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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

12章

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第238話 儀式

 魔王を封印していたクリスタルの大樹は、オレの持っていた『番の指輪』によって上部が砕け散った。

 封印されていた魔王は、砕け散ったクリスタル大樹の幹に立ったまま辛うじて固定されている。もしあのまま目を覚まさず落下したら、普通の人間なら死んでしまうだろう。

「ピラーニャ、リュート様をノーラへ。魔王様の確保をお願いします」
「はッ!」

 指示を受けた筋肉質な女性であるピラーニャは、オレを肩から下ろすとゴスロリ服を着たノーラへと預ける。
 ノーラは床にオレを座らせて、背もたれ代わりに先導を勤めていたゴーレムを後ろへまわらせた。

「ふんッ!」

 ピラーニャはまず手近なクリスタルに似た鉱物に向けてジャンプ。上部に着地すると、続けて移動を開始する。
 ジャンプで移動できなくなると、ロッククライミングの要領でさらに昇って行く。足場が無い場合は、指や足を力任せに突き刺し足場を作り出す。

 驚くべきは、彼女が肉体強化術を使用していないことだ。
 痺れてオレの体は動かないが、魔術を使用しているかの有無ぐらいは把握出来る。

 ピラーニャは純粋な肉体の力だけで移動しているのだ。

 彼女は特異魔術師だ。
 その能力は、『産まれながら魔力が筋肉を強化する』というものらしい。
 恐らくだが、生命維持以外の魔力は強制的に筋肉強化に回されるのだろう。
 他の魔術を使用したくても、その魔力は筋肉へと強制的に使用される。確かに面倒な体質だな。

 ピラーニャは無事、魔王のところまで到達。
 彼女を固定していたクリスタルに似た鉱物を力任せに破壊し、魔王を両手で横に抱える。
 後は落下に注意しながら、器用にクリスタルに似た鉱物を足場にして、地面へと無事着地した。

「ノーラ、ベッドをお願い」
「はい、シャナお姉様」

 シャナルディアの指示で、ノーラが指輪の魔力を使用して石のベッドを作り出す。
 その上に、ピラーニャが連れてきた魔王を寝かせた。

 シャナルディアがうっとりとした表情で両手で頬を押さえ、熱っぽい声音を漏らす。

「あぁぁ、ついに私達は魔王をこの手にすることが出来たのですね。これで私の祖国を焼き払った者達に正義の鉄槌を下すことができますわ。今度は私達が奴等の祖国を焼き払い、目の前で家族を血祭りに上げてやる番です」

 彼女はオレへと視線を向け、

「愚か者達への粛清が終わった後、私とリュート様で祖国ケスランを再興しましょう。そして、私や皆の手で、亡くなった天神様に代わり、この地上の人々を真の平和へと導くのです。飢えも、差別も、争いも、盗みも、腐敗も、理不尽な苦しみもない。素晴らしい世界を作りましょうね」
「「「はい! シャナルディアお姉様!」」」

 すぐ側にいるピラーニャ、トガ、ノーラは感極まったのか、膝を突き3人同時に声をあげる。
 場面だけ切り取って見れば美しい光景なのかもしれないが、状況を知っているオレからすれば邪教の宗教儀式的な不気味さしか感じない。

(どうする? 彼女達の言葉を信じれば、『黒』はあの女魔王を自由自在に操ることが出来るらしい。もし仮に本当なら、上で戦っているスノー達が危険だ!)

