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さて、次話かその次辺りが勝負所です。
第6章
第六章 【新月の金糸雀】4-3
***


「勝負、有りましたね」

言った彼女は荒い息を吐きながら、肩を上下させていた。見下すような視線には何処となくいつもの様な突き放した冷たさが無く、ただ純粋に楽しんだと言うように見受けられた、が……どうにも困った。無自覚なのだろうか、だとしたらこの女はどれだけ迷惑千万なのだろうか、思い返せば確かにそういう節が無いわけではないであろうその仕草に腹が立った。

「乗られるのは嫌いじゃぁないんだが……」
「……!」


腹筋のバネだけで勢いよく上半身を起こし、と同時に彼女の肩を掴んで引き倒したてやった。蒼穹を溶かしこんだ瞳が大きく見開き煌めく銀の髪がふわりと舞った。

「こういう方が好みではある。あくまで好みの問題だ」


天を仰ぐ彼女の表情を覗きこんだ、そして自分の浅はかな行為に後悔する。ただの悪戯心だったのだが……――目じりと耳がほんのりと赤く染まり、半開きの唇から毀れる吐息はまだ少し荒く。

「馬鹿か……――そこであっさり引き倒されたんじゃぁ……――」


意識せざるを得ない……――己の醜態を恥じる、取り繕う為の悪態は風に流されてすぐに消えた。無様な自分が情けなくて立ち上がる。彼女の表情を盗み見れば、艶やかなしなを作って追いすがる様な視線にぐっと息を呑む。(確かに昨日の今日ではあるが、冷静になれ冷静に。あんな三品、孫以下だ。女の成り損ない見たいな形だし、正確だって決して良いとは言えないし)何かにつけて気に入らない。お前のそれは俺だけに見せているわけじゃぁねぇんだろうさと……――その考えに至って自分自身の小ささに惨めになった。

「……そんな顔で見るな」
「え?」

間の抜けた、鼻に掛かった声。違う、そんな風に……俺は――。

「あぁ、馬鹿か! 俺に何を望んでいやがる?」
「……いえ、そんなつもりじゃぁ」

率直に聞いた、が多少とげとげしかったのか、それとも意味が伝わらなかったのか……。虚ろな視線とはっきりしない物憂げな表情……分からない――、この歳になってそれは不甲斐なさ過ぎやしないだろうか。風が吹き荒れる、刺す様に痛いのは……。

「まだ、死にたいか?」
「え?」
「安心しろ……――」

揺らいだ瞳、顔を見ていると耐えきれなくて思わず頭を手で押さえつけた。頬まで赤くして俯く彼女はどう見ても皇王の表情など欠片も無い。そんな顔されちゃぁ出かかった言葉も呑み込むしかないだろうが。

「お前、見られたらどうするんだよ……――」
「いえ、別に構わないと思いますが、私は男として……」

紡がれた言葉に呆れかえる。そんな表情で、そんなふうに座り込んでそんな声を出していたらそれはお前……。

「無自覚か?」
「……何を」
「俺は知らんからな」

誘われるがままに腕を回した。厳密にいえば彼女にその気など微塵も無いのかもしれないが、だが知った事かよと思った。淡いムスクの香りが鼻腔を擽る、仄かな暖かさは彼女の証だ、良かった生きている……分かり切っている事だがそれが心地よい。心地よい……――?

感慨にふけっているといきなり突き飛ばされた。無表情なのに、それでいて上気した頬、首筋まで赤く染める抵抗にどこか懐かしく自然口元がほころぶ。

「……ふん、お前はそれでいいんだよ」

悪態をつくと、彼女は少し困ったように眉根を寄せて糞真面目に答える。

「良いのですか?」
「良くない理由などないだろう?」
「私は……――」

何かを言いかけて彼女は少し考える様な仕草を見せる。そう言う所だけ大人ぶりやがる。

「師父……」
「ん?」
「ありがとうございます」

その言葉に迷いは無く……――俺はその言葉を受けて踵を返した。


未だ頭を垂れる彼女を背中に感じながら塔の中に入る。無機質な長い廊下、まるで人生の様だとふと思った。人生は旅であり、行程であると……そんな事を言い出したのは一体どこの誰なのか、上手い事を言ったつもりか。

気配を感じて顔を上げると目の前にあの赤毛のいけ好かない男が立っていた。

「随分と仲睦まじい事で、思わず嫉妬してしまいますよ、師父殿・・・

厭味たらしくいうとアダムはその整った顔に甘ったるい笑みを浮かべて壁に凭れる。

「そうかぁ? そりゃぁ残念だったな、あれじゃぁ気苦労が絶えんだろう旦那殿?」
「ふふ、お父様の教育の賜物って奴なんですかねぇ?」
「言いやがる」

ふふん、と鼻で笑い髪を掻き上げたアダムは、顎に手を置いて下から覗くように俺の顔を見上げる。

「まぁ何て言うか、僕は三行半突き付けられてしまったしね、はは。一体何が不満だったのか」
「そりゃぁ、全部じゃねぇか?」
「あっははは、言いますねぇ、たかが龍ごときがこの僕に」
「ふん、たかがヒト如きが」
「たかだかこの世の理を知った位で偉そうに」
「だがこの世界はこの世界だろう?」

言うとややむっとしたのか、片方の眉を撥ね上げた彼はそれでも余裕の笑みを湛えたままでふっと溜息を溢した。

「まぁキミの言いたい事は分かるさ。だが今後の事もある」
「今後の?」
「セラナ君の事かな」

ふっと珍しく影を落とした彼の表情は同性でも思わずどきりとするくらいの艶かしさを湛えている。

「とにかく、明日、少し時間をいただけたりしないかな。見せたいものもあるし……」
「……――構わんが」

この男は、人誑しだ、と脳髄の奥で微かに鳴る警鐘……――。胸騒ぎがする、考えすぎかもしれないが……――。

「師父?」

声に振り向くとセラナが立っていた。

「何をしているのですか?」
「いや……――」

視線を戻すがもうそこに彼の姿は無かった。

「よろしければ、夕餉を、如何ですか?」
「ん……ああ」

気になる……気になるが、だが……――。セラナの華奢な背中が目に映る。しゃんと伸ばされたその背は頼りなく、儚く細い。

杞憂だと良いが……執務室の方からミコトの華やかな声が聞こえた。穏やかに、和やかに、清らかに、麗らかに、澄み渡り、そうこの時はまだ――――



P3を旦那がプレイ中。P4アニメ化だからね(鼻息)
しかし銀翼でコケたら今度こそGON●O潰れかねない……雪風に始まりラスエグ、カレイド、瀬戸花と名作を産んだあの若い会社もそんなかよ、と思わざるを得ないわ。ディーオ出るらしくて嬉しい。「インメルマン」の意味が未だ分かりません。

最近へヘタレで申し訳ないです。よろしければご意見ご感想等お聞かせ下さい。今後の執筆活動の参考とさせていただきます。是非。
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