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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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060:千客万来とハムの人

 レンが戻りルオンが参加する事になった、学園には関係がないので日曜の寮の方にくるらしい。
ヴァイスがその後に戻り先輩二名が日曜に参加する事になった。
一人の先輩はワインで有名な貴族家らしく、葡萄ジュースと赤白のワインを土日に1樽ずつ届けてくれるらしい。
お土産に白ワインを1瓶持って帰ってきた、もう一人の先輩も何か持っていくよと言ってくれたそうだ。

 12月第3週月曜日、さすがに先週で講義も試験も一段落していて生徒もまばらだった。
温室に直行して様子を確認しスプリンクラーの魔法で水やりをする、校舎に到着すると早速呼び出しにあった。
今日は【試験内容:解説(各科)】があり、午前なのに実技系の講義が多かったのを軽く確認している。
庶務課に行くと今日は何件かの面会があったようだ、少しするとサリアル教授が初めて見る方を連れてきた。

「やあ、君がリュージ君だね。ガレリア先生から聞いたよ。俺の名前はエント、魔道具職人だ」
「初めましてリュージです、魔道具職人のあなたがどのような?」
「リュージ君、こんなんでもそこそこ凄腕の職人でガレリア教授の一番弟子なんですよ。それで先日の備品について説明があるようです」
「まず、君は付与魔法を少しは使えるってことでいいかな?」
「はい、まだ覚え始めたばかりですが」
「ああぁ、その辺は大丈夫だ。今は感覚的なものだけ分かればいい」

 魔道具と呼ばれるものや付与魔法には、道具そのもの若しくは媒介する宝石に対して魔法や魔法に関する動作を付与しているらしい。そして今回やる事をガレリアから聞いたエントは、現在かかっている魔法の維持だけに特化させれば良いのではないかと相談したらしい。
【魔力→魔道具発動→魔法発現】という手順を【魔法発現→魔石(魔力タンク化)→魔法維持】に変更したらどうだという理論を考えたようだ。ガレリアとそのグループが確立させた特別な技術を利用すれば、宝石を使った魔法維持も可能かもしれないと。

「そこでだ、この中に入っている宝石を二つに分けてくれ。どう分けるかは任すよ」
エントは小さい皮袋から丁寧に10粒の大小様々な色の石をジャラっとテーブルに出した。
なんとなく感覚で一個ずつ手に取り左右に分ける。直感と言えば直感だけど、左が紫水晶と黄色い石が多く、右の方は赤青緑の石があった。
「で、リュージ君ならどっちを選ぶ?」左側の五個を選ぶとそちらを皮袋に入れて渡された。

「エント、それだけではわかりませんよ。もっと教授から習ったことを伝えるくらいの技術はあるでしょう」
「ああ、これは感覚的なものだって言っただろう。できねえ奴は何時まで経っても出来ねえし、教えて覚える事じゃねえんだ」
「あなた達がそんなんだから技術が廃れていくのです」
「違えねぇ。んじゃあ、いっちょ講義でもしてやるよ。わからねえ奴にはちんぷんかんぷんな講義をな」
「そんな急に言われても」
「あの、今日は講義結構お休みですよね」
「確かに生徒がいなくて講師も少ないですが」
「じゃあ決まりだな、三限目くらいなら受けれそうか?」
「はい、まだ来客があるみたいなのでそのくらいには」

 その次に来たのは王国よりラザーと副料理長のコロニッドだった。
サリアル教授は今日ずっと付き合ってくれるようだった。
「久しぶりだねリュージ君。特待生として、その他にも活躍は伺っているよ」
「お久しぶりですラザーさん、その節はお世話になりました」
当たり障りのない話から始まったが、主題は土日の王家からの参加についてだった。

 ローラ王女からの報告により、是非参加したいと言い出した王家の反応は大きな波紋を呼んだ。
どうやら何か事件があったらしく、それが一段落した所でこの予定が入ったらしい。
土曜日の学園に王様・王子・ローラが参加し、寮の方に王妃・レイシア・ローラが参加したいとの意向があった。
まさか王様王妃様が来るとは思わず、騎士達も急な警備に頭を痛めていたようだ。
サリアル教授はメモをしている、そして「手配について後で相談があります」とラザーさんに面会時間について相談していた。

 コロニッドはレイシアとローラに聞いたトマトに随分興味を持っていた。
興奮気味に報告を受けたコロニッドは年齢も近い事もあり、よく離しかけられる立場にあるらしい。
そして新種の作物を調理したいという気持ちが沸々とわいたようだった。
「土日の二日間は人手がいりますよね?ね?ねぇ?いると言ってください」
「それは必要ですが」
「王家の食卓は私達も守る必要があります」
「本音は?」
「是非、味見してみたい」
「何名くらい手伝えますか?」
「料理長から許可は得ていますよ、私を含めて4名くらい手伝える予定です」
「土曜は給仕できるかたが居ると嬉しいです」
「OK、交渉成立だね」ガシっと握手を交わした。

