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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

21章

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第353話 ランス過去編 希望

 アルトと友達になってから、彼とは約1ヶ月に一度会って話をするようになった。
 場所は決まってメルティア城内。
 室内だったり、テラス、中庭でお茶を飲み、近状を話し合う。
 友達付き合いが互いに初めてのため、暗黙の了解としてまずは分かりやすい付き合いから始めた。

 今日は僕から一歩踏み込むつもりだ。

 中庭で茶会セットを設置し、いつも通り話をする。
 僕は彼にある要求をした。

「あのさ……アルトにお願いがあるんだけど……」
「…………」

 彼は口まで運んだカップに口をつけず、ソーサーへと戻す。
 鋭い視線をさらに尖らせたせいで、周囲に与える重圧が増した気がする。
 まだ短い付き合いだが、彼は怒っている訳ではない。
 初めての友達からどんな要求をされるか、身構えているだけだ。
 むしろ、そんな彼が微笑ましい。

「……何が可笑しい。要求があるなら早く言え」
「ごめん、ごめん。実はアルトが従えているドラゴンの背中に乗せて欲しいんだ」

 世界最古の軍団(レギオン)始原(01)の次期トップで、魔術師S級確実の彼、アルトは『魔物を捕らえて自身の魔力を与えると、その魔物が自分の使い魔になる。さらにイメージした姿を描きながら魔物に魔力を与えると、その通りに姿を変質させることができる』というものだ。

 そのため多数の魔物を飼い慣らしている。
 メルティアに来るときも、物語に出てくるようなドラゴンに乗っているのだ。
 見送りの時、毎回見ているが正直羨ましかった。

 僕の要求にアルトは肩すかしを食らったような表情をした。

「……そんな程度の要求でいいのか? 我はてっきり政敵の弟を殺害して欲しいと願われるかと思ったのだが」

 3歳下に腹違いの弟が居る。
 母親も第2夫人のため地位も高い。
 仮に僕が後少し産まれるのが遅ければ、その弟が第一王子で将来は王座に――という可能性もあった。
 そのため第2夫人は自身の息子を王座につけたく、色々裏で画策しているとか。
 だが上手くいっているとは言い難い。

 僕自身が内政で結果を出し、魔術師A級上位もほぼ確実の実力者。
 追い落とすのは殆ど不可能に近いレベルだが、現実を見たくない者は絶対にその現実を直視しない。
 また組織が巨大になれば一枚岩でいるのは難しい。
 僕を快く思わない勢力は存在し、そちらと手を結び動いている。
 正直、相手にするのもうんざりしていた。

 その気配を感じ取っていたアルトは、実弟抹殺依頼を出されるのかと身構えたらしい。
 いくらうんざりしているからと言って、弟殺害を依頼するほど血の気は多くない。
 むしろそんなことを考え、場合によっては実行しようとしたアルトに対して微苦笑してしまう。

「まったく、アルトは僕を普段どんな目で見てるんだよ」
「そうだな……掴み所がない。目の前に居るはずなのに、ここにいない気がすることがある。オマエがふっと消えたとしても我は驚きはしないだろうな」

 アルトは真剣な表情で、真摯に自身の意見を告げる。
 真面目に返答されるとは思っておらず、意表をつかれる形になった。

 彼の言葉が思いの外、深く刺さる。

 未だに僕は前世の悪夢を見続けている。
『この力……魔術を使えたまま前世に戻れたら復讐ができるのに』と考えることが多い。
 心――いや、魂が過去を忘れずにいるのだ。
 だからアルトは先程のような台詞を言ったのだろう。

「……ドラゴンに乗りたいんだったな。その程度、別にかまわん。ついてこい」

 アルトは、固まって動けなくなった僕を気遣うように声をかけ、席を立つ。
 気難しい顔と能力のせいで他者から恐がれ、一歩引かれている彼だが、見た目とは違い気を使えるのだ。

