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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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069:しっそう

一歩ずつ呼吸を合わせて歩き出す王とレイシア。
後一歩で役目が終わってしまう焦燥感を感じながら、最後の一歩を踏み出す王は強い視線で正面の男を見据える。
スチュアートは『春の穏やかな日差しのような微笑み』で返すと、王さまの腕からするりとレイシアの腕が抜けていった。
名残惜しそうにしている王に王妃が咳払いで席に着かせる、そしてこっそり外の様子を伺っていたローランドも所定の席に着いた。

「運命に導かれた一組の男女 神と精霊が見守るこの場に 親愛なる家族と友人が集い 今新たなる旅路に出ようとしています。この二人の門出に異を唱えるものは今この場で申し出てください。・・・・・・皆の沈黙を是とし、二人が夫婦となることをここに神の代理として認めます」
人前式のような司祭の祝福の言葉に、レンとティーナはワクワクした顔をしていて、男性陣はどきどきしながら見守っていた。
「わしも祝福するのじゃ」「私もよ」「僕もー」「我も」「あっしも」・・・この言葉は聴かなかった事にしよう。

スチュアートの衣装は男性なので代わり映えのしない物だ、しかしイケメン偏差値が高いというか○○○や△△△△なんかの衣装をモデルさんが着ると、一流メーカーの商品みたくなるあの現象が発生していた。
レイシアの衣装は限りなくシンプルなものだった、王家の姫君が結婚式に着る衣装なら、前世では有名なデザイナーがかなりの年月準備して一針一針丁寧にそして豪華に作り、誰からも羨まれる衣装のはずだった。
後で聞いた話だけど、嫁入りする又は婿入りする家格に合わせた衣装を着るのが一般的だったようだ。

「レイシアさま、きれいねー」「幸せそうだね」「「憧れるわぁ」」こっそり会話をしているレンとティーナ。
「二人とも結婚願望があったんだね」こっそり見てると、式は指輪の交換に移っていった。
厳かに、そして少し駆け足気味に進行しているように感じる、「では、最後に誓いのキスを・・・」司祭の言葉に前方から急に殺気が漏れだしてきた・・・。
その殺気を冷たい別の殺気で押さえ込む、無駄にロイヤルオーラを使っているような気がする。

この結婚式は秘密裏に行われていた。
最後は入ってきた扉を開けると、篭に花びらをいれた観客が盛大に二人の上に撒くのが通例だったようで、今回は扉を開けるわけにはいかなかった。一連の式が終わると数名の騎士が王家の人達を裏口から出し、素早く馬車へ乗せると王城へ戻るように促す。残った王子はアーノルド家当主夫妻を別の馬車に乗せると、こちらにお礼を言い素早く撤収していった。
「この格好で取り残されると恥ずかしいものがあるね」スチュアートは苦笑していた。

協会の控え室で男女に別れて着替えをさせてもらう、どうやら男女に別れて今日の夜にパーティーを開くようだった。
レンとティーナは王城に呼ばれていて、男性チームは王子が後で迎えを寄越すらしい。
ガレリアには今日一日休みを貰っているので、夕方近くまで自由時間になった。
折角なので冬越しの温室を見てから寮に戻ることにした。

特待生5名とスチュアートが一緒に温室に行くと騒ぎが起きていたようだ。
出入り口に立つ2名の騎士に向かい、中を検めるので出入り口を開けるように指示を出す『でっぷり』とした男とその後ろに立つ5名の私兵。
「この施設は王国からの依頼があり、とある術者さまに作成して頂いたものです。この建物を検めるということはその方を侮辱されることに・・・ひいては王国に弓を引くものだと、上の方より指示を受けております。何卒ご理解頂けませんでしょうか?」
「くっ、忌々しい。どうせ技術を隠匿したガレリアの差し金だろう。法衣風情が・・・」
「失礼ながら、この施設には厳しい冬を越せぬ者への支援以外何物でもありません。その場を動かないとお約束頂けるなら、この出入り口を開ける事はできます。武器を構えるなど不要な行動も差し控えて頂けるならですが」
「わかったわかった、お主が開けるのにうだうだ言うなら私自ら開けてやろう」
後ろの私兵は武器を構えたまま騎士をけん制している。

「レン、あの人知ってる?」
「うん、確か勝てる戦の終盤にかけつける一応軍閥の子爵よ。名前は忘れたけど」
「随分痛烈な皮肉だね、確かサティモ子爵だったかな?」
「スチュアートさん詳しいですね」
「ああ、仕事柄要注意人物とか押さえておかないとね」

騎士二人は出入り口から大きく離れる、そして開け方がわからない子爵は騎士に尋ねる。
「そこは魔道具が使えるものしか開けることが出来ません、こういう時はそう返答するように指示を受けております」
「ふん、そのぐらいで私が諦めると思ったか」私兵の一人を呼んだ子爵は出入り口の取っ手の杖に魔力を流すように指示をする。
悠然と前に出たその男は集中し、魔力を流したかと思うと前のめりに突っ伏した。
「ああ、いい忘れました。そこを開けることが出来るのは大量の魔力保持者しか出来ません。これ以上騒ぎを大きくするようでしたら私達も上司に報告せねばなりませんが・・・」
そこまで言うと、後ろの男に指示をして突っ伏した男を回収して、逃げるように撤収する子爵。
クスクス笑うこちらを軽く一睨みして去っていった。

