友達の存在...(27/57)縦書き表示RDF


3月の第2週目。
この日…高萩が、福本にホワイトデーについて話し掛けられた事から始まった。
この(なご)みのある会話からやがて、友達関係について徐々に(ゆが)んでゆく…
友達の存在...
作:りす君



friends26:親友…それぞれの思い。


3月の第2週目。

もう少しで高1が終わり、進級が待っている。
クラスでは、バレンタインデーで男子に義理(あるいは本命)チョコをあげた女子達が集まってホワイトデーの話をしている。

「高萩ぃ、お前は返したのかよ。」

福本が席に座って窓の外を眺めていた俺に話しかけてきた。

「何を?」
「“何を?”…ってホワイトデーだぜ。お前、どうせ貰ったんだろ?」
「バカ言うな。貰えるわけねぇだろ。榎故(えのもと)じゃ、ねぇんだから。」
「…俺を呼んだか、高萩。」

後ろから俺に声を掛けたのは、クラス内一のカッコイイ男子と賞されている、榎故 草太(えのもと そうた)だった。
彼は、髪をワックスで立てていて身長は180cm代と高い。野球部に所属している彼の身体には無駄な肉が付いていない。
彼の性格は、穏和で誰にでも優しく平等に接して尊重し、決して人を馬鹿にしたりしない。
そんな彼だからこそ、女子達から人気があり、しょっちゅう喋り掛けられるのだ。

「お前や成とかなら、バレンタインデーに女子からチョコをわんさか貰えただろうから、返すのが大変だろうなって話してたのさ。」

榎故は、頬杖(ほおづえ)をつきながら言った。

「…そんな事かよ、別に考えてねぇよ。元々、俺には関係ないし。」
「榎故よぉ、嘘つくなよ。お前には関係ありだろ?」


福本は、にやけながら榎故の肩に手を置いた。

「だから…俺には関係無いって。てか…肩に手を置かないでくれないか?一応、ピッチャー(投手)だし…」
「肉っ!(福本のあだ名。彼は少し太っていた。)」
「…ゴメン。」
「あ…そんなに怒らなくて良いよ、高萩。別に…気にしてないから。」
「榎故…」

福本の所為(せい)で気まずい雰囲気(ふんいき)になったので、俺はとっさに話題を変えた。

「あっ、そういやテレビで見させて貰ったぜ。お前が高校に入ってからの初登板の試合。」
「あぁ…ありがとうな。グダグダだったろ…見事に相手から打ち込まれたし。」
「いや、あのジャイロはキレがあって良かったぜ。」
「なぁ、高萩?」
「福本、何だよ?」
「ジャイロって何だよ?」
「お前は中学の時、野球部だったのに解らないのか?」
「いや、俺はライト(右翼手)だし…」
「ふぅ、ジャイロ…正確にはジャイロボールっていう変化球の一つでな。まぁ…ストレート(直球)とあまり変わりは無いんだけど、打者の手元で少し落ちるんだ。だけど、球速が速いから打者にはホームベース付近で球が浮き上がって来るように見えるんだ。また、ストレートはバックスピン(縦回転)だろ?だけどジャイロは、ドリルのような回転をするから周りからの空気抵抗を受けにくく、投げてからキャッチャー(捕手)に届くまでの時間が少しだけストレートより短いんだ。」
「へぇ…。」

知らなかったというような顔をしていた福本の隣で榎故が、感心したように言った。

「…よく知ってんな、高萩。」
「まぁ…下手だけど地元で草野球やってて、一応ポジションがピッチャーだから。」
「成程な。投げてるから知ってるのか。」
「ジャイロリリース(ジャイロボールの放り方)を取得すんのは難しいから、結構練習…」
「榎故くーん、ちょっと来てぇ。」

向こうにいた女子のグループが榎故を呼んでいた。

「ワリィ、二人とも…ちょっと行ってくるよ。」
「おう。」
「このモテモテ野郎がっ!」
「肉…それは言わない方が良いぜ。」
「うっ…」

榎故は、女子達の所へ行ってしまった。

「まぁ、色々人には問題があんだな。」
「そうだな。」
「おい。」
「…ん?」

不意に、後ろから声を掛けられた。俺は、振り返った。
そこには、仁王立ちした成が立っていた。

「…何だよ、成。」
「お前さぁ、千駄木さんから貰ったのか?」
「何を?」

俺がそう言うと、成はいきなり声を荒げた。

「とぼけんなっ!…お前、バレンタインデーに千駄木さんからチョコ貰ったんだろ?」
「貰うわけねぇだろ。」
「本当か?」
「…あぁ。」
「なら、いい。」
「あれぇ、高萩クン達どうしたの?」

いきなり、俺達の前に千駄木が現れた。

「せ、千駄木さん…」
「成ちゃん、ホワイトデー忘れないでネ!」
「も、も、もちろんっ!」
「フフっ…高萩クンも…ネっ。」
「えっ?」

千駄木は、何故か顔を赤らめてうつ向いていた。

「っ!!!テメェ、嘘ついたな!実は渡されていたんだな!許さん…」
「えっ?何…どうしたの?」

当の千駄木は、ボケッとしていた。

「ちょっと、待てっ!千駄木…俺は貰ってないけど。」

「あれっ?…もしかして高萩クン、私のあげたモノ…ロッカーから取り出してないの?」
「えっ?千駄木…俺のロッカーの中に何か入れてたのか?」
「…ヒドイっ。」
「えっ?」
(ダッ!)



千駄木は、左腕で両目を押さえ隠し、走って行ってしまった。

「お、おい千駄木!…何だよアイツ。」
「…おい、高萩ぃ。萌さん少し涙目だったぜ。」
「テメェ!!」
(ビュンっ!)


(うな)る成の右拳を、ギリギリで何とかかわせた。

「止めろ、成!何故、お前は高萩を殴るんだ?最近、お前変だぜ?」
「…黙れ。お前には、関係無いだろ。」
「ふざけんなっ!」
「福本…」

俺は、一言だけで制した。

「何だよ、高萩?お前も、何か言ってやれよ!」
「解るだろ?もう俺達は、無垢な人間じゃねぇんだから。」
「………。」
「………。」


3人の間に(しばら)く沈黙の時が流れた。


突如、窓の隙間(すきま)から春風が吹いた。すると、成が何かを振っ斬ったような顔をして俺に話しかけた。

「…高萩。」
「何だ、成。」
「俺さ…決めた。」
「…何を?」
「千駄木さんに…」
「…告白すんのか?」
「いや…一から友達関係で始めてみようと思う。」
「そうか…」
「…出来るかな、こんな欲求心が強い俺に。」
「解らない。だけど…一生懸命に何かをした人は何かを得られるってよく聞くけどな。」
「高萩…」


成の瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。

「あんま気にすんなよ。お前のやりたいようにすれば良いからよ。」
「ごめんな…」
「えっ?」
「あの時…本気で殴っちまってさ…」
「いや、あれは…」
「ごめん…すまなかった…」
「成…」























目の前で泣き崩れた成。

俺の所為で深く傷つき泣いてしまった千駄木。



親友関係…それは、難しい壁を越えなければならない時がある事。

俺は、徐々にここから深く知っていくのだ…












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