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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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081:悪者は誰だ

入居手続きは明日の打ち合わせ後にすることになった、この辺の連絡はルオンがやってくれるらしい。
王宮へ行く通り道という事もあり、先にワインバーを確認することにした。

「結構大きな規模になりましたね」
「セルヴィス殿の事も考えて、新しい事業へのPRを考えていたら結構な大きさになってしまったな」
中に入るとセルヴィスが店舗を見回していた、明日全体の打ち合わせをしたいからと集合場所と時間を話すと了承して貰った。
料理人3人も一緒に来ていたようで、調理場でイメージトレーニングをしていた。

「セルヴィスさん、どうですか?」
「ああ、うちのワインを置くには十分過ぎるな。訓練に来ている子供と同じようにワインもうちの大事な子供なんだ」
「では、しっかりおめかししないとですね。そういえば招待したい人とかいたら教えてくださいね」
「よし、じゃあ良く考えておくよ」
「はい、お願いします」レイクがいなかったのでこちらは引渡しが出来なかった。

ガレリアと王宮へ行くとまずはコロニッドとラザーへの面会を求めた。
先に来たのはコロニッドで篭を出しパンを数個入れ、「お土産です」と小分けの粉とレシピを渡す。
「ありがとうリュージ君」と喜び、一口パンを齧ると「ちょ・・・ちょっと待ってて」と戻っていった。
続いてラザーと一緒にやって来たコロニッドは大至急中に入るように腕を引っ張っていた。

「以上で報告は終わりです、報告は領主代理と村長さんの連盟で来ていると思うのですが」
「ああ、ヘルツより報告書は受け取っている」王子の返事にドアがノックされた。
「失礼します、ヘルツ参りました」
「入ってくれ」
全員が再び席に着くとパンについて質問が出てくる、内容をぼかしていたが特産と言うと「ラース芋を加工したのだな」と王子にあっさりばれてしまった。テーブルには篭に入ったパンがあり、王子が手に取り一口食べると考え込んだ。

「ローランドさま、如何しましたか?」ラザーの問いかけにパンを手に取り食べるように促すローランド。
「このパンは美味い、ただパンとは民の命を支えるものと言っても過言ではない」
「はぁ、リュージによって新しい食を考える者が増えていますがそうでしょうな」
「え?そうなんですか?」
「お主は最近ラース村へ行ってたから分からぬのだろう、昨年末より商業ギルドへの問い合わせがひっきりなしにあると聞いておる」
「そうですか、それはそうとこのパンは問題ありますか?」
「コロニッドよ、お前ならこのパンを今までのパンの何倍まで出す?」
「はっ、さっきざっとレシピを見せて貰ったのですが、新しい粉の原価を考えないなら最低でも2~3倍でしょうか?5倍までなら考えると思います」
「え?そんなに?」
「そして問題は柔らかさだ。硬いパンで顎を鍛えるように1つ食べ終わると満足する物もあるが、このパンなら平気で2~3個は食べられてしまうだろう」
「それは大きな負担ですね」

特産品として出すなら利益が出るものが良い、現状で考えるなら出荷量を抑えて少量のロットを貴族向けにでも出すべきだ。
例え芋の原価が安くても魔法を使って加工をしている、多くの技術料をかけても問題はない。
そしてこの粉は安く広めるには時間をかける必要があると王子は力説した。
パンと粉を渡した人を伝えると、商業ギルドのレイクを呼び出す。
王子はまずラース村と王国の輸送事情の更なる強化を求め、ギルドでは上位者のみで情報を止めておくように指示を出した。

今回のラース村での働きに対する報酬はガレリア基金に届けらるそうだ。
軽く王子に「例の件頼む」と言われ、その後は別件で冬越しの施設の取り壊しを大々的に行いたいと打診をされる。
日程はガレリアからの報告であった通りに行い、準備は王国側に任せて欲しいと言われたのでガレリアと共に了承した。

王宮をでるとレイクに【秘匿依頼】の報告を確認すると、明日セルヴィスと打ち合わせをする時に来てくれる事になった。
全体会議の事も伝えると「良い物をもって行くので楽しみにしてください」とにこやかな対応をしていた。
ガレリアにこっそり聞くと、大分外食産業で落ち込んでいたので事業とワインバーでは穴埋めが出来るくらい充実した仕事が出来たようだった。

立ち話も終わり帰ろうとするとヘルツが声を掛けてくる。
「リュージ、例のおやっさんの店できたんだってな。勿論俺も招いてくれるよな」
「ええ、まだオープンはしてないんですが、きちんと呼びますよ」
「あの騒動は治まったのか?」
「いえ、それについては明日教えて貰えるそうです」
「面白そうだな、俺にも噛ませてくれ。俺はいろいろ伝手があるぜ」
「おおぉ、じゃあ明日お昼のちょっと早めに来て貰えますか?セルヴィスさんも来ますので」
「分かった、楽しみにしてるぜ」

色々まわったので今日はここで別れて寮に帰る事にした。
久しぶりにみんなに会い、色々話すと夜はあっという間に過ぎてしまう。
レンとザクスに首尾を確認すると順調だそうだ、明日の事を話すとみんな参加したいと言うのでそれぞれの指導員に許可を貰ってからと伝えるとみんな了承した。

