第191話 亡国の王子
リュート、16歳
装備:H&K USPタクティカル・ピストル(9ミリ・モデル)
:AK47(アサルトライフル)
スノー、16歳
魔術師Aマイナス級
装備:S&W M10 2インチ(リボルバー)
:AK47(アサルトライフル)
クリス、15歳
装備:M700P (スナイパーライフル)
:SVD (ドラグノフ狙撃銃)
リース、182歳
魔術師B級
精霊の加護:無限収納
装備:PKM(汎用機関銃)
:他
レンタル飛行船を借りて、ノルテ・ボーデンを旅立った。
メイヤ所有の飛行船より一回り以上小さいため個室は無く、ひと部屋を二人で使ってもらっている。やや窮屈だが、獣人大陸に帰るまでの我慢だ。
そして旅立った翌日、午後。
飛行船が安定飛行に入ったため、皆にリビング兼食堂に集まってもらった。ようやく落ち着いたので、皆にオレ自身の身分を明かすためだ。
オレが亡国ケスランの王子で、大国メルティアに狙われるかもしれないこと。実父は既に亡くなり、実母は行方不明ということ。
この真実を知っているのはスノーだけだ。
全員に一度で説明するタイミングがなかなか取れず、これほど遅くなってしまった。
今回、このことを話す理由は、皆にオレの立場を知って欲しいからだ。それはスノー、クリス、リース、シア、メイヤの皆を信じている証明でもある。
もし仮に彼女達のせいでオレが亡国ケスランの血族の生き残りだと知られても、後悔はしない。
またこのことを知った上で、今後の行動について皆に広く意見を求めるつもりだ。
オレ一人で悶々と考え込んだら偏った意見しか出てこないだろう。しかし、三人寄れば文殊の知恵、きっとスノー達に聞けば今後どのようにすればいいか良いアイディアが出てくるはずだ。
まずクリスの意見。
『星形の痣云々は口に出さなければ問題無いと思います。今後は肌の露出に気を付ければ、知られることはないです。仮にメルティアに知られて、リュートお兄ちゃんを狙うなら、私がメルティアの王様の脳天を吹っ飛ばします。お兄ちゃんには指一本触れさせません』
クリスは鼻息荒く。
どこから取り出したのか、SVD(ドラグノフ狙撃銃)を手に闘志を燃やす。
続いてリースの意見。
「私の実家は長年メルティアとは友好的な関係を築いてきました。なのでたとえ知られたとしても、ハイエルフ王国エノールを通せば穏便にすませることが出来るでしょう。なのであまり神経質にならなくても大丈夫ですよ。仮にメルティアがそれでもリュートさんを狙うというのであれば、滅ぼしましょう。大丈夫です。その際は、私がなんとしてもお父様達に話をつけてエノールの兵士全員で突撃してみせます」
笑顔のまま淡々と断言する。
前に護衛メイド見習いのお尻を触ろうとして、未遂に終わった時の100倍迫力がある笑顔だ。
次はスノー。
彼女も前、妻二人の意見に同調する。
「クリスちゃん、リースちゃんの言う通りだよ! もしリュートくんに手を出そうとするならわたし達が倒すんだから! その時は師匠にも頼んで力になってもらうよ!」
スノーの師匠は『氷結の魔女』と畏怖される魔術師S級の妖精種族、ハイエルフ族だ。まだ会ったことは無いが、どうもスノーを気に入っているらしい。
彼女が頼めば本当に力を貸してくれそうだ。
さらにシアが冷静な口調で告げた。
「奥様方の仰る通りかと。口に出さなければ痣の件が漏れることはありませんし、問題がおきれば姫様の実家を頼られればよろしいかと。それでもちょっかいを出そうというのであれば、コッファーを量産いたしましょう。兵士一人につき一つのコッファーを持たせれば、たとえ大国メルティアといえど滅亡は必然かと」
シアのコッファー万能説。
なんだよ兵士一人につき一コッファーって……。
そこまでいったらAK47持たせる方が早いだろう。
最後はもちろんメイヤだ。
彼女は体中の穴という穴から血を噴き出す勢いで怒り狂う。
「天と地と民を照らす唯一にして絶対の生神! 天才魔術道具開発者であらせられるリュート様の国を滅亡させ、ご両親を亡き者にし、あまつさえリュート様そのものを狙うかもしれないなどと! たかだか一大陸の覇者程度が身の程を弁えない愚かな所業! 決して許される物ではありません! 今すぐ、すぐさま、殲滅しましょう! メルティアという国が存在した痕跡一つ跡形も残さず! 王族共に至っては親類縁者のみならず、恋人、友人など、その家族共々まで鉄槌を下すべきですわ!」
メイヤさん、怖い怖い。
なんだよ、親類縁者のみならず恋人、友人などその家族共々まで鉄槌を下すって。前世のメキシコマフィアの手口か!
一通り意見を求めた結果、オレ以外全員が『メルティア王国殲滅』を提案してくる。
うちの嫁や仲間達、好戦的過ぎるだろう……。
いや、皆の怒ってくれる気持ちは嬉しいけどね。
「とりあえず、みんな落ち着いてくれ。別に僕はメルティアを恨んでいるとかじゃないから。産まれる前の話で、ケスラン王国を復活させようとか野心を抱いているわけでもない。大国に喧嘩を売るつもりはないから。……もちろん、あちらが手を出してきたら防衛するつもりだけどね」
こんな感じで皆の意見を纏めた。
とりあえず、痣に関しては皆が口外しない限り問題無し。今後は肌の露出に気を付ける。
孤児院に戻って痣に関してエル先生達に口止めはしない。下手につついてやぶから蛇を出す必要はないからだ。
むしろ肩の痣より、銃器開発の方に目がいって誰もそんなことは覚えていないだろう。
またもし痣のことがメルティアにばれて触手を伸ばしてきたら、ハイエルフ王国に矢面に立ってもらおう。
結界石破壊を救い、一部ハイエルフの暴走に付き合わされたりなど貸しならある。
また最悪の事態――ハイエルフ王国が仲介に立ってもメルティアが止まらない場合、踏み止まらせる抑止力になるだけの兵器を開発しておくべきだろう。
しかし、そこまで行くとさすがに自分1人でどうこう出来るレベルではなくなる。
専門の研究所を新・純潔乙女騎士団本部に開設して、時間をかけて兵器開発をおこなっていくべきだ。
備えあれば憂いなし。
またこれを機会にいくつかアイディアがあるオリジナル兵器を製作したい。
こちらも兵器開発同様、時間を見付けて進行させて行きたいものだ。
「それじゃとりあえず痣に関しては今後、口外しないこと。今後オレは肌の露出は控える。そしてメルティア側から手を出してきたら、ハイエルフ王国に仲介してもらうということで」
オレのまとめに皆が同意の声をあげる。
飛行船は穏やかに新・純潔乙女騎士団がある獣人大陸を目指し飛行していた。
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