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その鎌で何刈る気 作者:織田 涼一
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006:滞在許可

 朝は薪割りの音で目が覚めた。
昨日の話では挨拶に行く代官さんは癖がありそうな人らしい。
念の為リュックの荷物から調味料と米を出しウェストポーチに仕舞う。
空いたスペースに毛布を包んで入れた。

 しばらくするとゲイツさんがやってきた。
「おう、ゆっくり眠れたか?」の言葉におかげ様でと返事をする。
いつ衛兵が来るかはわからないのでゲイツさんにこの村の事を聞いてみた。

「ゲイツさん、この国と村について教えてもらえますか?記憶はまだ戻ってないようなので」と言うと簡単に説明をしてくれた。
「この村はアルファール王国直轄領にして最北端ラースって言うんだ」
アルファール王国は穀倉地帯を大きく有する農業王国である。
北部に隣接する国はなく寒さで人が住めるギリギリの位置として開拓していたのがラースである。
ただ、畑を耕すには地層がよくないらしくよく岩盤などに当たるらしい。
段々開拓を諦め比較的暮らしやすい場所・都会へのUターンが続き過疎っぽくなった頃事件が起こった。

 近隣の国が有する深遠の森より魔物が溢れたのだ。
通常この国は武力及び冒険者によって魔物が出た場合、責任を持って管理する事を他国に示していて、今回も勿論殲滅するものと考えていた。
国境には兵士を配備していたものの何故か堂々と溢れた魔物をそのまま通しアルファール王国街道をへと流し始めたのだ。
軍及び領主も長い平和な時代から対応が遅れ甚大な被害が起きてしまった。
因みに王都への報告が遅れたのも領主の判断ミスだったようだ。

 この近隣の国が行った事は武力の大切さともっと守られている事への敬いがあるべきという思惑があったらしい。
魔物はアルファール王国内の各冒険者ギルドと軍により緊急ミッションとして迅速に処理された。
そしてアルファール王国はすぐに近隣の国に対して抗議を行った。
また、経済制裁として輸出量の削減及び関税率の上昇を行った。
これに対し近隣の国はあくまで事故だったというスタンスを保った。
平行線を辿った二つの国の言い争いはこれにより国対国への武力による争いに発展することとなる。

 隣接する領は特に荒れた。
農地も荒れ兵士も疲弊し休戦と開戦が定期的に起き3年前についに停戦となった。
隣接する国で食糧問題が深刻になったのだ。
停戦条件は冒険者ギルドの国からの独立及び透明化。
国宝級の武器・防具の譲渡に対し食糧支援が折り合ったための停戦だろうという噂が数多く立った。

 アルファール王国は領民にも兵にも優しい国だった。
深刻な傷や心に傷を負った兵には数ヶ月から5年の休息を与え、ラースの村で仕事として開墾及び訓練と言う名目で衣食住及び給与の保障をしたのである。
多くの兵士は賄えないが過疎を心配していた村にとっては活気付く明るい要因になるはずだった。

 ある日代官として近隣の国に隣接する領主の嫡男がやってきた。
この男は凡庸な男であって周りの意見に流されやすい性質だった。
そして税吏として共にやってきた男が毒だった。

 とにかく何かにつけて口を出してくる、それも代官を通してである。
もともと開墾をしたらその土地を開墾した人が管理できる。
複数人で開墾したらその土地はラース村で買い上げてきちんと分配される。
現在のラース村は基本的に内部でお金のやりとりする必要はなく全て配給により管理されている。
その上で余剰分は仕事内容によりきちんと給与として渡されている建前だった。
昨日の獲物も肉とその他に別れ各所にて消費されるらしい。

「まぁ後わかんない事があったら代官にでも聞きな」
そう言うとゲイツさんは家の隅にある大きな水瓶から木桶に水を移した。
これで顔でも拭いて来いと言うと何処からの棚からパンを出しているようだ。

 簡素な朝食も終わり少しすると衛兵が来たようだ。
「ゲイツさんおはようございます。案内出来るよう連絡をとったのですがこれからでも大丈夫ですか?」
声は元気だが表情が疲れているようだった。
「準備できてるぞ坊主はどうだ」の言葉に行きましょうかと返事をする。

