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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

23章

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第363話 各大陸では――

「……掘田くんはどうやら大切な人達に手を出される前に、僕を倒すつもりらしいね」

 ランス・メルティアは世界の中心で、リュート達の行動を把握する。
 そんな超常の力を使えるのも、世界中から魔力を奪いつくし、天神と同等の力を得たためだ。

 とはいえ、完全に力を自在に扱えるかと言えば話は別。
 ランスはその膨大な力と足下の魔法陣を利用し、異界の扉を開く準備をしているが簡単には終わりそうにない。

 異界の扉を開くためにはまだ時間がかかる。
 それまでの暇つぶしとして、掘田――リュートの様子を観察していた。
 ランスは楽しそうに笑みを零しながら、リュートの様子を眺める。

「掘田くん、存分に苦しん(楽しん)で、苦しん(楽しん)で、苦しん(楽しん)で、くれたまえ」

 彼の暗い笑いがどこまでも静かに広がった。

 一方、ランスがリュートを苦しませるためだけにおこなった嫌がらせ――彼らの親しい人々の命を狙うため自身の手駒と、報酬で襲わせようとしている者達はというと……。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 魔人大陸。
 ブラッド家の屋敷で、旅行から帰ってきていた元女魔王アスーラが頭を抱えた。

「まずいのじゃ! まずいのじゃ! まさかあのランスとかいうのが魔法核(まほうかく)どころか、神核(しんかく)まで手にするとは! しかも中心地を浮上させるなど! いったいヤツは何者なんじゃ!? 手際があまりにも良すぎるのじゃ!」

 頭を抱えて幼女姿のアースラがうんうん唸る。
 一方、まるで正反対にクリス母、セラス・ゲート・ブラッドはのんびりと香茶を口にしていた。

「落ち着いてくださいませ、アスーラ様。確かに天神様の力を手に入れたランス・メルティアは少々厄介でしょうが、リュート達ならきっと彼を倒してくれるでしょう。それまでわたくし達は落ち着いて行動すればいいのです。メルセ、おかわりを」
「かしこまりました、奥様」

 獣人種族、ハム族のメルセが、声をかけられ香茶のおかわりをそそぐ。
 彼女はブラッド家に勤めるメイド長である。
 最近はずっと女魔王アスーラ専属メイドとして、彼女の旅行などに同行していた。

 そんな二人の態度にアスーラは業を煮やす。
 小さな手足を駆使して、現状の危機を伝えようとする。

「何、のんびりとお茶をしばいておるのじゃ!? ランスが神核(しんかく)で魔力を奪っただけではない。その力を使って怪物を創り出し、妾達の命を狙っておるのじゃぞ! しかも魔力が無い上に、最大戦力であるダンがいない! 妾達だけで一体どうすればいいのじゃ……」

 アスーラの指摘通り、魔力を奪われる事件が起こる前にダン・ゲート・ブラッドは一人で旅に出た。
 正確には、軍団(レギオン)大々祭(だいだいさい)後、リュート達が訪ねてきた後だ。
 その時、ホワイトから『ダン伯爵の友人達に危機が迫るでしょう。恐らく彼らだけで解決は不可能。皆はきっと貴方の手を借りたがるでしょう』という占いの結果を得た。

 リュート達が出発して数日後には、ダンも占い結果に思うところがあったのか一人旅だってしまう。

 つまり魔力を失った上に、ダン伯爵という最大戦力がブラッド家に居ないのだ。

 アスーラでなくても慌てるのは当然である。
 しかし、ブラッド家の面々は誰一人慌てず、いつも通りの態度を取る。
 セラスがカップを置き告げた。

「確かに夫が居ないのは戦力的に痛手ですわね。ですが、あの程度なら、たとえ夫がいなくても問題ありませんわ。むしろいなくてよかったぐらいです」
「?」

 アスーラが首を傾げる。
『むしろいなくてよかった』という台詞は、夫がこの危機的状況にいないことを、相手の安全を考えて口にした言葉だとアスーラは受け取った。そして、その前に『ダン・ゲート・ブラッドがいなくてもあの程度問題なし』という発言をしている。
 その言葉に、アスーラは混乱し、首を傾げたのだ。

 彼女の混乱に気付かずセラスは笑う。
 春の日だまりの下で、花が咲くような美しい笑顔――ではない。
 腹を減らした肉食獣が、美味そうな獲物が自分のすぐ側まで来ていると知った獰猛な捕食者の笑みを浮かべたのだ。

「前回はギギが踊らされていたせいで、不覚をとり足を引っ張ってしまったわ。悔やんでいたけど、まさかあちらからまた挑んでくるなんて。ふふふ……ホワイト様は本当に凄いかたね。こんなに見事に、占いが当たるなんて」

 ダン同様、彼女も前回ホワイトに占ってもらっていた。
 その内容は『セラスさんは悔いている因縁に蹴りを付けるチャンスが訪れます。その際は心おきなく、悔いの無いようにやった方がいいですよ』というものだ。