 他の姉妹達に遅れを取るとは思えないが、相手が魔王では話が別だ。
 しかし、邪魔をしようにも体が痺れて上手く動けない今、オレに出来ることは何も無い。

「すみません、シャナお姉様。遅くなりました」
「ララさん、ちょうど良かったです。今、魔王様を封印から解放したところですよ」

 苦悩しているとオレの脇をララが通り過ぎ、シャナルディア達に駆け寄る。
 彼女がここに居ると言うことは、まさか――

「ラ、ララ、オマエ、リースはどうしたんだッ……!?」
「……年上には敬語を使いなさい」
「そうですよ、リュート様。ララさんは妻である私を助けてくださった命の恩人。建前上、部下として扱っていますが、相応の態度をとってくださらないと」
「だ、だから、オレとオマエは夫婦じゃないと何度も言ってるだろうが!」

 シャナルディアの余計な横槍に苛立ちを隠せず声を荒げる。
 ララはそんな態度のオレを見て肩をすくませた。

「安心しなさい。愚妹は殺していないわ。これ以上、邪魔されないように気を失わせただけよ。それより、魔王様はこちらの方で間違いないのですか?」

 ララは自分からさっさと折れて、リースの無事を伝える。
 まるで『これ以上、くだらない用件には付き合ってられない』と言いたげな態度だった。

 彼女はオレへの興味を失い意識を魔王へと注ぐ。

「はい、ベッドで眠っている彼女こそ、魔物大陸に存命する最後の魔王様です」
「……ようやく悲願を達成することができるのですね」
「はい、その通りです!」

「早速、儀式を始めたいと思います。お姉様、念のためお下がりください」――と、ララはシャナルディアに指示を出す。
 彼女も命の恩人であるララの指示に素直に従い、オレの隣に立つ。
 他姉妹、ノーラやピラーニャ、トガはシャナルディアの背後へとまわった。

「では、儀式を始めます」
「お願いしますわ」

 シャナルディアの許可を得ると、ララが呪文を唱え出す。
 彼女はオレ達と顔を合わせるように、ベッドの反対側へと回り込んでいる。

「――――――――――――――――」

 それは今まで聞いたことのない言葉だった。
 恐らく古い言葉を紡いでいるのだろう。
 ベッドに寝かされた魔王を中心に、幾何学模様の魔法陣らしきものが浮かび上がる。

 ララが呪文を唱えるたび、魔法陣は光を強める。
 魔法陣の発光はララの魔力によってなされているらしく、彼女は詠唱時間が長くなるにつれ、額に珠のような汗を浮かび上がらせる。

 それでも彼女は集中力を切らさず詠唱を浪々と続ける。

 眠り続ける魔王の体が光に包まれる。
 頭から爪先、毛先まで全てが――

 ララが最後の言葉らしきものを告げる。

「ぐがぁッ――!」

 魔王の口から初めて声が漏れ出た。
 苦しげに背をのけぞらせ、今にも岩のベッドから落ちてしまいそうだ。

 これが本当に魔王を支配するための儀式なのか?
 まるで麻酔なしで心臓を直接えぐり出そうとしているようだ。

「ララ、さん?」

 さすがの異常事態に彼女に信頼を置くシャナルディアでさえ、疑問を抱いた声音で問いかける。
 しかしララは彼女を無視して、魔力を魔法陣へと注ぎ続ける。
 その間、ずっと魔王は苦しみ藻掻いていた。

 ある瞬間、魔王から人形の糸が切れたように四肢から力が抜け落ちる。
 魔王の手がだらりと、ベッドから落ち、揺れた。

 悲鳴が消え失せた代わりに、魔王の胸から黄金の欠片が浮かび上がる。
 まるでリンゴを6分の1ほどにしたような物体だ。

 最初に黄金と表現したが、次の瞬間には100色の虹が表面に移り込んだような鮮やかなものに変わる。
 凝視している間ずっと、魔王の胸から出てきた欠片は色を変え続けていた。

 状況が分からずついていけないオレ達を置いて、1人の女性が欠片を前に歓喜の笑い声をあげる。
 ララ・エノール・メメアだ

「あはははあはははははっははあ! やった! ついにやりました! これで! これでようやく私とあの人の悲願を達成することができるわ! あはははっはははははははははははははは!」

 はち切れんばかりの狂乱的笑い声。

 シャナルディアも狂っているが、今目の前で笑い狂うララにはそれ以上のものを感じる。

 こいつにあの欠片を渡しては不味い!

