挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

3章

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

39/483

第36話 お嬢様の決断

第34話、第35話、第36話、第37話の計4話を連続で更新しました。
 魔人大陸の玄関口である港街。
 オレが約1年前、偽冒険者達に騙され奴隷として売られた奴隷館がある街だ。

 オレはフード付きの外套を着て表通りの様子を窺う。
 宿屋のひとつから、金髪の青年2人組が出て来た。

 泊まるために宿屋を訪ねたのではなく、宿泊客の確認のため店の扉をくぐったようだ。
 相手はヴァンパイア族当主の部下だろう。
 彼らが探している人物は――クリス・ゲート・ブラッドお嬢様しかいない。

 オレとクリスお嬢様は夜、城の裏手にある森から徒歩でこの港街を目指した。

 お嬢様の安全を考えたら魔人大陸にいるより、他の大陸に出た方がいいという判断からだ。

 馬車で半日。
 不眠不休で小休憩を挟みながら、1日かかってオレはお嬢様を抱えて街に辿り着いた。
 腹が減るとカレンのサプライズパーティーで残ったお菓子をつまんだ。

 お嬢様は移動中、俯き殆ど反応を示さなかった。
 たった1日の出来事なのに天地のように状況が変わったことが不思議でしょうがない。

 街に着くと宿へと向かわず、旦那様がオレを買った『ラーノ奴隷館』へと向かった。
 予想通り宿にはすでに彼らの手が回っており、ギリギリのタイミングでオレとお嬢様は奴隷館へと滑り込んだ。



 外の様子を確認し終えると、オレはラーノ奴隷館に戻った。
 裏手に回り、警備長と目を合わせる。

 スキンヘッドで額に捻れた角が一本生えている男――オブコフだ。

 裏手にある地下入り口は、彼と部下達によって守られ、封鎖されている。
 オレは彼らと挨拶を交わし、地下へと続く階段を下りた。

 城から抜け出して5日目。

 オレとお嬢様は現在、ラーノ奴隷館の地下に隠れ住んでいる。
 約1年前。数日だけ住んだことがある地下部屋だ。

 ヴァンパイア族の当主達も、まさか宿ではなく奴隷館の地下で生活しているとは思いもつかないだろう。

 オレは空いている大部屋で寝起きしていたが、お嬢様には個室を使って貰っていた。

 決して善意から匿われている訳ではない。
 食事付きではあるが、法外な値段を払いながら宿代わりにさせてもらっているのだ。
 お嬢様の部屋から集めた貴金属で何とか払っている。
 しかし金を払っているうちは安心出来る。

 なぜなら、金を払っているうちは裏切る必要性が無いからだ。
 金を貰っているのに、裏切ってヴァンパイア族の当主にオレ達を売ったとしたら。その瞬間、お嬢様――ひいては旦那様との繋がりのある上流階級者達に自分達は信用ならないと宣伝するようなものだ。
 信用を傷つけるマネを商売人はしない。

 信用がなければ商売が出来ないからだ――昔、聞かされた言葉を今頃思い出す。

 オレは地下から階段を使い、最上階へと上がる。
 向かう場所は応接間のような部屋だ。

 部屋には革張りのソファー、蟲甲で作られたテーブル、重厚なデスク。
 窓は無く代わりに観葉植物が置かれ、風景を描いた絵画が壁にかけられ息苦しさを誤魔化そうとしている。
 他にも品の良い備品が計算の上で配置されている。

 部屋には二足歩行のカエルが居た。
 このラーノ奴隷館の主、カエール族、ラーノ・メルメルだ。
 彼は見た目に似合わず気さくな態度で歓迎してくれた。

「やあリュート、街の様子はどうだったかな?」
「相変わらず港にも宿にも、街の出入り口にも見張りが居ます。完全に奴ら、僕達がこの街にいると確信して虱潰しに探してますね。僕が見られたか誰かが何かを喋ったりして、情報がもれているのでしょうか……」

 オレが目を向けるとラーノは肩をすくめる。

「ブラッド伯爵家から子供の足で行ける場所など、限られているからね。ワタシでも安全を求めて他大陸に行くと予想をつけこの街を探すよ。他に港がある街へ行っていたのなら、途中で追いつくはずだからね。ワタシ達から情報を漏らすなどありえないよ」
「……ですね」

 念のため鎌をかけてみた。
 オレでもそれぐらい予想する。
 だから盲点を突いて奴隷館地下で寝起きしているんだ。

「それで密入国の件ですが船のあたりはつけてくれましたか?」
「もちろんだとも。ただ費用がどうしてもかかってね。要望の妖人大陸まで2人分だとこれぐらいかかるのだが」

