友達の存在...(52/57)縦書き表示RDF


龍泉勢に、先制点をあげてしまった芹沢勢。
その裏、龍泉勢がピッチャー交代の申し立てをしたのだ。
犀潟兄に代わり、ピッチャーを務めるのは意外な選手(やつ)だった…。
友達の存在...
作:りす君



friends51:振出(ふりだし)。


(スコアボード)
龍泉:1-0:芹沢



到頭、俺達は茉山率いる龍泉に先制点を許してしまった。
何とか、続く9番を三振に仕留め、1番バッターの犀潟兄もセカンドゴロで抑えてチェンジになった。

犀潟:
「…あーあ、先制点あげちまった。」

犀潟が電光得点板を見て、溜め息混じり言った。

潮見:
「ま…まだ3回だし…や、野球って9回の裏まであるょ…。」
高萩:
「まぁ…潮見の言う通り、まだ3回だ。逆転は充分に有り得るぜ。」
藤浦:
「そうだ、次のバッターは…。」

藤浦が電光得点板を見た途端、唖然とした。

藤浦:
「ピッチャー…交代だと?」
高萩:
「えっ?」
ウグイス嬢:
「ここで、龍泉高校の守備変更をお知らせ致します。ピッチャーの犀潟君がライト、ライトの野尻君がピッチャーに入ります。」
野尻:
「………。」

龍泉勢の動きが全く読めない俺達は皆、呆然と守備交代を見ていた。

アナウンス:
「3回裏、芹沢学園高校の攻撃は7番ショート、零園 彪岔(れいその ひょうた)君。」
主審:
「プレイっ!」

あの1年のライトが、一体どんな球を放るのかを藤浦を含め、チーム全員が見つめていた。

野尻:
「…っ!」
(ビュッ!)

彼の投げた球は、ストレートの速さで真っ直ぐの軌道からベースの近くでいきなり急激に落ちた。

(スパンっ!)
主審:
「ットライーク!」

フォークボール…しかも、落差も大きい。敵が、そんなのを隠し持っていたなんて思いもしなかった。

藤浦:
「こりゃ、攻略が難しそうだな。」
岩原:
「…猿の一覚えか。」
高萩:
「何か言いました?」
岩原:
「いや、別に…」

そう言うと岩原は、一旦ベンチを出ていった。

高萩:
(?…何だ?)
(スパンッ!)
主審:
「ットライーク!アウッ!」

バットを提げながら、零園が帰ってきた。

零園:
「駄目だったッス。あの落ちる球に、全く当たらなかったッスよ。」
潮見:
「うー…エイッ!」
(ブンッ!)
(スパンッ!)
主審:
「ットライーク!アウッ!」

潮見も、あのフォークに手も足も出ず。

岩原:
「そろそろ…あのガキの調子鼻をへし折ってやるかな。」

いきなりベンチに戻ってきた岩原は、バットを持って打席に入った。

ウグイス嬢:
「9番。センター、岩原 克彦(いわはら かつひこ)君。」
主審:
「プレイッ!」

主審が言い終わると、野尻はワインドアップで球を放った。

(ビュッ!)

やはり、決め球のフォークだった。だが、岩原はバットを短く持って待ち構え、そして…。

(カキーンッ!)

心地よい快音が、球場内に聴こえた。

藤浦:
「う…嘘だろ?」

打球はグングンと伸びていき、ライトとセンター間のフェンスを…越えた。

芹沢側ベンチ:
「「うぉー!!」」

何と、岩原があの落差の大きいフォークをいとも簡単にホームランにしたのだ。

野尻:
「………。」
岩原:
「…フンッ!」
(龍泉高校側ベンチ)
茉山:
(ほぅ…やはりあの長身の根暗男は要注意だな。)
藤浦:
「凄いですね、先輩。」
岩原:
「別に。」

これで、1-1の同点に追いついた。

美作:
「だぁー!」
(ブンッ!)
(スパンッ!)
主審:
「ットライーク!バッターアウッ!スリーアウトチェンジ!」

しかし、この回は岩原のソロホームランで終わった。

藤浦:
「皆、同点に追いついた。まだ4回だが、油断するな。深く守れ。外野は…まず犀潟、お前は三遊間(さんゆうかん:サードとショート)を抜かれないようにしっかり守れ。」
犀潟:
「了解。」
藤浦:
「岩原先輩は、ニ遊間(にゆうかん:セカンドとショートの間)と若干のライト方向は潮見だけじゃ危ないんで岩原先輩、捕れそうだったらお願いします。」
岩原:
「面倒だな、この嬢ちゃんは。」
潮見:
「むぅ…。」
高萩:
「で…潮見は、ファールライン際にいて出来るだけ捕れ。捕るのが無理そうな打球は美作か先輩に頼め。」
潮見:
「う…うんっ、出来るだけ捕れるように…あたし頑張るぅ。」
藤浦:
「内野の美作以外は、間を抜かれないようにしっかり守れ。」
落合・美作・零園・屋代:
「「はいっ!!」」
高萩:
「しっかり守って、逆転しようぜ!」
岩原以外全員:
「「オーッ!!」」
岩原:
「…フッ。」

こうして、試合は振出に戻った。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう