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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

19章

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第340話 箱トラップ

 大々祭(だいだいさい)運営委員スタッフ曰く――早朝、祭会場中央ステージ裏側にあるスタッフ本部に、3人の男性達が箱を持ち込んできたらしい。

 朝から昨夜、マスク男達による人質立て籠もり事件があったため、各軍団(レギオン)にスタッフ達が警備を厳重にして欲しいと話に回っていた。
 そのため本部に残る人員が大幅に減り、警備が疎かになったらしい。
 男達はその隙に業者を名乗り、注文を受けた箱を本部へと運び込んだ。最初に応対したスタッフが訝しんだが、他の人物が知っている&注文した物と思い中へと入れた。

 軍団(レギオン)大々祭(だいだいさい)、3日目開催。
 最終日ということで、1、2日目以上に人々が集まる。
 当然、客が増えることでスタッフの忙しさも今まで以上になった。

 朝の忙しさのせいで箱のことは忘れられ放置される。

 午前中の終わり。
 ようやく一息ついたところで、不自然な箱についての話になり、蓋を開くと――大量の鎖が溢れ出て部屋に居た人達が拘束されてしまった。
 部屋にはスタッフだけではなく、転んだ膝の治療や道を尋ねに来た迷子の子供達までおり、その全員に鎖が絡みつく。
 そこにマスクを被った男性3名が入り込み要求を告げてきた。

「『メイヤ・ドラグーンを我々に引き渡せ、さもなくば人質に天誅を加える』と」

 どうやら本部に持ち込まれた箱は、『先駆者同盟(ピオニエ)』の舞台で実演していた宝箱トラップと同系統らしい。
 スタッフが紙を取り出し渡してくる。

「こちらが男達に渡された箱トラップの内容です。メイヤ様にお渡しするよう指示を受けました」
「どうしてマスク男達が手の内を明かすようなことをするんだ?」
「拝見しますわね」

 オレが疑問を覚えるが、隣に座るメイヤが紙を受け取る。
 びっしりと両面に文字と図が書かれた数枚の紙に目を通す。
 途端にメイヤの額から汗が浮き出る。

「メイヤ?」
「りゅ、リュート様、こ、これはまじゅいでしゅわ」
「め、メイヤ、大丈夫か!? カミカミだぞ!?」

 紙に目を通したメイヤが、青い顔でこちらを見てくる。
 状況が分からないため、反応し辛い。

「メイヤ、オレ達にも分かるように紙に何が書かれているのか説明してくれないか?」
「す、すみません、気が動転してしまって……この紙には箱トラップの構造と爆発した際の規模が書かれてあるのです。箱トラップの構造は昨日、リュート様と一緒に解決した宝箱トラップとほぼ一緒ですわ。変更されている部分は男性達が合図を送ると10秒後に爆発する仕様になっている点です」

 10秒後って早すぎるだろ。
 メイヤは青い顔で続ける。

「さらに爆発した場合の範囲ですが……本部建物が吹き飛ぶのは当然として、厄介なのは無作為に初級の攻撃魔術が飛び出し無差別に会場に飛び散る仕様になっていることです」
「なっ!? 無差別って!?」

 この発言にスノーやシア、他団員達が息を呑むが伝わる。
 オレ達に事情を伝えに来たスタッフが『ああぁ、奴らの言葉は本当だったのか!』と頭を抱える。
 どうやらメッセンジャーになった彼は、爆発した場合どうなるのかマスク男達に告げられていたようだ。
『魔石姫』であるメイヤに紙を見せて否定されることに一縷の望みを賭けていたが、どうやらその希望は立たれたようだ。

「メイヤ、彼らの虚仮威しっていう可能性は無いか?」
「恐らくこの紙に書かれている通りかと。『先駆者同盟(ピオニエ)』の宝箱トラップ制作者が彼らだとすれば、時間と資金、手間さえあればこれぐらいのは作り出せますわ」
「なら、この箱トラップを無力化は可能か? 可能な場合、どれぐらい時間がかかる?」
「無力化は可能ですわ。ただ時間ですが10分……いえ、『先駆者同盟(ピオニエ)』の宝箱トラップと同じの場合なら一度解体しているので、5分あれば無力化してみせますわ」

