「ジョン、オリバー!」
「やぁ、稜、元気にしてたか?」
ジョンとオリバーは2人ともGパンにセーターという服装で、キッチン兼リビングの丸テーブルを前に、ロランの入れた紅葉7色ティーという、液体がマーブル色の紅茶ををすすっていた。
紅茶を入れたロランは、気を利かせてか「リリーのとこに行ってくる」と言って、出て行った。
「どうしたの?急に?」
稜哉はジョンに、所望したレモンクリームを手渡した。
「冬休み中、稜はどうするのかな、と思ってさ。ママからの手紙、稜にも届いたろ?」
ジョンはポケットから手紙を取り出して見せた。
「2人とも、やっぱり1度帰るの?」
「うん。俺らは帰ろうと思ってる」
オリバーがティースプーンで紅茶をかき混ぜた。
「オカリナとやらを買いに行かないとな」
「稜は残るつもりなのか?」
稜哉は自分のティーカップに紅葉7色ティーを注ぎ足した。
どうしようか、まだ迷っていた。
「ハンナやエマも帰ってくるみたいだぜ」
ジョンの言葉で、稜哉は心が決まった。
「そっか。僕も、帰るよ」
「おう、みんな、喜ぶと思うぜ。ママには俺から連絡しておくよ。ところで、稜にちょっと聞きたいことがあんだけどよ」
オリバーは持って来ていたA4サイズくらいの雑誌のとあるページをめくった。
「何?それ?」
「"A BIG LIAR"っていう、ウィークリーマガジンの1つなんだけどさ、根も葉もない噂話ばっかり記事にしている、ろくでもない雑誌で。文字通り、大嘘つきってヤツ」
ジョンが嫌そうな顔をして言った。
「その雑誌がどうかしたの?」
「ハンナが見つけたんだけどよ、ちょっとこれ見ろよ」
オリバーが見開きのページを稜哉に見せた。
どうやらそのページには毎週1番のスクープ記事が載るらしく、"今週のスクープ!!"と真っ赤な字でデカデカと見出しが書かれていた。
そのすぐ下には、年齢30歳くらい、金髪碧眼のハンサムな男が笑って手を振る写真が載っている。
「"Founding Brother(建国の兄)は生きていた!?"」
稜哉は不思議そうにオリバーを見た。
「Founding Brother?」
「いいから読めって」
ジョンに先を促されて、稜哉は続きを読み始めた。
『【今週のスクープ!! Founding Brother(建国の兄)は生きていた!?】
毎週奇怪な事実を暴くこのコーナーですが、なんと今週はとんでもないスクープを見つけました!!
Founding Brotherとして知られているゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵がなんと今も生きている、というのです!!
伯爵は1559年、イギリスのロンドンに、由緒あるバンパイアの一族、レストレンジ家の長男として生まれました。
そして、セントバーナーズハイスクールを首席で卒業後、名門校のストーク大学に受験科目全て満点という驚異的なトップの成績で入学し、数々の実績を残します。
ストーク大学卒業後、彼はVampire'S Life Management Organization(バンパイア生活管理機構)への内定が決まっていましたが、ここでヘレフォード・クーデタ(1579年~1584年)が起きてしまいます。
就職どころではなくなった彼は、政府軍と共に戦い、その後、1586年に親友のアーノルド・シュプランガーらとバンパイアだけの里、"隠れ里"を建国。しかし伯爵はその6年後の1592年に33歳という若さで暗殺されてしまいました。
伯爵は今ではFounding Brotherとして、今、この隠れ里を見守っているに違いありません。』
ページを読み終えた稜哉はほうっと息を吐いた。
「イケメン、だけじゃなかったんだな」
オリバーが紅葉7色ティーのおかわりを所望した。
「2人とも知らなかったの?祖先なのに?」
稜哉は「まさか」と思って聞いた。
「間抜けなことにね」
ジョンがばつ悪そうにうなずく。
「このゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵っていう人が隠れ里をつくったんだ」
稜哉は感心した。
「そうらしい。この記事もここまでは信じていいみたいなんだ。さっき、ポンポ先生に確認してきた。」
「ポンポ先生?」
「アンドレ・ポンポニャックだよ。里史の」
"里史"と聞いて稜哉は気分が悪くなった。
あのテストの悪夢が思い出される。
「でも、ポンポ先生はこんなことも言ってた。事実上ではFounding Brotherはゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵じゃなくてアーノルド・シュプランガーだ、って」
「どういうこと?」
「つまり、俺たちの使っている教科書やら資料集なんかでは隠れ里を建国したのはアーノルド・シュプランガーってなっているんだ。それに、世間一般的にもアーノルド・シュプランガーがFounding Brotherとして認識されている。現に俺らもこの名前なら知っているし、俺らのクラスメートもそうだった。Founding Brother=アーノルド・シュプランガーなんだ。ゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵なんて名前はこれっぽっちも出てこない」
「てことはつまり……?」
稜哉は上手く話が呑み込めなかった。
オリバーが真面目な顔をして言った。
「俺たちは何かが、いや、誰かが意図的にゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵の名前を消したんだと思う」
カタン。
稜哉がティーカップをテープルに置く音が妙に響いた。
「……考えすぎじゃないの?」
稜哉は信じられない、という風に言った。
「だいたい何のために?」
「そこが分からない。でも」
ジョンが語尾を強めた。
「おかしいとは思わないか?この記事や、ポンポの話どおりなら隠れ里をつくった人だぞ。ゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵は。それなのにどの教科書類にも名前すらでてこないし、世間一般的にも知られていない。」
「あんまり、活躍しなかったからかも……。ほら、そのアーノルドなんとかって人と比べると」
「それは考えにくいと思う」
オリバーが静かに言った。
「どうして?」
「図書館に行って、隠れ里の建国について調べてみたんだけど、建国に携わったバンパイアは全部で40人近くいる。でも、40人全員が深くかかわったわけじゃない。ポンポ先生曰く、ゴッド・グリーン・レストレンジ伯爵とアーノルド・シュプランガーが中心的人物だったらしいんだ。」
再び、3人の間に沈黙が流れた。
「この見出しだとまだ生きているって書いてあるけど?」
稜哉がポツリと言った。
「そこも問題なんだよ、稜。伯爵が仮に生きていたとしても、もう彼が生まれてから450年経っているんだ。バンパイアは生きられても90歳くらいが限度。史上最年長者だって98歳だ。だから450年も生きられるはずがないんだよ……たった1つの方法を除いて」
オリバーの語尾の声が、小さくなっていった。
「たった1つ?」
オリバーはそれには答えず、黙って次のページをめくった。
今日は2,829文字といつもの倍の長さになってしまいました……。
手にサポーターはめつつカリカリと次話を書いている夜月ですww
明日も続き、更新準備OKなので更新しますo(●´ω`●)o
(でも今日みたく長くはないです(笑)
Twitterブログパーツ
カテゴリ別オンライン小説ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。