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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

23章

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第386話 妖人大陸3

 エル、ギギ、子供達が孤児院へ戻ると、途中で二人が同時に足を止める。
 ギギは人の気配を、エルは聴覚で孤児院の側に大勢の人々が居ることに気付いたのだ。

 ギギが奥歯を鳴らす。

「まさかもうここまで追っ手が来るとは……。気配から察するにかなりの人数がいるようだな」
「!? この声は! ギギさん、大丈夫です。皆さん、私達を狙う敵ではありません」

 厳しい顔をしていたギギとは正反対に、エルは不安そうな表情から一転、嬉しそうに微笑みを浮かべる。
 ギギを説得し、エルが子供達を連れて先へ進む。

 孤児院が見えてくると、あちらもエル達の姿を捕らえた。
 彼、彼女達はエル達に気付くと、声を挙げて駆け寄ってくる。

「エル先生! 無事でしたか!」
「孤児院に誰も居ないから心配したよぉ」
「エル先生、お久しぶりです!」
「はい、皆さんも元気そうでなによりです」

 年若い男女が悲喜交々な反応を見せた。
 彼、彼女達は孤児院を卒業した子供達である。
 恰好から冒険者、商人、農業従事者、職人、漁師、一般人等――多種多様な人材が揃っていた。
 中には明らかに装備がいい衛兵的人物までいた。

 彼らはタイガが報告した商業都市ツベル側から来た一団である。
 最初はエルの命を狙う者達と勘違いされ、異様に士気が高い町人達と戦いそうになった。
 しかし、すぐに孤児院卒業生達だと気付き、エルを助けに来たと信じてもらうこともできたのだ。

 エルは一通り、卒業生達との再会を済ますと、問いかける。

「でも、みんなどうしてここへ? お仕事はどうしたのですか?」
「エル先生の危機なのに、仕事なんてしてる場合じゃありませんよ!」
「そうですよ! あの空に浮かんだヤツが変なこと言い出したから、エル先生や子供達が危ないって心配で心配で!」
「も、もしかして私達のためにお仕事を放りだしてきたんですか!?」

 皆の返事にエルは驚きの声をあげる。

「いえ、ちゃんと許可は取りましたよ。というより……殆どの親方や上司が、一緒に付いてきてるんですよ」

 職人となった子の一人が、紹介するように振り返る。
 そこにはがっしりとした体躯の中年男性が立っていた。

「応よ! うちの馬鹿弟子とカカアが世話になったエル先生の危機なら、駆けつけなきゃ罰があたるってもんだ!」

 次に肌が日に焼けた漁師が告げる。

「ウチも若い衆が怪我をした時、助けてもらった恩がある。そんな恩人の危機なら、仕事なんてほっぽって駆けつけるに決まっているさ!」

 次は孤児院の関係者でもない冒険者の男女だ。

「自分は冒険者駆け出しの時、ガルガルに不覚を取り死にかけました。その時、偶然近くに居たエルさんに助けてもらったんです。少しでもご恩を返せると思いかけつけたんです」
「私も彼と同じでエルさんに助けて頂きました。是非、恩を返させてください!」

 冒険者男女の後、商人であるマルトンが声をあげる。
 マルトンはリュートが孤児院在籍していた際、『リバーシ』の権利を売った商人だ。
 彼は舞台俳優のような動作で肩をすくめる。

「僕なんてエル先生に大怪我を治癒してもらっただけじゃなくて、リュート君にも儲けさせてもらったからね。ここでエル先生を見捨てたとあっては商人としての恩義にも反するし、彼に顔向けできないよ」

 他にもエルに世話になった、恋人が、両親が、友人が、自分自身の命を救ってもらったからと次々に声をあげる。
 エルはその声を聞き、利益の為、自分達の命を狙う者だけではなく、危険も顧みず助けに来てくれた人々の温かさに触れて思わず涙をこぼしてしまう。

