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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

23章

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第383話 中心地

 ――第三者視点。



 神核(しんかく)を手に入れ、神化(しんか)したランス・メルティアは悔しげな表情で歯ぎしりをする。
 先程まで見せていた上位者としての余裕は消え、自身で映し出した映像を前にあからさまに不快な表情を作っていた。

 本来は地面に倒れている前世で恨みを持つ、リュート・ガンスミスに大切な者達が一方的に惨殺される姿を見せ絶望させる予定だった。
 そのためにわざわざ、この異世界でリュートや関係者に恨みを持つ人物を選定し力を付与させたのだ。

 だが蓋を開けばどうだ?

 魔力を奪い魔術が使えず、周囲を煽り疑心暗鬼、離反工作もした。さらに彼らを狙うのはランス自身が力を与えた異形の怪物達。
 本来であれば一方的な虐殺がおきてもおかしくない。

 実際は、ランス自身も全員を殺害できるとは考えていなかった。
 魔力を奪い魔術が使えなくても魔石や魔術道具は存在する。
 信頼できる人物達と策を練り、魔力無しの一般的武器を使用すれば撃破することも僅かながら可能だと考えていた。

 また撃破できずとも逃走し、逃げ延びることは可能だと。

 なのに結果は彼の予想を悪い意味で裏切る。

 一方的にランス側が惨敗し、現状でリュートの関係者達は誰一人死んでいないのだ。

 ランスは思わず一人言葉を漏らす。

「ありえないだろ……彼らには自分達の望みにそった力を与えた。だから、決して合理的で効率の良いモノではない。付け入る隙はいくらでもある。だからと言って決して弱いわけではない。魔術有りだとしても、犠牲者覚悟で臨まなければ決して勝てない力があったはずなのに――」

 さらに問題は北大陸だ。

 オールが望んだ力は『魔術』と『最強の肉体』、『自身を裏切らない最強の兵士達』だ。
 だからランスは、北大陸で最も強い巨人族とオールを融合し、魔力を与え、絶対に裏切らない部下として魔法核(まほうかく)の力で縛り付けた。

 にも関わらず突然、現れた白い鳩の着ぐるみを着た筋肉の塊がポージングを取ると、なぜか魔法核(まほうかく)の力で縛り付けたはずの巨人族が開放されてしまう。
 驚愕はしたが、まだ納得できた。

 魔法核(まほうかく)の力は強力だが、絶対ではない。
 奇跡的に縛りを破ることがあってもおかしくはない話だ。
 だが、巨人族と融合したオールを元に戻したのには驚愕を通り越し、意味が分からなかった。

 映像越しとはいえ、目の前で見せられた今でもまだ信じられない。

 オールと巨人族は魔法核(まほうかく)の力で細胞レベルで融合していた。
 たとえ前世、地球の医療でも分離は不可能。魔力が戻り魔術が使えたとしてもだ。
 なのに短時間でオールを巨人族の体から分離させた。魔術も、魔法も、神法も、現代医療の力もなくだ。

「彼はいったい何者なんだ……?」

 ランスは独白するが、白鳩着ぐるみの中身が魔人種族、ヴァンパイア族のダン・ゲート・ブラッド伯爵だと知っている。
 調査した限り、魔術師A級という実力者だが、所詮はその程度。
 気にもとめていなかった。

 なのに結果はご覧の有様だ。

「いや、ダン・ゲート・ブラッドだけじゃない。魔人大陸も、竜人大陸も、獣人大陸も全部おかしいだろう。なぜ魔術も無しに戦って勝っているんだ? ありえないだろう」

 いつもの作り物っぽい微笑みではなく、生の感情を剥き出しにした表情でぶつぶつと今まで起きた各大陸の状況に疑問を呈する。

「ふふふ……」

 しかしランスの真剣な考察も、地面に未だ倒れているリュートの笑いに停止した。
 彼に笑われたと思い、ランスは反射的に瞳に怒りを灯し睨みつけてしまう。

 実際、リュートは彼を笑ったわけではない。

 竜人大陸、獣人大陸はともかく魔人大陸のセラス、メリー、マルコームには驚かされた。リュート自身、長い付き合いにもかかわらずあんな一面があることをまったく知らなかった。

