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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

20章

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第346話 タイガとミューアと、

 エル先生の赤ん坊であるソプラとフォルンの顔を無事に見られたオレ達は、折角来たのだからと一泊することになった。
 先日メイヤを誘拐しようとした男達の件もあったが――ソプラとフォルンの側に一分一秒でも長く居る方が重要なため即決で了承する。
 もちろん嫁達側も反対は無かった。

 ただ何もしないでいるのも居心地が悪いし暇なので、孤児院の手伝いを買って出る。

 嫁達は料理や洗濯、掃除などの家事を。
 オレは力仕事の薪割りをする。
 昔は子供達が薪拾いに行っていたが人数が増えたせいで、現在はギギさんやタイガがやっている仕事だ。

 一通り仕事を終えると、夕食までの僅かな間に子供達の相手をする。

 どうも『魔王を倒した現役勇者』の登場に皆、興奮しているらしい。
 ギギさんやタイガ、旦那様から魔王退治の話を聞いてはいるが、やはり『勇者』と持ち上げられているオレの口から話を聞きたいとか。
 子供達も自分達に与えられた仕事を終えているので、調理の邪魔にならないよう教室に集めて魔王を倒した話を聞かせる。

「そして魔王が暴走したわけだ。暴走した魔王の体からまるで濁流のごとく次々に不気味で、奇怪な魔物達が生まれ出てオレ達に襲いかかってくる。そんな中、オレや嫁達は魔王を倒す大技の準備。ギギさんやタイガは、溢れ出る魔物達が邪魔をしないよう倒していったんだ。そして――」

 語り聞かせる話に子供達は目をキラキラと宝石のように輝かせる。
 オレ達の活躍だけではなく、力を貸してくれたギギさんやタイガを持ち上げることも忘れない。

 話を終えると、夕食の準備が終わり子供達と一緒に夕食をとる。
 孤児院の子供達は全員で、約40人。そのうち、赤ん坊が10人のため、食堂には30人ほどが座っていた。
 オレやスノーが居た時代は18人ぐらいだったはず。
 つまり二倍以上に膨れあがっていることになる。

 通常なら毎年2~4人ペースで増える。
 戦争があった年は、大体10人前後を引き取ったらしい。
 戦争も無いのにここまで膨れあがるのは異常である。

 食事はオレ達側から食材の提供もあり、いつもよりも豪華になっている。
 食後にはお土産として準備したデザートのわたあめまで付いている。
 お土産といえば――セラス奥様が準備した産後の肥立ちにいい果物や『ピース君人形』などはすでに手渡し済みである。
 エル先生達は喜んでくれていた。

 食事を終えた順に子供達にわたあめを渡していく。

 普段、甘味を食べる機会が少ないため、子供達が豪華な夕食より嬉しそうな笑顔を浮かべた。
 そんな貴重なわたあめを幼女達が千切り、ギギさんへと差し出す。

「ぎぎしゃん、たべてぇ」
「ありがとう、うん――美味い。お返しに俺のも食べてくれ」

 意外にもギギさんは子供達、特に幼女達に人気があった。
 北大陸でアムとアイスの愛娘であるシユちゃんには、強面のせいか泣かれていたのに。
 孤児院ではエプロンを付けているせいか、働いている真摯な姿が大人だけではなく子供達にも伝わっているためか懐かれているようだ

 先程の食事の席順も、ギギさんの隣に誰が座るか子供達が争っていたほどである。
 ギギさんも子供達に懐かれて嬉しく、表情を全体的に緩ませている。
 昔からクリスに甘く色々世話を焼いていた。見た目に反して子供好きなのだろう。
 そういう意味でも孤児院は、ギギさんにとって天職なのかもしれない。

 一通り、わたあめを配り終えるが、一つ余る。
 これは誰の分だ?

