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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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097:黒い宝石

冒険者ギルドには解体場所がある、荷馬車に死体をグルグル巻きにして3人で到着するとヘルツはギルマスに報告をした。
常時作業している場所でもないようで、解体場所を借りると専門の職員と一緒に死体を台に移し変えた。
「ヘルツ、本当に任せていいのか?」
職員の問いかけに、もう動くことはないだろう死体のロープを解き任せろと自信満々に言った。

「この国では人間の解体は本来禁止されている、今回は事件ということもありアンデットに繋がる物証でもあれば儲けもんということでギルマスにも許可を得ている。ギルマスから王国へ報告をしてくれるので細かい事は気にしないように」
「「はい」」
「まず、さっきの状況を見ていたと思うが何所を調べたら良いと思う?」
「まずは胸の辺りだと思う、動き出す前に胸を中心に一回跳ね上がったからな」
「ヴァイス、自分も同じ意見だ。普通に考えて死因である鳩尾あたりの穴が怪しいね」

口の周りに布を巻くヘルツを真似して二人とも布を巻く、この施設で使っている小さく鋭いナイフを持つと穴を真っ二つにするように切り開いた。
「ヘルツさん、妙に上手いですね」
「動物ってのは体の作りが似通っているからな、冒険者をするなら最初に害獣駆除なんて依頼が多いんだよ」
「その流れで解体ですか?」
「ああ、猪や熊なんて退治すると飯のランクがあがるからな」
「結構サバイバルな生活をしていたんですね」
「無駄口叩いてないで続けるぞ」
「あ、すいません」

慎重に穴以外を傷つけないように切っていき、心臓にダメージが残っているのを確認した。
「リュージ、心臓の役割とは何だかわかるか?」
「はい、全身に流れる血液を送り込むポンプのような役割です」
「お前・・・、やけに詳しいな」
「・・・そう、昔そう教わった気がします」
ヘルツにジロリと見られていたが、ヴァイスからは特に気にした様子は見られなかった。

「じゃあ、俺のほうの昔話をするわ。昔協会の奴とパーティーを組んだ時アンデットについて聞いたんだが、何故奴らは生者を襲うんだと思う?」
「わかりません」
「ふむ、そいつが言うにはまずアンデットの近くにアンデットがいないので襲わないという答えだった」
「くだらないですね」
「協会ジョークって奴だろう。続けて奴が言うにはアンデットが闇属性のモンスターなら、生物は光に属しているので相容れない存在としてお互いがお互いを敵視するそうだ。特にアンデットは仲間を増やそうとする特性を持っているのもそういう理由だろう」
「属性が違うだけで襲う理由になるんですね」

「そこでだ、ヴァイス。お前がアンデットだとして、人を襲うとしたらどうする?勿論武器なんてないぞ、爪と牙が少し生前より強くなっている程度だ」
「んー?あまり考えずに気づかれないように襲うなら首筋か肩に噛み付くかな?」
「いい意見だ、俺がアンデットでもそうするな。爪で頭を殴ってもいいんだが、獣でも敵を仕留める時はよく首を狙うな」
「心臓を狙ったのには理由があるって事ですね」

大量の水を流しながら器用に心臓を傷つけないように体から切り離した。
そして触診のごとくヘルツはプニプニと何箇所か突っつくとニヤリとした。
「ヘルツさん、臓器をもったまま笑わないでください」
「なっ、俺は原因を見つけただけだから。笑ってないからな」
「そろそろ真面目にやりましょうよ」
中途半端に教育者モードになっていたようだけど、やっぱりヘルツは講師に向いていないようだった。

自分とヴァイスに心臓を触らせ、一部硬質化していた部分を確認した。
続けてヘルツが穴を広げるように左右に割くと、コロンっと小さな黒い宝石っぽいものが落ちてきた。
小指の爪程度の大きさで大きな亀裂が入っている、爪で弾いてみた感じだと落ちて入った亀裂ではなさそうだ。

「ヘルツさん、これって・・・」
「ああ、子爵が飲んだのは黒い何かって言ってたな」
「アンデットの特性で増やそうとした訳じゃなさそうですね」
「リュージ、これって呪いの何かじゃないのか?」
「とりあえず、何をするにも物証は残さないとですね。色々調べるのは報告した後の方がいいかも?」
「そうだな、ふと思ったんだが残り4体も調べるべきかもしれない」

話している途中でこの事件の責任者がやってきて、ヘルツは黒い宝石っぽい物を渡し残り4体の事も調べるべきと指摘した。
こっそり「火葬場を担当している高位の者を調べるように」と責任者に話していたが、協会でしかもアンデットに関わる部門は査察を受け入れない事で有名だ。今までのアンデットに関する焼却も、場合によってはこういう宝石があった可能性がある。
焼却後に骨の他に何かないかだけでも調べるようにお願いすると三人の仕事は終わった。