翌日は久しぶりに朝風呂に入り学園へ行く、サリアル教授に報告し「ガレリア先生の手伝いがもう少しかかる」と話すと「そちらに力を入れてください」と逆にお願いをされた。
学園長にも会って「例の依頼はすまないね」と労いの言葉を貰ったけど、ついでのような事だったので大丈夫ですと答えた。
早めに学食で食事を取らせてもらい、みんなが揃うと話ながら事業場へ向かった。

いつもの所にいるレーディスおばあちゃんは今日もひなたぼっこだ。
挨拶をして通りすぎる、今日もネコが集会を開いていたようだ。
今日の説明会の参加者はまばらに来ていたようだけど、まだ時間には少し早い。
秘匿依頼に関するメンバーが揃っていたので、まずはこちらの打ち合わせをする事にした。

「まずは事件の前後と経緯と現状を話します」冒険者ギルドより1名の事務方の男性が来ていた、調査はギルド長から特殊部門へ依頼が行き報告担当としてこの男が派遣された。
まずは今回の騒動によって利益を受けたであろう人物と、怨恨の場合喜んだであろう人物が発表される。
公然の秘密とされている王女が男爵家に嫁いだ事、怨恨で言えばかなりの人物が候補にあがってしまう。
そして発布した内容によりセルヴィスと距離を取った人物・・・、身近な相手と言えば剣の修行に来ていた貴族の4名だ。
男爵家2名に子爵家1名と伯爵家1名だ、勿論全員次男以下の家を継ぐには難しい者ばかりである。

1月に発布されすぐに腐ったワインの事件が起きるでは、保存期間的に時系列がおかしい。
もっと前からアーノルド家のワインに対する妨害工作を考えていたと考えるのが自然だった。
研修中の出荷担当者は完全にシロだ、問題はすぐその上の上司だが、これがどこかの貴族家からの介入を受けている可能性が高いので張りこんでいた結果、ある商会への接触が頻繁に行われている事が分かった。

デントス商会はノルド子爵家から出た男により立ち上げられた生鮮品を得意とする商会だった。
このデントス商会にはノルド家より時々次男や三男など入会する。
またノルド子爵家に隣接する家は伯爵家と男爵家でこの3家はずぶずぶの関係だった。
そこで話を戻すと、怪しい家が出てくる。

この伯爵家は嫡子がレイシアの婚約者候補でそこそこの人柄、優秀とは言い難いが今ある家を治めるくらいの器量は持っている。ただ、家の者で何人か難があるというか癖の強い者もいた。公爵家も侯爵家もレイシアとの仲が上手くいかないと見るや矛先をすぐに王子に切り替え、公爵家は長女と婚約まで持ち込んでる。
王子は「自分が納得行く実績が出来るまで婚姻については待って欲しい」と公言していたのだが、レイシアの件もありあっさり納得してしまったのだ。ところがこの伯爵家ではそうはいかなかった、主に女性陣に難があったようだ。

また男爵家は葡萄の産地だった、アーノルド家のワインがダメになったと公言すると代わりに用意されたのがこちらの男爵家のワインだった。甘くて美味しいフルーツとして有名だった男爵家だったが、ワインの切り替えでは失敗したようだ。
そしてこの男爵家の三男がセルヴィスの元で修行をしていたのだった。

「あいつはそんな奴じゃない、あそこの当主ベルノだってうちに頭を下げてワインの造り方を勉強する位腰の低い男だった」
「ええ、先代はとても評判が良い方でした。でも、現当主はバルドという名前らしいですね」
セルヴィスが否定するとギルド職員が答える、このバルドはとりあえずやってみようと前向きだが経営者タイプではないようだ。
「とりあえず全員捕まえてふんじばっちまおうぜ」騎士らしくないヘルツの発言にセルヴィスが待ったをかける。

「そう、証拠はないのです。せめて直属の上司であるウノ君が証言してくれれば」
「申し訳ありません、何度もウノには調査をしたのですが貴族が関わっているなら難しいでしょうね。実際私も調査を止めるように言われたくらいですから」
「では、こちらは推察ではなく確定情報です。デントス商会が配送している酒類ですが、ワインが納入されたと聞くとこの商会の者が必ず顔を出しアーノルド家の暴言を吐いていたという事実があります。勿論配送担当と暴言を言った者は別人です」

「以上で報告を終わります、事件解決に関する追加情報は随時連絡致します。また現在調査をしている者もいますのでそちらについても後で報告させて頂きます」
「相手さんも評判を落とすなんてまどろっこしいことしてるな」
「ヘルツよ、ワシには誰が合っていて誰が間違っているなんて言えんさ。ただ、もし誰かに脅されてやっているなら、そいつらも何とか助けてやりたいと思う」
「おやっさんも人がいいな、付け込まれるのは納得いかないけど善処するよ。ちょっと罠でも張ってみるか」
「罠ですか?」
「おうよ、登場人物は出揃ったんだ。後は罠を張れば勝手に引っかかってくれると思うぜ」

さすが二刀流の短剣使いだ、元冒険者の作戦が鋭く冴え渡る・・・そんな計画が発表された。
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