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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

12章

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第226話 エル&アルの過去

 気が付くと、オレはソファーに寝かされていた。

 そこは室内で魔術光によって明るく照らされている。
 オレは横になったままぼんやりとする頭で室内を見回す。
 カウンターのように壁に設置された長テーブルに椅子がいくつも並んでいる。テーブルの上には化粧品、香水、下着のように衣装などが無造作に置かれている。

「あっ! リュートくんの目が覚めたよ!」

 体を起こすと、スノーの反応で他の席に座って休んでいた皆が集まってくる。
 そんな彼女達に尋ねた。

「ここはどこだ? オレはいったい……」

 スノーが代表して説明してくれる。

 ここは娼館一階の従業員控え室だ。
 従業員といっても女性が使うのがメインらしいが。
 ギギさんが確認を取った宿屋は満室だったため、助けてくれたお礼として気絶したオレをこの控え室で休ませてくれたらしい。

 またどうしてオレが気絶したかというと――

「おはよう、少年。良い夢は見れた?」

 オレをからかうようにエル先生擬きがギギさんの隣に座っていた。

 オレは体を起こし、手で顔をおおう。

「いいえ、現在進行形で悪夢を視ている最中ですよ――アルさん」

 エル先生の双子の妹。
 獣人種族のアルさんだ。
 彼女はオレが村を旅立つ際、冒険者の基礎を学ぶため弟子入りしようとしていた人物でもある。
 しかし、エル先生の紹介状を手にアルさんの元を訪ねたが、彼女は借金をして魔物大陸へ奴隷として売られていたのだ。
 スノー達には昔、オレが新人冒険者狩りに引っかかった経緯を話したため、アルさんのことも知っていた。
 しかし随分前の話だから、オレ自身すっかり忘れていた。

 お陰でエル先生があんな恰好をしていると錯覚し、気絶してしまったのだ。

 あの心優しき、天から舞い降りた尊敬する女神のような女性であるエル先生が、娼婦をしている姿を目撃したら気絶してもしかたないじゃないか!

 正直、現在でも頭ではエル先生の双子の妹と理解しているが、下着のような恰好で挑発的に足を組み替えるアルさんを前に頭痛が止まらない。
 アルさんはオレがエル先生を尊敬し、敬っているのを理解してからかっているつもりなのだろう。しかし、赤面するより、エル先生を侮辱されている気がして殺意がふつふつと胸の底から湧き上がってくる。
 まるで聖域を土足で歩き回られている気分だ。

 アルさんはこちらの心情を勘違いしながら、話しかけてくる。

「皆には気絶している間に自己紹介をすませたけど、リュートには必要ないわよね?」
「はい、一度はエル先生の紹介で、アルさんの弟子になるつもりでしたから。海運都市グレイでの評判も耳にしてますよ」
「そりゃ手間が省けてよかったわ」

 彼女は嫌味も気にせず楽しげに笑う。

「まさかこんな所で、エル(ねぇ)の孤児院卒業生と会うなんてね。しかも軍団(レギオン)の代表者ってことはお金もたんまり貯めてるんでしょ? どう、折角だから今晩私を買ってみない? サービスするわよ」
「いりませんよ! 嫁達の前で何言ってるんですか! だいたいエル先生の顔と声でそういう品のないことを口にしないでください」

「こら、リュートくん、年上の人にそんな口を利いちゃ駄目でしょ!」
「す、済みません――ッ!?」

 オレの台詞に、アルさんがエル先生をマネて注意してくる。
 オレは思わず反射的に謝罪を口にして、すぐに後悔した。
 駄目だ。この人にオレは勝てない……色々な意味で。

 オレが落ち込むと、アルさんは楽しげに笑う。

「ごめん、ごめんからかって、そんな睨まないでよ」
「だったら、睨ませるようなことをしないでくださいよ」

 オレの指摘に彼女は悪戯っぽく笑う。

「それでエル姉は元気にまだ孤児院をやってるの?」
「やってますよ。半年に一回ぐらいの割合で手紙ももらってますし」

 その手紙には、近情の報告やオレ達が送る寄付金のお礼などが丁寧に書かれている。
 寄付金は皆と話し合って、オレとスノーの懐から出している。
 だから、エル先生も寄付金のお礼なんてしなくてもいいのに。彼女にオレとスノーは返しきれないほどの恩があるのだから。