「警備お疲れ様です」
「あ・・・お恥ずかしい所をお見せしました。良い具合に魔力をチャージできるとガレリアさまが喜んでいましたが、面白いように多くの貴族が絡んでくるのですね」
「そんなにですか」
「ええ、勿論今日の件は報告しますけどね」

どうやらガレリアが5名で魔法を使っていた時代に多くの予約として、貴族から無理矢理約束をさせられていた事があった。
ところが事件により1名欠け技術の消失を宣言した結果、幸か不幸か強制的に騒動を収束させる事が出来た。
もともとこの技術は王家主導により進められたので、個人的にどうこう依頼すること自体端から無理だったのだ。
そして逆恨みしないよう徹底した保護をし、敵対するものは犯人候補として考えているという噂が流れ、結果的には『過去の栄光に縋り付く末端の法衣男爵』という不名誉な称号を貴族のやっかみとして受けていた。

普通に取っ手をつかみ横にスライドさせると出入り口が通れるようになる。
中は休憩中の騎士が二名おり、ガレリアとダイアナが打ち合わせをしていた。
端には自分が持っているバーベキューセットが5台もあり、水桶他色々な物資が一まとめにされている。
どうやら年末年始に続けて行うイベントの休憩所としても使うようだった。

所々に仕切り用の杭が刺さっていて、それにロープを通しシーツや毛布で間仕切りを作っている。
基本的に中での飲酒は禁止されているけど年末年始は解禁になるようだ。
レンの兄のルオンもいて、レイクと打ち合わせをして中の管理もしてくれていた。
この中から手伝える人を、今後農業従事者として誘うつもりだった。

各所に挨拶して明日以降の打ち合わせをすると、早めに寮に戻りパーティーの準備をする。
先にレンとティーナの迎えで馬車が到着し王城へ向かっていった。
そのすぐ後に馬車が到着し、王子・マイクロ・この間の先輩と共に王都の華やかな中心部から若干貴族の多く集まるエリアに向かう。そして一軒の貴族の屋敷らしい場所へ入っていった。

「王子、この日にここに来てしまいましたか」
「スチュアート、お前とは義兄弟になるんだ。最後くらいいいだろう」
「結婚当日にもめたくはないのですが」
「気にすんなスチュアート、何か言われたら俺がフォローしてやるよ」
「マイクロさん、今までそれでフォローしてくれた事無いじゃないですか」
先輩と三人の特待生は3名の仲の良さを呆然と見ていた。

「裏近衛って評判でも、王子と暴れまくって表に出せない近衛なだけでしょう」
「お、言うようになったね。スチュアート、後でレイシアさまにきちんと報告しておく」
「わかりました、観念します」
「では、いいか。ここで揉めると見つかるだけだ。さっさと行くぞ」王子の号令に全員で屋敷に入っていった。

なんとなくは予感していた、ここは高級キャ○クラ店だった。
高級の高級たる所以、それは偏に従業員教育だった。
所作は高級令嬢で醸し出す雰囲気は甘く、話題はエ○から政治経済文化芸能まで何でもござれだ。
そして、男同士の話には一切立ち入らず、必要以上にプライベートには詮索されない、ここでの秘密は確実に守られるのだった。

エールで乾杯の後、ワインにツマミと軽食が用意される。
『近衛解任祝いと結婚祝い』が名目らしい、ヴァイスはあまりの3人の仲の良さに目を白黒させてたが、何故解任が祝いなのか最後まで判らずモヤモヤしていた。またもや先輩がヴァイスの面倒を見ていて、今日は控えめに飲んでるヴァイスにとにかく騒いで忘れろと酒を注ぎまくっていた。

最初大テーブルで乾杯を行ったが、結構な人数だったのでテーブルを二つに分けた。
王子・マイクロ・スチュアートが昔話を酒の種にトップ3の女性をつけて盛り上がる。
残ったメンバーとキレイな女性達は、そんな3名を見ながらこっそり盛り上がるのだった。

今日一日頑張っても、今日一日無駄に過ごしても同じように一日は終わりを迎える。
最後にスチュアートが全員に向かって、感謝の言葉を述べると皆から拍手が送られる。
すると店の責任者から「1台お迎えの馬車が参りました」と告げられた。

外に出ると一人の女性が御者をしていて、その前に腕を組んでいるレイシアが怒っている。
「レイシア、俺が連れまわしたんだ。怒るな、今日だけは笑っていてくれ」
「お兄さま、申し訳ありません。全てわかっております、これから・・・」
「何も言うな、後は任せておけ。お前はこいつについていけばいいんだ」
目が潤むレイシアを見つめるスチュアート、そんなレイシアに「泣くな」と一言怒気を孕んで呼びかけるローランド。

「お前の決意はそんなものか」
「いいえ、もう心に決めてあります」
「みんな、騒がせたな。今日の事は発表があるまで皆の心のうちに仕舞っておいてくれ。」
ローランドが謝罪すると二人に早く乗り込むように指示をするマイクロ、二人を乗せた馬車は夜の道を走り抜けて行った。
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