「冗談でしょ! これじゃどう頑張ったって2人分なんて出せないですよ!」

 ラーノが提示した金額は法外も法外。
 小さな家が建つほどの金額だった。

 彼はカエル頭を撫でつける。

「最近、密入国者に関してどの大陸も五月蠅くてね。それにいくらブラッド伯爵家にお世話になったと言っても、ヴァンパイア族を丸々敵に回す行為に荷担をするんだ。これぐらいの金額になるのは妥当だよ」

 人の良さそうな声、態度に関わらず完全にこちらの足下を見ている。
 さすが奴隷を扱う商人と言ったところか。

 しかしまさか他大陸に行くため、お嬢様と2人表に出て正規の手続きを踏んで他大陸に行くわけにはいかない。
 途中でヴァンパイア族の手下に見付かり一悶着あるのが目に見えるようだ。

 結果、密入国という非合法な方法しかなくなる。

「妖人大陸は無理でも、隣の竜人大陸までならこれぐらいでやらせてもらうよ」
「竜人大陸か……」

 ラーノが狙ったようなタイミングで妥協案を提示してきた。
 竜人大陸までなら2人でギリギリ行ける金額だ。

 魔人大陸の隣にある、竜人大陸。
 時計でいうなら数字の『4』にあたる。

 仮に国境を越えて、竜人大陸まで出ればさすがにヴァンパイア族も手を出してくる可能性は低くなるだろう。

(竜人大陸に行ってオレが冒険者なり、肉体労働なり資金を稼げばお嬢様1人ぐらいなら養うことが出来るか……。お嬢様だけなら妖人大陸まで行けるかもしれないが……それは無いな)

 さすがに世間知らずな元引き籠もりお嬢様1人を妖人大陸に送り出し、エル先生が住むアルジオ領ホードまで行かせるのは無謀過ぎる。
 途中で騙されて、オレのように奴隷として再度魔人大陸に送り返されてしまう可能性が非常に高い。
 さらにヴァンパイア族当主が奴隷となったお嬢様を買ったら、目も当てられない状況になる。だから、お嬢様を1人で妖人大陸に送るのは却下だ。

 熟考した結果を告げる。

「……では、竜人大陸まで2人分、お願いします」
「お代を支払い後すぐに手配しよう」
「サービスで当座を凌げるお金ぐらいは残す代金にしてくださいよ」
「まぁそれぐらいなら」

 ラーノととの交渉を終える。
 彼は如何にも商売人らしい笑みを浮かべた。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 オレとラーノは一度、地下まで降りた。
 資金はお嬢様に預けているからだ。

 お嬢様がいる部屋の扉をノックする。

「失礼します」

 お嬢様は今日もベッドに座り膝を抱え、顔を埋めていた。

 城から抜け出してから、こうしてずっと落ち込んでいる。
 無理もない。
 一晩もかからず、楽しかったサプライズパーティーから一転、両親を人質に取られてしまった。

 自分自身も相手に追われている状況で、事態が好転する材料も無い。
 心休まる時など無いだろう。

 食事は摂ってくれているのがせめてもの救いだ。

「お嬢様、お休みの所申し訳ございません。今後の方針についてご報告させて頂きます」

 オレはお嬢様を安心させるべく、方針を話した。
 2人で竜人大陸に行こうと思っていることを告げる。
 国境を越えてまでヴァンパイア族当主も追ってこないだろう。自分達の安全は保証される、と強調した。

 これで少しでも安堵し、元気になって欲しいとオレは考えていた。

「つきましてはお嬢様がお持ちになっている資金を出して欲しいのですが……宜しいでしょうか?」
「…………」

 しかしオレの目論見をお嬢様は余裕でぶっ千切った。

 お嬢様は顔を上げる。
 久しぶりに彼女の顔を見る。

 目は泣きはらし赤くなり、頬はややこけている。
 肌つやも悪く、髪にも艶が無い。
 スマートな手足はさらに細くなっている気がする。

『竜人大陸へは行きません』

 お嬢様はいつものミニ黒板に文字を書き、オレの提案を却下した。

 全体的に弱っている。
 当然だ。
 蝶よ花よと育てられた少女が、突然右も左も未来も分からない状況に放り込まれたんだ。弱って当然である。

 なのにお嬢様の瞳に宿る光だけは弱っていなかった。
 むしろ太陽より熱くギラギラと燃えている。

 お嬢様はミニ黒板に文字を書く。

『私は逃げません。リュートお兄ちゃん、戦ってお父様とお母様を2人で助け出しましょう! 徹底抗戦です!』
「……………………………………へ?」

 お嬢様に変なギアが入ってしまった。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