「ああ、タイガの分か。と言うか、タイガはどこに行ったんだ?」

 先程まで子供達の世話をしながら、テーブルで一緒に夕飯を取っていたはずだ。
 気付くといつのまにか煙のように消えていた。
 ギギさんがオレの呟きに気付き、微妙な表情を作る。

「タイガなら恐らく……いや、間違いなくあそこだ」
「あそこ? ……ああ」

 ギギさんの台詞に最初は首を捻ったがすぐに理解する。
 オレはタイガの分のわたあめを手に、彼女が居るだろう場所へと向かう。



 予想通り、タイガは赤ん坊達が寝かされている部屋に居た。
 彼女は暗い部屋の中、幸せそうにソプラとフォルンを見つめている。
 どうもタイガは暇な時間全てを赤ん坊達の側に居ることに使っているようだ。

(リュート、どうしたの?)
(いや、お土産のわたあめを渡しに来たんだ)
(ありがとう、リュート、頂くね)

 彼女は視線を子供達から外さず、側に来たオレの名前を言い当てわたあめを受け取る。
 タイガは視力や聴力などが封じられた場合を想定し、肌で空気を読み戦える訓練を積んでいる。そのため視線を向けずとも気配や匂いでオレだと分かり、わたあめを受け取ったのだろう。
 なんという技術の無駄遣い。

 わたあめを食べながら、赤ん坊達から一切視線を外さない。

(……かわいい。ソプラとフォルンは世界で一番かわいい……)

 タイガが小声で呟く。

(この子達のためなら、あの受付嬢さんとでも戦える!)

 魔術師S級、獣王武神(じゅうおうぶしん)なのに『勝つ』とは言わないのかよ……。
 いや、あの人に立ち向かえるだけ十分凄いけどさ。



 ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 翌朝、後ろ髪を引かれる思いだが、飛行船ノアに乗りココリ街へと向かう。
 エル先生、ギギさん、二人に抱かれてこちらを見上げるソプラとフォルン、タイガに孤児院の子供達が手を振る。

 本当はもっと居たいが、対応しなければならない仕事が溜まっている。
 いつか大量に休みを取って、滞在したものである。



 獣人大陸、ココリ街。
 新・純潔乙女騎士団本部へ戻る。
 飛行船ノアに押し込んでいた男達を本部にある地下牢へと押し込む。
 罪人が出た場合、期日が来たら、他犯罪者と一緒に裁判所がある街へと連れて行かれる。
 すでに男達から必要な情報は入手済み。これ以上、彼らを側に置く意味は無いのでいつも通りのように裁判所へと運んでもらうことにする。

 男達を団員達に地下牢へと移送するよう指示を出す。
 嫁達やメイヤは、旅の疲れを癒すためにお風呂へ。

 オレは彼女達が上がった後、入るとして、まず仕事を終わらせるため執務室へと向かう。
 すでにそこにはラミア族のミューア・ヘッドが待ち構えていた。
 彼女は笑顔を浮かべているが、目が笑っていない。

「お帰りなさいませ、リュートさん」
「ただいま。後、これ今回の男達の詳細を纏めた資料」
「ありがとうございます」

 彼女はオレから資料を受け取ると、3日ぶりにご飯を食べるような勢いでめくっていく。
 自分を出し抜いた彼らがどんな組織に属して、どのような場所に居たのか気になるのだろう。
 ミューアは最後の一文字まで読み終えると、書類から顔を上げる。

「なるほど世間から隔離された孤島、不法者の楽園(アンダーグラウンド)ですか。まさかそのような場所があるとは……」

 客は一部貴族や大商、有力者など。
 故に島の存在を知る者達は僅かしかいない。
 メイヤを誘拐しようとした男達も、不法者の楽園(アンダーグラウンド)で産まれて育った者達。
 この異世界で戸籍は前世、日本ほど明確ではない。
 そんな世界でもさらに秘匿され、隔離された場所が出身地なのだ。
 いくらミューアに優れた諜報能力があっても限界はある。

 彼女は珍しく弱気な表情で溜息をつく。

「自分なら十全に上手く立ち回れると思っていたのですが……。私もまだまだ未熟ですね。まさか不法者の楽園(アンダーグラウンド)という孤島があるなんて知りもしませんでしたわ」

 ミューアは自身に落胆したような態度を取るが、十分上手く立ち回れていると思う。
 むしろ彼女一人(もちろん外部に協力者は多数存在するが)でなぜそこまで上手く立ち回っているのかを知りたいレベルだ。

「とりあえず、反省はおいておいて、PEACEMAKER(ピース・メーカー)に牙を剥いた落とし前はきっちり付けさせて頂かないと」

 反省した後すぐ、ミューアは立ち直り真顔で殺気をまき散らす。
 よっぽど出し抜かれたのが悔しかったらしい。
 ミューアが殺気をまとった視線でこちらを向く。

不法者の楽園(アンダーグラウンド)と彼らの件に関しては、私の方で対処してもよろしいでしょうか?」

 尋ねているが、完全に自分の手で今回の蹴りをつける気満々である。
 オレは彼女の問いにただ頷くしかなかった。

「ま、任せるよ。実力行使が必要な場合は言ってくれ、部隊を準備するから」

 さすがにミューアでも、部隊無しでメイヤ誘拐の黒幕を倒せる訳がない。
 ……出来ないよね?