(メリーさんはともかくセラス奥様、マルコームさんは今後絶対に怒らせないようにしよう。マジで怖いし)と硬く心に誓ってしまう。

 北大陸のダンには驚かされたが、『旦那様だしなー』と納得してしまった。そんな自分がおかしくてつい笑いを零してしまったのだ。
 リュートはランスに睨まれていることに気付く。
 怒りの意図に思わず気付き指摘する。

「別にオマエを笑ったわけじゃないよ。『旦那様らしいな』と思って納得した、自分の考えがおかしかっただけさ」
「『旦那様らしい』って……リュートくんはアレの異常性を分かっていないのか?」
「分かっていない云々っていうより、もう慣れたっていう方が近いかな?」

 むしろリュートはあれ以上の異常性を知っている。

(星の瞬きすら飲む込む黒いオーラを放つ人、絶望、魔王、後は口に出すのもはばかれるあの人とか。……まぁ全部、『受付嬢さん』のことだけど)

 アレ(・・)を知っているからこそ、『ダン・ゲート・ブラッド伯爵』程度で驚かず、慣れたのかもしれない。

 他にもリュートは多くのことを経験している。
 スノーの『ふがふが』癖、クリスの異常的な射撃センス、リースの実姉に対しても容赦ない非常な攻撃能力、ココノの天才的運転技術、メイヤの想像もできない突飛な行動、シアのコッファーに対する偏愛的執着。
 他にもまだある。エルの女神的愛、反対に双子にもかかわらずアルの屑っぷり、ギギの不器用さや勘違いした乙女心理論、タイガの複雑な恋愛感情。

 リュート自身、この異世界に転生し、田中孝治(たなかこうじ)を見捨てた負い目から、PEACEMAKER(ピース・メーカー)を立ち上げた。
 とはいえ前世に対して、リュートが恨みを欠けらも抱いていなかったといえば嘘になる。
 彼はそこまで聖人君子ではない。

 だがリュートはこの異世界で、前世では想像もできない多くの経験をした。
 お陰で彼はPEACEMAKER(ピース・メーカー)を立ち上げ、嫁達と共に理念に賛同してくれる仲間や友人達と共に真っ直ぐ自身の信念に従い進むことができた。

 だからこそ言わずにはいられなかった。

「この異世界は前世の世界と同じように広いんだ。自分の狭い世界だけじゃなく、もっと外に目を向けた方がいい。きっと、復讐することに代わる『何か』があるはずだ。復讐なんて止めて今を生きろ。過去に囚われていたら苦しいだけだぞ」
「…………」

 リュートの言葉に、怒りの炎に燃えていたランスの瞳がふっと冷たくなる。
 ランスは途端にいつもの落ち着いた態度を取り戻した。

「リュートくんには分からないだろうね。僕の苦しみなんて。過去に囚われていたら苦しい? 違うよ。過去にけりを付けていない、復讐を果たさないから苦しいんだ。大抵の人は決着を諦めてただ苦しみを抱えるしかできない。自分を誤魔化して、偽って生きるしかない。そんなんだから、いつまでも経っても苦しいだけなんだ」
「違う! 過去を抱えることや忘れたり、誤魔化すことは決して悪いことじゃない! 第一、過去を変えるなんて神様にだってできないんだ!」
「リュートくんのような負け犬とは違う。僕は出来る。実際に、その一歩前まできているんだから。まったく説得力がないよ」

 リュートの言葉に、ランスは嘲笑で返す。
 事実、彼はもうすぐ地球への扉を開こうとしていた。
 今居る異世界そのものを犠牲にするかもしれないリスクを抱えてだ。

「僕は何が何でも復讐を完遂する。絶対に後悔などしない」

 ランスはごく普通の音量、声音で断言する。
 それは、例え今死んで生まれ変わっても決して変わらない決意を感じさせる力があった。

 リュートは彼の台詞を聞き、自身の言葉では決して彼の意思を変えられないと思い知らされてしまう。ある種、分かっていたことだが、リュートは無念から下を向き、唇を噛みしめる。
 追い打ちを掛けるようにランスが告げた。

「知人が無事で調子に乗っている気持ちは分かるけど、竜人大陸、魔人大陸、獣人大陸、北大陸はあくまで前座。僕の本命は初めから妖人大陸ただ一つ。どうして妖人大陸だけ、他大陸のように復讐者を作らなかったか分かるかい?」

