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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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063:パーティーの準備2

寮に戻ると案の定、料理長に捕まった。
今回は自分が依頼したので、責任を持って完成まで付き合う予定だった。
「料理長、今日はそのソースの発展系の料理を作りましょう」
「お、いいな。どんなんだ?」

フライパンを低温にしてバターを溶かす、そして焦がさないように小麦粉を炒めて牛乳で伸ばしていく。
料理長にお願いしたのはベシャメルソースだった。
「思ったより簡単だな、んで茹でたジャガイモを並べてソースかけてチーズで完成だな」塩梅は料理長を信用しているので、出来たものを試食させて貰ったらかなり美味しかった。
「これも色々使えそうだな、姉ちゃんに頼んだのは必要なかったんじゃないか?」
「一回食べてみれば分かりますよ。明日は自分が手伝いに行く約束をしてるので、良かったらその場で完成させちゃいますか」
「あっちは時間かかりそうな作業だからなぁ、寮の料理ストックを増やしてから考えるわ」
「はい、じゃあどこかで完成させましょう」
「おう、頼むわ」

皆が戻るまでにまだ時間があったので、白ワインビネガーからマヨネーズが作れるか実験してみる。
卵黄に酢と塩を入れて混ぜ、調理用の油を少しずつ入れながら泡だて器で攪拌していく。
少し緩い出来になったけど、さっき茹でたジャガイモがあったので一個貰い荒くマッシュしてからマヨネーズで和える。
今出回っているジャガ芋は味的に微妙らしく、スープの嵩増し用の具としてしか考えられていなかったけど、ポテサラやポテグラにしたら十分主力になる野菜だと思う。料理長に味見をしてもらったら合格点をいただいた。

12月第3週火曜日、いつもの日課が終わると学食に直行した。
ティーナは今日から学園を休んで、木曜日までギルドで依頼を受けるようだった。
ヴァイスも先輩に稽古をつけて貰いに行くらしい、どうやら近衛騎士で着実に実績を重ねた先輩が急に辞めたようだった。
寮の執事と侍女も週末に向けて準備をしており、王国からの警備や給仕の打ち合わせを念入りに行っていた。

学食に到着するとエプロンを渡される、グリモアから書き写したレシピを見ながら料理長のお姉さんと材料の確認に入った。
お願いしたのは簡易チキンブイヨンだった、手羽のコラーゲンタップリな所を使いタマネギ・人参等と一緒にコトコト煮込んでいく。
これを元にポトフやシチューに発展させたい事を説明した。
料理長のソースは問題ないようなので、後で相談して仕上げてくれるそうだ。

煮込んでいる途中でサリアル教授が様子を見に来た。
ところが学園の生徒は少なくても学食の忙しさは変わらない、戦力として投入されたからには猫の手でも遠慮なく使ってくる。
「はい、リュージ君。それザク切りで、そこのボウル取って」
「あ・・・サリアル教授。今日午後にエントさんのところ案内してください。後、今はダメそうですー」完全に戦場になっていた。
手を動かしながらそれだけ告げると、「頑張ってください・・・」軽く含み笑いをしていたのは気のせいだろうか。
上げるつもりもなかった調理スキルがあがったのは秘密だった。

調理が一段落した所でふと魔力が減った気がした。
「あ、温室の時間延長の時間か」消費量を確認したところ5Pくらいしか減っていなかった。
そして問題なく効果時間が延長されているのを実感した。
お昼が近づくにつれ次第に戦場が激戦区になっていく、そして生徒がなだれ込んで来ると漸く開放されることになった。

ぐったりした姿でお昼を取っていると、レンとザクスがワイン瓶二本持ってやってきた。
「おー、お疲れ・・・って、本当に疲れた顔してるな」
「まーね、ダンジョン潜る前に魔境を見つけた感じだったよ・・・」
「それはお疲れ様。で、そっちは順調かな?」
「多くの人が手伝ってくれてるからね。あ、水遣りしてなかった・・・」
「「それはこっちでやっといたよ」」
「二人ともありがとう、それでその瓶があるってことは」
「うん、多分これでいいと思うけど確認してもらえるかな?」

学食から小皿を借りすこーしだけ垂らす、そしてパンにつけると二人は信じられないという顔をしている。
「はーむ」態と擬音を出して齧るとフレッシュ感あふれる油を実感した。
「おい、何か言えよ」「ね、ね、どうなの?」二人は興味津々な様子なので、小皿を二人の前に差し出し「ふふふーん」と笑顔で反応をする。
二人は学食のパンを千切り、一撫でオリーブオイルにつけて食べると「「うそっ」」と言って固まっていた。

「これ・・・普通の油でやらないようにね」
「分かってるよ、というか分からなかった。これ例の時に使うんだよな」
「勿論、料理が一段階も二段階も化けるよ」
「えー、これ料理長にお願いして今日から使おうよ」
「ダーメ、まだ量が少ないからね。余ったら考えるからそれまではね」
「「ハァ、余ることを期待してます」」今日の二人は本当にハモっていた。

