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第2章
第42話 クッキー
キンコーン、キンコーン、キンコーン。

今日、講義室で聞く、4回目の授業終了のベルが鳴った。
ロランは気だるげに体を起こし、スーツケースを持つ。

「帰ろうかな」

室内の電気を消すと、静かな室内に、夕日が窓から差し込んだ。




稜哉はベルが鳴ったと同時に荷物を片付ける。

(5時間目がやっと終わった)

昼休みが終わってから、稜哉はずっと上の空だった。
ロランのことを考えると、胸が痛い。
今まで、女の子同然の仕草をするロランを心のどこかでは軽蔑していた。

でも――。

『自分の安心する場所を求めているのよ』

稜哉はスーツケースをガラガラさせながら、にぎやかな教室を出た。




昼時の眩しい明るさとは打って変わって、薄暗い夕陽を背に、稜哉はキャンパス内を歩いていた。
6時近くだからか、風も涼しく、稜哉の脇を勢いよく通り抜ける。
宿舎の前まで来て、稜哉の足取りは止まった。
なんとなく部屋に戻るのが億劫だった。

(でもいつは戻らなきゃいけないし)

「よしっ」

小声でそう自分に活を入れると、目の前の自動扉を通った。





「ただいまー」

稜哉はやや暗い声でアコーディオンカーテンを引いた。

「あ、お帰り……なさい……。」

ロランはエプロン姿でクッキーを焼いているところだった。
稜哉を見ると、気まずそうに言う。
2人の間に、もやもやとした灰色の空気が漂った。

(何きゃ言わなきゃ)

「ねぇ、ロラン……」
「昨日は本当にごめんなさい!!」

ロランは突然、手に持っていた型やら小麦粉をテーブルに置くと、頭を下げた。

「ボク、稜クンが来てくれて、嬉しくて……調子に乗ってた。本当にごめんなさい。もう、あんなこと2度としないから、だから……、また仲良くしてください!」

必死になって謝るロランに、稜哉はもちろん怒りの感情は湧かなかった。

「またさ、4人でメルヘンにでも行こうよ」

稜哉の柔和な表情に、ロランは安心したようにふにゃっと笑った。

「ボク、クッキー焼いているんだけど、食べる?」
「それじゃあ、1枚もらおっかな」

次回更新日は3月23日(火)の予定です
(貯めていた分が無くなってしまった(汗)
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