挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

10章

181/479

第177話 コッファー

『スノー処刑』の一報を聞き、オレ達は皆、烈火の如く怒り狂った。しかし、このまま激情に任せて突撃しては相手の思うつぼだ。
 スノーはあくまでオレ達を釣り上げるエサ。
 素直に正面から攻めて、相手の思惑に乗ってやる必要はない。

 そこでオレ達は意見を交換し、過去、巨人族避難用に掘った地下道を利用することを思いついた。
 敵もまさか下から攻めてくるとは思うまい。
 相手の裏をつく作戦だ。

 しかし、問題は迷路のように街中に張り巡らされた地下道を把握し、ピンポイントで処刑場の真下に辿り着けるかだ。
 そこはアイスが協力してくれた。

『私のせいでスノーが捕まったから、その罪滅ぼしになるのなら』と。

 そして作戦決行。
 オレはとにかく食料を口にして、流れ出た血液を生産して体力の回復に専念。
 アイスは街の地図を頭に描き、地下道を長年の利用してきた勘も合わせて処刑場の真下を割り出した。
 後はその天井を対戦車地雷等で吹き飛ばせばいい。

 オレ達は吹き飛ばした地下道から出て状況を確認する。
 さすがに処刑場の舞台――スノーの目の前というわけにはいかなかった。囚われている場所から、やや距離がある位置に出てしまう。

「リュートくん!」

 オレ達の奇襲に驚愕してた衛兵達も、我に返るとスノーを引っ立て城へと連れて行く。
 クリスはちょうど弾倉交換だったため、その足を止めることが出来なかった。
 だが、慌てる必要はない。
 どうせ城に監禁されているスノー両親や白狼族も助けるため、城内部へ入る予定だったのだから。

「シア! リース! 予定通り、この場に居る奴等の足止めを頼む!」
「分かりました! リュートさん、必ずスノーさんを助けてくださいね!」
「足止め、そしてお嬢様の身の安全はお任せください!」

 オレはアイス、メイヤを抱えてスノーの後を追い門を目指す。
 その途中、奇襲を受けた衝撃から立ち直った敵の冒険者や衛兵達が塞ぐ。

「若様! その場で跳んでください!」
「お、おう!」

 リュートは言われるがまま、メイヤとアイスを両脇に抱えてジャンプ。
 その下をシアは両手に掴んでいた中型のコッファー――大きさ的に海外に持っていく旅行鞄サイズのものを、肉体強化術で腕力を向上させ地面を滑らせるように2つとも投げる。

『おわぁ!?』

 スノーの後を追うリュート達を妨害するため立ち塞がっていた冒険者&衛兵達はまるでボーリングのピンのごとく投げられたコッファーに足を払われ倒れる。

「今のうちにお進みください!」
「ありがとう、シア!」

 礼を告げ、再度地面に足を付けて走り出す。
 門を閉めようとした衛兵をクリスがすでに撃ち倒していた。
 そんな彼女と合流してから、オレ達は城内へと侵入する。

 一瞬だけ背後を振り返る。
 シアとリースもオレ達の後に続き、門の前で立ち止まり戦闘準備を開始。
 リースはPKMを、シアは新たなコッファーを2つ受け取り両手で握りを確かめていた。

 オレ達はその場を彼女達に任せて、スノーを追いかけて門をくぐり抜ける。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼



 事前に決めていたリースとシアの役割は、リュート達が挟撃を受けないよう追撃者を排除、堰き止めることだ。
 そのためリースは門を守るためPKMを手にしていた。

「門の前に居る女達を取り押さえて、侵入者の後を追え!」

『うおおおぉぉぉッ!』と地鳴りのような雄叫びと足音を響かせ、リース&シアを目掛けて冒険者&衛兵達が突撃してくる。
 数は300人ほどだろうか――全員が手に武器を持ち、殺気だって門を目掛けて突撃してくる。
 一般人なら腰を抜かすほどの迫力だが、リースはむしろ呆れていた。

「この程度の数と質でPKMに突撃してくるなんて、自殺行為と変わりませんよ」

 リースが狙いを付け、引き金を絞ろうとしたが――その指をシアが止める。
 彼女はリースの前に立つと、突撃してくる群れに両手のコッファー側面を向ける。素早く2回押す。

 名札が飛び散り、9mm(9ミリ・パラベラム弾)が掃射。
 突撃してきた群れも、発砲音と毎分900発という高い火力に足を止めざる終えなかった。

「彼ら程度、お嬢様のお手を煩わせることはありません。それに雑用はメイドの勤めですので」
「……そうですね。ではシア、掃除をお願いしますね」
「畏まりました」

 シアは深々とリースに一礼してから、敵の冒険者&衛兵達へと向き直る。
 彼女は一度コッファーを地面に置き、右手を胸に、正統派メイド服の裾を左手で掴み正面で戸惑っている敵達に一礼した。

「お嬢様のご許可も頂きましたので、ここからはPEACEMAKER(ピース・メーカー)、筆頭護衛メイド、妖精種族、黒エルフ族のシアが相手を務めさせて頂きます。皆様、少々のご無礼ご容赦願います」

