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軍オタが魔法世界に転生したら、現代兵器で軍隊ハーレムを作っちゃいました!? 作者:明鏡シスイ

10章

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第153話 北大陸の1日目夜

 冒険者斡旋組合(ギルド)を皆で出る。
 幸い、外の吹雪はすでに止んでいる。飛行船に戻るのにそれほど労力はかからないだろう。
 念のためスノーは雨具を頭からすっぽりと被り、白狼一族だと示す銀髪と獣耳を隠す。またオレ達は手に銃器を持ち、スノーを庇うように囲んで飛行船へと戻った。

「…………」

 フードを頭から被った長身の人物がこちらの様子を窺っている。
 視線を向けると、背を向け裏路地へと消えた。
 警戒するが、それ以上のことは起きない。

 オレ達はさっさと都市を出る。



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「ごめんね、みんな……わたしのせいで迷惑かけちゃって」

 スノーは飛行船の食堂兼リビングで一息つくと、尻尾と耳を垂れ下げ謝罪を口にする。

 スノーの隣に座るクリスが、彼女の手を取る。

「お姉ちゃ、んのせい、じゃな、い」
「そうですよ。全てはこの都市を仕切る貴族のせいです。スノーさんが謝ることなどひとつもありません!」

 さらにリースが強い言葉で断言する。
 妻達の仲が良くてありがたい。

「ありがとうクリスちゃん、リースちゃん。でも、今ここに居るのは危険だよ。わたしの両親の手がかりはいいから、もう本部に戻らない?」
「ですが、すぐに飛び立つのは無理ですわ。ここに来るまで飛行船の魔石魔力はほぼ使い切りましたから、補給をしなければ一番近い妖人大陸の端にすら届きませんわ」

 スノーの弱気な言葉に、メイヤが現実的な問題を口にする。
 飛行船は魔石で飛ぶ。そのため一気に大陸間を飛ぶわけではなく、飛び石のように魔力が充填された魔石の切り替えをおこなえる都市間を渡って目的地へと飛ぶようになっている。これも飛行船が個人で所有出来ない理由の一つだ。移動だけで結構いい金額がかかる。

「スノーの心配も分かるが、だからこそ明日直接その貴族と面会して『スノーに手をださない』って言質を取りに行くんじゃないか。それになんで白狼族に懸賞金なんて掛けているのか聞き出して、もし変な理由なら止めさせないと。オレの大切な幼なじみで妻のスノーの一族が酷い目に合うなんて我慢できないからな!」
「リュートくん、ありがとう……」

 スノーは目元に浮かんだ涙を拭い、隣に座るオレの手に自身の手を重ねてくる。
 シアが空気を読まず進言する。

「差し当たって今夜は警戒して歩哨を立てるべきだと思います。冒険者斡旋組合(ギルド)に居なかった冒険者や他者達が懸賞金目当て襲って来たり、冒険者斡旋組合(ギルド)で倒した冒険者達が逆恨みで襲撃してくる可能性がありますから」

 冒険者斡旋組合(ギルド)にいた冒険者をぼこぼこにしたのは基本、シアだった気が……。
 いや、オレも特殊音響閃光弾(スタングレネード)を投げつけたから、恨まれているかもしれないな。

「よし、とりあえず今夜はシアの言うとおり歩哨を立てよう。みんな、着いて早々疲れているだろうけど、我慢してくれ。明日になれば色々話が付くと思うから」

 オレの指示に皆、それぞれ同意の返事をしてくれた。
 そして早速、今夜立つ歩哨のローテーションを決める。



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「はぁ~、寒……」

 息を吐き出すと輝く星の下、白く濁って霧散する。
 最初の歩哨組はオレとシアが担当した。
 ついて早々騒動が起きて、心身共スノー達は疲れているだろう。だから、このメンバーの中で体力がある者2名を最初の歩哨に立てた。

 シアは相変わらず防寒着を着ず、メイド服姿だ。

「シアは寒くないのか?」
「ご心配して頂きありがとうございます。ですが、平気です。メイドですから」

 マジ、メイドさんすげー!
 また彼女はAK47ではなく、いつもより一回り大きいコッファーを手にしている。通常のより装弾数を増やした特別仕様のオリジナルモデルだ。
 どうやらシアは鞄――コッファーをいたく気に入っていたらしい。
 本人曰く、

『コッファーは武器になり、楯にもなる攻防一体の最強武器です』とのことだ。いつも真剣な表情のシアだが、あの時は頬を上気させて興奮の色が浮かんでいて、ちょっと怖かった。魔術液体金属の素晴らしさをエル先生に力説した時のオレは、あんな感じだったんだろうな……。

 またシアの要望でいくつかのバージョンを製作した。しかし、お披露目する日がいつか来るのだろうか?