 5分か……。
 だがもしマスク男達の無力化に失敗した場合、10秒後に爆発してしまう。
 あまりにも分の悪い賭けだ。
 さらに問題は爆発した際、無差別に祭会場に魔術が飛び散る点だ。
 本部自体の爆発なら周辺を封鎖すればいい。
 最悪、被害は人質達だけになる。

 しかし問題は会場に飛び散る攻撃魔術だ。
 初級とはいえ一般人を殺傷するのに十分な力がある。
 またどれだけの数、方向へと飛び散るか不明な点だ。
 飛び散った際、全てを迎撃できるか未知数過ぎる。

「一番、妥当な案は一般の人達をまずは会場から避難させて、その後、本部の人達をどうにか助け出すだろうな」
「お、男達は会場の客達を避難させた場合、人質に危害を加えると言っていました。最悪、箱を爆破すると」
「と、なると男達に気付かれず避難させないといけないのか……」

 数万人居る人達を気付かれず避難させるなどできるはずがない。
 さらに避難させる理由が『無差別に攻撃魔術が飛んでくる可能性があるため』なんて素直に話したら、一般客達が混乱し我先に逃げ出す未来しか見えない。

 では、どうやって人質を救出し、箱トラップを無力化すればいいのか?

「…………」

 正直、打つ手が思いつかない。

 また今更、なぜ彼らがわざわざ『先駆者同盟(ピオニエ)』の宝箱トラップをすり替えたのか理解する。

 あれはオレ達が『人質奪還&箱トラップ無力化』の意思を挫くデモンストレーションだったんだ。
 あの宝箱トラップの解除がどれだけ大変か。
 プロである『先駆者同盟(ピオニエ)』すら手が出せないレベルである。
 まっとうに解除できるのはこの会場においてメイヤ&ルナぐらいしかいない。

 一度、体験させどれだけ脅威か理解させる。
 しかも箱トラップだけでも厄介なのに、人質&無差別攻撃魔術付き、さらに男達が任意にいつでも10秒で起爆できる鬼仕様になっている。
 こんな高難易度に挑もうと考えるだけで馬鹿らしい。
 状況だけ見たら確実に詰んでいる、手が出せない状態である。

 オレ達に残された選択肢は2つ。要求通りメイヤを引き渡すか、人質と会場の一般客を見殺しにするかだ。
 オレはPEACEMAKER(ピース・メーカー)団長としてどいう結論を出す?

 眉間に深い皺を刻み考え込む。

「リュートくん……」
「若様……」

 背後に立つスノー、シアが心配そうな声を漏らす。
 一方、隣に座るメイヤはというと……。

「リュート様、遠慮はいりませんわ!」
「え、遠慮って何の話だ?」
「お優しいリュート様のこと、わたくしの身を案じてくださっているのですね? リュート様に心配して頂き天上世界に昇ってしまいそうなほどの幸福を感じてしまいますわ! ですが、わたくしの心配より、せっかくのお祭りに水を差し、一般人を人質にとる悪逆卑劣な男達に神罰を与えるべきです。なにより許し難いのは地を歩む凡庸な分際で、現神であるリュート様に交渉をもちかける不敬! 決して許し難い犯罪行為! わたくしは自身の身の安全より、彼らに対する怒りで煮えくりかえっています。ですからすぐさまお命じくださいませ! わたくしを引き渡すと見せかけ、男達を狙撃、ないし隙をついて襲撃し無力化すると。最悪の場合、箱が爆発しても建物そのものを覆えば攻撃魔術が外に漏れる心配はありません。ご安心ください、我々PEACEMAKER(ピース・メーカー)の力を持ってすれば、男達が指一本、数秒思考する暇もなくきっと無力化できますわ。なのでどうぞ、今すぐ、男達に罰を! 圧倒的、天誅を下すとお命じくださいですわ!」

 メイヤは長々と吐き出す。

 オレだけではなく、スノーやシア、団員達、スタッフまで彼女の長台詞と迫力に固まってしまう。
 メイヤはナイトメア級の難易度にもかかわらず、オレなら楽々突破できると信じ込んでいるらしい。しかも唯一の悩んでいる点は非戦闘員であるメイヤを引き渡し、注意を向ける役をさせることへの安全性に不安があるかもという点だ。

 彼女の台詞にスノー、シアがまず反応を示す。

「そうだよね、メイヤちゃん。リュートくんなら……ううん、PEACEMAKER(ピース・メーカー)のみんなならこれぐらい楽々解決できるよね!」
「メイヤ様の安全に関しては自分達、護衛メイドがなんとしても死守します。ですからどうぞご安心を」