「ありがとうございます……ありがとうございます……」

 ただお礼を言うことしかできなかった。
 そんな彼女の肩に手を置き、抱きしめる人物が居た。
 夫のギギである。
 エルは彼の胸に顔を埋めて、嬉し涙を暫しこぼす。

 代わりにギギが改めてお礼を告げた。

「エル――いや、妻のため、子供達のためにお集まり頂き感謝する。できれば各自に挨拶をしたい所だが、今は子供達の安全確保と、一人で戦っている仲間がいる。すぐに助けに向かいたい。戦える男達は、自分に付いてきて欲しい。残る者達は孤児院に立て籠もる準備を頼む」

 ギギの言葉に戦闘前の緊張とは違う。
 別の緊迫した空気が流れる。

 救援に来た者達の間で、密やかに会話がなされた。

(あれがエル先生の旦那か……)
(エル先生が結婚したとは聞いてたけど、本当だったなんんて)
(ちくしょう、俺達のエル先生に……ッ)
(魔術師Bプラス級の魔術師でしょ? 真面目で、誠実そうだしいいのかな?)
(でも顔が怖くない?)

 男性陣は憧れの人を奪ったギギへ嫉妬の炎を燃やし、女性陣はエルを任せられるか評価を開始する。
 微妙な空気が互いの間に流れた。

 ――ギギが彼、彼女達に認められる日は来るのだろうか。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



『グガアァァァァァアッ!』

 ドラゴンの雄叫び。
 同時に口内から一抱えほどの火炎の弾が吐き出される。
 炎弾に騎馬が慌てて逃げ出すが、地面に着弾した衝撃や細かい土、草までは回避しきれず足が止まる。
 その隙を付いてタイガが騎馬へと躍りかかった。

「ぐぎゃぁ!」

 メルティア王国騎兵の一人を殴り落とす。
 男はタイガの拳と落下の衝撃であっさりと意識を手放した。
 これでようやく5人目である。

「はぁー、はぁー……」

 タイガは肩で息をし、頬から流れる汗を拭う。
 もし彼女に魔力があれば、相手が騎兵の魔術師だろうが一蹴するなど簡単なことだった。
 しかし魔力が無い今、急遽ドラゴン(幼生体)に乗って駆けつけてきた『エルの友人』を名乗るシルヴェーヌ・シュゾンの援護でようやく敵を倒している状態である。

 最初こそ疑ったが、メルティア王国騎兵と敵対しているようなので、タイガは彼女を利用するつもりで動いていた。
 お陰で即席のコンビネーションだがなんとか倒すことが出来ている。

 効率を考えたら圧倒的に悪いが、相手は騎兵。しかも、戦場場所は障害が無い平野だ。
 シルヴェーヌが乗るドラゴンは幼生体のため炎弾も連発はできないが、角馬の足を止め、奇襲を仕掛けてなんとか倒している状態である。

 騎兵達を纏める禿頭の男……メルティア王国魔術師長、サジュマン・サニエ=アマンがタイガとシルヴェーヌの足掻きに不快感を示す。

「……これほど無駄な足掻きもない」

 眉も剃り落とした強面で、肩で息をするタイガを睨みつける。

「魔術師S級、獣王武神(じゅうおうぶしん)ともあろう者が、ここまで見苦しく足掻くなど武人として恥ずかしくないのか? 腐ったゴブリンの死体より、醜悪ですよ。武人なら、武人らしく潔い最後をお迎え下さい」
「無駄な足掻き? どこが無駄な足掻きよ。現にアンタらは今、ここで足止めを食っている。仲間を倒されている! 負け惜しみにしか聞こえないんだけど!」

 タイガの反論にサジュマンが溜息を漏らす。

「自分達を本当に足止め出来ていると思ったのですか? 自分達はただ待っていただけですよ。――どうやら丁度来たようですね」
「!?」

 城塞都市方面。
 土煙を確認する。
 馬車が何台も、何台もこちらへと向かってくるのだ。

 馬車が側へと辿り着くと、幌がかかった荷台部分からローブを被り、杖を手にした集団が下りてくる。
 さらに他馬車から、剣を手にした兵士達も出てくる。

 杖を持ったのは魔術道具部隊で、彼らがエル達の逃げ込むだろう森を焼いた者達だ。
 剣を持つ兵士達は魔術道具部隊の護衛についた者達である。

 追加人員として約300人が集まった。

 サジュマンが満足気に頷く。

「これで町に隠れた神敵(しんてき)を討つことができそうだ。あまり大きくない町とはいえ、隠れられるとどうしても人手が必要になるからな」

 元々彼らが立てた作戦は、逃げ込まれると面倒な森をまず最初に焼き払う。
 町へと身を潜めても、人海戦術で包囲網を縮めて追いつめる。
 町から逃げ出しても、騎兵で難なく追いつき討ち取る予定だった。