 彼女以外のその場に居る全員が理性ではなく、本能で理解する。

「ら、ララさん! いい加減、笑うのは止めてください! いったい貴女は魔王様に何をしたのですか! これは魔王様を我々の意のままに操る儀式なのですよね?」

 シャナルディアがララの上司らしく、部下に歩み寄り叱責を飛ばす。
 しかし、ララの瞳は興味のない者を見る光へと変わっている。
 オレは咄嗟に声を荒げる。

「ち、かづくな! 危ないぞ!」

 だが、オレの指摘は遅すぎた。
 シャナルディアはベッドで眠る魔王を間に挟んでララと向き合う。
 腕を伸ばせば簡単に触れられる距離だ。

「もうオマエ――オマエ達は用済みだ」
「は、えっ?」

 バチン!

 ララが右手でシャナルディアの顔を掴むと、手に紫電が走る。
 その瞬間、静電気を数十倍にしたような音が洞窟内部に響く。
 シャナルディアは全身から力が抜け落ち、魔王のベッド横に倒れてしまう。

 顔をオレ達の方に向けて仰向けに倒れる。

 彼女の目、耳、口、鼻から赤い血が流れ出てくる。
 目は死人のように焦点があっていない。

『シャナお姉様ッ!』

 ノーラ、ピラーニャ、トガの絶叫。
 3人は倒れたシャナルディアへ慌てて駆け寄る。

 ララは彼女達を無視して、恍惚の表情を浮かべ、そっと優しく両手で魔王から出てきた欠片を包みこむ。
 ノーラ達は、地面に膝を突きシャナルディアの容態を確認する。その間にララは肉体強化術で身体を補助。悠々と逃走を開始する。

 彼女が向かった先は入ってきた出入り口ではなく、クリスタルに似た鉱物があるほうだ。

 ララの逃走に気付いたノーラ達だが、彼女を追いかけるか、シャナルディアを誰が介抱するかで逡巡してしまう。
 その迷いがララとの距離が開き、鉱物の陰に姿が隠れる。

「待ちやがれ!」

 ようやくピラーニャが決断。
 ララの後を追いかけ、彼女も鉱物の陰に隠れてしまう。
 しかし5分もせずピラーニャは引き返して来た。

 彼女は落ち込んだ表情で、

「鉱物の陰にも出入り口があって、ララ姉さんはそこへ入ったようで。アタイも後を追いかけましたが、中は迷路のようになっていてどっちに行ったのか分からなくて……」

 ピラーニャの言葉通りなら、ララを取り押さえるのは不可能だろう。

 相手は精霊の加護で『千里眼』の能力を所持している。
 迷路のような通路も彼女の能力を使えば突破は難しくない。さらに相手は魔術師で、肉体強化術で逃走されたらまず追いつけないだろう。

 ふと、視線に気が付く。
 治療を終えたシャナルディアを膝枕しているノーラ。
 ララの後を追って戻ってきたピラーニャ。
 オロオロと狼狽えるトガ。

 三者三様の視線がオレへと集まっていた。

 ノーラが代表して指示を仰いでくる。

「あのリュート様……ノーラ達、この後どうすればいいのでしょうか……」
「ど、どうって……それをオレに聞くか?」
「だって、大将は姫様の旦那様だろ? ならアタイ達の頭みたいなもんじゃないか」
「リュートサマ、ゴシジヲ」

 ノーラ達の頭であるシャナルディアは負傷して目を覚まさない。
 事実上、組織を運営していたナンバー2のララはトップを襲い逃亡。
 現状、彼女達に指示を出す相手がいないのは理解できるが、その役目をオレに求めるか、普通?