 そこは比較的大きな屋敷だった、この村にしてはと続くのだが。
衛兵は門に立つ二人の私兵に声をかける、すると中からチョビヒゲオールバックな執事っぽい男が出てきた。
印象は爬虫類だなと感じるが顔には出さない。
「初めましてリュージです、本日は面談ありがとうございます」と話かけてみた。
「旦那様がお待ちです、こちらへ」というとゲイツさんと共に歩き出す私兵も後ろに二人ついてきた。
門の所で衛兵が「粗相を働くなよぉ」と大声を出していた。

 とある部屋の前に行き執事がノックをする、通されたのは客間のようだった。
正面に机があり応接の簡易な椅子がその前にある。
机に座った男が立ち上がり後ろの私兵を下がらせると応接の椅子にかけるよう声をかけた。
「私の名前はハルビス、この村の代官を任されている。後ろに控えるのはゴーシュ税吏として私のサポートをしている」
「リュージです、本日は面談ありがとうございます」と返す。
「この村に入る手続きの件だったな」そうハルビスが言うとゴーシュが続けて答える。
「通常この王国の各都市や村に入るには銀貨5枚が必要になります、また商売をするようなら金貨2枚か王都商業ギルドへの許可申請及び許可証が必要になります。これはバザーなど含まれません」
「ゴーシュ、既に入っている身元不明なものに対する処置に関する決まり事はあるか?」
「いいえ、それはその地域の管理者による裁量によるものかと思われます」

 なんか嫌な流れになってきた気がする。
「代官さんよ、何が言いたいんだ」ゲイツが尋ねる。
「ゲイツよ、そもそも何故お前がいる?」そうゴーシュが変わりに答える。
「なんかこの村もきな臭い事が多そうだしな。人が増えるのも悪くないって思わねぇかい?」
ハルビスは少し悩んでいるようだった。
「ハルビス様」とゴーシュが声をかけると満を持した顔をして話す。
「リュージよ、まずは身元を証明するものを提示せよ」
この言葉にやっぱりかとため息をつくゲイツ。

「すいません、昨日衛兵さんにも話したのですが気がついたらあの場所にいたのです。記憶はなくて持ち物は全部調べたのですが証明するものは何も持ってなかったようです」
「ということは迷い人なのだな」そういうハルビス。

「迷い人は様々な魔法や技術を持っていると聞く。もしこの村に富をもたらせてくれるなら不法侵入は不問にし年内の扱いを村民と同等にしようと思うのだが如何する?」ハルビスの発言に満足するように頷くゴーシュ。

 どうやらここまでが規定路線らしい。
声を出そうとする俺を制しゲイツさんが「なぁ、こいつ14歳らしいぞ」と二人に話す。
よく意味がわかってないようなハルビス、無表情を貫こうとしているが何処かに無理がでている雰囲気なゴーシュ。
「代官さんなら勿論わかってるよな」とゲイツが満面の笑みで二人をけん制する。

「ゲイツさんも人が悪いですな、でもそれを証明するものも何もないでしょう」と言うゴーシュ。
そう、この村は王都直轄領、この王都では15歳未満の税の徴収は禁止されている。
極端に稼いでいる人物或いは貴族に関してはその限りではないがどう考えても対象にならないであろう。
「そうだな、じゃあ税を取ってみるか?俺は別にいいぜ、きちんと王都から査察官に来てもらっても」
楽しくて仕方ない顔だった。

 あまり村の上位者に悪印象を持たれたままなのも損なので提案してみる。
「あの富をもたらすとかは出来ないですが労働でなんとかならないですか?」と聞いてみた。
協会預かりとして食住は14なのでなんとかなるらしい。
「ふむ、あまり不法侵入という事実を前面に押し出すのもお主にとって良くない事だろう」そういうハルビス。
少し慌てたような残念のような顔をするゴーシュ。
「では、税のことは不問とする。但し事件を起こすではないぞ」そういうとハルビスが話しは終わり退出するようポーズをとった。


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