 だが、アルさんに寄付金の話をするつもりはない。
 オレはスノーと目で頷き合う。
 彼女はそれに気付かず、話を続ける。

「まだ続けてるんだ。私が言えた義理じゃないけど、エル姉も物好きだよね。婚約者に操を立ててまだ孤児院をやってるなんて」
「え、エエエェェェエエェェエルゥゥゥウゥゥゥウ先生にこここ、婚約者だとぉおぉ!?」

 オレの裏返った獣のような声にアルさんが驚き、隣に座るギギさんへと抱きつく。

「そ、そうよ。エル姉何も話してないの?」

 アルさんがオレ、スノー、他メンバーと順番に視線で問う。
 皆、知らないという意味で首を振った。
 彼女は楽しげに、ギギさんから離れて足を組み直す。

「知りたい、エル姉の婚約者のこと?」

 知りたいか、知りたくないかで言えば――知りたい。
 場合によってその婚約者を地獄の縁まで追い詰めないといけないからだ。

 オレが頷くとアルさんはそっぽを向き、

「そうなんだ知りたいんだぁ~。でも、ちょっと私も思い出せないなぁ~」
「ぐぅ……これで一つお願いします」

 オレだってこっちの異世界で生きてもう随分になる。
 アルさんの言わんとすることは理解している。財布から銀貨を取り出し、彼女の手のひらに握らせた。

 彼女は胸元に銀貨をしまいながら、エル先生の婚約者と生い立ちについて話をしてくれた。

「元々、エル姉――っていうか私達は、獣人大陸奥にある小さな領地を持つ小国の王の娘だったんだけど……」
「はっぁ!? えっ! エル先生が小国の王の娘!? って、つまり元お姫様ってこと!」

「お、おどかさないでよ。そうよ。私達は小さい国だけど昔はお姫様やってたのよ。エル姉はそんなことも教えなかったの? 随分、徹底してるわね」

 アルさんは姉の秘密主義振りに感心していた。
 まさかエル先生が小国とはいえお姫様だったなんて……。
 いや、でもアルさんが言うことだし本当にお姫様だったのか疑わしい。この人のことは素直に信じない方が……と、疑惑の目を向けているとリースが隣に座ってきて耳打ちしてくる。

(リュートさん、リュートさん、私、思い出しました!)
(思い出したって何を?)
(初めてエル先生にお会いしたとき、どこかで会った気がしたんですが……彼女達が子供の頃、ハイエルフ王国主催のパーティー会場で挨拶されました!)

 マジかよ!?
 リースはハイエルフ族。その寿命は他種族に比べて圧倒的に長い。
 さらに彼女はハイエルフ王国のお姫様。
 そのため彼女が今の姿のままで、子供のエル先生達と会っていても不思議ではない。

 つまりエル先生は本当にお姫様だったのか!?

 だから、別れ際リースの質問にエル先生が珍しく声を上擦らせたのか。
 確かに小国のお姫様だった事実を隠したいなら、誤魔化すしかないだろう。
 リースはエル先生に、自身がハイエルフ王国、エノールの第2王女だと明かした。
 アルさんは昔を覚えていて、リースに気付いたりするのだろうか?

