August17 一人称とかおかしかった所訂正。やっぱ酔って書くのはよろしくない。まぁ今も酔っているのですが。
久々アダム君。少し時は戻り、セラナが塔を出てすぐ位でしょうかね。
***
曇天は雪を孕み、小さな羽虫が舞う様だ。それらは異臭と腐臭を放つ焚火の朦々と立ち上る煙へと吸い込まれては消えて行った。見渡す限りが廃墟、見通しの良くなった街では所々でオレンジの焔が確認できた。ここの炎と同じ、死体を燃やしているのだろう。小型空輸機のタラップを降りてアダムは天を仰いだ。灰褐色が渦を巻いてある空、彼自身の息が白く霞んで漂う。
灰を掻き集め一輪車に乗せて引いて行く捕虜たちの眼には生気は無い。彼等は襤褸を纏ってその軍靴もやや擦り切れている者も大勢居たが、それらに構うことなく身なりの整った兵士たちが彼等に怒号を飛ばしていた。制圧する者とされる者、同じ兵士であってもこうも格差があるものか…―アダムは思う。しかし彼はこんな光景を幾度も見てきていた、だからそれに対して不快だとか感慨だとかそう言った何かが彼の胸の内に起こる事はなかったが、しかしながらいつ見てもこの光景は『この世界の生き物の愚かさを体現している。』と彼は思っていた。
「うぅ、やっぱり外は寒いねぇ。暦の上ではまだ秋だっていうのにさぁ。」
テーヴァイはこの場にそぐわぬ間延びした声でやんわりとアダムを非難した。アダムは彼の肩に手を置いて宥める様に数度叩き言う。
「そうだな、テーヴァイ。しかしこれが生きるという意味なのさ。」
「え? なにそれ。意味わかんないし、私ぃ体温を奪われると動けなくなっちゃうんだけどぉ…―それでもいいのぉ?」
「僕は構わないさ。そうだな、では日当たりのよさそうな所に居るといい。僕は話すべき相手が居るみたいなのでね。」
アダムの視線を辿ってテーヴァイが顔を向けると、そこには2台のジープが止まっていた。ジープに焼き付け塗装で施された紋章を見ればそれが帝国軍の車だという事が一目でわかる。テーヴァイは小首をかしげて見せた。しかしアダムはいつものどこか含みを持たせたような表情をその整った顔面に貼り付けたままでいたので、彼はそれ以上追求する事はしなかった。アダムに言われた通りに日の当たっていような場所にふらふらと足をやる。
アダムはそんなテーヴァイを横眼で見てから視線を元の方へ戻した。そこには短く髪を切り揃え疲れた表情をした居丈夫な男と、彼の傍らには、目付きの悪い女が自動小銃を担いで仁王立ちしていた。男はやつれた表情ながらもその眼光だけは鋭くぎらぎらとさせていて、どこか偉そうだった。
女は腕に部隊章のあしらわれた腕章を付けている。彼女はアダムが近付くと、スカイラーの前に立ち、手慣れた手つきで安全装置を外して銃を構えた。ただの仕事熱心なのだろう、スカイラーが彼女の肩を叩くと彼女は銃口を下げ、彼の背後に再び控えた。女の水色の硝子玉の様な瞳には何の感慨も浮かんではおらず、非常に淡々としている、それが彼女の纏う薄汚れ、所々擦り切れた常装のやぼったさとはちぐはぐであった。恐らくは歴戦の戦士、それも激戦を潜りぬけてきた者なのだろう、とアダムは直感的に感じた。女の身で、それでいてただの人間だがこちらの方に寧ろ用心した方が良さそうだ、第一自分の身内ではないかもしれぬが仲間、同じ軍章を背負う物たちがこの様な有様である事に対して彼女になんの迷いも産まれてはいなそうだし…―そう腹の内で呟き、アダムはスカイラーと向き合って立った。
「これはこれはスカイラー元中将君、この期に及んで僕に何か用かな、言い足りない事があった? それならば聞いてあげるけれども幾らでも。」
アダムが皮肉を込めて「元中将」と強調して言うと、スカイラーは神経質そうに左頬を微かに痙攣させた。しかしながら彼はアダムの予想を裏切り、彼の言葉を歯牙にもかけずただ鼻で笑っただけであった。
「いっそ清々したという物だ。貴様には感謝せずにはおられまいよ、アダム。俺から重苦しい肩書を取り去ってくれた貴様の裏切りに対して、な。」
「なんだやはり気にしているんじゃないか、やせ我慢はいけないね。」
アダムが視線を巡らすと、先立って陣営に着いていたユゥリが陣営の本部テントの中で優雅に紅茶を啜っていた。彼女はアダムの方へ視線も遣らずにただヒラリと手を翻して見せた。彼女の指の先には人数分のティーセットが置かれている。
「どうせだから、積もる話も多々あるだろうし、ひとまず咽喉の渇きを癒そうじゃぁ無いか。」
アダムが良いスカイラーを伴って彼女の座るテーブルに腰を掛けた。スカイラーの背後には相変わらず女が銃を構えて立っていた。アダムの傍らにはユゥリが、戦場には似つかわしくない色香を漂わせてしゃなりと座る。
「お連れさんも席に着かせてあげてはどうかな?」
「連れだと? 笑わせるな、奴は犬だ。」
アダムの誘いをあっさりと断わるスカイラー、その彼の言葉に女は一切気を悪くした様子は無く無反応で立っていた。(あぁ、戦士っていう人種は苦手なんだよなぁ。)アダムは溜息を一つ吐き、そうして紅茶を啜って見せた。
