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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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090:お昼休憩

【本日のメニュー:GR農場見学 ビュッフェスタイル】
コーンスープ:皿でもカップでも提供出来る。
ポテトサラダ:荒く潰した為ゴロゴロ感が満載。
トマトサラダ:スライスしたトマト・フルーツトマト・プチトマトなどがあり、お好みで塩とオリーブオイルがつく。
ソーセージ数種類:提携している肉屋の製品、商業ギルドと共同開発。
プレーンオムレツ:ふわふわに仕上がったプレーンタイプ、お好みで塩かケチャップがつく。
トマトと枝豆の冷製カッペリーニ:髪の毛のように細いと表現されるパスタがグラスに一口状態で楽しめるように盛られている。お皿での提供でも可能。
トマトのチキン煮込み:なるべく大きな部位で何時間も煮込み繊維がほどける程の柔らかさがある。
グリーンサラダ:何の変哲もないサラダ、オリーブオイルとレモンと白ワインビネガーを使ったドレッシングで爽やかさを演出している。
プリン/自家製カッテージチーズ:牛乳と酢で作った簡易カッテージチーズ、甘さ控えめのマーマレードがつく。
アイスレモンティー/グレープジュース:レモンは農場産で茶葉は商業ギルドからそこそこのランクを仕入れ。侍女による配膳。
ふかふかパン:篭に盛って随時補充、侍女による配膳。

男爵夫人4名は列で楽しそうに侍女に料理の説明を求めている夫人達を眺めていた。
その間にも着席している男爵夫人にも料理が配膳されていく。
ところが全員戻ってくると男爵夫人に届いたものと、それ以外のそれぞれはまるっきり違う出来のように感じた。

ある夫人の皿はトマト各種の盛り合わせがキラキラ輝いていて、ある婦人は冷製カッペリーニが2個も乗せていた。
ローラにはコーンスープが深い皿で提供されており、バランスよく取っていたのはポライト男爵夫人だった。
画一的な盛り付けをするならサラダを主役に据えるのはおかしいので自ずと分量は少なくなる。
グリーンサラダにトマトを1~2個乗せてポテトサラダを添える、何の変哲もないサラダになってしまう可能性がある。

「それでは、皆さん頂きましょう」静かに祈りのポーズを取るとそれぞれ食事が始まる。
スープを一口含んだ後止まるのはいつもの事。ローラは慣れてきたのかパンをスープにつける所でパンの異常な柔らかさに気がついたようだ。
「ローラさま、それはちぎってスープに浸すと美味しいですよ」
「はい、リュージさん」

ローラがパンをちぎる姿をみんなが見ていた、力をいれなくてもちぎれたパンを見ると男爵夫人4名は慌ててパンを取って・・・カップのスープにつけるのを躊躇った。
「お皿をパンで綺麗にソースまでぬぐうのは料理人に対する賛辞です。ただ、そのカップでは・・・」
ポライト男爵はまず野菜の一品一品の出来を褒めてくれた。

アイスレモンティーやグレープジュースも随時侍女により注がれ、パンもお代わりが続出した。
「今日提供された料理はこの場だけの秘密にしてください、普段は料理を仕事にしていないのでレパートリーが少ないのです」そう言うと周りから笑いが起きる。
「後は衛生上の都合で食事の持ち帰りは出来ません、一部の商品は売り出す予定ですが主に商業ギルド経由になりますのでご理解下さい」
当たり前の事を言ったので大体の賛同は得る事が出来た、若干二名の男爵夫人が立ち上がったが「食事中にはしたないですよ」と注意されると素直に席についた。

ビュッフェスタイルでも皆コース料理を食べるように徐々に重いものへとシフトしていく。
スープサラダパン・オムレツソーセージパン・パスタチキンパン・・・ちょっとパンの量多くないですかと不安になる。
会話は食事が美味しいだけで饒舌になる、それが農場で取れた品々だとしたら鮮度を含め話題に事欠かない。
一度席についたのでお代わりをしたい人は侍女に頼んでいるようだった。

ポライト男爵夫人は一人の侍女に話し掛け、「あなたの対応は素晴らしいわ、精錬された動きに心が篭っているのね」と賞賛した。そして2種類のデザートをお願いしていた。
それを見たミスディ男爵夫人はレンを呼び止めた。
「あなたは侍女としてはまだまだね、でも頑張るといいわ」本人にしては最大級の賛辞を言うと、2種類のデザートを命令した。
「あら、伯爵家のお嬢さんが侍女の真似事をするのは如何かしら?誤解されますよレン」
「申し訳ありません、自分がお願いしたもので」
「今日は侍女でございますポライト様。うちの家もこの農場を支援していますのでその関係でお手伝いです」
「相変わらず貴族の暮らしが苦手なようね」