 先程まで暗く、重かった空気が嵐に吹き飛ばされたように霧散する。

 メイヤは技術者としてだけではなく、PEACEMAKER(ピース・メーカー)のムードメーカーを担っている部分があるよな。
 たまに暴走してやらかすことがあるけど……。

 だが今回は彼女のお陰で、人質救出&無差別攻撃を防ぐ方法を思いつくことができた。

「よろしくお願いしますわね、シアさん。リュート様、それでは早速、天に唾を吐く逆賊共を抹殺しに行きましょう!」
「落ち着けメイヤ。人質救出から犯人殺害に目的が切り替わっているぞ。だいたい、彼らの後ろに居る黒幕を吐かせないといけないんだから殺害はまずいって。それにメイヤのお陰で人質を救出し、無差別被害を抑えて、男達も取り押さえる作戦を思いつくことができたよ」
「リュートくん、それてどんな作戦?」

 スノーが興味深そうに聞いてくる。
 オレは彼女の問いに、にやりと笑みを浮かべる。

「せっかくのお祭りなんだ。大きな花火を打ち上げてやろうと思ってさ」

 そしてオレは作戦内容を聞かせる。
 祭スタッフの力も必要なため、同席してもらった。
 一通り皆に話を聞かせると、もちろん真っ先にメイヤが声をあげる。

「さすがリュート様! 沈着冷静、深謀遠慮、神計鬼謀! 全ての英知を司る神であらせられるリュート様こそまさに相応しいお言葉ですわ! あまりの神々しさにわたくしのハートがきゅんきゅんしちゃいますわ!」

 メイヤはテンションが高いだけではなく、瞳の中にハートマークを浮かべて絶賛してくた。
 メイヤほどのハイテンションではないが、スノーやシアも諸手をあげて賛同してくれる。

「確かにその方法ならみんな無事に助け出せるし、二次被害もでないね!」
「ですが準備に時間がかかると思われますので、今すぐスペースを閉めて、団員全員で準備に動き出すべきと具申いたします」
「だな。お客様達には申し訳ないが、今すぐスペースを閉めよう。シア、悪いが部屋に居る団員達と手分けしてクリスやリース、ココノに話をしてすぐに閉めてきてくれ」
「なら、わたしは、宿に戻って師匠を起こしてくるよ!」
「頼む。作戦の要だから無理矢理にでも連れてきてくれ」
「了解だよ!」
「というわけで、人質を無事に助け、無差別被害を出さないためにも運営側にもご協力をお願いします」
「も、もちろんです! こちらで出来ることはなんでも致します!」

 スタッフは先程まで悲観から一転、希望の光に満ちあふれた表情をする。

8.8cm対空砲(8.8 Flak)の準備はルナとオレ、メイヤがやればすぐに終わるか……問題は楽器を演奏できる人達をどうやって準備するかだよな……」
「お任せください、リュート様! わたくしにツテがありますので、時間までに楽器を演奏できる楽団員と歌手達を準備してみせますわ!」
「本当かメイヤ? でも演奏する楽譜すらないのに……」
「問題ありませんわ! 全員優秀な方達ですから!」
「なら8.8cm対空砲(8.8 Flak)の準備はオレとルナでやるから、楽団を頼む。今回の作戦のキモだから頼んだぞ」
「お任せください、リュート様! わたくしの全身全霊をかけて、必ずやご満足頂ける結果を出してみせますわ!」

 そしてオレ達は人質救出&事件解決のために動き出した。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
1月4日、21時更新予定です!

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

今年もついに始まりました!
今年はなろうの更新に加え、隔月で軍オタ小説が連続発売し、2月にはコミックス1巻&小説6巻が同時に発日します。
お陰様で1月1日から忙しくキーボードに向かっております。忙しくはありますが、嬉しい悲鳴というやつですね。

ちなみに去年のクリスマスも1人、今年の正月も1人です。この先の人生もずっと1人かもしれませんね!(やけっぱち状態)

そんな感じで今年1年も軍オタをどうぞよろしくお願い致します!

また、軍オタ1~4巻も、引き続き発売中です。
まだの方は是非、よろしくお願いします!
(1~5巻購入特典SSは15年12月19日の活動報告をご参照下さい)
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