第102話 武器製造バンザイ!
「メイヤ!」
「リュートの!」
「「武器製造バンザイ!」」
と、言うわけで打ち合わせ通りのタイミングで声を重ね合う。
場所はメイヤ邸工房。
今日はメイヤと一緒に宣言通り武器、防具等を製造する。
メイヤは指示された台詞を言い終えると、素のテンションに戻る。
「ところでリュート様、なぜあのような勢いで宣言をしなければならなかったのですか?」
「気にするな、やってみたかっただけだから」
「はぁ……」
メイヤは気のない返事をする。
そんな彼女はとりあえず置いておいて。
今回製作するのはまずリース専用の防護服一式だ。
今まで予備を貸していたため、正式なメンバーになった今、彼女専用の防護服一式を作るつもりだ。
製作するのは『戦闘服』『アイプロテクション・ギア』『ヘルメット』『背嚢』『戦闘用プロテクター』『ブーツ』『ALICEクリップ』『防弾チョッキ』だ。
前作ったものだし、どれも問題なく作れるだろう。
そちらが終わったら、次は武装だ。
クリス専用のセミオートマチックのスナイパーライフル、SVD(ドラグノフ狙撃銃)を製作する。
ルナ救出事件の際、クリスが珍しく連射出来る狙撃銃が欲しい、と我が儘(と言うほどのものではないが)を言ってきた。
その可愛い嫁の声に答えて、SVD(ドラグノフ狙撃銃)を製作することにした。
本当は時間をかけて別の狙撃銃を作ろうと思っていたのだが、製作時間を考えAK47の技術が使えるSVD(ドラグノフ狙撃銃)を選んだ。
ここで改めてSVD(ドラグノフ狙撃銃)とはどんな狙撃銃か話をしよう。
SVDとは――Snajperskaja Vintovka Dragunova(ラテン文字表記。それぞれの意味はSnajperskaja=狙撃 Vintovka=銃 Dragunova=ドラグノフ)の略で、1963年、ソ連軍(当時)で正式採用されたセミオートマチックのスナイパーライフルだ。
銃器設計者であるエフゲニー・フェドロビッチ・ドラグノフが、AKの機関部を参考に開発。作動メカニズムはほぼAKをそのまま流用したガスオペレーション式で、部品点数が少なく信頼性が高い。
スペックは以下の通りになる。
口径 :7.62mm×54R
銃身長:622mm
全長 :122.5cm
重量 :4.31kg
装弾数:10発(着脱式マガジン・ボックス)
セミオートマチックということで、ボルトアクションと比べると命中精度は落ちるが、クリスの腕前なら問題無く扱えるだろう。
弾薬は7.62mm×54Rを使用するが、汎用機関銃のPKM用に既に製造しているため新たに作り出す必要がない。
AK47を作っているため、内部機構に悩む必要もない。
こちらもそれほど手間無く作り出すことが出来るだろう。
また他にも武装は製造するつもりだ。
SVD(ドラグノフ狙撃銃)を製造し終えたら、真っ先に手を付けようと考えているのは――アッドオン・グレネードだ。
「『アッドオン・グレネード』とはどのようなものなのでしょうか?」
メイヤの質問にオレは咳払いしてから語り出す。
ハイエルフ王国事件で、リースとシアからオレ達が駆けつけるまでの間の話を聞いた。
シアから手で手榴弾を取りだし、肉体強化術で身体を補助。無理矢理、バジリスクの顔面目掛けて投げつけた――という話を聞いて『アッドオン・グレネード』を開発しようと心に決めた。
では『アッドオン・グレネード』とは一体どういうものなのか?
手榴弾を手で投げるのではなく、より射程&命中率を高める方法として考え出されたのが『ライフルグレネード』だった。
ライフルに専用アタッチメントを取り付け、空砲を使って弾体を発射する方法だ。
しかしこの方法では、銃口にグレネード発射用のアタッチメントを装着する必要があり、その間は射撃が出来ない――という欠点があった。
やがて空砲もライフルも使わない、グレネードを単体で発射させる専用の銃――手持ち式のグレネードランチャーが開発される。中折れ式で40mmサイズのグレネードを装填出来る。
だが、グレネードは装填中は無防備になるし、弾のサイズが大きいためライフルや機関銃のように大量の予備弾を持ち歩くことができない。
グレネードランチャー専用者――擲弾手でも、そう多くの弾数は持てなかったらしい。
そこで考え出されたのがグレネードランチャーとライフルを合体させようというものだった。
『グレネードランチャー装着型のライフル』は当然、グレネードランチャーやライフル単体に比べて嵩張るし重くなる。しかし両方を一緒に持つよりは軽く扱いやすいと言うわけだ。
そんなタイプのグレネードランチャーを『アッドオン・グレネード』または『アンダーバレル・グレネード』と呼ぶ。
オレがこれから作ろうとしている『アッドオン・グレネード』は、『AK』シリーズに無改造で装着出来る『GB15』の40mmアッドオン・グレネードだ。
またバジリスク戦を経験して、手榴弾だけではなく特殊音響閃光弾の開発を決意していた。
今後、バジリスクのように特殊な魔眼を持つ魔物を相手にするには、手榴弾だけでは心許ない。近距離で自傷覚悟で手榴弾のピンを抜き魔眼を封じる――なんて事態にはなりたくない。
だったら少しでも自身に返ってくるダメージが少ない物を作っておくのが懸命だ。
それが特殊音響閃光弾だ。
特殊音響閃光弾は手榴弾や発煙弾に似た形状をしている。安全ピンを抜き投げると、目が眩むほどの閃光と大音量、振動をコンマ数秒間発生させる。
殺傷目的で破片を飛び散らさないため、『非致死性装備』に位置づけられている。
その開発は、マグネシウムを魔力で再現出来るがか鍵になる。
ちなみに特殊音響閃光弾は一度の使い切りではない。
外側は金属製で、中身を交換して約20回以上使用する。
メイヤが感心して頷く。
「なるほど、相手を殺害しない『非致死性装備』ですか。面白い魔術道具ですね。さすがリュート様! ただ敵を倒すだけではなく、敵を無力化させるための魔術道具とは! ただの天才には及びも付かない発想ですわ! さすが天才を越えた天才! 神天才魔術道具開発者リュート様ですわ!」
神天才って……若干馬鹿にされている感じがするんだが。
それにオレが発明した訳ではなく、先人の知恵な訳だし。
日本人としては謙虚な気持ちが大切だ。
オレは咳払いして気持ちを切り替える。
「それじゃ早速作っていこうか」
「はい! 足手まといにならぬよう頑張りますわ!」
こうしてオレとメイヤは2人で開発作業に着手する。
ここまで読んでくださってありがとうございます!
感想、誤字脱字、ご意見なんでも大歓迎です!
明日、2月27日、21時更新予定です!