オリーブオイルを収納に回収するとサリアル教授がやってくる。
二人には当分グループ活動に参加出来ない事を伝え、出来れば温室をちょこちょこ見て欲しいとお願いをした。
そしてサリアル教授は大きな包みを抱え、エントに差し入れを持っていくらしいので収納に仕舞う事にした。

サリアル教授と近くに行くと、どうやら今日は店を閉めているようだった。
裏口にまわると怒号が聞こえてくる、バタバタバタとあっちこっち駆け回っているようだった。
「エント、お邪魔しますよ」
「邪魔するなら、けぇんな」
「差し入れはいらないのですね」
「良く来たな、待ってたぜ」まるでどこかの掛け合いのようだった。

収納から差し入れを出すと、エントは手伝いの二人を呼ぶ。
「すぐ食べられるように学食で作ってもらいましたよ、いっぱいありますので休憩しませんか?」
「悪ぃな、気使わせちまって」
昨日の今日だけど、レイクは朝一番に材料が届くように手配してくれたようだった。

アイロンのような物の裏側に二本の回転軸があり、先端には金属製の羽があった。
「こんなだよな、後は回転のスピードなんだが・・・。ちょっと試してくれないか?」
使い方を聞き回転させてみると超高速回転だった。小さめの桶に水を入れてもらい、動かしてみると水に塗れた大型犬がブルブルしたくらい水が跳ねていった。
「これの目的は本来混ざらないものを、乳化という技術で混ぜる事にあります。もうちょっと回転数を落として羽の向きもこっち側にいけますか?」
「おう、そんぐらいの調整ならすぐだぜ。じゃあこれは調整でいけるな」

もう一つパスタマシーンの原型も作ってくれたようだった。
麺棒と同じ太さの短い棒が二本、隙間を空けて固定されていて棒は回転するようだ。
昨日渡した麺棒はコロニッドさん用にも作成されていたので、念の為それを作った業者は予備を作っていたそうだ。

この装置には課題は二つあった。
一つは通す物の硬さにより、どの位の力を込めたら良いか分からない事。
一つは負荷がかからないように、どんな工夫をしたら良いか悩む事。
収納に仕舞っていた昨日の生地を出すと「これダメにしてもいいか?」と聞いてきた。
『この後スタッフが美味しく頂きました』と言えば大丈夫だと思う・・・という事を考えながら「大丈夫ですよ」と答えると、早速ローラーにかけ出した。

なめらかな回転を考えるなら円の中心点を正確に捉えなければならない。
ただ、技術屋なのでその辺は任せても大丈夫だと思う。
途中のひっかかりを考えていたので【打ち粉】という作業を伝えると、目から鱗状態で感動していたようだ。
「これは使う奴にきちんと説明しないといけねぇな」そう言うと流通させるのは落ち着いてからでとお願いをする。
レイクとコロニッドを通す以上、どこかで王国からの介入はあるはずだ。

「大分見えてきたぜ、ミートチョッパーはレイクから肉を融通してもらって完成させとくよ」
金曜までには間に合わせると言い、昨日忘れていたガレリアからの伝言を聞いた。
「例の空き地に資材が届いたらしいぜ、昨日の宝石と現地の資材は余ったら自由に使ってくれや」
「ありがとうございます、現地に誰かいますか?」
「あ・・・えーと、そうだ協会に顔を出してダイアナだっけかな?聞いてくれって伝言を受けてたわ」
「エント・・・、物忘れがひどすぎます。老けたのですか?」
「サリアル、それはブーメランだから止めとけ」二人は軽くへこんでいた。

先に手伝い二人のお腹を満たしたので、又指示を出して色々手配をしていた。
エントは「後で貰っとくよ、ありがとな」と言うと、また作業に没頭していった。
サリアル教授は今週の午後は時間を取ってくれるらしく、ガレリアの依頼という事もあり協会まで一緒についてきてくれた。
ダイアナに面会を求め、ガレリアの使いでやって来たと告げるとすぐに通される。

時間も限られているし日に日に寒さが厳しくなっていく、出来る作業は前倒しで進めるに限る。
協会近くの広い空き地に案内されると、手で持つには重い鉄筋棒が20本も用意されていた。
「ここをどう使っても構いません。一冬のうち厳しい日が何日かあるので、そこさえなんとかなれば大丈夫だと思います」
「リュージ君、かなり広いですが大丈夫そうですか?」
「多分出来ると思うのですが、その後の継続して使う魔力のほうが心配です」

サリアル教授は「私も手伝いますよ」と言うと気合を入れていた。
鉄筋棒・宝石・サリアル教授と最上の準備は出来ている、後はうまく組み合わせて最上の結果を出すのみだ。
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