吸血鬼――人の生き血を吸う魔物。バンパイア。(現代新国語辞典より)
秋も十分深まった10月20日の午前3時。
「はっ」
大葉 稜哉は首筋に走った痛みとともに目覚めた。
今週に入って5回目。
そして今月に入って18回目。
眠りが深まる頃になると、必ずといっていいほど首筋に走る痛みで目覚める。
「ったくなんなんだよ……」
そう思って再び寝ようとしたとき。
何か青白い物体がたんすの影にあるのが目に入った。
不思議に思った稜哉は電気をつけようとリモコンに手を伸ばし、電気をつけた。
ピッという電子音とともに、明るくなる室内。
ぼうっと目がくらむ視界。
そのなかで稜哉は見た。
タンスの横に立ちすくむ女の子を。
身長160cmぐらいの、全身を真っ黒のワンピースでつつむ、青い目で金髪の長い、白い顔をした女の子だった。
「どちらさんですか?」
なんとも丁寧な言葉をかけられたのは、まだ目が室内の明るさに耐えられず、視界がぼうっとしていたせいだろう。
相手の出方を待っていると、女の子は驚いたように早口で言った。
「あんた、もしかしてあたしが見えるの?」
「見える?」
見えるも何も。
初対面の人をいきなりあんた呼ばわりするなんて。
無礼なヤツ。
女の子は稜哉に姿を見られたのがまるで想定外だったらしく、あたふたしていた。
そして言った。
「あんた、Hider?」
「Hider?ってなに?」
「んまぁ! 人間なのに見えているって言うの?あんた、あたしのことが見えているのよね?」
最終確認をするかのように彼女はもう1度聞いた。
稜哉は肯いた。
女の子は稜哉に近づくとまじまじと顔を見て言った。
「あんた、人間の大葉稜哉だよね?」
「……? 何で僕のこと知っているの?君は一体誰?どうしてここにいるの?それにさっきから何を言っているんだ?僕がキリンやライオンに見えるかい?人間に決まっているじゃあないか」
人間だのHiderだの本当になんなんだ。
でも次に女の子が言ったことに、耳を疑った。
「あたしはレストレンジ家の長女、エマンズ・レストレンジ。種族はバンパイア。パパに言われて迎えに来たのよ」
稜哉はしばらくフリーズした。
目の前に突然見知らない人が現れて、自分はバンパイアなんて普通言うか?
寝よう……。
きっとこれは夢だろう。
昨日、キャベツを食べ過ぎたのかも。
ところがエマはまたもやとんでもないことを言ったのである。
「ちょっと、寝ないでよ。これから隠れ里に行くんだから。あんたを連れて帰るのがあたしの役目。それにこれ以上ここにいるのは危険だしね」
稜哉は目の前に立つ女の子を見ていた。
「悪いけど、あたしにはあんたを連れて帰るっていう使命があるのよ」
エマは今や隠れるようにして布団に包まっている稜哉に近づいた。
稜哉は身をいっそう固くしていっそう布団にもぐった。
相手はひ弱そうな女の子なのになぜか彼には恐ろしく思えた。
エマは稜哉の顔に近づくと言った。
「目、閉じてくれる?」
稜哉の頬に何か冷たいものが触れる。
そしてそれがエマの唇だったと分かったとき、彼はすでに深い眠りについていた。
「おやすみなさい」
2人はもう、稜哉の部屋にはいなかった。
更新はかなり不定期になりますがどうぞこれからよろしくお願いします!!
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