 サジュマン達は最初から、エル達を一人たりとも逃がすつもりなのどなかったのだ。

「さて、無事集合も完了した。これより早速、兎狩りと行こう。その前に邪魔者達を排除しなければならないが」
「調子に乗らないでよね! 友達のエルや子供達には指一本だって触れさせないわ!」

 シルヴェーヌは集まった部隊を混乱させる狙いで、指揮官であるサジュマンを狙う。
 彼を殺害するため幼生体を降下。
 その勢いに任せて炎弾を吐き出させる――が、彼の周りに杖を持ったローブ姿の男達が集まり壁を作る。

 彼らは一斉に杖を向けると、先端から炎がほとばしった。
 彼らが持つ杖は、炎を生み出す魔術道具である。
 炎弾と杖の炎が激突し爆発を起こす。

 降下していたシルヴェーヌは慌てて上空へと退避。
 それが運良く功を奏す。
 サジュマンを守護した以外の杖男達が、一斉にシルヴェーヌ&ドラゴンを狙い炎を吐き出したのだ。

 すぐに逃げ出したお陰で、何とか回避することができた。
 しかし、これで先程のように炎弾で攻撃をすることもできない。
 まだドラゴンが幼生体のため連発できないし、速度も遅いのだ。
 遠くから撃っても楽に回避され、さらに今は魔術道具があるため、先程のように相殺することもできてしまう。

「……ッゥ」

 タイガは一連のやりとりに歯噛みする。
 魔術道具部隊の出現でシルヴェーヌ&ドラゴンにはもう頼れない。
 単騎では魔力がない今、いくら獣人種族で人種族より身体能力が優れているとはいえ、人数差は圧倒的。
 敗北は確実だ。

 残る手段といえば……。

(ここで一秒でも粘って、どんなに小さくても傷を与えてやる!)

『逃げる』という選択肢は無い。
 彼女にあるのはただただエルやギギ、子供達――大切な人々を護りたいという想いだけだ。
 たとえ、自身の命を失おうとも。

 魔術兵士が上空のドラゴンに睨みを利かせ、歩兵が剣を抜きタイガへと対峙する。
 一朝一夕では出来ない訓練を積み重ねた練度が一目で分かる動き。
 しかし、その動きが僅かに揺れる。疑問を抱くがすぐに理由を気配、聴覚で認識した。

「タイガ、無事か!?」

 彼女の背後から心底心配している男性の声が響く。

 後方を振り返るとギギ、他にも冒険者風の男や女、手に鍬や鎌を持った農民、銛を持つ漁師、他職人や衛兵のような統一性の無い武器や防具を手にした男達が姿を現す。
 数は約100人。

 町人男性も居るが、見覚えが無い人物の方が多い。
 状況についていけず混乱していると、ギギが目の前まで駆け寄ってきた。

「タイガ、無事か!? 怪我はしてないか!」
「う、うん、大丈夫。多少の怪我はしてるけど、まだ戦えるから」

 タイガは場違いだと理解しながらも、つい一瞬前まで決死の覚悟で突撃する寸前だったにもかかわらず、ギギの声を聞いただけで胸が痛いほど高鳴り、自分を心配しているのが嬉しくなる。
 必死に表情に出ないよう我慢した。

 一方でギギは強面の顔をさらに顰める。

「タイガには色々言いたいことがあるが、今は緊急時だ。これが終わったらエルさんと一緒に話があるから覚悟しておけ」
「ッ!? え、エルお姉ちゃんはどうだった?」
「怒っていたに決まっているだろ。俺自身もだ」

