「おっかえりぃーなさいませませぇー」
稜哉がドアを開けるなり、奥から媚びた声が聞こえてきたかと思うと、ロランが走ってきて稜哉に抱きついた。
「ぐふゅっ」
飛びつかれた反動で妙な声が口からこぼれる。
「やぁっと会えたねぇー。もう、稜クンいない間、寂しかったんだからぁ」
「あの、もう少し、手、緩めてくれる?窒息、する」
「ああ、ごめんごめん」
ロランはそう言うとやっと稜哉から離れた。
相変わらず、つややかな金髪をふわふわさせ、きっちりと塗られたマスカラは、もともと彼の大きい目をさらにパッチリに見せている。
ほのかに漂う甘い、ハチミツのような香りは、きっと新しい香水だろう。
「何で今日帰るって分かったの?知らせてないのに」
「お告げだよ。一等星の。昨日、帰ってくるって知らせてくれたんだ」
「はぁ……」
「……」
ロランはしばらく稜哉を眺めて言った。
「どうしたの?なんか、元気ないよ」
稜哉は今日のことを思ってため息をつく。
補習といい、オリバーの記事といい、あの変な夢といい。
なんでこうも続くかなぁ。
いや、本来、嫌なことは重なるものなのだ。
「恋愛相談なら受けるよ」
耳元でささやくロランに、
「そんなんじゃないよ」
と即否定をした稜哉はまた1つため息をつく。
「……ならどうしたのよぅ」
「とりあえず、奥入っていい?玄関じゃ、なんだし」
「そだね」
「はい、トマトティー。体があったまるよ」
ロランは稜哉の前にティーカップを差し出した。
向かいの窓の外では、しんしんと雪が降っている。
稜哉は1口飲むと、ティーカップを置いた。
カチャりとカップとお皿が重なる音が響く。
「どう?おいしい?」
「うん。新しく買ったの?」
ロランは首を横に振ると
「ジャスティンがくれたの。家族から送られてきたんだって。200パック近く送ってこられても一人じゃ飲みきれないって、ボクにくれたの」
とダンボール箱いっぱいに入っているティーバックを見せた。
「それで、一体どうしたの?」
「それが……」
稜哉はどこから話すべきか迷った。
そもそも、全部話していいことなのだろうか……。
「1人で考え込むより2人で考えたほうが良い案浮かぶよ。それに」
ロランはニッと笑った。
「最愛の人が悩んでいるのを放って置けるほど、ボクはウブじゃあ、ないんだからさ」
(おいおい、その台詞、男に言う台詞か……?)
「さぁ、話して」
ロランに促された稜哉は口を開いた。
「僕さぁ……時々すごくリアルな夢を見るんだ」
「夢?」
「そう、怖いくらい、現実味があって、残酷で、恐ろしい夢を」
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