「みんな、準備は出来たかな。」
9時45分ごろ、アーサーおじさんをはじめ、エマ以外はみんな玄関にいた。
「ねぇ、ジョン、どうやって行くの?」
「そりゃー、普通に汽車だろ。」
「汽車!?」
稜哉は驚いた、
汽車なんて模型でしか見たことない。
「そういえば、隠れ里って地球のどの辺にあるの?」
「いい質問だ。」
オリバーがニッと笑う。
「それは――」
「それは?」
「北極。」
「北極!?」
うそだろ?
「なーんてな。冗談。」
なんだ……。
まさかな。
「で、どこにあるの?」
「それはヒ・ミ・ツ。」
「……。」
外に出ると、あたりは一面、木に囲まれていた。
そういえば僕、ここに来てまだ1度も外に出ていない。
こんな自然の中に家があるなんて。
頭上には雲1つない青空、周りの木々の間からは日が射し込み、葉が光っている。
小鳥のさえずりにつつまれた、心地の良い森の中。
石畳に沿って30分ほど歩くと森を抜け、今度は街らしきにぎやかさに包まれる。
『ガレンシア街』
「ここにはけっこういろんな店があるんだ。」
「どんな店?」
「そーだなー。俺がよく行くのは『Tricky』で、ここはススメルぜ。」
「いろいろ楽しいグッズが山盛りさ。」
「でもその分リスクが高いのをお忘れなく。」
ハンナが言う。
「はいはい。」
ジョンが肩をすくめる。
「どういうこと?」
「この前、BAT BALLつかってキャッチボールしてたら、ボールが途中で割れて大惨事に。」
「?」
「ボールから100匹くらいの小さいコウモリが飛び出したのよ。その後の駆除が大変で。6時間くらいかかったのよ。」
ハンナがうんざりした様子で言った。
「稜も今度連れてってやるよ。」
「ジョン、そんな怪しい店に稜を連れて行くんじゃありません。」
ジェーンおばさんがジョンをきつくにらむ。
「そういえばボーリング場もあるぜ。」
オリバーが話題を変えた。
「ピンの真ん中にニンニクの絵が書いてあるやつ。全く嫌がらせにも程があるよな。」
「ニンニク、ダメなの?」
「全く食べられないわけじゃないけど、できれば避けたい。」
チラッとジェーンおばさんを見ながら言う。
「ママは毎週1回、夕食にニンニクを出すんだ。『好き嫌いをするんじゃありません!』って。」
「みんなは食べられるの?」
「ダメなのは俺とジョンだけ。ハンナなんかニンニク好きで、真っ先に食べるんだぜ。ありえないよな。"たまりニンニク"とかいうやつがこのまえなんか机の上においてあったし。信じられないぜ。」
「ヒイラギの葉は?」
「ムリ。だって見た目からしていたそうじゃん。触ったら刺さりそうだし。」
「ふははっ。」
思わず笑ってしまう。
なんだかかわいい1面もあるんだなぁ。
「そういえば血って吸うの?」
「あー、俺らは吸わない。」
「でも吸う人もいるのよ。」
ハンナが嫌そうな顔をした。
「変態プリンス6年B組、ポール・グラントか。」
ジョンがニヤニヤして言った。
「誰?その変態なんとかって。」
「かわいい女の子の生き血を隙あらばいただこうって奴さ。」
「ほんと、私たちからも吸おうとするのよ。気持ち悪いったらありゃしないわ。まぁ、悪い人じゃないのだけど。」
「ハンナはポールと同じクラスなんだ。」
他人の血を吸う奴のどこが悪い人じゃないんだろう。
僕には極悪人にしか思えないけど。
「これから汽車に乗るよ。」
アーサーおじさんがそう呼びかけたとき、5人は古めかしい、でもどこか趣のある駅――|Timishora Station《ティミショーラ 駅》の前にいた。
「はい、切符。」
茶色の5㎝くらいの正方形の大きさのその切符にはこう書かれていた。
『Timishora→Tokyo』
「これ、このTokyoって人間界の東京駅のこと?」
稜哉は不思議に思った。
あの東京駅に汽車が?
それに隠れ里と東京はつながっていたの?
おじさんは微笑んで言った。
「Tokyo Stationつまり東京駅のことだよ。稜も何度も使ったことあるだろう?」
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