 頭を掻きむしりたかったが、体が痺れて微かに指を動かすぐらいしかできない。
 とりあえず彼女達が望む通り指示を出す。

「だ、だったらまずオレの痺れを取ってくれ。そして、被害が出る前に上で戦っている彼女達を止めてここへ連れてこい。確か専門の薬師が居るんだろう? 専門家の彼女にシャナルディアの容体を見てもらったほうがいい」

「分かりました! ならアタイがひとっ走り行ってメリッサを連れてきますんで、大将達はここで待っててくださいっす」
「ま、待て。オマエ1人で行ってもスノー達は説得できないだろう? オレも一緒に連れて行ってくれ」
「分かりやした! それじゃ姫様は2人に任せた!」

 ピラーニャはオレを再び肩へと担ぐ。
 ノーラとトガは、未だ目覚めないシャナルディアの護衛として残ることになった。

 ピラーニャはオレを担いだまま全力疾走で来た道を駆け戻る。
 荷物のように担がれたオレは、お陰で激しく上下して吐きそうになった。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 魔王が眠る洞窟から、スノー達を残した建物群へと戻ってくる。
 そこには両手足を拘束され、魔術防止首輪を嵌められ、転がされている少女達が居た。
 全員、シャナルディアを慕う部下達だ。

 彼女達はぶつぶつと声を漏らしている。
 耳を澄まし内容を拾う。

 オレに痺れ薬を嗅がせた少女は『ありえない。どうして薬が効かないの? 痺れ薬も、眠り薬も、即死薬すら効果ないなんて本当に生物なの?』。

 前髪で表情を隠した少女は『視認、不可。なぜ、躊躇い無し? こちら、攻撃、不可。理不尽』。

 さらに忍者っぽく顔を布で隠している少女は『僕の特異魔術が紙のように素手で破られるなど。悪夢でござる』

 3人の少女はそれぞれ『理不尽』、『悪夢』、『本当に生き物?』などを繰り返し呟いていた。
 対称的に彼女達のトラウマを作り出しただろう原因――銀毒と不意打ちの負傷から復活した旦那様が、楽しげに笑い声をあげていた。

「はっはあはっはははははは! まだまだ修行が足りぬぞ乙女達よ! 第一皆、筋肉が足りなすぎる! もっと筋肉を付けてから出直すべきだ! ははっはははっははは!」

 旦那様が毒と傷を癒した後、スノー達に代わり彼女達と戦って拘束したのだろう。
 あの人にかかれば、彼女達ぐらいものの数じゃないだろうな。

「では早速、連れ去られたリュートを助けに行くとしよう! んんん? そこに居るのはリュートではないか!?」

 旦那様の言葉にスノー、クリス、リース、シア、メイヤ、ギギさんもこちらに視線を向けてきた。

 そしてオレがピラーニャに抱きかかえられていることに気付き、臨戦態勢を取る。
 ピラーニャが怯えるのを体で感じた。

 オレは痺れる口で、慌てて皆を止める。

「だ、大丈夫。彼女は今、敵じゃない。それより問題が起きたんだ」

 そしてオレは端的に告げた。

「ふ、封印されていた魔王が復活後、ララが裏切り、シャナルディアを負傷させて逃亡した」

 オレの言葉にその場に居るPEACEMAKER(ピース・メーカー)メンバー、旦那様、ギギさん、黒の少女達が困惑・動揺した表情を浮かべる。
 そんな彼女、彼らにオレはとりあえず告げる。

「く、詳しく話をするからまずこの痺れを取ってくれ」


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、12月19日、21時更新予定です!

2巻発売12/20までの、連続更新第3弾です!

連続更新で体調を心配してくださる読者様、ありがとうございます。頑張って最後まで行きたいと思います!
さらに今回は強い味方として、薬局で鷲のマークの『リポ○タンD』を箱買いしてきました!
正直、栄養ドリンクを箱で買ったのは初めてですわ……。
と、とりあえずこれを飲んで最後まで突っ走りたいと思います!
最後まで応援よろしくお願いします!

また、軍オタ1巻、引き続き発売中です。
まだの方は是非、よろしくお願いします!
(なろう特典SS、購入特典SSは10月18日の活動報告をご参照下さい)
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