友達の存在...(36/57)縦書き表示RDF


試合が終わり、各自教室に戻っていく中、藤浦だけグラウンド内で立ち尽くしていた。
友達の存在...
作:りす君



friends35:試合終了後のグラウンド。


(平成…度 秋季高校野球関東大会 決勝戦)

「はぁ…はぁ…」
「踏ん張れ藤浦!あとストライク一つだぞ!」
(ビュン!)
「し、しまった!!」
(カキーン!!)

打球は、センターフェンスを越え、ホームラン。

「何と!最後の最後で、帝東の7番バッター湍水(はやみ)が放った打球が逆転サヨナラ満塁打になりました!ここにきて栗桜、急造の1年ピッチャーにより、まさかのサヨナラ負けを喫しました!!」
「そ、そんな…」



(試合終了後のベンチ裏)

「やはり、急造で帝東は倒せなかったな。」
「済みませんでした、監督。最後の最後で…あんな無様な投球をしてしまって…。」
「いや藤浦、君は良くやったよ。栗桜での君の最後の大会に怪我した佐賀(さが)の代わりに、ピッチャーを引き受けてくれてありがとうな。」
「礼なんて、とんでもないです。佐賀先輩は、もう直ぐ復帰しますし…俺は失礼します。」
「藤浦、向こうでも野球するのか?」
「さぁ…まだ考え中です。それじゃ監督、お元気で。」
「藤浦も、達者でな。」

















「…い、藤浦!気付けよ藤浦!」
「…はっ!…幻か?」
「何言ってんだよ藤浦?さぁ、試合も終わったし、教室に戻るぞ。」
「あ…あぁ。」

俺は、ゆっくりと得点板を見た。3組との試合は、あれから瀬戸と犀潟が奇跡のシングルヒットで進塁し、最後は魚谷の2点タイムリーで、俺らが逆転勝ちした。しかし、1組との試合は0対8、4回コールドで俺らの完封負けだった。

「おい、藤浦。置いてくぜ!」
「先行ってろ、あとで行くから。」
「解った。」



…栗桜では、いろいろあった。
甲子園常連校であった栗桜高校に俺が入学した当初、学校は荒れていて、決して良い学校じゃなかった。学校中の窓ガラスは常に割られていて、校内では決して聴こえるはずがないバイクの爆音が授業中に聴こえる始末。不良の中に野球部員もいたから、野球に入部した当時からかなりの嫌がらせを受けた。
それでも監督は、めげずに部を、そして俺ら部員を野球プレイヤーとして指導してくれた。だから、俺が1年の時に神奈川の強豪横崎をコールドで破り、甲子園の切符を手に入れたのだ。結局、甲子園1回戦で敗れたが良い思い出だった。

夏の甲子園が終わって、9月の下旬。俺は秋季関東野球大会が開催される前に、父親から転勤の話をされた。4月に東京の駒宮(こまみや)市へ移住するという話だった。
俺は勿論、反発したが高校生の分際で、モノが言えるはずが無かった。

結局俺の家族は、高2の4月に駒宮市へ引越して来た。そして、ここの“私立芹沢(せりざわ)学園”に編入する事となった。















(キーン…コーン…)

俺は、急いで教室に戻る事にした。












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