 疑問に思いながらも歩哨を続ける。

 自分達以外の飛行船は2隻あったが、1隻に減っている。どうやら停泊する場所を見付け移動したのだろう。
 残る1隻から移動し距離を取る。
 死角を作らないためだ。

 オレ達は甲板に出てグルグルと歩き周囲を警戒する。
 吹雪で積もった新雪が星の光を反射している。基本的に平野のため、敵が現れたらすぐに分かる。
 また気配に敏感なシアが歩哨のため、敵が接近してきたらすぐに気付くだろう。

「ん?」

 雪が落ちる。
 降り積もって小山になっていた雪の一部が崩れて落ちたのだ。
 それだけなら特に違和感は無い。だが、風が吹いたわけでも、動物が通った訳でもない。
 なのに雪が落ちたのだ。

 オレはAK47の安全(セーフ)を真ん中の速射(フルオート)へと移動する。注意深くその地点を注視していると――

 雪が崩れた地点。
 雪が下から爆発したように舞い上がる。下から全身、頭から爪先まで真っ白な張り付く鎧を装備した人影が突撃してくる。
 数は全部で3人。

「敵襲!?」

 どうやら積もった雪の下を這って来たらしい。
 オレは驚愕しながらも、AK47を速射(フルオート)射撃!
 白い人影は銃口を向けるとあからさまに警戒し、発砲すると人外的動きで回避する。

「奴等、魔術師か!?」

 魔力を使用したのを感じ取る。
 恐らく肉体強化術で身体を補助し、視覚関係も強化して銃弾を回避したのだろう。
 しかし納得出来ないのは、まるでAK47――銃器を知っているように行動した点だ。恐らくだが、奴等は冒険者斡旋組合(ギルド)でのいざこざを知っている。

 だから、こちらの武器が特殊な魔術道具だと把握しているのだ。知っていれば、高性能な弓矢と理解し、遠距離ならば肉体強化術&視覚関係強化で回避するのはそう難しくない。

 反対側の甲板でも銃器音。
 シアもいつの間にか戦闘に突入していた。
 彼女があそこまで接近されて気付かないなんて……ッ!?
 完全にこちらが後手に回ってしまっている。
 オレはAK47の『GB15』の40mmアッドオン・グレネードを発砲!
 降り積もった雪を再度巻き上げる。
 全滅――させられなくても足止めぐらいにはなったはずだ。

「!?」

 足止め中に弾倉を交換しようとした隙を突かれる。
 舞い上がる雪のカーテンを切り裂き、1人が跳び蹴りをしてくる。咄嗟に抵抗陣を形勢するも、相手は肉体強化術で身体を補助した魔術師。その一撃で壁を突き破り飛行船内へと吹き飛ばされる。

「ぐッ……クソ……ッ!」

 左肩を押さえる。
 蹴られる刹那、体を半身にして肩と抵抗陣でガードしていた。お陰でAK47は壊れず、利き腕も問題無いが、左腕は痺れて暫くは上手く使えないだろう。

「リュート様?」

 声をかけられ、視線を向けるとメイヤが寝間着でベッドから体を起こしていた。
 寝間着は薄い生地で作った浴衣のようなものだった。前世で言うところの、襦袢というやつに近い。
 生地が薄いせいか、彼女のメリハリのある肢体がしっかりと分かる。
 さらに先程まで寝ていたせいで、裾や胸元がはだけて白い肌が星明かりにさらされ妙に色っぽかった。

 壁を突き破った先――ここはどうやらメイヤに割り当てた私室らしい。

 彼女は暗闇でもはっきり分かるほど興奮し、顔を赤く紅潮させる。そして、両手で自分の頬を抑える。

「リュート様、こんな深夜遅く夜ばいしてくださるなんて! 嬉しいですわ! あぁ、わたくしの初めてはここで奪われるのですね……今日の夜を記念日としてPEACEMAKER(ピース・メーカー)、そして新・純潔乙女騎士団の歴史に燦然と輝く出来事として刻み、後世の人々に伝えましょう!」
「メイヤのアホ! 寝ぼけてる場合じゃないだろ!」

 彼女がアホ台詞を言っている間にも、オレを蹴り飛ばした敵――白い全身鎧の敵が左右の手を振るう。
 腕から魚のヒレのように刃が飛び出る。魔術的仕掛けではなく、そういうギミックなんだろう。

 顔をガッチリと包んでいる面頬兜(フルフェイス)で覆っているため、表情は分からないが濃厚な殺意をはっきりと感じる。
 オレは右腕で腰からナイフを抜き対峙する。
 もちろん肉体強化術で身体補助。
 視覚全般も同時に強化する。

「メイヤは危ないから、そこから動かず伏せてろ――くッ!」

 敵の右腕が閃く。
 こちらも右手に握ったナイフで弾くと、すぐさま相手の左腕刃が接近。ギリギリで回避。攻め込もうとしたが、相手の腕が振るわれ、ナイフで刃を凌ぐのが精一杯だ。

 相手の右足が脇腹に突き刺さる。

「うぐッ!」

 根性で堪え、反撃するも相手は楽に回避する。動きが鈍くなっているのだ。左腕がまだ痺れて使い物にならないのを除いても、敵の格闘技術が高いことを理解する。

(クソ、魔術師の癖に……ッ。いや、優秀な魔術師ほど格闘技術や剣術に優れているって昔エル先生が言ってたっけ)