「調子に乗るなよクソメイド!」

 シアの口上の後すぐにクマのような巨漢が怒声を吐き出す。
 その手には分厚い鉄製の大楯が握られていた。
 彼は初日ノルテ・ボーデンの冒険者斡旋組合(ギルド)で、スノーに目の色を変えて襲いかかってきた冒険者の1人だ。
 シアによって剣の一撃をコッファーで弾かれ、殴り倒された人物である。

「オマエの手の内はすでに分かっているんだよ! そのクソ鞄から魔術を飛ばすんだろ! だが、その威力は大したモンだが、この鋼鉄製の楯を貫通するモンじゃないってばれてるんだよ!」
「…………」
「オマエら、並べ並べ!」

 クマ男の指示で似たような大楯を持った男達が横一列に並ぶ。

「がっははは! これでオマエの魔術は効かないぜ! 捕まえてあの時の借りを返させてもらうぞ!」

 女性に対して怨みの借りを返す。
 その意味が分からない者はこの場に誰1人いない。
 もちろん、シア&リースもだ。

「オマエら! このまま前進だ!」

 シアは鋼鉄の楯を掲げ、横一列になって歩み迫ってくる男達に呆れた溜息をつく。

「その程度の楯を持ったぐらいで攻防一体の最強武器であるコッファーを攻略したつもりでいるとは……無知というのは本当に罪ですね」

 シアは置いたコッファーを掴み、左手のコッファーだけ9mm(9ミリ・パラベラム弾)とは反対側の側面を男達へと向ける。

「若様が作り出した最も偉大な魔術道具であるコッファーの素晴らしさを、その身を以て味わいなさい!」

 シアの指によって、スイッチが押される。

 ボシュ――やや抜けた音と共に、40mmグレネード弾が発射される。

『……ッ!?』

 想定外の攻撃に息を飲む敵の冒険者&衛兵達。
 着弾、同時に爆発音が響き渡る。
 鋼鉄製の楯ごと吹き飛ぶ男達の悲鳴も、爆発音に飲み込まれ聞こえることはなかった。

「な、何が起きた!? 新手の魔術攻撃――ぐあぁ!?」

 群れのほぼ中心。
 爆発に土煙に対して、背を向け叫び声を上げていた男が昏倒する。

 シアが爆発と同時に、肉体強化術で身体を補助。
 突撃し、大きくジャンプして中心に着地、金属製旅行鞄サイズのコッファーで男を殴り飛ばしたのだ。

 他の冒険者&衛兵もいつの間にか、すぐ目の前にいたシアにギョッとして硬直してしまう。だが、彼女は遠慮なく攻撃を開始する!

『ぎゃあぁぁぁぁあ!』

 シアが両手を広げ、左右のコッファー側面を周囲360度の敵へと向けスイッチをオン。
 9mm(9ミリ・パラベラム弾)を発射しながら、シアはコマのように回る。それだけで回りを囲んでいた冒険者&衛兵達は面白いように倒れていく。

「ちょ、調子に乗るなよ! このクソメイドが! オマエ等! しゃがめ! しゃがんであのクソメイドの足を狙え!」

 我に返った男達がしゃがんで9mm(9ミリ・パラベラム弾)の暴風をやり過ごす。そして、槍を手にした男達が、その長さを生かしてシアの足を狙うが、

「な、ナニぃいいぃ!?」

 シアは両手のコッファーを地面に突き立て、逆立ち――しかもなぜか不思議なことに、彼女のメイド服スカートはめくれない。
 男達の槍は虚しく金属製のコッファーを突いて終わった。
 シアは逆さまのまま、槍を突いて無防備になっている男達へ向け、右手にあるコッファーの側面を向け一回転!

 9mm(9ミリ・パラベラム弾)が盛大にばらまかれる。

 男達の悲鳴が再び響く。

「弓だ! あの死神メイドを弓で狙え!」
「しかし、それでは仲間に当たってしまいます!」
「構わん! このままではあの鞄を持った死神メイドに全員殺されちまうだけだぞ!」

 衛兵の隊長格らしき人物が唾と共に指示を出す。
 衛兵達はクロスボウを手に、逆立ちを止め足で立つシアに弓矢を向ける。
 だが、彼女はそれを素直に受けるほど馬鹿ではない。

 右手にあるコッファーを9mm(9ミリ・パラベラム弾)とは反対の側面を、クロスボウ隊へと向ける。
 そして、スイッチオン。

 2発目の40mmグレネード弾が発射される。

 クロスボウ隊は弓矢を放つ前に、まとめて吹き飛ばされてしまう。

『ひぃいぃッ……!』

 生き残った冒険者&衛兵達は1歩、2歩、3歩と無意識に後退してしまう。

 シアがそんな彼らに向け、スイッチを押すが9mm(9ミリ・パラベラム弾)は発射されない。

「さすがに弾切れですか」

 通常の抱き締められるほど小さいアタッシュケースより大きく作られた旅行鞄サイズのコッファーだが、無限に9mm(9ミリ・パラベラム弾)を詰め込める訳ではない。
 また40mmグレネード弾も1発ずつしか発射出来ない仕様になっている。

