「あぁー、美味しかった。」
稜哉は卵スープを飲み干した。
「美味しいって言ってもらえて嬉しいわ。稜哉君のサラダも良かったよ。」
「いやぁ、僕のはレタスちぎってトマト載せただけだし。ジャスティンは料理が上手なんだね」
「上手ってほどでは……。前に教えてもらったの。昔は1人じゃ何も作れなくて」
ジャスティンは遠くを見るような視線を流した。
「ねぇ、屋上に行かない?せっかくこんな良い天気だし」
「屋上?この建物に屋上があるの?」
稜哉は聞き返した。
「景色がいいの。夜は星がきれいだし、今だって紅葉がきれいだわ。ね、行きましょ」
ピコーン。
どこかしら間の抜けたようなチャイムを合図に、16階、屋上でエレベーターの戸が開いた。
「ほらっ。いいでしょう?」
そこには屋上というより、庭園が広がっていた。
花壇には赤や黄色の花が咲き、ベンチを取り囲んで、そこで和むカップルにささやかなくつろぎの時間を提供した。
「ほら、こっちこっち」
ジャスティンが片隅で稜哉を呼んだ。
「ここはね、私の秘密の特等席なの」
「特等席?」
「本当はロランにこの場所を教えてもらったんだけど。ここにいると不思議と落ちついてくるの」
稜哉は答えなかった。
眼下に広がる、紅葉で真っ赤に染まった遠くまで広がる海を、ぼんやりと眺めていた。
「ロランのこと、まだ怒ってる?」
ジャスティンの透き通るような青い瞳が、稜哉の黒い瞳を見つめた。
「え?」
怒っていない……そう答えたら、それは嘘になる。
昨晩のことを思い出し、稜哉の心の奥で、どす黒い炎が小さく燃え始めた。
「確かに、いきなりあんなことされたら誰だって驚くし、引くわ。でも、解かってあげて欲しいの。ロランはきっと稜哉君が来たことで、初めて孤独だったそれまでの自分から解放されて、安心したんだと思うの。」
風が、2人の間を通り過ぎ、赤紫色の髪を乱していった。
「孤独?」
「そう。彼はもう8年近く、ずっと一人ぼっちだったのよ」
ジャスティンの静かな声が、2人の間を漂浪した。
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