ミスディ男爵夫人はポライト男爵夫人が話を逸らしてくれたので安心していた。
しかし「すぐにデザートをお持ちします」の言葉に、「私が取ってきます」と立ち上がろうとして又ポライト男爵夫人に目で制されていた。給仕が終わるとレンと一緒に公爵夫人へ挨拶をする。
「「この度はご婚約おめでとうございます」」
「あら、もしかしてあなた達が?」
「はい、とある方よりご依頼を頂きました」
「とても感謝しているとそのとある方も言っておりましたよ」
「そうですか、心穏やかに過ごせているようなら嬉しいです」

「そちらのデザートですが、ゆずのマーマレードも良いのですがこちらも美味しいですよ。是非お試しください」
公爵夫人に瓶詰めにしたイチゴジャムを渡すとスプーン一杯分だけたらす。
あまり潰していないタイプなので、グラスの上の雪山が赤く染まっているように見える。
「酸味と甘さが絶妙ですね」
「これは材料さえ揃えば簡単に作れますよ」
「まあ、素敵ですね」
多くの視線が集まっていたので侍女に手伝ってもらってデザートを仕上げていく。
王家の二人はプリンに夢中だった。

こっそりお嬢様へと瓶詰めを公爵夫人に手渡すと王妃がにこにこしていた。
公爵夫人は「このお礼は後ほど」と言っていたけど、周囲に見つからないように配慮したのかすぐに周囲の会話にとけ込んでいた。後で王家にも届ける必要があるなと頭に刻み込む。

食後のお茶も一段落し、王妃が「皆様、本日の見学如何でしたか?食事も含めてで良いですが」と周りに聞くと多くの賞賛の言葉を頂いた。
「まあまあでしたわ」
「ええ、まあまあでした」
そんな言葉も何件かあったけど、これはあの人達なりに賛辞に分類されているんだろうと理解する。
すると、調理場を見せなさいとその2名の男爵家がつかつかと歩き出した。

予め貴族の誰かが無茶を言った場合、止めない事を徹底していた。
その代わり調理場とこの部屋の中間地点にヴァイスとティーナが待機していた。
「初めまして、本日雇われた特待生仲間で護衛です」
「奥様方、化粧直しならこちらではなくてあちらですよ」
さり気なく振りまく殺気に毒気を抜かれた2人の男爵夫人、二人の真ん中にはカフェなどにある両面使える黒板があってチラチラ見ていた。

「お客様、こちらは関係者以外立ち入りでございます」
後ろから声を掛けると2人の男爵夫人は、その背後から厳しくも冷たい視線に晒されていた。
「いい加減にしなさい、迷惑がかかっている事がわかりませんか?」
「ここは所詮平民の施設です、そんな気にする・・・」
「黙りなさい。ガレリアさまをはじめレンの家が支援していて、この土地は王家より下賜されたものです。そのくらい貴族家なら自然と集まる情報でしょう」
王妃はゆっくり前に出て二人に下がるように命令をした、ちらっと黒板の裏を見て「ふふ」と笑ったのを見逃さない。

「では、事前にお話した通り各自会計して今回の会合は終了となります。皆様お疲れ様でした」
「本日はご見学お疲れ様でした。当施設での食事はいつでも提供出来るものではありません、今回は王妃さまに無理と言ってこういう会計方式にさせて頂きました。是非本日の評価をして頂けたらと思います、銅貨1枚より受け付けておりますので宜しくお願いします」そう言うと出入り口近くで会計作業をしていく。
最初に並んだのは王家で、きれいな布に包んだまま「ローラと二人分、こちらでお願いします」と渡してきた。
左側にはレンが右側にはレンの家の侍女が対応してくれていた。

布に包まれたままで会計した場合は後で確認することになっている。
続いてやってきたのはレクション男爵夫人で「ごちそうさま」と言い銅貨1枚放ってきた、王家と変わらない対応で受け取ると次のミスディ男爵夫人にも同じ対応をされた。
その次はポライト男爵夫人で綺麗な布から銀貨2枚を取り出し、「今日の食事は特別に美味しかったから」と銀貨をもう1枚追加した。
二人の男爵夫人は銀貨3枚ずつ支払い、子爵夫人は銀貨5枚支払った。

伯爵夫人と公爵夫人は「支払いは後でも大丈夫ですか?」と聞いてきた。
食事だけの評価は出来るけど【価値】を図りかねているようで、出来れば王家の支払い額を後で教えて欲しいとこっそり言ってきたので2名分の割符を渡した。
貴族家の当主夫人だし、王妃と一緒に来るくらいだから支払いについては問題ない。

後で聞いた話だけど、この地区別の【貴族家の妻の集まり】は今回で中止となった。
一般常識どころか貴族の嗜みさえも分からない貴族家の妻がいると噂が広まり、王家の人達が食事した店で銅貨1枚を支払って悦に入っていた男爵家がいたと噂になったそうだ。
伯爵家と公爵家からは当主自ら王家と同じ会計を持ってきて、「困った事があったら手助けをするので」と言葉を頂いた。貴族として直接特待生へ働きかけが出来ないのでこういう言い方になったらしい。
何はともあれ無事農場見学が終わったので胸をなでおろした。


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