「ありがとうございます。その際は是非、頼らせてください」

 とりあえずメイヤ問題はこれで解決だろう。
 後は忘れないうちに、告げる。

「追加で悪いんだが、実はミューアに頼みたいことがあって」
「頼みたいことですか?」

 オレは生まれ育った町と孤児院の現状について話をする。
 魔王を倒した結果、『勇者が育った町』ということで注目が集まり、孤児院に子供を預ける人がかなり増えている。
 魔術師S級のタイガが居ることも拍車をかけていた。
 またエル先生の赤ん坊であるソプラとフォルンを政治道具にしようとする屑達の対処を彼女に頼む。

 ミューアは一通り話を聞くと納得する。

「了解致しました。どれも周辺の街や貴族達に釘を刺すだけで済む話ですね。すぐに対処いたします」
「助かる。オレ達のせいでこれ以上、エル先生達に迷惑をかけたくないし。それにソプラとフォルンには大人の事情に巻き込まれず、健やかに育って欲しいからな」

 もし彼らの立場が王族や貴族なら政略結婚も止む無しだが、二人は違う。
 だから二人をそういう事情に巻き込もうとする一部お偉いさん達には腹が立つ。
 そのせいでつい口を滑らせてしまった。

「ソプラとフォルンのためなら、タイガも動いてくれるはずだ。実際、二人に政治目的で近付いた貴族に対して話を付けてきたみたい……だし……」
「なるほど、あの魔術師S級、獣王武神(じゅうおうぶしん)、タイガ・フウーさんが……。確か彼女、エルさんを凄く慕っているって話ですもんね」

 ミューアは『いいコマが手に入った』みたいな表情で頷く。

 戦闘能力で考えるならタイガは、この異世界で最高峰の一人だ。
 そんな彼女を手駒としてある程度、自由に動かせるのは魅力的である。

 謀略のミューアと暴力のタイガが手を組む。
 想像しただけで頭痛がする組み合わせだ。
 逆にミューアは今日一番の満面の笑顔で礼を告げてくる。

「素晴らしい情報をお教え頂きありがとうございます、団長」
「……ははは、お役に立てて嬉しいよ」

 彼女からある意味、初めて『団長』と呼ばれた。
 まったく嬉しくない。
 むしろ怖いのだが……。

 兎に角、話の区切りもついたのでオレも休ませてもらおうとしたが、

「実はこちらからも報告があるのですが、もう少しだけお時間よろしいでしょうか?」
「もちろん、休憩より仕事優先だよ」
「ありがとうございます。では、失礼して」

 ミューアは入り口を振り返り、手を二度鳴らす。
 合図に合わせて廊下で準備していたのか、とある人物が護衛メイドに前後を挟まれ執務室に姿を現す。

 軍団(レギオン)大々祭(だいだいさい)で軍団の順位勝負をした竜人種族、魔術師B級、リズリナ・アイファンだ。

 彼女は首に魔術防止首輪をつけ、手は木製板の手錠、素足で右足に鉄球が付いた鎖を付けられている。頭からすっぽりと粗末な素材で作られた貫頭衣しか着せられていない。
 屈辱か、恥辱かは分からないが顔を赤く染め、涙目でオレを睨んでくる。

 彼女は圧倒的不利な立場にもかかわらず、毅然と声を張り上げた。

「たとえ勝負に勝って体を自由にできても……心までは自由にできないと知りなさい!」

 オレはどういう態度を取ったり、何と言っていいか分からず、旅の疲れと一緒に盛大な溜息を漏らした。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
1月29日、21時更新予定です!

活動報告に台湾版の軍オタ1巻の見本写真をアップしました!
(富士見ファンタジア文庫様、台湾角川様、誠にありがとうございます)
中国語って、なんとなく意味が分かるから面白いですよね。さすが漢字圏!
よかったらご確認ください。

次回は恐らく戦車話になる予定です。あくまで予定ですが。

また、軍オタ1~5巻も、引き続き発売中です。
まだの方は是非、よろしくお願いします!
(1~5巻購入特典SSは15年12月19日の活動報告をご参照下さい)
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