一度学園に戻る為、雑談をしながら歩きだす。
鎌を使った戦闘でヴァイスに感想を求めたヘルツはやっぱりニヤニヤしていた。
ヴァイスは順番に戦闘について評価していく。ティーナの指摘通り戦闘に対する心構えが足りない点と、頭で考えすぎる節が見られたのでもっと自然に戦う事が出来るように訓練を増やす必要があると言っていた。
そこを真剣に聞いたヘルツはいつでも訓練してやるぜと肩を叩いてくる。

「んで、鎌を使った訓練はどうだった?」
「あー、あれはやばいです」
「やばいか」
「相当やばいです」
「そこの二人、やばいを連呼しないで」
「だってなぁ・・・」
「「やばいだろ」」

ヴァイスの評価としては型だけは上手い素人だった。
ところがその型の上手さが半端じゃなく凄いようで、剣の訓練で使う打ち込み用の竹などを刃のついた物で斬ったなら、キレイな断面が出来るだろうと言っていた。
ヘルツも他の武器に比べて鎌だけ極端にバランスが取れていて、もしこの武器を使い続けたらものになると思ったそうだ。
そして二人とティーナの総合評価は「もったいない」だった。

「なあ、リュージ。俺とティーナは装備を買ってもらったんだけど、リュージも鎌を買った方がいいんじゃないか?」
「あー・・・、鎌かぁ。短剣もあるしワンドやスタッフ代わりの物もあるんだよ」
「でも、リュージは収納があるし木製の鎌も貰ったよね」
「断れない雰囲気だったからね」
「それって練習用だろ、ってことは本番用も持っておくべきじゃないか?」
「よし、俺が見立ててやろう」

予定を変更して冒険者ギルドに通うトップランカー推奨の武器屋に到着すると、ヘルツは店主を呼びこそこそと耳打ちをした。
「君が最近有名なリュージ君だね、うちも冒険者ギルドと商業ギルドに入っているから君の話はよく聞くよ」
「ありがとうございます、今度農場も始めたので気軽に遊びに来てください」
「ああ、今度是非行かせてもらうよ。ところで今日は鎌を買いに来たようだけど、残念ながら鎌の在庫は置いていないんだ」
「そっかぁ、残念だなぁ。ないなら仕方がないですね、今度ゆっくりある武器を・・・」
「おい、リュージ俺がそんなヘマするわけないだろう」
「えー・・・、片手剣でも買って帰りましょうよ」
「買ってもいいけど鎌も買えよ」
「・・・」

店主により身長を測り、木の棒を何本か持って振るように指示をされた。
棒の長さが決まると刃の形状で希望があるかを聞かれた。
「禍禍しくなくて他の武器に見えるような形状で」と希望を言うと、グレイブという薙刀っぽい形状の武器に少しだけ角度をつけたものが近いようでこれを注文した。
これなら刃の先で攻撃することも出来るし、槍っぽい動きが出来るかもしれない。
ギルドカードを出して割引が適用されると、金貨1枚を先払いでお願いした。
大体10日くらいで完成するようで、材料費と制作費以外の余剰分は色々便宜を図ってくれるそうだ。
ヴァイスは興味深く陳列された武器をみていて、ヘルツはきちんと注文しているかを最後まで確認していた。

買い物が終わると学園に行き、ヘルツは学園長へ報告を行っていた。
そういえば昼食をとってないなとヴァイスと学食へ行くと、もう火を落としていたようで、余り物しかないと言いつつ満足いく食事を出してもらう。

「そういえば、ローラのグループ活動ってどんな感じかな?」
「あー、あれどうしようか。ローレル教授は来る者は拒まずってスタンスらしいけど」
「でも、うちの警護隊がずっとついているのは迷惑だろ」
「サリアル教授に聞いた話だと、騎士科と冒険科がそれぞれ送り迎えしてるんでしょ」
「ああ、毎回人員を変えてローラに判定して貰ってるみたい。変な意識でやってる奴も混ざっていてさ、角を曲がるごとに庇いながら歩いてたら前に進めないって苦情があったらしい。騎士科は将来の仕官先として考えている奴もいるし、冒険科は護衛任務で考えているようだよ。まあ、最終的には女友達でそういう相手が定着してくれると良いんだけどね」
「どちらにしても、何所かに所属したらそこが一大勢力になってしまうね」

二人でため息をつく。
先週は入学早々休講になったし、今月いっぱいは様子を見る必要があると思った。


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