 シアはすでに2発使っているため、これ以上40mmグレネード弾を撃つことは出来ない。

「ち、チャンスだ! あの死神メイドを倒すチャンスが来たぞ!」
「天神様に感謝を! 野郎共続け! 仲間の仇をとるんだ!」

『うおおおぉぉおぉぉぉおぉぉ!』

 シアのコッファーが弾切れだと知ると、先程まで怯えていた男達が戦意を取り戻し仲間を倒された怒りと共に再度の突撃してくる。

 なのにシアはまったく慌てる様子を見せない。

 彼女は9mm(9ミリ・パラベラム弾)と40mmグレネード弾のスイッチを同時に押す。
 するとギミックが作動しコッファーの側面から、無数の刃が飛び出す。

 シアは肉体強化術で身体を補助しながら、刃が飛び出た二つのコッファーを手裏剣のように投げつける。

『ぎゃぁあっぁあ!』

 コッファー手裏剣は、突撃してきた男達を切り裂き、二つともシアの手から離れてしまう。これで完全に彼女の手から武器が無くなる。

「今度こそ本当のチャンスだ! 今のうちに死神の首を取れ!」

 男達は再度、突撃を敢行する。
 そこには最早怒りより、目の前の暴挙を引き起こしたシアが再び暴れ出す前に倒そうとする恐怖の割合の方が多かった。

 彼女はそんな彼らに初めて背を向け走り出す。

「おおおぉお! 逃がすな! 絶対に逃がすな!」

 確かに背を向け、走るシアの姿は逃走に似ている。
 だが、男達は気付く。
 彼女が目指す先にある物に。

 シアが走る先にあるのは、最初リュート達が姿を現した時に冒険者&衛兵達をボーリングのピンのように転ばせた金属製の旅行鞄だった。
 最初、男達は足止めのため投げ捨てた旅行鞄程度にしか認識していなかった。しかし今は違う。
 あの金属製の鞄がどれほど恐ろしい物か理解している。

「ぜ、絶対に死神に鞄を持たせるな! 近づけさせるんじゃない!」

 冒険者&衛兵達は手にしていた槍や手斧、ナイフ等を投げたり、弓で狙ったり、魔術で攻撃したり必死にシアをコッファーへ近づけさせないようにする。

 しかし、シアは魔術による抵抗陣で魔術攻撃を防ぎ、投擲武器は側転やバク転などで華麗に回避する。もちろん側転やバク転等をしても、決してスカートの中身を周囲に晒すことはない。
 なぜならメイドだからだ!

 最後に大きくジャンプして、地面に置かれていた2つのコッファーへ腕を伸ばす。
 その着地タイミングに合わせて男達が、攻撃を集中させるも――シアはコッファーを左右の手で掴むと魔術による抵抗陣で防ぎ、投擲武器は回避せず全て手にした金属製コッファーで叩き落として見せた。
 強度限界ギリギリまで魔力を込めて魔術液体金属で作られたコッファーに対して、ただの投擲武器では傷を付けることも出来ない。

 結局、男達の攻撃はシアのメイド服に汚れひとつ付けられない結果に終わってしまう。

 彼女はうっとりとした視線で両手のコッファーの重みを確かめる。

「やはりコッファーは素晴らしいですね。遠距離、近距離、殴打武器可能で、強固な楯にもなり、ギミックの刃を出し本体ごと投擲すれば切断&質量兵器にもなる。本当に素晴らしい武器です」

 さて、と――彼女は運良く未だ立っている冒険者&衛兵達に顔を向ける。
 シアには珍しく、彼女は笑っていた。
 口角が少し動いた程度だが、なぜか獰猛な肉食獣を連想させる笑みだった。

「……それでは掃除を再開したいと思います。皆様、お覚悟を」
「ま、待ってくれ! 俺はもう沢山だ! 降伏する! だから命だけは助けてくれ!」

 男が1人、命乞いをしながら手にしていた剣を投げ捨てる。
 それが連鎖して『俺も、俺も!』とその場に立っている男達が次々武器を投げ捨て、降伏の意思を示す。

 シアは物足りなさそうに眉根を寄せたが、すぐにいつもの平然とした表情を取り戻す。
 そして念のため自らの主に伺いを立てる。

「お嬢様、いかがなさいますか?」
「私の出番がなかったのは残念ですが、降伏するというなら受け入れましょう。わたし達の目的は、『広場に残った兵力の全滅』ではなく、『リュートさんの後を追わせない』ことなのですから」
「了解いたしました」

 シアは右手を胸に、左手でスカートをつまみ一礼する。
 こうして広場の戦闘は、シア1人の力によって終わってしまった。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明後日、7月23日、21時更新予定です!

いつも読んでくださって本当にありがとうございます!

突然ですが、明鏡シスイからのお知らせです!

ようやく許可が下りたので、ご報告させて頂きます!

軍オタ、書籍化します!

現在、公開できる情報を活動報告にアップしていますので、ご確認頂けると幸いです!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