 リュートは指摘されて気付く。
 確かに他大陸はPEACEMAKER(ピース・メーカー)や他関係者に恨みを持つ人物をランスが魔法核で怪物化させた。

 しかし、妖人大陸だけはその怪物が映し出されていなかった。
 ランスは自慢気に告げる。

「妖人大陸にはリュートくんの故郷、思い出の地だろう? そんな大切な場所に中途半端な恨みと力を持ったモノを送っても興ざめだよ。だから僕自身の手でわざわざ怪物を作り出したんだ。手間暇、時間、恨み辛みを込めて丁寧に、丁寧に。魔法核の力を持ってしてもこの怪物を作り出すのには苦労したよ。正直、この作業がなければもっと早く中心地にこれたんだけどね。でも、どうしても手を抜く気にはなれなくて」
「……いったいそこまで苦労して、どんな怪物を作り上げたんだ」

 リュートは彼の饒舌っぷりに思わず顔を上げて聞き返してしまう。
 ランスは嗜虐的な微笑みを浮かべながら、質問に答えた。

「僕が作り出した怪物は――」
「!?」

 彼の言葉に、リュートが戦慄し、青ざめた表情で驚愕する。
 リュートはもたらされた言葉が『事実ではない』と願うように反論した。

「馬鹿な! アイツは死んだはずだ! 怪物化させるなんてできるはずがない!」
「魔法核の力を注いで蘇らせたに決まっているじゃないか。だから無駄に時間がかかったんだよ。本当に彼には苦労をかけさせられるよ」

 ランスはオーバーリアクション気味に、肩をくすめて手のひらを上へと向け首を振る。
 視線をリュートに戻すと、淡々と告げた。

「妖人大陸に居るリュートくん達の関係者は全員殺す。君の恩人であるエルさんも、師である獣人族のギギも、二人の赤ん坊達も、友人のタイガや孤児院の子供達、町も地上から消す。絶対にだ。絶対に全員を殺す。そのために策や魔術道具、魔石、どれだけの強者が揃っていようとも覆せない怪物を作ったんだ。たとえ魔術が使える万全な状態でも、今まで作り上げてきた現代兵器で武装したリュートくん達でさえ抗えない絶望を」

 ランスの言葉通り、たとえ魔術が使える状態で、リュート達が今まで作り上げてきた現代兵器で武装した状態でも勝てるかどうか分からない。
 そんな怪物の相手を妖人大陸に居るエル達はしなければならないのだ。
 彼女達が勝利する可能性など絶無である。

 リュートもその事実を心底理解しているため、青ざめた表情は一層絶望の色が深まった。
 そんな彼の表情を前に、ランスは今まで一番のとろけるような笑顔を浮かべる。

「ああ、リュートくん、僕はその表情が見たかったんだ。僕が受けた絶望の万分の一でも知るといい」

 ランスは無邪気な笑顔で宣言した。

「さぁ一方的な虐殺ショーを一緒に楽しもうじゃないか。リュートくん、頑張って悲鳴を上げてくれよ」



 そして舞台は、妖人大陸へと移る。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
7月11日、21時更新予定です!

次はいよいよ妖人大陸編!
エル先生、ギギさん、タイガなどがメインの回になります!
ランスが作り出した怪物とは!?
エル先生達はどうやって、この危機を乗り越えるのか是非お楽しみに!

話が変わって――最近、暑くなってきたじゃないですか?
昨日、台所で茶碗を洗っていたら、三角コーナーからコバエが1匹、発生していました。
『そろそろ寝る時に、三角コーナーの生ゴミを袋に纏めて捨てないとなー』と考えていたら、コバエが右目にダイレクトアタック!

右目は痛いけど、両手は茶碗を洗っていたので泡だらけ、抑えられないし、洗っていた途中の茶碗は落とすし散々でした。
『ダイレクトアタックするにももっとぶつかる場所があるだろ!?』と思わずツッコミを入れましたが、悔しいのは……『これでなろうのネタに使える!』と喜んでいた自分がいたことです。

気付いたら色々染まってしまったなー……。

(1~5巻購入特典SSは15年8月20日の活動報告を、2巻なろう特典SSは14年10月18日の活動報告、3巻なろう特典SSは15年4月18日の本編をご参照下さい。)
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