期間限定サービスのせいか、休暇前だからか、店内はいつもよりも混んでいた。
夕焼け色に明るい店内の真ん中に3Mはありそうな巨大なクリスマスツリーが置かれ、ここぞとばかりに、飾られた赤や黄色のストーンを輝かせながら、周囲で各々の時間を楽しむ客を温かく見守っている。
そして軽快なジャズ音楽が人々を優しくつつんでいた。
「あら、今日も来てくれたの?」
白いフリルのエプロン、カールのかかった燃えるような赤毛をポニーテールにして、人懐こい笑みを浮かべたウェイトレスのクララがリリーを見つけて話しかけてきた。
「今日もって最近来たの?」
そっとささやくロランにジャスティンは
「もう3日も通い詰めよ。毎晩オムライスを食べに」
と呆れ顔で答えた。
「今日はでも4人で来たの」
リリーはそんな2人には気を止めず、話を続ける。
「あら、いつもの仲良しメンバーね。さ、来て。席に案内するわ」
クララはそう言うと店の一番奥の窓際の席に4人を案内した。
「リリーちゃんは今日もオムライスかしら?」
4人分のメニューを配りながら、クララはリリーに聞くと
「もちろんよ」
と当然だというような口調で答えた。
「3人はメニューが決まったら呼んでね」
クララはそういい残すとフリルエプロンのすそを翻し、テーブルから離れていった。
「稜君、大丈夫?さっきから元気ないけど。顔色悪いし、風邪でも引いた?」
稜哉の向かい側に座っていたリリーがいつもと様子が違うことに気づいて、心配そうに稜哉を見た。
「きっと寝起きだからだよ。さっきまでずっと寝てたんだもんね」
稜哉の隣のロランも、稜哉に相づちを求めるようにして話しかける。
「あ、うん。ごめん。なんかさっきから頭がボーっとしてて」
稜哉はハハハと笑ってごまかした。
本当はさっき見た夢が気になっていた。
夢にしてはあまりに映像がリアルだった、あのどこか暗い場所での1シーン。
でも稜哉はあの場所がどこだか見当もつかなかったし、話していた人間さえ、まるで予想がつかなかった。
(きっと夢だ。ただの変な夢なんだ)
そう思い込もうとしている自分に、それを直感的に否定する、もう1人の自分が心の中にいた。
(もしこれが夢なら、前のロランの夢は一体なんだ?ジャスティンの話が本当なら、あの夢はただの夢ではないんじゃないか。それともただの偶然なのか……)
「稜哉君?注文は?」
ジャスティンに話しかけられて我に返った稜哉は怪訝そうな顔をして稜哉のオーダーを待っているウェイターに、白雪のヒイラギハンバーグを注文した。
「本当に大丈夫?具合が悪かったら言ってね」
心配そうなジャスティンに、稜哉は
「本当に大丈夫だから」
と真顔で答えた。
(みんなに言ったとして、一体なんになるって言うんだ)
稜哉はそれ以上、夢のことは考えないことにした。
それからはぼんやりすることもなかったし、メルヘンでの時間は楽しい時間になった。
注文した白雪のヒイラギハンバーグの味も、さっぱりとしたミントが効いていてとても美味しかったし(リリーがミントじゃなくてヒイラギよ、と訂正した)クリスマス休暇直前だからと特別にクララが4人にケーキを奢ってくれた。
稜哉とロランが宿舎に戻ったときには11時をまわっていた。
稜哉は明日もって行く服やら何やらをスーツケースに詰め込むと、布団にもぐった。
それからすぐ、ベッドに吸い込まれるようにして、深い眠りに落ちたのだった。
もう、あの妙な夢は見なかった――。
はい、なんとか第2章も終了でつぎから第3章に突入です!
第3章からはがらりとかわってエキサイトかつよりファンタジックにしていこうと思っています。
次回更新は18日(日)の予定ですw
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