 彼の気遣いに、固まってしまった僕は思わず微笑みお礼を告げる。

「ありがとう、アルト」
「ドラゴンに乗せる程度、かまわんと言っただろう」

 僕のお礼の意図を気付いているのかいないのか、彼はぶっきらぼうに返答しさっさとドラゴンを待機させている場所へと向かう。
 僕はその背に苦笑し、アルトの後へと続いた。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



「うわぁ……!」

 僕は今、アルトが移動用に乗っているドラゴンの背に乗せてもらい空を飛んでいる。

 ドラゴンは西洋龍で二階建ての家屋のように大きい。
 お陰で子供二人が乗って十分なスペースがある。
 色は赤く『レッドドラゴン』と呼ばれる。『ドラゴンとは?』という問いにこの異世界の住人なら誰でも真っ先にイメージするスタンダードな種である。

 城内にある広大な庭にアルトが乗っていたドラゴンが日光浴をするように、主の帰りを待っていた。
 飼われているためか、凶暴な様相ではなくどこか愛くるしさもある気がした。

「凄い、高いよ。城や街があんなに小さくなるなんて」
「当然だ。空を飛んでいるのだからな」

 アルトの口調は相変わらず憮然としているが、僕が眼下を見やすいようにドラゴンを操ってくれる。
 本当に見た目に似合わず優しい奴だ。

 前世、僕は飛行機など空を飛ぶものに乗ったことはない。
 家族で旅行などしたことが無いからだ。
 しかし前世の飛行機やヘリ、気球ともドラゴン飛行は違うのが分かる。

 風を切る頬や感触、遮るのものがない一望できる風景。
 上空の匂い、陽光の暖かさ――前世も含めて、今まで経験した記憶にない新鮮な驚きが全身を貫く。

「綺麗だ。世界ってこんなに広くて綺麗だったんだ……」

 自然と口から言葉が出る。
 アルトは僕の感動を邪魔しないよう何も言わず、ドラゴンの操縦に専念してくれていた。
 本当に彼は良い奴だ。

 暫し無言で世界に見惚れる。
 あまりの美しさに僕は泣き出しそうになった。

(……もういいじゃないか、前世のことなんて。こんな美しい世界に今、僕は居るんだから)

 前世は本当に地獄だった。
 今でも夜、悪夢に視るほどだ。
 でも文字通り別世界で、過去に起きたことだ。
 地球に戻る方法など無い。
 忘れてこの美しい世界で生きる……それが一番幸せなことだ。

 僕は浮かんだ涙を袖で拭う。

「ありがとう、アルト……ありがとう」

 彼は風切り音で聞こえないという態度を取り、反応を見せなかった。
 それでも僕は自然と呟いてしまう。

「ありがとう」

 僕のお礼はやはり風の音に紛れて消えてしまったようだ。



 この時、僕は生まれ変わった世界の美しさに感動し同時に思った。
 この世界、生まれ変わった今の立場なら、前世とは違いまっとうな人生を歩むことができるのではないかと。
 だが僕はすっかり忘れていた。

 世界は美しい。
 けれど、美しいだけでは世界は成り立たない。
 同時に残酷さを所持している。

 数日後――僕は身をもってその意味を知ってしまう。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 ドラゴン飛行から数日後。
 メルティア国王である父に連れられて、地下室へと連れて行かれる。
 この国で一番地下深い場所。
 いくつもの警備兵士や確認を超えて、魔術で補助された重い鉄扉を開く。

 辿りついた場所は、資料室だった。
 広さは教室程度で、壁際に本棚が並びみっちりと詰まっていたり、空だったりする。
 中央にソファーと間にテーブル。それ以外の家具は特に花瓶一つ無い。
 父の話によると、壁や床、天井にも分厚い鉄が敷かれ、魔術的処理が行われているとか。
 大国メルティアでここ以上に厳重な場所は無いと彼は断言した。

 父は本棚から数冊を手に取り、ソファーの間にあるテーブルへと置く。
 テーブルを挟み向き合うようにソファーへと座った。
 そして父から、この世界の『本当の歴史』を説明される。

