする予定なので、その際は是非ご確認して頂けると幸いです。

(1~5巻購入特典SSは15年8月20日の活動報告を、2巻なろう特典SSは14年10月18日の活動報告、3巻なろう特典SSは15年4月18日の本編をご参照下さい。)
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