「どうしたの? 何か私、不味いこと言った?」
「いえ、なんでもありません。済みません、話を中断してしまって」

 そんなことを考えていると、アルさんに話しかけられる。
 オレは適当に誤魔化して再び話を聞く。
 アルさんが話を続ける。

「ある日、人種族の冒険者の男が、私達の国にクエストで来たの。それが切っ掛けでエル姉とその冒険者がよく話をするようになって、彼が国を離れても文通を続けていたの。手紙が来るたびに珍しく人目も気にせずはしゃいでいたのよね」

 少女時代とはいえ無邪気にはしゃぐエル先生の姿が想像できない。
 でも、と彼女が続ける。

「エル姉に結婚話が持ち上がったのよ。けど、エル姉はすでに冒険者の男に惚れていた。一応、小国とはいえ王女を平民出の人種族に嫁がせるわけにはいかなかったの。だから、エル姉は冒険者の男と駆け落ちすることを選んだのよ」
『駆け落ち!?』

 ギギさんを除く、エル先生を知るオレ達が驚愕の声をあげる。
 まさかあのエル先生が駆け落ちしたなんて……随分思い切ったことしたな。

「実際は私が焚き付けたんだけどね!」

 アルさんが楽しげに笑う。
 オレ達はその場に転げそうになった。

「私もお姫様生活が嫌でどうにか抜け出そうと考えていたわけよ。で、都合よくエル姉が相談して来たから駆け落ちするよう唆したのよ。2人に目が行っている間に、私は悠々反対側から国境を抜けることができたの。いや~、あの時は本当に助かったわ!」

 こ、この外道が……! まさかエル先生の恋心を利用するとは……ッ。

「そんなに睨まないでよ。後から再会して、エル姉から『背中を押してくれてありがとう』ってお礼を言われたんだから。本人達が納得してるなら問題ないでしょ?」

 そして、アルさんが話を続ける。

 エル先生と冒険者の男性は無事駆け落ちに成功。
 2人は獣人大陸から、妖人大陸に移りとある街で一緒に暮らす。

 エル先生は暴力的なことが苦手なため、冒険者にはならず医者代わりに治癒魔術師として働いた。
 そして冒険者男性は仲間達とクエストをこなし、エル先生と仲良く暮らしたらしい。

 2人共、働いていたため貧しい思いをすることはなかった。
 だが、贅沢もしなかったらしい。

 理由は、冒険者男性が元々孤児院出身だった。彼の夢は自分のような孤児を保護し、働く技能を与える孤児院を設立することだった。

 この夢にエル先生も賛同し、2人は贅沢をせず働き資金を貯めた。

 結婚も、夢が叶ったその日にやろうと誓い合ったらしい。

「でも、その冒険者の男があるクエストで死んじゃったのよ」

 愛する人の死を知ったエル先生は、悲しみに暮れ、彼の後を追おうとも考えたらしい。だが、結局、後は追わず彼の夢を叶える決意をした。

 夢を叶えることで、彼が生きた証を残したかったらしい。

 そして今は知っての通り、小さな町で彼の夢だった孤児院をエル先生は1人で切り盛りしている。

 アルさんがなんでもない風に告げる。

 この時点で、スノーやクリス、リース、メイヤは涙ぐんでいた。
 オレも正直、涙腺がヤバイ。

 まさかエル先生にそんな過去があったなんて……。

 小国のお姫様だったことを黙っていたのも、話せばどうして駆け落ちしたのか、その相手がどうなったのか――全て話さなければならない。

 オレ達や孤児院の子供達に悲しい気持ちにさせないため黙っていたのだろう。
 リースに『どこかで会った?』と尋ねられ誤魔化したのもそれが理由か。

 エル先生はなんて優しい嘘を付くのだろう……。

 ぐすぐすと流れる涙が落ち着くまで暫し室内は沈黙が満たす。

 オレは気持ちが落ち着いたところで、気になっていることを尋ねた。

「それで結局、エル先生とアルさんの実家はどうなったんですか? 小国とはいえ、お姫様がいなくなったら大問題ですよね? 探したりとかしなかったんですか?」

「もちろんしたわよ。でも孤児院を建てた後、エル姉が手紙を出したの。今までの経緯を纏めたのを。んで、一度、両親がお忍びで会いに来て、最初は連れて帰ろうとしたけど、エル姉の熱意に負けて許可したのよ」

