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第140話 新・純潔乙女騎士団日常

 リュート、15歳

 装備:S&W M10 4インチ(リボルバー)

   :AK47(アサルトライフル)


 スノー、15歳

 魔術師Aマイナス級

 装備:S&W M10 2インチ(リボルバー)

   :AK47(アサルトライフル)


 クリス、14歳

 装備:M700P (スナイパーライフル)

:SVD (ドラグノフ狙撃銃)


 リース、181歳

 魔術師B級

 精霊の加護:無限収納

 装備:PKM(汎用機関銃ジェネラル・パーパス・マシンガン

   :他




 地獄の訓練を終え、PEACEMAKER(ピース・メーカー)と下部軍団(レギオン)の新・純潔乙女騎士団がココリ街の守護を始めて約1ヶ月が経った。


 オレは午前中に事務仕事を終え昼食を済ませると、街の見回り――『警邏』に出かける。

 警邏は2人1組で行う規則になっている。

 今日の警邏で一緒になるのはスノーだ。


 事務仕事を任せているガルマに、午後からの書類処理を手伝ってもらえないかと頼まれたがもちろん却下。予定は変えられないし、ガルマと2人で部屋に居るよりスノーと一緒に街を見回っていた方が楽しいに決まっている。


 ガルマは新・純潔乙女騎士団になってから、顧問引退を考えていたらしいが無理矢理引き止めた。事務仕事、責任者、交渉役など仕事は山ほどある。

 今更、自分1人だけ抜けて楽になろうなんて、皆が許すはずがない。


 彼も純潔乙女騎士団をこちらに押し付けた負い目があるためか、仕事を続けてくれている。事務処理に関してはそこそこ能力も高く、経験も持ち合わせているので、要所をチェックするだけで済む。ありがたいことだ。


「リュートくん、準備終わったから行こう」

「了解、了解。回る道順は覚えているよな?」

「もちろんだよ!」


 オレとスノーは軍服、肩にAK47をかける。

 これが街を見回る服装だ。


 本当は街を見回るためMP5Kを持ちたいところだが、さすがに団員全員分は無い。

 そのため、外見を統一するためにAK47を持たせていた。

 ちなみに、よっぽどの事態で無い限りAK47は使用しないように言い含めている。

 AK47は威力が高いので、街中で安易に発砲すると危険なためだ。


 本部建物を出ると、グラウンドでは10人ほどの団員達が訓練に励んでいる。

 今日はシアが担当教官だとすぐに分かる。

 訓練している団員が全員メイド服で、室内に見立てた木の枠組み内部で動き方、攻撃方法、突入方法などの訓練をおこなっている。


 教官であるシアが、メイド達に動きがまだまだ遅いと罵倒を浴びせている。


 新・純潔乙女騎士団では、20人が街を守護して、本部待機をする10人が訓練をするシステムになっている。


 本部待機の10人は、『待機』とはなっているが基本的には練度を上げるための訓練時間に使用されていた。今回はシアだが、スノーやクリス、リースなど待機する団員達によって教官が入れ替わる。

 この10人待機組の訓練は3日間行われ、4日目は完全な休日となる。


 街を守護する20人は、オレ達のように街へ警邏に行く者や起きたトラブル対処のため現場に向かう者、本部に残り道に迷った人に行き方を教える者など、多々の仕事をこなしている。