 3組目は商業ギルドからレイクだった。
コロニッドさんを中心に依頼していた燻製関係が関係各所を大きく巻き込み、大きな利権の匂いをかぎとったレイクが手を上げて今まで進めたようだった。
「久しぶりリュージ君、今日は朝から人気のようだね」
「お久しぶりですレイクさん、今日はどうしたのですか?」
「ああ、まずはこれを見てもらった方が早いかな」
ベーコン・腸詰・焼豚を出してきた、そして他にも燻製チーズと燻卵も一緒に見せこちらの様子を窺っている。

「これは見た目いいですね」
「だろう?ただな、これで良いのかと聞かれると完成品のイメージを知っているのは君だけだからね」
「ちょっと今すぐに答えを出すのは難しいです、チーズと卵は以前見たので大丈夫だと思いますが」
「うーん、お昼に時間貰えないかな?」
「リュージ君、学食の皆さんはお昼が終われば時間とれるそうですよ」
「レイクさん、じゃあ一緒でもいいですか?ちょっと土日にイベントを考えているので」
「うん、実は知っている。どちらか裏方でもいいから参加できないかな?色々手配があれば融通するよ」
ここでもサリアル教授がレイクと個別に打ち合わせに入っていた。

 そろそろエントによる【付与魔法/魔道具】の講座が始まるようだ。
教室には空席が目立ち、エントはまばらに座っている受講者を前に寄せていた。
もう少し遅れたら反感を買いそうな時間で席に座るとエントと目があった、今日の授業は自分向けにしてくれるんだなと思い感謝してもし切れない。生徒がこれ以上入らないのを確認したようで学園の講師達が見学に入ってきた。

「ようこそ、【付与魔法/魔道具】の講義へ。俺の名前はエントだ、もしこの講義を受けたと店で言ったら割引が発生するかもしれないのでよく覚えていて欲しい」軽いジャブで笑いを取る。
「まずな、魔法はみんな使えるんだよ」
一昔前の魔法は限られた人しか使えない、魔道具を使える人も一握りだと伝えられていた。
ところが常春さまの技術により魔道具だけは一握りからそこそこの人が使えるようになった、最近ではサリアル教授の魔法により魔道具を使える人が更に増えている。

「魔法の基礎と言えば魔力の有無と想像力だな。そして多くの人が魔道具を使えるようになったと言うことは潜在的にみんな魔法を使える素養は大なり小なりもっている。ここまではいいか?」多くの人が頷いている。
「では、何故魔法が使えないのか?わかるものはいるか?」周りはシーンとしている。
「魔法を使える奴なんて一握りのエリートだと思ってるからだ」

 エントは昔がどうかは知らないけど今では職人の親方のような貫禄だ、ガタイが良くハンマーを持つのが似合う野性味溢れるおやっさんって言葉が似合う風貌だった。ちなみにサリアル教授と同期らしい。
「俺が魔法使いに見えるか?」
「そんな魔法使いがいるわけないでしょう」サリアル教授が野次る。
「違げぇねぇ。正直、魔法科の落ちこぼれだったしな。でもな、時代にもよるが俺達の頃はガレリア教授っていう凄い先生がいたんだ。付与魔法や魔道具には理論の他に職人の技ってのが関わってくる時があるんだ。そして理論より直感が大事な時もある」
一字一句聞き逃さないように頭に刻み込む。

「魔法とは出来ると思う事しか出来ねぇ、でもな、例えばこの円柱の木だがこれを動かそうと考えた時お前ならどうする?」前の方に座っている女生徒を指名する。
「曲線の方向に転がそうと考えます」
「ふむ、じゃあその隣のお前。球状の木だったらどうする?」
「全部曲線なので前後左右でしょうか?」
「普通ならそう考えるよな、リュージお前も一緒か?」
「あ・・・えーっと、上下に跳ねるのもありでしょうね。木なら割れる事もないでしょうし」
「ふむ、良い意見だ。多分こういう感性が魔法の使える使えないの境界線だな。そして経験によりこの差が埋まる可能性もあるので魔法が使えないものが魔法科にいても良いという理由にもなる」

「では聞くが俺がその一握りの魔法使い側には・・・自分でいうのもあれだが見えねえだろうな」全員が頷く姿に少しはお世辞を言える奴はいないのかねと頭を抱えた。
「俺は運良くガレリア教授から多くの事を教わったから、この技術を得る事ができたんだ。ようは感性と技術だ、こんな俺でも今では弟子を取るくらいまでにはなった」
「その技術は教えて貰えないのですか?」女生徒が質問をしてくる。
「聞きたいか?うーん、どうしようか?まずは魔法科の基礎を受けてから聞く講義なんだけどな」

もったいぶりながら新たな教材を出そうとガサゴソと準備をしていた。
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