 その際、支援を申し出たらしいがエル先生はやんわりと、しかし固い決意で断ったらしい。

 以後はオレ達が知るようにエル先生が1人の孤児院を切り盛りしている。
 またアルさんの知る限り、想い人が亡くなって以降、多くの男性から愛を囁かれ言い寄られているが、全て拒絶しているらしい。

 最初にアルさんが言っていた、操云々はこのことを言っているようだ。

 オレは一通りエル先生の話を聞いた後、アルさんに付いても尋ねた。

「そういえばアルさんも国から出たんですよね? ならエル先生のように探されたりしたんですよね。戻ろうとは思わなかったんですか?」

「もちろん探されたわ。ある意味で、エル姉より熱心にね。でも、戻ろうなんてこれっぽちも思わなかったわよ」

 彼女は足を組んだまま、堂々と胸を張り断言する。

 その真っ直ぐな言葉にオレは彼女の評価を改めた。

 お姫様生活が嫌で国を出た。
 それは自由に生きたいという意志があったからだろう。

 昔に比べて確かに着る衣服は劣り、食事も満足に摂れない日々が続き、安全に寝られる寝床にも困っただろう。しかし、彼女はお姫様生活にあった安寧と引き替えに自由を得た。

 自らが望んだ、生きるのも、命を落とすのも自由な生活を。

 恐らく、彼女だって辛い日々があっただろう。
 現在だって、国に手紙の一つを出せばすぐ助け出してくれるだろう。しかしそれをしないのは、アルさんなりの矜持があるのからなのだろう。

 なんだかんだ言ってさすがエル先生の双子の妹だ。

 アルさんが懐かしむように話し出す。

「私は国を出る時、金になりそうな国宝や王冠なんかを持てるだけかっぱらって、国を出た後に旅費の足しにするためうっぱらっちゃって。今でも戻ったら死刑確実なのよね。だから戻りたくても、戻れないのよ。しかも当時、私も若くて世間知らずだったから、持ち出したお宝を二束三文で売り払っちゃってさ。すぐにギャンブルとお酒でなくなっちゃったのよね。ぶっちゃけそれさえなければ、ホントはさっさと戻ってお姫様暮らしに戻りたいのよ。今なら親も色々諦めてるだろうから、喰っちゃ寝しても文句言われないだろうし。まっ、また飽きたら適当に金目の物を頂いて国を出るけどね(笑)」

 このクズが……ッ。

 こいつは本当にエル先生の妹なのか?

 怒りを通りこして、呆れてしまう。
 この人には今後、関わらないのが吉だ。

「とりあえずお話を聞かせてくださってありがとうございます。それじゃオレ達はこの辺で失礼します」
「何? もう出て行くの? 折角だから遊んでいきなよ」

「今夜泊まる宿も決めてませんし、夕飯も摂っていないので」
「確かに今夜はどの宿も満室が多いみたいね。よかったら、私の知っている所を紹介してあげようか? あそこなら多少の融通は利くわよ」

 本来ならこの申し出は凄くありがたいが、彼女のようなタイプに貸しを作るのは後々問題になりそうだ。
 しかし、現在、宿屋は運悪く満室な訳で……。

 オレが逡巡していると、控え室の扉が開く。
 アルさん以外の娼婦が部屋に入って来たのだ。

「ッ!?」

 オレは入って来た女性に釘付けになる。

 もちろん顔やスタイルが好みだから見入っている訳ではない。

 銀髪をショートカットに切りそろえ、胸は下着のような衣服を下から持ち上げるほど大きい。肌は褐色。瞳は金色で瞳孔が縦に伸びている。

 新人冒険者狩りにあって以降、一度だって忘れたことのない女性が部屋に入ってきたのだ。

 魔人種族、悪魔族のミーシャ。

 オレを嵌めて、スノーとの婚約腕輪を破壊し、奴隷として売り払った3人組の1人だ。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明明後日、11月20日、21時更新予定です!

また、軍オタ1巻、引き続き発売中です。
まだの方は是非、よろしくお願いします!
(なろう特典SS、購入特典SSは18日の活動報告をご参照下さい)
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