 天神が6人の直弟子に殺害された。
 6人中、5人は魔王と呼ばれる残虐を尽くす。
 僕達の祖先に当たる五種族勇者達が、最後の一人の弟子と協力して、魔王達を倒し封印していった。

 祖先達は最後に、いつ他魔王達同様に暴走するか分からない弟子の殺害を計画するも失敗してしまう。
 最後の弟子は魔物大陸に存命している。
 これが『魔物大陸に潜む魔王』の真相だ。

 以後、他五種族勇者達は、世界の平和を維持するため互いに協力し合いこの世界を守ってきた。

 始原(01)も協力組織で、もし真の歴史を探ろうとする者、知る者が居た場合、闇に葬る取り決めになっている。
 メルティアの国王は国家運営の他、世界の安定を図る使命も帯びているのだ。
 僕には次期国王として、この真実を知り世界を守る担い手としての自覚を幼い頃から持って欲しい。
 だから10歳になった今、こうして世界の真実を告げたとか。
 帝王学の一種のようなものなのだろう。

 しかし僕は真の歴史や世界の安寧、秩序より、ある一点に強烈な興味を抱く。

神核(しんかく)から、魔法核(まほうかく)、次に魔術核(まじゅつかく)へと分割された。なら、その逆も可能ではないか?)

 分割が出来て、再び統合できない道理はない。

 もしその方法があり神核(しんかく)を手にすることができれば……

(神の力が持てば、帰れる。力を持ったまま元の世界――地球へ)

 力を持ったまま帰れたら復讐が出来る。
 僕を苦しめた地獄に、学校、家族、イジメっ子達、同級生、友達だと思っていた彼――神の力さえあれば、その世界全てに復讐ができる!
 一方的に、徹底的に、チートで復讐ができる。復讐することが出来たなら、悪夢から、トラウマから、劣等感から抜け出すことができる!

 父親が何かを口にしているが、耳には入ってこない。
 頭の中は前世への復讐だけが嵐のように吹き荒れる。

 どうして僕はこんなことを知ってしまったのか……。

 あらゆる災いが詰まった『パンドラの箱』。
 その箱の中に、なぜ『希望』が入っていたのか?

 前世の物語ではよく『人々がたとえ災いにさらされても、最後まで希望を持てるように一緒に入れていた』というように、前向きな解釈をすることが多かった。

 だが、僕の考えは違う。

 希望は災いだから、『パンドラの箱』に入れられたのだ。

 希望ほど甘く絶望的な味はない。
 針の先程の希望でさえ、どんな麻薬すら足下にも及ばないほど人を狂わせる力がある。
 僕はその絶望的なそれを前世で何度も、何度も味わった。
『いつか友達や教師、家族、同級生、世界が助けてくれる』と信じていた。しかし何度も、何度も裏切られた。

 僕は希望の味を知っている。

 苦く、鉄臭い、絶望の味を。



 この日、僕は世界が美しいだけではなく、どこまでも残酷だったことを思い出す。

 その日、僕は『希望』に取り憑かれた。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日3月3日、21時更新予定です!

今日が毎日投稿最終日になります!
つ、疲れた……でも、毎日投稿だとやはり皆様の反応がいいので嬉しくて、ついつい書く分量も増えてしまいますね(笑)。
最後に、軍オタ6巻&コミックス1巻が絶賛発売中なのでどうぞよろしくお願いいたします。

また最後の最後に嬉しいご報告があります!
実はコミックス1巻の重版が決定しました!
まさか発売から3日で担当様に重版のご報告を頂けるとは思いませんでした。
詳細は活動報告にアップしております。
なのでよかったら是非、ご確認ください!

また、軍オタ1~5巻も、引き続き発売中です。
まだの方は是非、よろしくお願いします!
(1~6巻購入特典SS、コミックス1巻購入特典SSは15年2月20日の活動報告をご参照下さい)
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