「それで、何の用かな話を仕切り直してしまうようだけれども、君を裏切った僕に対して君が良い感情を抱いているとは思えないんだよねその上で、君が何故僕の前に姿を現したのかそれが知りたいと思っているよ何故ならば、まがりなりにも君を守ってくれていた権威や階級と言うものがもう今の君には存在していない訳だしだとするのならば、今の君が僕によって消されようがどうされようが帝国にとっては関知するところでは無いし君が殺される事を引き金にして報復戦争さえも起こす事の出来ない今の君に対する価値なんて無きも同然な訳だからね本当に何をしにやって来たのさ僕だって忙しいんだけど。」
「ふん、敵かもしれぬ相手に対して情けとは大層慈悲深い男だったのだな。そのような貴様がまさかこのような侵略をするとは思えんがな。情け容赦も無く土地は荒れ死屍は累々と、穴掘りばかりをさせている。」
「あらら、やっかみだねぇそれは。君こそ情が無いんじゃないかい。かつての君の管轄領土であって君の民だったはずだよ、あれらは。」
「俺は俺の民などと思った事は無い。奴等は常に流動的で不規則で、いわば好き勝手だ。あんなものを手に入れたいとも思わぬし、兵にしてもさして愛着など持った事は無い。」
「ふふふ、気が合うとは奇遇だね。」
「くだらん、言葉の応酬など…―。」
言ってスカイラーは右手を胸の前で握り締めた。ぎっという重たい金属の擦れる音がして、それを見てユゥリが鼻で笑った。
「まぁそれもそうだね。では今何もかもを無くした君が一体僕に何の用だい?」
アダムがそう告げるよりも早く、スカイラーは懐から一冊の古びた手帳を取り出した。アダムはそれを見て彼にしては珍しく驚きの表情を浮かべ「よくもそんなものが残っていた物だ。」と呻いた。その言葉を聞いてスカイラーの瞳が嗤った。軽く唇を舐めると彼は声を押し殺してアダムに凄む。
「ダァト…―深淵を覗く者の記録だ。時に紙媒体の記録は削除される事無くこうして残る事もある、貴様にとっては誤算だったか?」
「…―。」
「俺もこんな身になり果てて、色々と考えたさ。否、こんな事くらいで俺にあっさりと掌を返すような連中は所詮俺では無く俺の親父の存在にひれ伏していたという事も分かったしな。そう思えば権力なんざ意味もない、死ねば諸共だ親父の様に。であるのならば俺の目的とはなんだろうかと、こんな身体になり果てなければならなかった俺は何を指針に生きるべきかと、そう考えた時に俺はお前に協力する事ができるんじゃぁないかと考えたのさ。」
スカイラーは淡々とした口調で言った。しかしそれはアダムを脅すような口調でもあって、彼は思わず苦笑いを浮かべた。
「感謝しているよ、国家に家督を押収される際に偶然見つけたのだから。貴様の事も記してある、したがって俺は貴様の目的のその一端について分かっているつもりだがどうだろう。」
ニヤリと笑い言うスカイラーに対しアダムは困ったような微笑を浮かべたままでいた。沈黙に耐えられなくなったユゥリがやや不安そうに彼の顔を覗きこんでいる。
(誤算ではあるが想定の範囲内ではあるか、であるのならば使えないまでも駒は駒、利用する価値は殺す価値よりもあるのか…―。悪運の強い男だ、父君と同じく、しかし父君よりも愚かではあるが、まぁその分操り易いという物…―。)
アダムは思い、そうして笑みを作るとゆったりとした口調で両手を広げ、言った。
「いいねぇ、気に入ったよ。では正式に君を客人として迎え入れたいと思う。そうすれば北方東方辺境領一帯の制圧も苦労が無さそうだ。その権限は無いとは言え、顔は効くんだろう?」
笑みを浮かべて言うアダムに対してスカイラーは虚ろに笑い言う。
「それから俺は中将という任を解かれてはいるが、北方領土に関して言えばまだ俺の懐の中にあると言っても過言ではないのだがね。」
「おっと、それは失礼、気に触ったかな?」
アダムは肩を竦めておどけて見せた。するとスカイラーは口元だけで笑みを作り吐き捨てた。
「くれてやるさ、好きなだけ蹂躙するがいい。それであの女の顔が歪むならそれに越した事は無い。」
その言葉に微かにスカイラーの背後に立つ女の表情が歪んだのをアダムは見逃さなかった、彼は「なるほど。」と徐に頷いて見せ、そうして席を立った。
「ユゥリ、僕はもう少しこの辺りを視察して帰ろうと思うから、君はテーヴァイと共に塔に戻って彼等に部屋を用意して差し上げてくれ。」
「しかし……幕僚長殿! それは……。」
「いいから言う通りにしたまえよ、さもないと君も君の姉上のように今ここですることも出来るのだからね?」
アダムの言葉にユゥリは押し黙る。アダムはそういうユゥリを見ると彼女に軽く口づけをして笑って見せ、踵を返し本部のテントを後にした。
「では、ご案内いたしましょう。」
ユゥリが言って、彼等は立ち上がった。背後の女は相変わらず無機質な視線をどこか遠くに飛ばしていた。
銀幕ヘタリアを観ました。まぁそれなりに頭使わずに見れてよかったよー。フランス兄のカッコよさが解りました!! たしかにかっけーわ。あのおもてなしされたいわ。そしてロシア酷!(笑) 結局ドイツ×イタリアマンセーな映画でしたがまぁまぁ、癒されはするよ。うん。あぁぁイタリア人になりたい、シエスターパスター!! ところでウチのアダム君はイタリア系の筈なんだけど…―あれ?!
ИСТИНАサイト(イラスト・設定等)
更新通知を登録
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。