 ギギの冷たい態度と台詞内容にタイガは先程までの幸せな気分から一転、顔色を青くする。
 ギギの説教も怖いが、エルのはさらに上だ。

『普段、大人しい人が怒ると怖い』というのもあるが、エルの場合は本人も悲しむため自責の念が辛くなる。
 二人を騙す形で敵へと突撃した自分の自業自得で、無事に生き残れるか分からないが後の事を考えてタイガは頭を抱えてしまう。

 そんな彼女を放置し、予想外の人員増加にサジュマンは眉根を顰めた。

「……なんだ貴様らは?」
「獣人種族、魔術師Bプラス級、ギギだ。彼らは義憤に駆られ集った者達だ。貴様達こそ何者だ。なぜ、孤児院を……弱者を狙う。貴様達はそれでも騎士か!」
「……自分はメルティア王国魔術師長、人種族、魔術師Aマイナス級、サジュマン・サニエ=アマン。義憤だと? 理解できないな」

 ギギの激憤に対して、サジュマンは馬上からあっさりと受け流す。
 むしろ、なぜ彼らが義憤に駆られ、この場に居るのか本気で理解できない表情を作る。
 ギギは彼のそんな態度に吐き気を覚える。

「本気で言っているのか? 自分達が今、どれほど醜いおこないをしようとしているのか。力を持たない女子供達を襲おうとしているのだぞ!」
「確かに相手は力を持たない女子供だ。しかし、彼女達は我々の神敵(しんてき)ではないか」
「し、神敵だと?」

 サジュマンは淡々と告げる。

神核(しんかく)を手にした我々の次期王が望んだのだ。貴様達の死を。天神が望む。敵対する貴様達こそが悪なのだ」

 彼の言葉に兵士達は無言で同意する。
 彼らはランスが神となり、メルティア王国を中心にこの異世界を治めると考えているのだ。
 サジュマン達はランスの本心を知らず、一方的に『自分達こそが正義』『天神に仕える神兵である』と思いこみ行動しているのに過ぎない。

 彼らの『狂信』がギギ達の士気を超える。
 装備、人員、練度はあちらが圧倒的に上。唯一、勝っていた点は士気――気持ちだけだった。
 それすら彼らは超えてくる。

 ギギだけではない。
 エルのために集まった者達全員が彼らの狂信に怖気を覚えた。
 サジュマンはまるで聖者の如く、厳かに告げる。

「神が定めた運命だ。潔く受け入れよ」

「神? か弱い女性や幼子を襲うのが神の定めし運命というのか? だとしたらその神はまったくもって紳士ではないな」
『!?』

 突然、第三者の声が響く。
 声が聞こえた方へ皆が視線を向けると、なぜか不自然に盛り上がった丘の上に二つの軍勢が姿を現していた。

 一つは下半身が馬で、上半身が人のケンタウロス族。鍛え抜いた体に使い込まれた鎧に武器を手にしている強者の風格を漂わせていた。

 もう一つは反対に、馬に乗っているが上半身は裸で、寸鉄一つ帯びていない。
 しかし、全員が鍛えに鍛え抜かれた筋肉を惜しげも無くさらしているため、まったく弱くは見えなかった。
 むしろケンタウロス族とは違った迫力がある。

 先程の台詞は上半身裸の筋肉集団の先頭に立つ若者が告げた。
 彼は立て続けに語る。

「師匠は仰った『健全な筋肉には紳士な精神が宿る』と。どうやら貴殿達には紳士度が足りないらしい……ならば、我々が直々に教えて進ぜよう!」

 筋肉集団の先頭に立つ若者――ザグソニーア帝国魔術騎士団副団長、人種族、魔術師Aマイナス級、ウイリアム・マクナエルが組んでいた腕を解き暑苦しい笑顔と胸筋を強調しながら宣言する。

「さぁ、皆の者! 紳士の時間だ!」
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
7月23日、21時更新予定です!

今回でとりあえず前の伏線、『筋肉の割合が多い』フラグは回収出来そうです! 
よかった、よかった。
しかし今回は妙に難産でした。
でも無事に書けて良かったです。

(1~5巻購入特典SSは15年8月20日の活動報告を、2巻なろう特典SSは14年10月18日の活動報告、3巻なろう特典SSは15年4月18日の本編をご参照下さい。)
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