 敵の突撃。腕を交差し、刃をギロチンのように滑らせる。
 咄嗟に首と刃の間にナイフを差し込み防ぐ。暗い室内に火花が散る。

「ぐぅ……ッ」

 相手は腕に魔力を注ぎ、首を切り落とそうとしてくる。
 オレは両手でナイフを掴み、相手の押し込んでくる刃を支える。もちろん両腕に魔力を注いでだ。しかし、オレの魔力量は圧倒的に相手より小さい。持久戦は死しかない。

 面頬兜(フルフェイス)越しに目と目が合う。
 そこには特別な感情など無かった。
 人殺し程度では、特別な感情など湧かない――と言いたげな瞳だ。

 こんな奴に殺されてたまるか!

「こなクソ!」

 敵と自分の間に足を割り込ませる。
 足に残り少ない魔力を注ぎ込み、無理矢理蹴り飛ばし距離を作った。

 腰から下げていた『H&K USP(9mm・モデル) タクティカル』を抜き放ち発砲! しかし所詮は9mm。相手は抵抗陣を作り出し、楽に防いでしまう。

「リュートくん! 大丈夫!?」

 扉を開け、スノーが援護に駆けつけて来てくれる。
 彼女はすぐさま敵へ向けてAK47を向け、引鉄(トリガー)を絞る。白い敵は咄嗟に抵抗陣を作り出すが、9mmとは違う威力に肩を負傷。
 自分で作り出した穴から外へと逃げ出す。

「ごめんね、リュートくん援護遅れちゃって」
「いや、ナイスタイミングだ。ありがとうスノー、助けてくれて」

 オレは自身のAK47を拾うと、スノーにお礼を告げる。

「とりあえずまずは外へ出て、皆と合流しよう。行くぞ、メイヤ」
「だったら、少々お待ちを今着替えますので」
「そんな時間は無い! いいから、行くぞ!」

 オレはメイヤの手を取り、ベッドから引きずり下ろし開いた穴から外へと出る。後からスノーが続く。

「お兄ちゃ、ん。無事、よかっ、た」
「リュートさんも、メイヤさんもお怪我がなくてよかったです」
「申し訳ありません、若様。敵の接近に気付くのが遅れて、先手を取られるとは……」

 穴から出るとすぐクリス、リース、シアが声をかけてくる。
 みんな、手にそれぞれの武器を握り締めている。

 オレも空になった弾倉を新しいのにかえる。

「気にするなシア、とにかくみんな無事でよかった。そっちの状況は?」
「はい、敵襲は3人。こちらに被害はありませんが、相手を仕留めることが出来ませんでした。自分の気配察知にも引っかからないなんて、相当な手練れの魔術師達です」
「こっちも特に被害無し。襲撃者は3人、全員魔術師だ」

 つまり、全部で6人ということか……。
 他にも予備戦力として、待機している可能性があるが。

「とりあえず、どうするリュートくん? 飛行船を飛ばしてここから離れる?」
「いや、相手は魔術師だ。飛んでいる最中に撃ち落とされたら逆に被害が大きくなる。とりあえず朝になるまでみんなで固まって警戒――ッッッ!?」

 魔術師じゃないオレでも分かるほど濃密な魔力。
 視線を向けると襲撃者6人が集まり、意識を集中している。声を上げていないことから無詠唱魔術だろう。

 だが、無詠唱魔術は通常の魔術方法に比べて出も遅ければ、威力も落ちて、魔力の消費も多い。デメリットが満載の技術だ。しかし普通の魔術が使えない、声が出せない状況などは多々ある。

 どうやら襲撃者は、声をほんの僅かでも聞かせたくないらしい。
 問題は、6人の魔術師が同時に無詠唱魔術を発動しようとしていることだ。
 1つ1つは大した威力では無いが、6人がまるで1人の人間のようにタイミングを合わせることで威力を高めているらしい。

 もう発動寸前だろう。
 AK47を発砲して邪魔をする暇すらない。
 どうしてこうなるまで気付くことが出来なかったんだ!?

「みんな! 逃げろ! 飛行船から退避しろ!」

 オレの掛け声と同時にスノー達は走り出す。
 スノーがクリスを、シアがリースを抱えて飛行船から飛び降りる。
 オレはメイヤの手を取り、彼女達の後に続いて退避した――ほぼ同時に魔術が完成。

 オレ達が先程まで居た甲板に炎の魔術が着弾。
 爆炎、火柱を高く昇らせ飛行船を炎が包み込む。

 北大陸到着1日目は、こうして幕を開けた。


ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明後日、6月5日、21時更新予定です!

今回のメイヤシーン――『勘違い夜ばい』は、『北へ編』で書きたかったシーンのひとつです!
いやー、このシーンは書いてて本当に楽しかったです(いい笑顔で)。
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