 オレとスノーは、シアの邪魔をしないためにもさっさと本部を出る。向かう先はまず大通りだ。


 ココリ街は獣人大陸奥地に荷物を運ぶ中継輸送地点のひとつだ。

 街は中心分に大きく1本、十字を描くように1本大通りが交差している。

 上から見ると『十』を描いている。

 これは送られてきた物品を各街々に送るため、輸送しやすく区切られているのだ。


 そのためまずは街で一番賑わっている大通りへと向かう。


 道を歩いていると多数の住人達に声をかけられる。

 オレとスノーはPEACEMAKER(ピース・メーカー)の代表とその妻のため、住人受けがいいのだ。

 ちなみに現在、住人達の新・純潔乙女騎士団に対しての感情は、『保留』だ。

『魔術師殺し事件』を解決したPEACEMAKER(ピース・メーカー)の下部軍団(レギオン)として生まれ変わった。そのため様子を見ている感じなのだろう。


 大通りへ出る。

 行き交う馬車、荷物の積み卸し、値段交渉を終えて握手を交わす商人――夜、暗くなるまでこの大通りには人が溢れ、賑わいをみせる。


 人が集まれば、諍いも容易く発生する。

 警邏を担当する者は、諍いが事件や騒ぎになる前に諫めるのが仕事だ。

 今日も大通りで言い争いの罵声が飛び交う。


 オレとスノーは慣れた様子で事態を仲裁する。

 大声を出していた人達も街を守護するPEACEMAKER(ピース・メーカー)の代表者とその妻相手に喧嘩腰になれる筈もなく、怒りを収め落ち着きを取り戻す


 喧嘩内容は値段交渉についてだ。

 オレ達が間に立ったことで互いに納得出来る値段に落ち着いたらしい。


 こんな感じで大通りをぐるりと見て回った。

 オレ達は担当先の北、南にある商業区、住宅街へ向かう。


 街の台所である商業区付近で迷子を発見する。

 迷子を保護するのもオレ達の仕事だ。


 迷子は5歳ぐらいの女の子。

 小さな角と悪魔のような尻尾が伸びている。どうやら魔人種族のようだ。

 まず最初に気付いたスノーが駆け寄り、声をかける。

 少女の前に行って、怖がらせないようしゃがんで同じ目線に合わせた。


「こんにちは、どうして泣いてるの? お父さんとお母さんはどこかな?」


 少女はスノーに話しかけられ泣き止みはしたが、不安そうに表情で彼女を見つめる。

 スノーは構わず笑顔で話しかける。


「そのリボン可愛いね。誰に結んでもらったの?」

「……まま」


 スノーは少女の髪に結ばれたリボンを褒め、会話を繋げていく。


「ママはどこにいるの? お買い物中なの」

「わかんない……」

「そっか、わかんないか。それじゃお姉ちゃんが一緒にママを探してあげるね。はい、はぐれないようにお手て繋ごうね」


 しかしスノーは本当に子供のあやしかたが上手いな。

 孤児院時代、下の子供の面倒をみていた成果なのかもしれない。


「ほら、リュートくんも反対側の手を繋いであげて」

「分かったよ。それじゃ早速、お母さん達を探そうか」


 オレとスノーは少女の手を左右から握り、商業地区を歩く。

 少女の名前を呼び、両親がいないか周囲に声をかけた。


 時折、少女を慰めるため、オレ達は左右の手を持ち上げて高くジャンプさせる。そのたびに少女は嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 先程まであれだけ泣いていたのが嘘みたいだ。


 少女が笑うたびに、スノーも笑顔を浮かべる。


 知らない人から見れば、まるで若夫婦が子供を連れているように思われるかもしれない。


 そんな風に両親を捜していると事件が発生。

 少し先の角から、荷物を引ったくった男が姿を現す。走ってきた背後から『ドロボー』というエコーが響き渡る。


 男もまさか通りに偶然、警邏をしているオレ達が居るとは想像してなかったらしく、青い顔で背を向け走り出す。


 オレは少女の手を離し、肩に提げていたAK47の銃口を空へと向ける。


「止まれ! 止まらなければ撃つぞ!」

「ッ!?」


 男は怯むが、すぐさま逃走を継続する。

 足を狙って撃つことも考えたが、こんな人が多いところで発砲したら他の人々に当たる可能性が高い。


「リュートくん、この子お願いね」

「スノー!?」


 彼女は少女の手を離し、オレに彼女を預ける。

 肉体強化術で身体を補助!