 彼女は心底楽しそうに笑う。

「メルセ、皆に戦争の準備をするように指示を。それとメリーにはありったけの魔石を集めるように。責任は全てわたくしがとりますから」
「畏まりました、奥様」

 メイド長のメルセが一礼し、部屋を出る。
 セラスはふらりと、ソファーから立ち上がると窓から外を眺めた。

「ああ、本当に楽しみだわ。早くこないからしら……」
「ピィ!?」

 元女魔王アスーラが小鳥のような悲鳴を上げるほどのどす黒い殺気をセラスが垂れ流す。
 そんな溢れ出す殺気とは正反対に、彼女は心底上機嫌に鼻歌すら唄っていた。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 場所は変わって、竜人大陸。

 自称メイヤのライバル――竜人種族、リズリナ・アイファンは、空の異変に気付いた部下によって研究所の外へ呼び出される。
 空にランス・メルティアが映り、自分や関係者を狙うよう指示を出し、怪物すらここに向かわせていることを知る。

 映像が途切れると、リズリナは頭を抱えて叫んだ。

「な、なんでよ! 確かにPEACEMAKER(ピース・メーカー)から仕事の依頼は受けてるけど、あくまで仕事上の付き合いってだけで別にそこまで仲良くないのに!」

 にもかかわらず全世界の魔力を集めた奴に名指しされ、命を狙われ怪物までけしかけられている。
 貧乏くじもいいところだ。
 リズリナは嘆きから一転、腹の奥底から怒りをほとばしらせる。

「それもこれもメイヤ・ドラグーンになんかに関わったからよ! 許すまじ! メイヤ・ドラグーン!」

 自分から軍団(レギオン)大々祭(だいだいさい)で喧嘩を売ったのが切っ掛けなのを棚に上げてだ。
 リズリナの周りに居る部下や使用人達が次々に声をかけてくる。

「お嬢! このままじゃお嬢の身が危険だ! 今すぐ、親方の元に戻るべきですよ」
「そうです! そうです! 親方の元なら若様達だっていらっしゃる。絶対に安心ですぜ」
「研究所の設備やPEACEMAKER(ピース・メーカー)から預かっている物は、うちらで何とかしますんで。お嬢、気にせずご自身の安全だけを考えてくだせぇ」
「み、みんな……」

 彼らは、竜人大陸一の商人であるリズリナの父の部下や使用人でもある。
 そのためリズリナを子供時代から知っており、部下や使用人というより家族に近い間柄だ。

 そんな彼らからの忠誠心溢れる言葉にリズリナは感動――ではなく、冷静さを取り戻し計算を始める。

(今、竜人大陸に向かっている怪物は見た限り一匹だけ。あの程度の相手なら、120mm滑腔砲(かっこうほう)で倒せるはず。研究途中だけど多脚戦車の性能実験のいい的にもなる。竜人大陸内なら、知り合いが多いし、あたしの命を狙って襲ってくる人達も居ない。そんな中で自身の安全も顧みず、竜人大陸に迫る怪物を倒したら――メイヤ・ドラグーンを超えられるんじゃないかしら?)

 打算的な答えに辿り着くと、先程まで頭を抱えていたリズリナは突然、元気よく立ち上がり明るい表情で断言する。

「いいえ! お父様の所へいかないわ! これから試作機をもって、竜人大陸に迫る怪物を倒すわよ! あたし達の手元にはドラゴンの牙に勝るとも劣らない武器がある! なのに自身の安全を優先し、竜人大陸の同胞達を見捨てるなんてあたしには出来ないわ!」
「お、お嬢……ッ」

 部下、使用人達は『あの小さかったお嬢が、今ではあんなにも立派に……』と感動し涙を流す。
 胸中で彼女が考えている打算は置いておいてだ。

「時間も無いし、試作機の起動準備にとりかかるわよ! 砲弾も渡されている予備も含めて全弾持ち出すわ! あたし達の技術力を全大陸の人達に見せつけてあげる!」
『了解です!』

 リズリナの言葉に、気合いが入りまくった部下や使用人達の声が返ってきた。



 ほぼ同時刻――

 竜人大陸、王都。
 城の一室から空を見上げる一人の男性が居た。

 黒く長い髪を三つ編みに。
 竜人種族の男性が着る伝統的なドラゴン・カンフーをよりゆったりとした作りにした衣装に袖を通していた。その衣服には金や銀糸が惜しげもなく使われている刺繍が施されている。
 彼は手を背中で回し、上空を見上げながら一人呟く。

「匹夫が朕の妻候補であるメイヤ・ドラグーンだけではなく、民草にも手をかけようとは……。身の程を弁えぬ愚人め。朕自らその身に裁きを下してくれようぞ」

 男は振り返り、入り口へと歩き出す。
 歩きながら一方的に指示を飛ばした。

「オジ上に連絡をせよ。至急、配下を連れお戻りになるよにと。宝刀、『聖竜昇竜刀せいりゅうしょうりゅうとう』を持て。準備ができしだい出るぞ!」

 彼の言葉に従い部下達が動き出す。

 彼――竜人王国第一王子は、当然とばかりに悠然と門前に向かうため廊下を歩き出した。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 北大陸、ノルテ・ボーデン城。

