第134話 新・純潔乙女騎士団入隊訓練、準備
リュート、15歳
装備:S&W M10 4インチ(リボルバー)
:AK47(アサルトライフル)
スノー、15歳
魔術師Aマイナス級
装備:S&W M10 2インチ(リボルバー)
:AK47(アサルトライフル)
クリス、14歳
装備:M700P (スナイパーライフル)
:SVD (ドラグノフ狙撃銃)
リース、181歳
魔術師B級
精霊の加護:無限収納
装備:PKM(汎用機関銃)
:他
純潔乙女騎士団が、PEACEMAKERの下部軍団になると宣言してから3日後。
約束通り、入団希望者を募る。
純潔乙女騎士団本部の大部屋に少女達が集まっていた。
純潔乙女騎士団の団員は、元々30人以上居たが、数人は地元に帰ってしまった。そのため今、大部屋には30人ちょうどが着席している。
長机が並び、椅子に少女達が座り、前に立つオレに注目している。まるで大学で講義をしている教授にでもなった気分だ。
高校中退したから、大学についてはアニメやドラマ、ラノベで得た知識・イメージしかないが……。
オレは落ち込みそうになる気分を立て直し、目の前に座る少女達に語り出す。
「それではこれより皆さんに書類を配ります。配り終えたら書類内容について説明します」
スノー達に目配せして、書類を配ってもらう。
配り終えたのを確認してから、書類内容を説明する。
「この書類は、新たにPEACEMAKERの下部軍団になる新・純潔乙女騎士団の団員として、入団する意思があることを示す書類です。その意思がある場合は、一番下の欄に種族名、名前、年齢など必要事項を記入してください。文字が書けない方は遠慮無く、挙手してください。代わりに彼女達が文字を書きます」
大部屋の端で椅子に座るスノー、クリス、リース、メイヤ、シアに手を向ける。
「この書類にサインした方は、P00leesとなります。これは我が新・純潔乙女騎士団に入隊する意思がある人材『入隊見込み』という意味です。決して、サインをしたからといって『入隊した』ということになる訳ではありません。そのところを勘違いしないよう気を付けてください」
前世の地球、アメリカ海兵隊に入隊を希望し入隊契約書にサインした人物をP00lees――『入隊見込み』、と呼ぶ。
民間人と軍人の中間に位置する存在になるのだ。
ちなみにアメリカでは、毎年4万人もの若者達が海兵隊に入隊している。
「正式に新・純潔乙女騎士団に入隊するためには、13週間の入隊訓練を受けて貰います。この訓練を耐えきった方のみ、入隊が許可されます」
オレは話を続ける。
「訓練内容の詳細を明かすことは出来ませんが、自分達PEACEMAKERは一般とはちょっと違う、このような変わった魔術道具を多数扱います」
オレはガンベルトから『S&W M10 リボルバー』を取り出し、少女達に見せる。
「この魔術道具――ハンドガンなどは正しい使い方をしないと非常に危険です。下手をしたら自分自身を傷つけ、最悪死亡する可能性もあります。なので、この13週間はこれらの正しい使い方や今まで皆さんが持つ意識を改革するための訓練など――かなり厳しいものになります。なので書類にサインする場合は、しっかりと覚悟を決めて書いてください」
テーブルに置かれたコップの水で喉を潤す。
「書類にサインをした後は、別室で服と靴のサイズを測らせてください。訓練中に使用する衣服、靴を制作するので。また3週間ほど、入隊訓練用に本部を改造するため現在、皆さんが寝起きしている本部の自室から、こちらが指定する宿屋へ荷物を運びだしてください。期間中の宿食事代、必要経費はこちらで支払うので心配なさらず。また訓練期間中は一切の私物持ち込みは禁止となります。もし荷物が多すぎたり、大きすぎて運び出せない方は事前に自分達へ報告してください。訓練が終わるまで荷物は、こちらの責任で預からせて頂きます。ここまでで質問ありませんか?」
「あの……」
「どうぞ」
兎耳の獣人族少女が挙手する。
オレが促すと、席を立ち質問した。
「訓練期間中は一切の私物の持ち込みは禁止とのことですが、ハンカチや筆記用具類、それにその……下着なども持ち込みは一切禁止なんですか?」
少女は『下着』の箇所で恥ずかしそうに言い淀む。
オレはその質問に答える。
「はい、全部です。訓練中の衣服、靴の他にもハンカチ、筆記用具、下着、靴下からタオル、歯ブラシ、歯磨き粉、バッグ、クシ、ベルト、手袋、食事等々――全てこちらで準備します。逆にこちらで準備した物以外は使えないと思ってください。他、支給品で女性に必要な物が足りない場合は、僕ではなく彼女達に言って貰えれば準備します。例外として自身の生命・宗教に関わる物がある場合は、相談してください。他にありますか?」
見回すが少女達は誰も手を挙げない。
「それでは今から1時間以内に入隊を希望する方は書類にサインをお願いします。文字が書けない方は、遠慮なく挙手してください」
この声に皆、1時間かからず書類にサインを済ませる。
文字が書けない人材は、全体の3分の2を占めた。入隊後は文字書きの授業を組み入れておくか。
そして、別室に移動して貰いスノー達に頼み、彼女達の衣服・靴サイズを測る。これを参考に軍事訓練に必要な衣服・靴を外部に発注する予定だ。
他にも彼女達に必要な細々とした品物を3週間以内に準備しなければならない。
さらに訓練期間中の街の守護は冒険者斡旋組合を通して依頼。
ココリ街に精通している冒険者に日給を支払い担当してもらうことになっている。
旧純潔乙女騎士団時代も、手がどうしても足りない場合は冒険者斡旋組合を通してクエストととして仕事を依頼していたらしい。
日給もそれに準ずる形になる。お陰で結構いい金額が手元から消えた。
またどうしても外せない事務仕事などは、こちら側で担当するしかなかった。これはガルマが手伝ってくれた。
しかし事務仕事など、オレ達側に誰も経験者がいない。
スノーは魔術師学校を出たエリート魔術師。
クリスは魔人大陸のお嬢様で元引き籠もり。
リースはハイエルフ王国のお姫様。
メイヤは竜人大陸全土に名が知られている天才魔術道具開発者。
シアはハイエルフ王国の護衛メイド。メイド仕事と要人警護が専門で、さすがに事務仕事までは網羅してなかったらしい。
オレはというと――孤児院出の元奴隷で、現在は名誉士爵の軍団・PEACEMAKERの代表者。
前世では町工場で技術屋として働いていた。経営に関する事務仕事は、おばちゃん事務員が担当していたためまったく分からない。
これは将来的に信頼できる事務員を雇った方がいいかもしれないな。
こうしてオレ達、PEACEMAKERの下部軍団、新・純潔乙女騎士団入隊訓練――『リュート・ブートキャンプ』の準備が順調に行われていった。
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明後日、4月28日、21時更新予定です!