 一息で屋根に着地すると、男を追って駆け出す。

 その動きはまるで獲物を見付けた猟犬のようだ。


 男は人混みの中を、スノーは誰もいない屋根の上を走る。

 スノーはあっという間に追いつくと、屋根から飛び降り男の背中を蹴り飛ばす。


 男は荷物を手放し、地面を転がった。

 スノーは倒れた男の背後から、AK47を突き付ける。


「窃盗の現行犯で逮捕します。もしこれ以上暴れるなら、手足を撃ち抜くよ。銃弾に撃たれたら凄く痛いけど、仕方ないよね?」

「あ、暴れません! 暴れませんから止めてください!」


 男は怯えてそれ以上の悪あがきをしなかった。




 男の手を縛り、ちょうど通りかかった警邏中の団員達に渡す。

 男はこのまま新・純潔乙女騎士団本部へ。

 窃盗状況を纏めた後、地下牢に放り込む。

 そして期日が来たら、他の犯罪者と一緒に護送車に入れられて裁判所がある街へと連れて行かれる。


 少女はスノーの活躍を目の前に大興奮して、頬を赤く染める。

 また騒ぎを聞きつけた少女の両親が姿を現す。どうやらずっと少女を捜していたらしい。

 子供を引き渡すと、首が折れるんじゃないかと心配になるほど何度も頭を下げられ、お礼を言われた。


 少女は笑顔で手を振り、オレ達と別れる。

 再び、警邏に戻った。


「よかった、あの子の両親がすぐに見付かって」


 スノーは少女の両親が見付かったことに機嫌良く歩く。


「あの女の子、とっても可愛かったね」

「だな。でも、あんなに可愛いと、父親としては色々心配だろうな。変な虫がつかないか。僕も将来、娘をもったらそんな心配するんだろうな」


 オレの感想にスノーが可笑しそうにくすくす笑う。


「もうリュートくんたら、まだ産まれてもない赤ん坊のお婿さんにヤキモキするなんて」

「しょうがないだろ。スノー似の女の子だったら、絶対可愛いし、将来は美人確定! 絶対に男達が放って置かないぞ!」


 オレの発言にスノーはさらに可笑しそうに笑う。


「わたしも早くリュートくんの赤ちゃんを産みたいな。きっと凄く可愛いだろうから」


 無意識に彼女は下腹部を撫でる。

 現在は色々バタバタしているため、子供は作らない方針だ。それに自分達はまだ若い。だから急ぐ必要はないだろうという判断だ。


 だが、あくまでそれは現状を顧みての全員の判断だ。

 もしかしたらスノーの心情的には不満を抱えているのかも知れない。

 その可能性に気付き、訊こうかどうか考え込んでしまう。


 その空気を彼女は察して微笑む。


「大丈夫、今の生活に不満なんてないよ。赤ちゃんを作らない理由もちゃんと分かっているしね。今、考えている不安はリュートくんの思い過ごしだから」

「そっか、ならよかった」


 オレは思わず安堵してしまう。


「それに今、わたしはとっても幸せだよ。リュートくんが居て、クリスちゃん、リースちゃん、シアさん…………メイヤさん、みんなが居てくれて毎日が楽しいよ」


 メイヤの時だけ出てくるのが遅かった気がしたが、きっと気のせいだろう。

 オレはスノーの手を取り微笑む。


「オレもスノーや他の皆が居てくれ毎日が幸せだよ」

「これからもずっとこんな日が続くといいよね!」



 こうしてオレ達は微笑みあいながら、手を繋ぎ、警邏を続けた。




ここまで読んでくださってありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!

明後日、5月10日、21時更新予定です!


また感想返答書きました!

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[良い点] 街を警備する任務が主だって分かってるんだから、MP5の訓練しとけば良かったのに。
[一言] さすがに実の娘に近親〇姦するわけないだろうけど
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