お待たせいたしました。
今まで長引いてしまった分として今回は2000文字近くの長さです。
オカリナ探しを一緒にしましょう!!
ドアの向こうは、6つの部屋が並んでいた。
坂下氏は3人についてくるように言い、ジョンに手前の部屋へ、オリバーにその隣の部屋へ、稜哉に奥の部屋へ入るように指示した。
「じゃ、また後で」
3人は互いに目配せをすると、それぞれの部屋に入っていった。
「コンニチハ」
稜哉が入った部屋には、ブロンドの髪をまっすぐ肩まで下ろした、20代くらいの女性がいた。
「キミがオカリナ、探してるヒト?」
彼女はたどたどしい日本語でそう言うと、自分はキャサリンで稜哉の担当者だと名乗った。
彼女が動くたびに、揺れる髪からバラの香りがほのかに漂う。
「じゃあ、サイショに身長と体重、ハカラセテ」
稜哉は体重計と身長を測るスケールを合体させたような機械に立たされた。
スケールは20cmおきに目盛が書かれている。
「サイキンの子、背、タカイネ」
キャサリンはスチール製の巻尺で踵から稜哉の頭のてっぺんまでを測り、その数字と体重計の文字盤に表れた数字をグラフに書き込んでいく。
「あの、何か意味があるんですか?」
「ん?ああ、アノネ、演奏者の体格に合ワセテ、オカリナ、選ばないと。リョウヤクンは木製のオカリナ、ダメね。土でないと」
「はぁ」
キャサリンは稜哉にスケール台から降りるように言うと、いろいろな高さのワイン瓶を8本ほど選び、水を入れて持ってきた。
「ワタシがビン、渡すから音を出してくれる?こんな風ニ」
キャサリンがビンの注ぎ口に口を近づけ、息を吹き込むと紫色の瓶はピーッとやかんが沸騰したような音を奏でた。
「ムリに鳴らそうとしなくてOKだよ」
キャサリンは稜哉にまず高さ20cmほどの瓶を渡した。
瓶の半分位まで水が入っている。
「Try」
促された稜哉は、恐る恐る唇をあて、そろりそろりと息を吹き込んだ。
――瓶はならない――。
フーッ。
体内のありったけの空気を吹き込んではみたものの、中の水が少し弧を描いただけだった。
「じゃあ、次これネ」
キャサリンは稜哉から瓶を受け取ると、今のものより10cmほど長い物を渡した。
「Go ahead」
フーッ。
「ダメねぇ。じゃコレは?」
今度は15cmくらいの瓶だった。
フーッ。
やっぱり音はならない。
そんなことを1時間近く続けた頃だろうか。
今や稜哉の前には20本ほどの瓶が並んでいた。
キャサリンが同じ瓶でも水の量を変えているので、実際は80本近くは吹いただろう。
でも未だに音の鳴ったものは無かった。
キャサリンは
「必ズ、ピッタリのもの、あるハズヨ」
と励ましてくれるものの、稜哉は少々うんざりしていた。
「本当に僕に合うものはあるんですかね……」
弱気な稜哉にキャサリンは
「ココのお店は今マデ誰一人としてマッチするものが無かったお客さん、居ないの、トクチョウよ。さあ、コレは?」
10cmほどの高さの瓶に2cmくらいの水が入った瓶を手渡した。
この瓶を吹くのはもう3回目だろうか。
水の量は毎回違ったが。
稜哉はため息混じりに息を吹き込む。
ポォー。
思わずキャサリンと顔を見合わせた。
キャサリンはニッコリ笑っている。
「One more」
ポーーーッ。
アルトリコーダーのような音が2人の空間にはじけた。
「Tremendous!」
キャサリンが叫んだ。
稜哉もやっと鳴り、安心して肩がおりたような気がした。
「スゴイ!アルトのC菅が鳴るなんて。今、持って来るからネ」
それから約5分後――。
「ハイ。コレがピッタリよ」
稜哉は肌色のオカリナを手にしていた。
オカリナは焼く前のクッキーのような色で、手のひらに十分収まるサイズだった。
「このオカリナが合うヒトはなかなかいないのヨ」
「"なかなかいない"って?」
「オカリナは、ヒトと同じで十人十色。全く同じものは2つとないのヨ。特にココでは職人サンが手で作っているカラ。同じソプラノF菅、同じ材質でも、焼いたトキの湿度や焼かれた場所の火加減、その日の気温トカで少しずつ変わる。リョウヤクンのはアルトのC菅。一番出しにくいって言われているワ。有名なオカリナ奏者でもアルトのC菅を使うヒトは少ない。ワタシが知っているのはゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵くらいだもの」
「ゴッド・グリーン・レストレンジ!?」
稜哉は思わず上ずった声を出した。
またこの名前だ。
「そうヨ。知ってるの?彼は"オカリナの魔術師"と呼ばれるほど上手だったの。彼にかかればアルトC菅に音域はないも同然。どんな音でも出せる」
「その人……今も生きていますか?」
稜哉はカマをかけてみた。
キャサリンは笑って答えた。
「Are you kidding!もう何百年も前のヒトよ。」
次回更新は日曜日。
明日は確実に5時代に起きなければー(泣)
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