ロランは誰もいない講義室の窓から、ぼんやりと外を見ていた。
(もう昼休みか……)
いつもなら、お腹が空いていい時間なのに、今日は違った。
「ボクはどうしていつもこうなんだろう……」
ポツリとつぶやくと、椅子に座って机のうえに突っ伏した。
1年生くらいからそうだった。
ロランの趣味や男好きのその性癖を知った友人たちのほとんどは彼を気味悪がり、交友を避けた。
「おえねちゃん……。パパ……。ママ……。どうして……?」
「ロランはね、4人家族の1番下に生まれたの。ローザっていう5つ上のお姉さんがいたんだけど、とても可愛かったのを覚えているわ。それでね、昔のロランは今みたいに女の子らしくなかったのよ」
ジャスティンの瞳が、森林の光を反射して、一瞬オレンジ色にきらめく。
「女の子らしくなかったというより、普通の男の子だったわ。毎日砂場で服や顔を泥だらけにしては、先生に怒られて。一緒に落とし穴を作って、友達をそこに落したりもした。もちろん化粧なんかしていないし、今みたいに少女趣味でもなかった」
ジャスティンの頬に1筋の雫が伝って、地面を音もなく濡らした。
「昔からロランと一緒だったの?」
稜哉の問に、ジャスティンは黙って肯く。
「でも8年前のあの日が、彼を変えてしまった」
「8年前のあの日って……?」
「……ロランが1人になった日よ」
窓の外では風が吹きぬけたらしく、イチョウやもみじが紙ふぶきのように舞っていた。
ロランはそんな外の様子を、ただ瞳に写していた。
暖かい陽の光が、優しくロランをつつむ。
(……あの日もこんな太陽だったっけ)
今と同じように紅葉した葉が舞い、今日みたいな気温だった。
(ママ……、ボクは元気だよ……)
ロランはもう1度机に顔を伏せると、目を閉じた――。
「8年前のあの日も、こんな天気だった。あの日、ロランはスクールが終わると、おばあちゃんと一緒にいつもより早く帰って行ったの。『今日は自分の誕生日で、ママがケーキを買って待っているんだ』って」
ジャスティンの声は落ち葉を一掃する風に乗って遠くへ飛んでいく。
「でも、家に帰った彼を迎えたのは、家族の笑顔でもなければ、クラッカーから舞う紙ふぶきでもなかった」
「……なんだったの?」
「……。」
稜哉はその沈黙から、これ以上先の話を聞いてはいけない気がした。
何か、とてつもなく悲しい現実があるような気がした。
ジャスティンは深く息を吐いた。
「帰ってきたロランを待っていたのは、家中が朝とは一変して真っ赤に染まった、殺人現場だったの。」
注)変な誤解を招くかもしれないので一応……。
性癖:性質上のかたより。くせ。性的まじわりの際に現れるくせではありません!!(By作者)
明日でついに40話目!!
Twitterブログパーツ
カテゴリ別オンライン小説ランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。