 白亜の城の一室で同じようにアム・ノルテ・ボーデン・スミスが、ランスの言葉と映像を前に押し黙ってしまう。

「…………」

 白狼族を迫害し領主の座を乗っ取ろうとした実弟が、厳重に警戒していたにも関わらず監獄から姿を消したと報告は受けていた。
 アムは費用を惜しまず牢獄周辺だけではなく、北大陸全土や他大陸にも捜索の手を伸ばしていた。
 しかしまさか自身や育ったはずの街や領地に復讐するため、人をやめるとは想像もしていなかった。
 アムが考える以上に、オールの恨みの根は深かったのだと実感する。

「アム様……」
「アイス、それにシユか……」

 声に振り返ると、アムの妻である白狼族のアイスが娘のシユを抱き彼の側に来ていた。
 シユはちょうど疲れていたためか、アイスの腕の中で眠っている。

「……さっきの空に浮かび上がっていた姿は見たかい?」
「はい、見ました」
「ならば話は早い、二人はすぐに街の外へ出るんだ。白狼族と合流し、雪山へと避難してくれ。白狼族を雪山内で捕まえるのはいくら怪物化したオールでも難しいだろうからね」
「アム様もご一緒に!」

 彼はアイスの提案に首を振る。

「当主であるぼくが民や部下を見捨てて逃げるわけにはいかないよ。これはぼくの当主としての誇りの問題だ。ただ我が儘を一つ言わせてもらえるなら、二人だけには無事で居て欲しいんだ。だから頼む……街を出てくれないか?」
「アム様……ずるいです」
「すまない」

 アイスは涙をこぼす。
 愛する夫の覚悟を目の前で見せられ、『自分も残りたい』という我が儘を言えなくなってしまった。
 アムは最愛の妻であるアイスが、自身の心情をよく理解しているのを分かったうえで先程の台詞を口にしたのだ。
 そのため彼はアイスの言葉に対して、謝罪を口にするしかなかった。

 アムは軽く息を吸うと暗い雰囲気を払拭するかのように、明るい声音で告げる。

「だが安心してくれたまえ! 何もぼくは愛する妻と子を残して死ぬつもりはないさ! それに魔力が無いとはいえぼくは『光と輝きの輪舞曲(ロンド)の魔術師』、アム・ノルテ・ボーデン・スミス! そうやすやすとやられたりはしない!」

 アムはアイスのこぼれる涙を拭いながら、優しい口調で語る。

「だから安心して街を出ておくれ。何、2、3日もすればぼくの心の友であるミスター・リュートがランス・メルティアを倒すだろう。そうすれば魔力が戻る。魔力が戻ったら、オールを倒し、すぐに迎えに行くよ」
「アム様……ずっとお待ちしております。ずっと……永遠に……」
「ああ、愛しいアイス。大丈夫、絶対に、絶対に迎えに行くよ」

 そして二人の唇が距離を縮める。
 5cm、2cm――1cm。

 重なりそうになると、部屋に部下が慌てた様子で入ってくる。

「失礼します! アム様、至急お伝えしたいご報告が――し、失礼しました!」

 部下が二人のキス現場を前に、自身が無粋な闖入者だと気付き謝罪する。
 アムとアイスはそっと互いに離れ態度を取り繕う。
 アムが咳払いをしてから、当主らしい威厳に満ちた声音で問う。

「かまわないさ。それでどんな報告があるんだい?」
「は、はッ! それが城門前にやたら筋肉ムキムキの男達が集まっており、『力を貸すから当主に合わせろ!』と騒いでおりまして……。先程、空に浮かんでいた男が出した要求の問題もありますし、おいそれと会わせるわけにはいかないと言っているのですが一向に話を聞かなくて……」

 部下はさらに続ける。

「また『当主に伝えれば分かる』と、暗号のような言付けを預かっており、念のためにお伝えした方がよろしいかと思い参上した次第です」
「なるほど話は分かった。それでその『暗号のような言付け』とは一体どんなものなんだい?」
「は、はぁ……それが、その……」

 部下は言いにくそうに現当主であるアムへ告げる。

「『我々は天使の筋肉(とも)である』と言えば分かると騒いでおりまして……」
「悪いが意味が分からないのだが……」

 部下は『ですよねー』という表情を浮かべる。

 彼のよく意味が分からない報告のせいで、アイスとの間にあったシリアスな空気すらどこかへと吹き飛んでしまう。
 暫し部屋は静まりかえり、シユの微かな寝息しか聞こえてこなかった。



 そして最後――妖人大陸、孤児院では……。

ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
4月15日、21時更新予定です!

活動報告に4月20日発売の軍オタ7巻表紙をアップしました!
よろしければ、ご確認ください。
なんだかんだ言ってもうすぐ発売です。
また近日中に各種店舗特典なども活動報告へアップする予定なので是非、その際はご確認くださいませ!

(1~5巻購入特典SSは15年8月20日の活動報告を、2巻なろう特典SSは14年10月18日の活動報告、3巻なろう特典SSは15年4月18日の本編をご参照下さい。)
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