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第1章
第11話 出発
「みんな、準備は出来たかな。」

9時45分ごろ、アーサーおじさんをはじめ、エマ以外はみんな玄関にいた。

「ねぇ、ジョン、どうやって行くの?」
「そりゃー、普通に汽車だろ。」
「汽車!?」

稜哉は驚いた、
汽車なんて模型でしか見たことない。

「そういえば、隠れ里って地球のどの辺にあるの?」
「いい質問だ。」

オリバーがニッと笑う。

「それは――」
「それは?」
「北極。」
「北極!?」

うそだろ?

「なーんてな。冗談。」

なんだ……。
まさかな。

「で、どこにあるの?」
「それはヒ・ミ・ツ。」
「……。」

外に出ると、あたりは一面、木に囲まれていた。

そういえば僕、ここに来てまだ1度も外に出ていない。
こんな自然の中に家があるなんて。
頭上には雲1つない青空、周りの木々の間からは日が射し込み、葉が光っている。
小鳥のさえずりにつつまれた、心地の良い森の中。
石畳に沿って30分ほど歩くと森を抜け、今度は街らしきにぎやかさに包まれる。

『ガレンシア街』

「ここにはけっこういろんな店があるんだ。」
「どんな店?」
「そーだなー。俺がよく行くのは『Tricky』で、ここはススメルぜ。」
「いろいろ楽しいグッズが山盛りさ。」
「でもその分リスクが高いのをお忘れなく。」

ハンナが言う。

「はいはい。」

ジョンが肩をすくめる。

「どういうこと?」
「この前、BAT BALLつかってキャッチボールしてたら、ボールが途中で割れて大惨事に。」
「?」
「ボールから100匹くらいの小さいコウモリが飛び出したのよ。その後の駆除が大変で。6時間くらいかかったのよ。」

ハンナがうんざりした様子で言った。

「稜も今度連れてってやるよ。」
「ジョン、そんな怪しい店に稜を連れて行くんじゃありません。」

ジェーンおばさんがジョンをきつくにらむ。

「そういえばボーリング場もあるぜ。」

オリバーが話題を変えた。

「ピンの真ん中にニンニクの絵が書いてあるやつ。全く嫌がらせにも程があるよな。」
「ニンニク、ダメなの?」
「全く食べられないわけじゃないけど、できれば避けたい。」

チラッとジェーンおばさんを見ながら言う。

「ママは毎週1回、夕食にニンニクを出すんだ。『好き嫌いをするんじゃありません!』って。」
「みんなは食べられるの?」
「ダメなのは俺とジョンだけ。ハンナなんかニンニク好きで、真っ先に食べるんだぜ。ありえないよな。"たまりニンニク"とかいうやつがこのまえなんか机の上においてあったし。信じられないぜ。」
「ヒイラギの葉は?」
「ムリ。だって見た目からしていたそうじゃん。触ったら刺さりそうだし。」
「ふははっ。」

思わず笑ってしまう。
なんだかかわいい1面もあるんだなぁ。

「そういえば血って吸うの?」
「あー、俺らは吸わない。」
「でも吸う人もいるのよ。」

ハンナが嫌そうな顔をした。

「変態プリンス6年B組、ポール・グラントか。」

ジョンがニヤニヤして言った。

「誰?その変態なんとかって。」
「かわいい女の子の生き血を隙あらばいただこうって奴さ。」
「ほんと、私たちからも吸おうとするのよ。気持ち悪いったらありゃしないわ。まぁ、悪い人じゃないのだけど。」
「ハンナはポールと同じクラスなんだ。」

他人の血を吸う奴のどこが悪い人じゃないんだろう。
僕には極悪人にしか思えないけど。

「これから汽車に乗るよ。」

アーサーおじさんがそう呼びかけたとき、5人は古めかしい、でもどこか趣のある駅――|Timishora Station《ティミショーラ 駅》の前にいた。

「はい、切符。」

茶色の5㎝くらいの正方形の大きさのその切符にはこう書かれていた。

『Timishora→Tokyo』

「これ、このTokyoって人間界の東京駅のこと?」

稜哉は不思議に思った。
あの東京駅に汽車が?
それに隠れ里と東京はつながっていたの?

おじさんは微笑んで言った。

「Tokyo Stationつまり東京駅のことだよ。稜も何度も使ったことあるだろう?」
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